インプラントが抜けたときの対処法

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラント治療は、あごの骨にボルト状の人工骨(インプラント体)を埋め込み、人工歯を被せる治療法です。メンテナンスや体質などにより異なりますが、10年~20年、場合によっては数十年もの間、天然の歯とあまり変わらない感覚で使い続けられます。

 

ですが、口内環境をはじめとする要因により、インプラントが抜けてしまうケースもあります。この記事では、インプラントが抜けてしまう原因や抜けたときの対処法、歯科医師に伝えるべきことなどを解説します。

目次

1.インプラントが抜ける4つの原因

インプラントは、95%以上と高い成功率の治療法ですが、まれに抜け落ちてしまいます。主な原因は下記の4つです。

1-1.インプラント周囲炎

インプラント周囲炎とは、インプラント治療をした後に発生する歯周病のようなものです。インプラントに被せている人工歯と歯茎の隙間に歯垢が溜り、歯周病菌が増加することが原因で発生します。

 

インプラントそのものではなく、インプラント周辺の組織に炎症が起き、歯茎の腫れや膿、歯茎が痩せて下がるといった症状が出る病気です。

 

悪化すると歯茎だけではなく、骨の部分も炎症を起こして溶けてしまい、インプラントを支えられず、ぐらついて抜けやすくなります。最悪の場合、インプラントの脱落につながります。

 

インプラント周囲炎は、インプラントが抜ける一番の原因です。放置していても改善されない可能性が高いので、早めに歯科医院を受診しましょう。

1-2.かみ合わせによるネジの緩み

インプラント治療では、あごの骨にネジ式のインプラント体を固定するため、通常はぐらついたり、外れたりすることはありません。

 

しかし、かみ合わせによっては、インプラントの特定の部分に大きな負担がかかり、人工歯とインプラントをつなぐネジが緩んでしまうことがあります。

 

緩みを改善しないと、ぐらつきが生じ、インプラントが取れやすい状態になり、突然、インプラントや被せものなどが抜け落ちるリスクがあります。さらに、ネジの緩みがもとで破損してしまうケースも考えられるので、歯の揺れや違和感がある場合は、早めに歯科医師に相談してください。

1-3.歯ぎしりや食いしばり

歯ぎしりや食いしばりは、インプラントに大きな負荷をかけてしまいます。寝ている時や何かに集中しているときなどに無意識でしている場合が多く、自分では気がつきにくいですが、インプラントの脱落につながります。

 

天然の歯には、「歯根膜」というクッションのような役割を果たす部分があります。しかしインプラントには歯根膜にあたる部分はありません。そのため、噛む力が歯の周りの組織に直接かかります。負荷がかかり続けた結果、インプラントが抜けてしまうケースもあります。

 

無意識のくせのため、気がつかないまま再治療が必要になるケースも多いです。マウスピースの装着により、インプラントにかかる力をおさえられるので、歯科医院で作成してもらいましょう。

1-4.埋め込み時のダメージ

インプラントを入れる際に、誤った器具の使い方をしたり、あごの骨が硬すぎたりすると、摩擦による熱が生じます。それにより、骨が壊死してインプラントを支えられなくなり、抜け落ちてしまうケースがあります。

 

歯科医院のミスによって発生する場合があるため、治療前にトラブル時の対応について確認しておきましょう。

 

その他、喫煙による血行障害や全身疾患の影響など、インプラントが抜ける原因はさまざまです。

2.インプラントが抜けたときの対処法とは

インプラントが抜けたときの対処法は、インプラントのどの部分が抜け落ちたのかによって異なります。

 

インプラントは、あごの骨に埋め込まれ人工歯根となるインプラント体と被せものである人工歯、インプラントと人工歯をつなぐ「アパットメント」の3つの部分から構成されます。

 

抜けた部分別に対処法を解説します。

2-1.人工歯が抜けた場合

人工歯が抜ける主な原因は、破損やネジの緩み・破損、接着材であるセメントの劣化などです。インプラント体やアバットメントは無事なため、対処しやすいケースが多いでしょう。

 

取れてしまった人工歯は、誤って飲みこまないように、すぐに口から取り出し、紛失しないよう、ジッパー付きのビニール袋や口を縛ったビニール袋、プラスチック容器に入れて保存します。

 

ティッシュでくるむと、人工歯にくっついてしまうことがあるので要注意です。このとき、アバットメントやインプラント体には直接触らないようにしてください。

 

歯科医院に人工歯を持っていけば、そのままネジを締め直したり、セメントで接着し直したりして、再装着できる可能性が高いです。

 

ネジ式の場合は、自力で元の位置に戻せるかもしれませんが、細菌感染やかみ合わせ不良などのリスクがあるので、必ず歯科医師に処置してもらいましょう。

 

2-2.アバットメントが抜けた場合

接続部分であるアバットメントが抜けた場合は、基本的には人工歯も一緒に抜けているはずです。紛失しないよう、アバットメントと人工歯がくっついた状態のまま、人工歯が抜けた場合と同様の方法で保存し、すぐに歯科医師の診察を受けましょう。

 

アバットメントの状態にもよりますが、再利用できる場合が多く、すぐに元の状態に戻せる可能性が高いです。

2-3.インプラント体が抜けた場合

インプラント体は、通常であればあごの骨にしっかりと埋め込まれています。インプラント体が抜けた場合は、深刻な異変が起きている可能性があるため、すぐにかかりつけの歯科医院に連絡し、受診しましょう。

 

原因としては、噛み合わせやあごの骨の減少、インプラント体の破損などが考えられます。

 

この場合、インプラント体とアバットメント、人工歯の3つがつながった状態で抜けているはずです。バラバラにならないよう、まとめてビニール袋や密封容器に入れ、歯科医院に持っていきます。

 

インプラント体を自分で元に戻そうとするのは厳禁です。細菌感染などのトラブルを引き起こしかねません。また、根桁部分を舌や指で触らないように注意してください。細菌感染したり、インプラントをもとの位置に戻せなくなったりします。

 

歯科医院での処置は、歯や歯茎の状態によって大きく3パターンにわかれます。

 

・歯茎や骨に異変がない場合

インプラント体を調整したり、装着し直したりして、元通りにインプラントを入れます。

 

・歯周病がある場合

歯周病が進行している場合は、そのままインプラントを再装着できません。まずは、歯周病を治療してから、再度埋め込みます。

 

ただし、歯茎や骨の状態によっては、インプラントを再び装着できないケースもあります。歯科医師と相談して、ベストな治療法を探しましょう。

3.インプラントが抜けたら放置は厳禁

インプラントが抜けた場合は、どのパーツであっても、なるべく早く歯科医師の診療を受けましょう。そのまま放置してしまうと、残っている歯の負担が大きくなったり、細菌にかかったりして、健康な歯にダメージを与えるリスクがあります。

 

また、抜けたままにしておくと、他の歯が移動して、本来であれば元に戻せる人工歯が使えなくなる可能性もあります。

 

自分で入れ直したり、穴の空いた部分に綿など他のものを詰めたりするのも、細菌感染の原因となります。炎症や臭いなどの症状を引き起こす場合があるので、絶対にやめましょう。

 

4.インプラントが抜けたときに歯科医師に伝えるべきこと

インプラントが抜けた場合は早期に診療を受けるのが大切なので、すぐに連絡して、予約を取りましょう。

 

歯科医院に伝えるべき内容は、インプラントが抜けた理由と時間、抜けた部位の3点です。

 

【例】

・今日の昼にせんべいを食べたら、人工歯が取れた

・定期健診に行けてなくてグラつくと思っていたら、今日、朝ごはんを食べているときに、インプラント体が抜けてしまった

 

上記のような情報があると、歯科医師は抜けた原因を把握しやすく、スムーズに治療ができます。

5.インプラントが抜けたときにかかる費用とは

インプラントが抜けたときに気になるのが、費用の問題です。多くの歯科医院では、保証期間内であれば無償やそれに近い費用で、再治療を行っています。

 

ただし、定期メンテナンスに通っていない、ケアを怠っていたといったように患者の側に原因がある場合は、保障が使えない可能性があります。

 

また、インプラント治療は保険が適用されない自由診療であるため、治療費は歯科医院ごとに異なります。インプラント治療をした歯科医院以外で再治療を受ける場合は要注意です。

 

さらに、治療部位や人工歯などが再利用できるかどうかによっても費用は変わってくるので、最初に電話で確認しておくと安心です。

6. インプラントが抜けたら早めに歯科クリニックへ!

インプラント治療は成功率の高い治療法ですが、インプラント周囲炎やかみ合わせなどが原因で、インプラントが抜け落ちてしまう可能性があります。

 

抜け落ちたのが、人工歯・アバットメント・インプラント体のどれなのかや、歯・歯茎・骨の状態によって治療方法は異なります。

 

ですが、早ければ早いほど、スムーズに処置や再治療ができるので、早めに歯科医院に連絡して診察を受けましょう。

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