- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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「治療の選択」は「人生の選択」と似ていると言われるそうですが私も同感です。
かといって、歯を失った時の治療方法はいくつかあり悩んでしまいますよね。
そこで、この記事ではインプラントの基本的なこと、治療方法のメリット・デメリットを他の治療方法と比較しながら、経験豊富な歯科医師の観点から解説していきます。
5分で読めますし、簡潔にポイントだけを押えた内容になっているので、歯の治療方法に悩んでいる方、インプラント治療を考えている方は、ぜひ一読してみて下さいね。
目次
- 1 歯を失った時は3つの選択肢がある
- 1-1 入れ歯
- 1-2 被せ物(ブリッジ)
- 1-3 インプラント
- 2 全ての治療にはメリット・デメリットがつきもの
- 2-1 入れ歯のメリット・デメリット
- 2-2 被せ物(ブリッジ)のメリット・デメリット
- 2-3 インプラントのメリット・デメリット
- 3 自分にあった治療の選択と未来の選択
1 歯を失った時は「3つの選択肢」がある
歯を1つ失ったら補わないといけません。
それは口の中のバランスを保つためです。
口の中のバランスとは「噛み合わせ」のことで、1つ歯を失うと左右均等に噛むことが
難しくなったり、片側に負担がかかります。
歯を失う前のお口の状態に近づけるためにも、3つの治療方法を詳しく見ていきましょう。
1-1 入れ歯
入れ歯はなんとなく想像がつきますよね?歯と歯茎をプラスチックで作った物が入れ歯です。
治療手順としては
その1:入れ歯を作るための型取りをする。
その2:数日後に入れ歯ができあがり、口の中で合わせながら調整をする。
入れ歯のポイント!
部分入れ歯を作る場合は前後に金具がつきます。
この金具が原因で「入れ歯は目立つ」と言われています。保険適用外の入れ歯を選択することで、入れ歯を固定する金具を目立たなくすることもできます。
1-2 被せ物(ブリッジ)
ブリッジとは、その名の通り「橋」のことです。失った歯の両隣の歯を使って、橋をかけるような被せ物を入れる治療方法になります。
治療手順は
その1:失った歯の両隣の歯を削り、形を整える。
その2:ブリッジの型取りをする。
その3:数日後にできあがったブリッジを口の中で調整して、歯科用セメントで接着、固定する。
ブリッジのポイント!
両隣の歯が虫歯もなく健康な歯であっても、ブリッジを入れるには両隣の健康な歯を大きく削る必要があります。保険適用/保険適用外の2つを選択できます。
1-3 インプラント
インプラントとは「人工歯根」のことです。
顎の骨に人工歯根を埋めて、その上に人工の歯(被せ物)を入れる治療方法になります。
またインプラントは、失った歯の機能を再現していることから、第二の永久歯と呼ばれています。
インプラントの治療手順としては
その1:CT撮影
その2:診査・診断。
その3:インプラント手術を行う。
その4:外科治療終了後に、インプラントと骨がしっかりと結合するまで待つ。
その5:治癒期間を得て、インプラントの上に装着する被せ物の型取りをする。
その6:被せ物ができあがったら、口の中で微調整をして被せ物を取り付ける。
インプラントのポイント!
インプラント治療は他の治療法と異なり外科治療が必要になります。また保険適用ではなく、すべて自費治療となります。
2 全ての治療には「メリット・デメリット」がつきもの
この治療法が一番良い、とは言い切れません。
人により感じ方が異なりますし、年齢、性別、職業によっても適切な治療法は異なるためです。それぞれの治療法のメリット・デメリットをご紹介します。
2-1 入れ歯のメリット・デメリット
入れ歯のメリットは次の3つです。
① 治療期間が短い
失った歯の数によりますが、入れ歯の製作期間は短くて済みます。
部分入れ歯の場合には、ほとんどが1週間程度で完成します。
② 取り外しができる
入れ歯は自分で取り外しが可能です。
そのため痛みがあるときには、外しておくことができます。
③ 比較的低価格
保険治療と保険外治療がありますが、他の治療法と比べ比較的低価格で製作できます。
入れ歯のデメリットは次の4つです。
① 入れ歯の金具が見える
笑ったときに入れ歯の金具が見える場合があります。
歯を失った箇所が前歯に近づくにつれて金具は目立ってしまいます。
② 治療の時に健康な歯を削る場合もある
部分入れ歯を作成するときには、金具をしっかりとはめるために歯を削る場合もあります。
③ 違和感がある
特に初めて入れ歯を使う方は、違和感が強くでることがあります。
例えば、髪の毛一本でも口の中に入っているとすぐに気づきませんか?
そのくらい口の中は敏感にできているので、入れ歯のような大きい物が口の中にあると、不快に感じるのです。
④ 定期的な修理が必要
入れ歯は使用していると隙間ができてくるので度々、修理が必要になります。
隙間ができる理由としては、物を噛むたびに入れ歯が歯茎に負担を与えることで、最終的には歯茎が痩せてしまうためです。
また、年齢と共に歯茎の位置が下がってしまうことも、隙間ができる原因になります。
隙間があると、食事のたびに食べ物が詰まりやすくなるので不快に感じる方もいるようです。
2-2 ブリッジのメリット・デメリット
ブリッジのメリットは次の2つです。
① 治療期間が短い
ブリッジを作る土台となる歯に虫歯の問題がなければ、治療期間は短くなります。
ブリッジの型取りをしてから約1週間程度で完成することがほとんどです。
② 違和感が少ない
歯に被せるタイプなので入れ歯ほど違和感は少ないようです。
ブリッジのデメリットは次の3つです。
① 健康な歯を削る
ブリッジを作るために健康な歯を削る必要があります。
それは被せ物が入るように形を整えるためです。
また、歯は削ることで寿命が短くなるので、長く使い続けるにはご自宅でのしっかりしたブラッシング、そして歯科医院での定期的なケアが必要になります。
② 歯に負担がかかる
ブリッジは本来なら3本の歯が必要なところを、2本の歯で噛む力を支えることになるので土台となる歯にはかなりの負担がかかってしまいます。
③ 前後に歯がないと治療ができない
ブリッジは橋をかけるような被せ物と説明しました。
橋は片方だけでは成立せず、土台は最低で2本の歯が必要になります。
そのため、失った歯の場所によってはブリッジができない可能性もあります。
2-3 インプラントのメリット・デメリット
インプラントのメリットは次の4つです
① 他の歯に負担がかからない
インプラント治療は他の歯に負担をかけません。
また入れ歯やブリッジのように健康な歯を削る必要もありません。
② 自分の歯のように自然な歯を再現できる
インプラントは自費診療(保険適用外)になります。
そのため歯の色、形を細かいところまで再現することができ、自分の歯と見分けがつかない位の自然な歯にすることができます。
③ 違和感がなく自然に噛める
普段の生活で「自然に噛める」ことを気にしませんよね?
それは、不便を感じることなく噛めているからです。
しかし一本でも歯を失うと「自然に噛める」ことが難しくなります。
かといって、歯を補充するにしても入れ歯やブリッジでは口の中に入れると違和感が強く「自然に噛める」までにはいかないのです。
しかし、インプラントは顎の骨の中に埋めることでしっかりと固定されるため、歯があった時と同じような噛み心地を再現することができます。
④ 失った歯の数に左右されない
多くの歯を失った場合には、ブリッジでは治療が難しいことや入れ歯が大きくなる問題がでてきます。しかし、インプラントは失った歯の数で治療が難しくなることや違和感が大きくなるといったことはありませんので、失った歯が多くてもインプラント治療は可能です。
インプラントのデメリットは次の4つです。
① 治療期間が長くなる
インプラント治療は他の治療方法よりも期間は長くなります。
なぜならインプラントが骨に固定する待ち時間が必要になるからです。
この固定を待つ期間は治療内容によって異なりますが約4ヶ月~6ヶ月と言われています。
しかし、「抜歯即時インプラント」や「即時加重」という方法を利用することで、手術当日に仮歯を入れ食事ができるようになる方法もあります。
② 外科手術が必要
インプラント治療は外科手術が必要です。
外科手術と聞くと「怖い」「痛そう」などのイメージを持っている方も多いと思いますが、基本的にインプラント治療では、麻酔は虫歯治療で使われる麻酔と同じ局所麻酔を使います。
また外科手術も1時間ほどで終わるため、意外とすんなり終わると感じる方もいるくらいです。
③ 保険適用外
今のところインプラント治療には保険が効きません。
費用はインプラントのメーカーや歯科医院により異なりますが、インプラント1本で約30万円~50万円が大体の相場になります。
保険適用の治療と比べると、費用が高く感じますがこの値段の中には
・骨の量、厚さを調べるレントゲン撮影費
・インプラント手術費
・被せ物の費用
などの治療費も含まれています。
また近年では、インプラント治療が医療費控除の対象になっているので、制度をうまく活用できると少し安くインプラント治療を受けられます。
④ インプラント治療が難しいケースがある
全身疾患のある方は外科手術ができない場合があります。
特に心臓病、高血圧、糖尿病、骨粗鬆症の疾患を持っている方は、外科手術を受けることが難しいと判断されることが多いです。理由は、血の止まりにくさや、骨の脆さからインプラント治療ができないと判断されるからです。
3 自分にあった治療の選択と未来の選択
3つの選択肢の治療方法やメリット・デメリットを見ていかがでしたか?
歯を一度削ると元には戻らないこと、見た目そして、これからも食事を楽しみたいと考えるとインプラントのメリットの方が多いですね。
しかし、今の年齢や経済的事情により、どの治療が適切かは患者さんの状況次第になります。
ただ、未来の自分がおもいきり笑えて、美味しい食事を楽しめるのかを一度足を止めて考えてみましょう。
きっとその治療の選択は未来のあなたに繋がっていますよ。