【インプラント】こんな歯医者は選ばないでください

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラントは、失った歯を補う治療法のひとつで、見かけも機能も本来の歯とあまり変わらず使用できます。外科手術を伴う難易度の高い治療ですが、歯科医師の資格があれば誰でも行えます。

 

そのため、歯医者のスキルや歯科医院の設備によっては、充分な品質の治療を受けられない可能性もあります。場合によってはトラブルが起きたり、インプラントの寿命が短くなったりといったリスクもあるでしょう。

 

この記事では、インプラント治療において、選んではいけない歯医者の特徴をご紹介します。信頼のおける歯科医院を見極め、満足のいくインプラント治療を受けましょう。

目次

1.インプラント治療で歯医者選びが重要な理由

インプラント治療が成功するかどうかは、どの歯医者で治療を受けるかによって大きく左右されます。歯医者選びが重要な理由を解説します。

1‐1.インプラント治療は難易度が高い

インプラント治療は、メスなどで施術部位を切り開き、あごの骨にインプラントを埋める外科手術です。そのため、感染などのリスクがあり、一般的な虫歯治療と比べて難易度が高いといえるでしょう。

 

さらに、保険適用外なので、インプラント治療をあまりしない歯科医師も少なくありません。歯科医師のなかでも、インプラント治療に必要な知識・技術・経験を兼ね備えた医師は少数派です。

 

インプラント治療を成功させるには、充分なスキルを持つ歯医者を見極めるのが不可欠です。

1-2.他の治療と比べて長い付き合いになる

インプラントの寿命は、10~15年が目安といわれています。他の治療方法と比べ、歯医者との付き合いが長くなるので、しっかり技術や人柄を見極めるのが大切です。

 

インプラントを長く快適に使うには、歯科医院で適切なメンテナンスを受けることが不可欠です。定期的にしっかりケアすることで、トラブルを防止でき、インプラントが長持ちしやすくなります。安心してメンテナンスに通い続けられる、信頼できる歯医者を選びましょう。

2.インプラント治療に失敗するとどうなる?

インプラントは95~99%もの成功率を誇る治療法です。しかし、歯医者選びに失敗すると、インプラント治療が上手く行かないケースがあります。代表的な失敗例は、下記の4つです。

2-1.インプラント周囲炎になる

「インプラント周囲炎」とは、インプラント周辺の組織が細菌に感染し、炎症がおきる症状です。症状が進むと、あごの骨にまで炎症が広がり、骨が溶け、インプラントを支えきれずぐらつくようになります。最終的には、インプラントが脱落してしまうケースもあります。

 

インプラントは直接あごの骨につながっていて、炎症に弱いため、進行が早いといわれています。そのため、軽い炎症でもすぐにあごの骨が吸収されてしまい、インプラントの土台が不安定になる可能性が高いでしょう。

 

インプラント周囲炎の主な原因は、歯垢です。歯医者や自宅でのケアが不充分だと、歯垢が溜まりやすくなり、インプラント周囲炎になりやすくなります。そのため、歯医者でのメンテナンスが非常に重要です。

 

また、歯周病を充分に治療せずに、インプラント治療を行うのも、インプラント周囲炎のリスクを高めます。

 

インプラント治療をする前にしっかり歯周病を治療し、治療後のメンテナンスにも力を入れている歯医者であれば、インプラント周囲炎にかかりにくいといえます。

2-2.痛みや腫れ、しびれが長期間続く

インプラント治療は、外科手術を伴うため、治療直後に、痛みや腫れ、しびれなどの症状が出ることがあります。しかし、痛み止めを飲んでも症状が落ち着かない、長時間我慢できないような痛みがあるといった場合は、治療に失敗した可能性があります。

 

痛みや腫れ、しびれが長時間続く主な原因は、インプラントを埋め込んだ位置や深さ、角度が不適切だからです。神経を傷つけたり、残っている歯の歯根にインプラントが触れたりすることで、そのような症状が出ます。

2-3.蓄膿症になる

上あごにインプラントを埋めるときは、上あごの上部にある「上顎洞(じょうがくどう)」と呼ばれる大きな空洞に傷をつけたり、穴を開けたりしないよう注意が必要です。

 

上顎洞の底にある薄い膜を破ると、細菌に感染し、炎症が起こります。上顎洞に膿が溜まり「蓄膿症」のように、強い頭痛や痛みなどの症状があらわれます。

 

通常であれば膜を傷つけないよう歯科用のドリルを使用します。しかし、身体の構造の知識が不足している、あるいは技術が足りない歯医者の場合、膜を傷つけてトラブルを起こしてしまう可能性があるでしょう。

2-4.インプラントが定着しない

手術により、インプラントをあごの骨に埋め込んでも、骨と結合せずに定着しないケースがあります。

 

インプラントは、手術時に固定された後に、時間をかけて骨と結合することで、天然の歯と同じように安定して噛めるようになります。結合がうまくいかないと、ぐらつきや細菌感染の原因となります。

 

結合がうまくいかない主な理由は、インプラントの位置や深さが不適切である、あごの骨にドリルで穴をあける際に骨にダメ―ジを与えてしまったなどがあげられます。

 

また、時間や費用の節約を目的に、本来は日を置いてインプラントの埋め込みと被せものの接着を行うべき状態だったのに、1日でまとめて行うと、定着しない可能性が高くなります。

3.選んではいけない!NGな歯医者とは

ご紹介した通り、インプラントの失敗には、歯医者の診断や技術、メンテナンス不足などが深く関係しています。インプラントに失敗しやすい歯医者の特徴をご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

3-1.インプラントの専門知識・技術がない

インプラントは非常に高いスキルが必要な治療なので、適切な診療をするには、常に知識やスキルを身につけ、多くの経験を積むことが不可欠です。例え、虫歯や歯周病の治療に優れた力を発揮していても、インプラント治療が得意だとは限りません。

 

インプラント治療を成功させる技量があるかの判断基準のひとつが、日本口腔インプラント学会の、専門医や指導医、専修医の資格の有無です。

 

これらの資格は、インプラント治療の専門知識やスキルを有していることを客観的に証明するものです。

ただし、資格を持っていなくても優れたインプラント治療ができる歯科医師はいますし、逆に資格を持っていても必ずしも治療の質が保証されるわけではありません。

 

資格や治療実績、口コミなどを総合的にチェックして、信頼できる歯医者を選びましょう。

3-2.診察・説明が不充分

インプラント治療は自由診療のため、治療方針や費用、治療期間、インプラントの保証内容など、歯医者の裁量に大きく委ねられています。

 

そのため、説明が不充分なままインプラント治療を進めてしまうと「こんな話は聞いてない」とトラブルにつながりやすいのです。

 

下記のような診察・説明をしている歯医者は、治療がスムーズに進みやすいです。

・口の中の状態を丁寧に診察する

・患者の悩みや要望にしっかり耳を傾ける

・なぜその治療が必要なのかわかりやすく説明する

・メリットだけではなくデメリットも伝える

・費用や治療期間の目安を提示する

・理解や同意を確認しつつ説明を進める

 

インプラントは費用がかかり、メンテナンスなどで歯医者との付き合いも長くなります。技術だけではなく、人柄も信頼できる歯医者を選びましょう。

3-3.インプラント専用の手術室がない

インプラント治療では、外科手術を行うため、細菌感染を防ぐ手術室がある歯科医院での治療が望ましいといわれています。

 

診療用の椅子でも手術はできますが、隣で歯を削る治療などの治療が行われているような環境は、なるべく避けましょう。

 

手術室であれば、空気中の細菌を除去する機器や内部の空気を汚染から守る仕組みなどが設けられており、感染のリスクを軽減できます。

3-4.歯科用のCTを使用していない

インプラント治療において、歯・神経・あごの骨の状態や口の中の構造を正確に知ることは、非常に重要です。歯科用のCTを使用すれば、正確なデータが収集できるため、より適切な位置や深さにインプラントを埋め込むことが可能です。神経を傷つけるなどのリスクも軽減されます。

 

昔はレントゲンでの確認のみでインプラント治療をしていましたが、CTを使用した治療と比べ、安全性が低いです。

3-5.サージカルガイドを使用しない

「サージカルガイド」とは、インプラント手術の際に使用するテンプレートのことです。CTなどの診察で集めた情報をもとに、3Dシミュレーションソフトでインプラント埋入位置を分析し、ドリルを通す位置に穴を空けたものです。使用することで正確な位置と角度にインプラントを埋め込むことができます。

 

正確な位置に埋め込めるため、不適切な位置に入れることによるトラブルを防げます。さらに、歯肉を切らなくても手術ができるため、感染リスクや身体的負担の軽減など大きなメリットがあります。

 

インプラントを成功させるためには、診断で決めた位置に正確に埋め込むことが非常に重要です。サージカルガイドを導入している歯医者の方が、成功率は高い傾向にあるでしょう。

3-6.治療費用が安すぎる

インプラント治療は、保険適用外なので少しでも安く済ませたいと考える人も多いでしょう。しかし、治療費用が安すぎる歯医者は、必要な部分にお金をかけていない可能性があります

 

インプラントにかかる費用の主な内訳は、下記の通りです。

・麻酔代:麻酔専門の歯科医師が手術中に全身管理

・手術室費・滅菌消毒費:手術で使用する場所や機器の消毒、手術着など

・インプラント本体の費用

・被せものの費用

・その他使用する材料費

・薬代 など

 

その他にも、さまざまな費用がかかるため、インプラントの治療費は高額になっています。これらの費用は、安全で質の高いインプラント治療に不可欠なものばかりです。

 

また、治療費を下げるために、安いインプラントを使用している歯医者もあります。しかし、高価なインプラントは多くの研究成果をもとに機能性を高めた製品です。インプラントは、身体のなかに異物を入れる治療なので、高品質なものを使う方が、長持ちする可能性があります。

 

無駄なコストを削減して割安な費用で治療している歯医者もありますが、安すぎる場合は、要注意です。

4.よい歯医者選びがインプラント成功につながる

インプラントは成功率の高い治療ですが、脱落など失敗するケースもあります。リスクを軽減するには、技術や人柄が優れた信頼できる歯医者を選ぶのが大切です。

 

インプラントの知識が不充分、丁寧に説明してくれない、院内の設備が整っていない、治療費が安すぎるといった歯医者には注意しましょう。

 

よい歯医者を選べば、インプラント成功率はより高くなります。

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