- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラントにプラスのイメージを持っているか、マイナスのイメージを持っているかは人によって大きく分かれます。見た目の美しさ、噛み心地の良さ、優れた耐久性など、メリットの部分に目が向いている人は、インプラントに大きな希望を抱いていることかと思います。一方、過去に起きたいくつかの事故について知っている人は、安全性に疑問を抱いているかもしれません。そこで、そもそもインプラントは「安全」か「危険」という点をお伝えします。
目次
- 1.どんな事故が起きたの?
- 1-1 70歳女性へ5本のインプラントを埋入
- 1-2 動脈損傷による大量出血
- 1-3 歯科医師に有罪判決
- 2 医療事故による死亡は年間300件
- 3 インプラントの成功率について
- 3-1 インプラントにおける成功とは?
- 3-2 インプラントの成功率は90%以上
- 4 大切なのは歯科医院の体制
- 4-1 インプラント治療の経験豊富な歯科医師
- 4-2 衛生環境が整っている
- 4-3 精密な診査診断・施術を行える
- 5 「安全」「危険」を選ぶのはあなた自身
- 6 まとめ
1.どんな事故が起きたの?
インプラント治療を検討されている方は、何よりまず過去の医療事故について知っておきたいことでしょう。インプラント手術で死亡事故が起きたという話は知っているけれど、その詳細については知らないという方がほとんどです。ここでは、そんな過去の医療事故について、重要な部分のみ解説します。
1-1 70歳女性へ5本のインプラントを埋入
患者さんは70歳の女性で、上下の顎に5本のインプラントを埋入する治療計画が立てられました。施術を担当したのは、埋入実績が3万本以上にもおよぶインプラント治療のプロフェッショナルです。まだ駆け出しの歯科医師というわけではなく、これまでたくさんの症例を担当してきたベテランといえます。
1-2 動脈損傷による大量出血
インプラント手術は、埋入予定だった5本のうち、4本までは安全に行われました。最後の1本を埋め込む処置の際、「オトガイ下動脈」という血管を損傷し、大量出血を起こします。口腔内に血液が充満し、気道が塞がれることで窒息へと至りました。
1-3 歯科医師に有罪判決
この医療事故の責任は、手術を担当した歯科医師にあるという判決が下されました。医学や法律の専門家から見ても、歯科医師のミスであることは否めなかったのです。
2.医療事故による死亡は年間300件
具体的な医療事故の例を知ると、インプラント治療が怖くなるかもしれません。しかも、事故を起こしたのがベテラン歯科医師であることから、インプラントには必ず大きなリスクが伴うものと思われることでしょう。
実際、手術を行う以上、医療事故が起こるリスクをゼロにすることは不可能です。ただし、それはインプラントに限らず、すべての治療にいえることなのです。ちなみに、医療事故による死亡数というのは毎年300~400件程度となっています。これは医科も含めた全体の数です。
しんぶん赤旗 医療事故調査制度 18年年報「予期せぬ死亡」377件
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2019-04-07/2019040701_02_1.html
3.インプラントの成功率について
4.大切なのは歯科医院の体制
インプラント治療で医療事故が起こる可能性というのは極めて低いということがわかったかと思います。それでもやはり、手術による後遺症や事故による死亡のリスクなどが気になってしまうものですよね。そうした方は、次に挙げるような点に着目してインプラント治療を受ける歯科医院を選ぶようにしてください。
4-1 インプラント治療の経験豊富な歯科医師
インプラントは、極めて専門性の高い歯科治療です。歯科医師免許を取得する前に、その概要について学ぶことはありますが、実際の治療は特別な環境でなければ経験することができません。適切な処置を施せるようになるには、それなりの経験と年月が必要といえます。そのため、インプラントによる医療事故を防止するには、経験豊富な歯科医師に治療を任せるのが大前提といえます。
4-2 衛生環境が整っている
使用後の診療器具はすべて滅菌処理を施し、スタッフ全員の衛生管理への意識が高い歯科医院を選ぶようにしましょう。インプラント手術を安全に行える専用のオペ室が完備されていることも重要です。
4-3 精密な診査診断・施術を行える
インプラント治療を安全に行うためには、歯科用CTが必須といえます。その他、コンピューター上でシミュレーションを行うソフトやインプラントを正確な位置に埋入できるサージカルガイドの活用などを導入している歯科医院がおすすめです。こうした設備や機器がそろっていることで、精密なインプラント治療の実施が可能となります。
5.「安全」「危険」を選ぶのはあなた自身
このように、インプラントというのは、その他の治療と比較して「危険」であるとはいいがたいです。なぜなら、虫歯治療でも親知らずの抜歯でも、歯科医師が処置を誤れば同じような事故が起こり得るからです。誤った麻酔処置によって、子どもが死亡した例も有名ですね。
ですから、インプラント治療だからといって、医療事故を過剰に心配する必要はないといえます。ただし、治療を任せた歯科医師の技量や歯科医院の体制によっては、大きな事故につながることもあります。そうしたリスクを限りなくゼロに近づけたいのであれば、歯科医院の選定を慎重に行いましょう。安全なインプラント治療を選ぶのは、あなた自身なのです。
6.まとめ
インプラントは、とても優れた歯科治療です。それだけに「何となく怖い」「危険そうで嫌だ」といったマイナスのイメージだけで治療を諦めてしまうのは、もったいないといえます。上述した内容を踏まえ、インプラントが安全か危険かを自分自身で判断することが大切です。