インプラント治療と「医療費控除」。医療費控除を賢く利用しましょう!

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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天然歯のようによく噛めて、見た目も美しい。そんな理想的な歯科治療であるインプラントは、昨今、急速に需要が高まっています。入れ歯やブリッジにはない魅力がインプラントにあるからでしょう。

 

ただ、インプラント治療は基本的に(例外はあります)保険が適用されないことから、費用が比較的高くなる傾向にあります。この点がネックとなって、二の足を踏んでいる方も少なくありません。

 

そこでご紹介しておきたいのが「医療費控除(いりょうひこうじょ)」です。インプラント治療にかかった費用は、医療費控除の対象となることから、申請を行うことでその一部が還付されるのです。

目次

1.医療費控除ってなに?

1-1 医療費控除とは

医療費控除とは、1月1日から12月31日の1年間で、支払った医療費の総額が10万円を超えた場合に適用される制度です。所得に応じた一定の金額が控除されるため、結果的にインプラントの治療費が安くなります。

 

一般的には、身体の病気で医科にかかった際に適用されるものと思われがちですが、歯科治療にも適用されます。そこで気になるのが控除される「医療費」の範囲ですよね。

1-2 インプラント治療における医療費控除の範囲

インプラント治療では以下の費用が医療費控除の対象となります。

・治療を開始する前の診査診断料(CT検査なども含む)
・インプラントや上部構造の費用
・インプラントを埋入する手術費用
・治療後のメンテナンス費用
・通院にかかった費用(公共交通機関を利用した場合)
・お薬の費用

 

インプラント治療は、格安なものでも10万円以上はかかりますので、施術を受けると決まった時点で、医療費控除の申請を視野に入れた方が良いといえます。

 

▼ローンや分割払いの場合はどうなるの?

インプラント治療では、治療費が高額となることから、デンタルローンや分割払いを行っているケースも珍しくありません。そこで気になるのがこれらと医療費控除の関係性です。

・デンタルローンでの支払い
デンタルローンでは、治療費全額をその年の医療費として申請することができます。医療費控除の申請の際には、デンタルローンの契約書のコピーなどが必要となってきます。

・分割払い

分割払いで治療費を支払っている場合は、その年に支払った分のみ、医療費として申請することができます。例えば、治療費の総額が30万円で、年内に分割払いした金額が15万円の場合は、15万円のみ医療費控除に申請することができます。残りの15万円は翌年に申請することとなります。

1-3 医療費控除の基礎知識

ここで改めて、医療費控除の基礎知識をかんたんにまとめておきます。

▼対象となる期間
1月1日~12月31日

 

▼対象となる金額
1年間に支払った医療費の総額が10万円を超えた場合(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%)

 

▼対象となる人
医療費控除の対象となるのは、自分自身だけではありません。一緒に生活していて生計をともにしている家族の医療費も合わせることができます。ですから、自分のインプラント治療に30万円かかったとして、その他の家族も年間10万円の医療費を支払っていたら、合計40万円で医療費控除を申請することができるのです。

▼申請期間
医療費控除を申請は「確定申告」の時期に行います。この期間は国が毎年指定するものなので、国税庁のホームページをチェックしましょう。2月の中旬から3月の中旬の1ヶ月間であることがほとんどです。また、過去5年までさかのぼって申請することも可能です。つまり、5年前に受けたインプラント治療でも、きちんと書類がそろっていれば医療費控除を申請することができるのです。

2.どうやって申請するの?

医療費控除は、国が定めた公的な制度であるため、あらかじめきちんとした書類を用意する必要があります。そこでまず「医療費控除の明細書」と「確定申告書」を国税庁のホームページからダウンロードしましょう。プリントアウトする環境がない方は、郵送で送ってもらうこともできます。

 

①医療費控除の明細書(平成29年度が必要になった)
②確定申告書

 

▼医療費控除の明細書とは?
医療費控除の明細書とは、平成29年度から必要になった書類です。簡単にいうと、治療費の細かい内訳を記載するための書類です。保存していた領収書をもとに記載していきます。

 

▼確定申告書とは?
自営業の人であれば、馴染みの深い書類かと思いますが、会社員の人となると話は変わりますよね。なぜなら、会社員の人は会社が年末調整を行ってくれるため、自分自身で所得を申告する必要がないからです。けれども、医療費控除に関しては年末調整には含まれておらず、自分自身で申告しなければならないのです。

2-2 保管しておくべき書類

インプラント治療で医療費控除を受ける場合は、以下の書類を保管しておきましょう。

 

インプラント治療の領収書
・インプラント治療を受けるために利用した交通機関の領収書

 

*交通機関の領収書は、金額だけではなく、どの駅からどの駅まで乗車したかも記録しておきましょう。

2-3 申請の仕方について

医療費控除の申請方法は、主に以下の3つに分けられます。

①税務署に書類を持参する
②税務署に書類を郵送する
③国税電子申告・納税システムを利用する

 

医療費控除は、税務署に書類を「持参」もしくは「郵送」によって申請することができます。記載の仕方などがわからない場合は、税務署に持参することで、職員の方からアドバイスをいただけます。とくに不安な点がなければ郵送でも構わないでしょう。

3番目の国税電子申告・納税システム「e-Tax(イータックス)」は、少し特殊な申請方法ですので、まずは国税庁のホームページに設置されている「確定申告特集ページ」のご参照ください。事前の登録が必要な申請方法ですが、必要な手続きを済ませてしまえばすべてネットで完結させることができます。

3.どのくらい還付されるの?

医療費控除を申請するにあたって、最も気になるのは還付金ですよね。具体的にどのくらいの金額が戻ってくるか、簡単にシミュレーションしてみましょう。

3-1 控除額の計算

還付金を調べるためには、まず控除額を計算しなければなりません。控除額は、単純に1年間の医療費ではありません。以下のような式で導き出せます。

 

◎1年間で支払った医療費-保険金-10万円 = 控除額
ちなみにこの計算方法は、総所得が200万円以上の場合です。総所得が200万円未満の場合は、以下のような式になります。

 

◎1年間で支払った医療費-保険金-総所得額の5% = 控除額

 

【シミュレーション】
インプラント1本30万円、医療保険から5万円おりて、総所得が500万円の場合

⇒ 30万円 - 5万円 - 10万円 = 15万円(控除額)

3-2 還付金の計算

還付金は、以下の計算式で導き出せます。
◎控除額 × 所得税率 = 還付金

 

ちなみに、所得税率は所得額に応じて、細かく設定されています。以下の表をご参照ください。

 

所得額/税率
195万円以下/5%
195万円を超え、330万円以下/10%
330万円を超え、695万円以下/20%
695万円を超え、900万円以下/23%
900万円を超え、1800万円以下/33%
1800万円を超え、4000万円以下/40%
4000万円超/45%

 

【シミュレーション】
控除額が15万円で、総所得が500万円の場合
⇒ 15万円 × 20% = 3万円(還付金)

 

これが実際に返ってくるお金です。30万円のインプラントを1本埋入した場合、3万円が還付されることとなります。当然のことながら、埋入したインプラントの本数が多いほど、あるいは医療保険で補填される金額が少ないほど、還付される金額は大きくなっていきます。

4.まとめ

このように、高額な費用がかかるインプラント治療では、ほぼすべての症例で医療費控除を受けることができます。上記のシミュレーションのように、それなりにまとまった額が還付されますので、インプラント治療をこれから受ける、あるいは過去に受けた方は、積極的に活用することをおすすめします。

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