インプラントは「半永久的」にもつの?寿命を知りたい!

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

インプラントとは、歯茎にチタン製の土台を埋め込み、その上に人工歯を取り付ける治療のことです。

見た目・機能面ともに、限りなく天然歯に近い状態に回復できるので、選択する人もかなり増えてきました。

半永久歯ともいわれるインプラントですが、一度の治療で一生涯もつか、あまりもたないかは条件によって大きく異なります。
この記事ではインプラントの寿命やインプラントをより長持ちさせる条件について解説します。

目次

1 一般的なインプラントの寿命

インプラントの10年後の残存率は90%以上というデータがあります。

正しくメンテナンスをしていれば30年以上使い続けることも可能です。

7〜8年の寿命といわれるブリッジや、加齢やかみ合わせによって合わなくなってくる入れ歯と比べると長期間使えるのが特長です。スウェーデンでは、1965年にインプラント治療をしてから亡くなるまで、45年間もったというケースも報告されています。

2 インプラントを長持ちさせる5つの条件

インプラントの寿命は運や当たり外れなどで決まるものではありません。
インプラントを長持ちさせるには、以下にご紹介する5つ条件が必要です。

2-1 良いドクターを選ぶ

インプラントは外科的処置(手術)が必要になる治療です。
手術には高い技術が必要になりますし、リスクも伴うので、ドクター選びは非常に大切です。
ここでは良いドクターを選ぶポイントを紹介していきます。

2-2 経験年数

歯科医師選びの重要な目安になります。
専門医と銘打っていても人によって技術力は異なります
経験年数が長ければ、それだけ治療実績も豊富であると考えられるので、できるだけ熟練の医師を選ぶと良いでしょう。

2-3 症例集

経験年数が同じでも、1年で施術する回数にはバラツキがあります。
そのため、日頃から症例を数多くこなしている医院やドクターに担当してもらうのが良いといえます。

詳しい情報を開示している医院はほとんどないので、インプラント専門クリニックを選ぶか、そのようなクリニックに勤務経験のあるドクターを探してみましょう。

2-4 技術・知識の研鑽

ドクターが技術向上のため積極的に勉強しているかを知るには、こまめに学会や研修などに参加しているかなどが目安となります。

 

<主な学会>
・公益社団法人 日本口腔インプラント学会(日本歯科医師会公認)
・公益社団法人日本顎顔面インプラント学会(日本歯科医師会公認)
・国際口腔インプラント学会ISOI・DGZI日本支部(ドイツに本部を持つヨーロッパ最古のインプラント学会)

 

学会や研修会への参加は、各医療機関のホームページに掲載されていることが多いので、ぜひ参考にしてください。

2-5 設備

インプラント治療は医療機関の設備も重要なポイントです。

最近ではレントゲンを撮った後、綿密な設計を行うためのナビゲーションシステムやガイドなどを取り入れる医療機関も多くなってきました。大学病院などでは設置が義務付けられていますが、個人の開業医などでは導入していないところもあります。

 

歯科用CT
口腔内を映し出す歯科用のレントゲンです。
骨や歯の位置関係を三次元的に把握でき、インプラントを埋められるかの判断や、人工歯根を埋めるポジションやサイズを決定します。

 

ナビゲーションシステム(シミュレーションソフト)
CTで撮影したデータをコンピューターに取り込み、インプラントを埋入する位置・角度・深さなどを手術前にシミュレートすることが可能になります。

これにより、歯の周りに通っている重要な血管や神経を傷つけるリスクが軽減され、より安全にインプラント治療を行えるようになります。

 

インプラントガイド
シミュレーション結果をもとに、インプラントを埋め込む位置、角度などを反映させた手術用プレートのことです。

これにより、位置がずれる・向きが狂うなどのリスクを抑えてインプラント治療が行うことができます。
また、歯肉を切開して確認してから穴を開ける必要がないため、最小限かつ最短の手術で完了できるというメリットがあります。しかし100%完璧とは言い切れないので、やはり臨機応変に対応できる経験豊富なドクターが安心です。

3 良いメーカーを選ぶ

ストローマン
スイスのインプラントメーカーで、世界No1のシェアを誇っています。
40年以上の歴史があり、世界で1,400万人以上に使用されています。

ノーベルバイオケア
世界でもっとも古いインプラントメーカーです。
ブローネマルク博士が発見したためブローネマルク・インプラントとも呼ばれています。

ジンマー
筋骨格系ヘルスケアに基づいて設立されたアメリカのメーカーです。
10年以上の長期臨床成績や科学的根拠に基づいた製品を提供し、多くの医療機関から厚い信頼を得ています。

アストラテック
スウェーデンのメーカーです。
スウェーデンは医療の水準が高いことで知られていますが、最新の製品は骨の吸収が少ない上に骨との結合が早く、構造も強いと好評を博しています。

 

インプラントを専門とする歯科医院のホームページでは、ほとんどの場合どのメーカーを使っているかを掲載しています。
もし掲載されていない場合は直接電話などで問い合わせてみると良いでしょう。

4 セルフメンテナンスをしっかりと行う

インプラントに使うチタンやセラミックは、長期間使用できる安定した素材です。しかし、メンテナンスを怠るとインプラントの周囲に細菌が感染し、歯周病と同様の症状を呈することがあります。

 

これは「インプラント歯周炎」というインプラントの大敵となる病気です。

インプラント周囲炎になると、歯周病と同じように急速に骨が溶かされてしまい、インプラントが抜けてしまいます。

インプラント治療を行った後は、丁寧で正しいブラッシングを心がけることが肝心です。

5 プロのメンテナンスをしっかり行う

セルフメンテナンスと併せて、プロによるメンテナンスも大切です。

5-1 定期メンテナンス

インプラント治療が終わった後も、1〜3ヶ月ごとに通院して定期メンテナンスを行います。定期メンテナンスでは歯周ポケットや骨の状態の確認・歯石の除去などを行います。

また、定期メンテナンスではブラッシング指導などもしてくれるので、セルフメンテナンスを定期的に見直す機会としても有効です。

5-2 歯ぎしりや食いしばり予防

歯ぎしりや食いしばりは、かみ合わせが合わなくなりインプラントが抜けやすくなる原因です。

歯ぎしりや食いしばりのクセがある人は、就寝時にマウスピースを使うなどしてダメージから歯を守ります。

6 日頃の健康管理を行う

生活習慣はインプラントの寿命に大きな影響を与えます。
そのため、日々の健康管理はとても大切です。

 

例えば、生活習慣病である「糖尿病」「骨粗しょう症」はインプラントの寿命を縮める原因になります。

理由は次の通りです。

 

<糖尿病>
細菌に対する抵抗力(免疫力)が低下することで「インプラント周囲炎」を起こしやすくなる。

 

<骨粗しょう症>
インプラントを支える骨の強度・密度が低下するため、埋め込んだインプラントが外れやすくなる。

 

インプラント治療をする前は罹っていなくても、治療後に発症する可能性も考えられます。
日頃から甘いものを摂りすぎない・カルシウムを多く摂る・適度な運動を行うなど生活面での健康管理を怠らないようにしましょう。

 

また、喫煙は歯茎の毛細血管を収縮させるため、歯周病や歯茎の衰え・痩せなどを引き起こしやすく、インプラントの寿命を縮めます。インプラント手術をする2週間前からは禁煙する必要があるので、インプラント治療を機に禁煙してみてはいかがでしょうか。

7 インプラントの寿命のまとめ

インプラントを長持ちさせるためには、以下のような条件が大切です。

 

・経験年数・症例数が多く技術研鑽しているドクターを選ぶ
・歯科用CTやナビゲーションシステムなどの設備が整った医療機関を選ぶ
・一流のメーカーを使用している医療機関を選ぶ
・きちんとしたセルフメンテナンスや定期メンテナンスを行う
・日頃の健康管理をしっかりと行う

 

ドクターや設備などに関しては、各歯科医院や病院などのホームページを見てみるか、電話で問い合わせるなどして事前に調べてみることが重要です。納得のいくインプラント治療を受け、正しくケアすることで、長期的にインプラントを使い続けられるようにしましょう。

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