事故で歯を失ってしまったら?日常生活を不自由なく送るための治療方法を解説

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

歯を失うと、見た目(審美性)だけでなく、ものを噛む快適性までをも損なってしまいます。

 

失ってしまった歯の本数にもよりますが、できるだけ早めに何らかの方法で歯を補う必要があります。

 

では、具体的にどのようにして失った歯を補えばよいのでしょうか?

 

費用、治療期間、メンテナンス、メリット・デメリットなど……他にも気になる点がたくさんあると思います。

 

そこでこの記事では、日常生活を不自由なく送るための治療方法をみなさんに紹介していきたいと思います。

目次

(1)失った歯を補うための治療方法一覧

歯の病気や事故で失ってしまったら、どうすればいいのでしょうか?

 

まずは以下に、歯を失った際にとりうる治療方法を一覧にまとめました。費用や治療期間の目安も併記しておくので、ぜひご参考ください。

 

 

治療方法 特徴 費用の目安 治療期間の目安
入れ歯 ・部分欠損から全欠損まで幅広く対応できる

・保険適用できる

・材質選択の自由がある

1万円前後~数重万円

(材質による)

1~3カ月程度
差し歯 ・保険適用できる

・素材選択の自由がある

・部分欠損の人に最適

数千円~数十万円

(材質による)

1~2カ月程度

(通院回数による)

ブリッジ ・入れ歯や差し歯より自然な噛み心地を実現できる

・キレイな見た目にできる

・保険適用できる

1万円~15万円

(材質選択による)

2週間~1ヵ月
インプラント ・ブリッジよりもさらに噛み心地がよくなる

・審美性に優れている

・長期的に安定する

20万円~40万円 半年~1年

(2)歯を補う治療方法を各種解説

以下では、上記の表で紹介した各治療方法を、より具体的に解説していきます。

 

みなさんの予算やライフスタイルに合わせて、最適な治療を検討してみてくださいね。

(2-1)あらゆる欠損状態に対応可能な「入れ歯」

部分的な歯の欠損や、歯を大部分失ってしまった場合にも幅広く対応できるのが入れ歯の特徴です。

 

数ある治療方法のなかでも、非常にお手頃価格で作成することができます。

保険適用可能であることもうれしいポイントですね。

 

より自然なフィット感や噛み心地にこだわりたいなら、自費治療の範囲で材質を選択することもできます。

 

作成期間もかなり短く、すぐに装着できるため、他の治療方法を検討している間の緊急用として持っておくとよいかもしれません。

 

  • 入れ歯を選択するメリット

①あらゆる歯の欠損状態に対応できる

不慮の事故で多くの歯を失ってしまった場合も、すべて入れ歯でカバーすることができます。

 

②年齢や持病を問わない

後述しますが、外科手術を伴うインプラントでは、糖尿病などの持病があると対応できないケースが存在します。年齢や体力的に難しいということもありえるでしょう。

 

しかし入れ歯は、外科手術が一切不要であるため、そのような心配がありません。

 

③メンテナンスが簡単で扱いやすい

ブリッジやインプラントは、日々の口内ケアを怠ると、虫歯や歯周病を引き起こしてしまうリスクがあります。

 

しかし入れ歯は、取り外しが非常に簡単であるため、清潔を常に保ち続けることができます。

 

  • 入れ歯を選択した場合のデメリット

①自然な噛み心地を実現できない

入れ歯の最大の欠点は、「噛み心地」です。

とくに総入れ歯の方は、ものを噛む際の違和感と向き合わなければならないでしょう。

 

もちろん、自費診療で入れ歯の材質をこだわることで、保険適用内の入れ歯よりもフィット感や噛み心地を向上させることもできます。

 

②入れ歯の固定が不安定になることも

個人差がありますが、入れ歯をうまく固定できないことがしばしばあるといわれています。

 

入れ歯のおさまりが悪ければ、ものを噛むことはもちろん、喋ることにも苦労してしまう可能性があります。

 

 

入れ歯治療をおすすめできる人の特徴
・歯を大部分失ってしまった

・他の治療方法を検討するつもりだが、とりあえず見た目をどうにかしたい

・費用を極力安く抑えたい

 

 

(2-2)審美性の高い「差し歯」

歯を失ってしまっても、まだ歯の土台(根っこ)が残っているなら、差し歯がおすすめです。

 

差し歯とは、いうなれば“被せ物”です。

残っている歯の土台に義歯を被せて、キレイな見た目にすることができます。

 

  • 差し歯を選択するメリット

①自分の歯(根っこ)を残すことができる

歯が欠けてしまっても、自分の歯であることには変わりありません。

大切な歯を残しつつ、損なわれた部分を補うには、差し歯が最適です。

 

②材質選択肢が広い

一口に差し歯とはいっても、使用する材質によって値段はさまざまです。

保険適用の範囲で済ませることもできますし、耐久性や審美性を追求したい場合は、自費診療でよりグレードの高い差し歯を作成することが可能です。

 

  • 差し歯を選択した際のデメリット

①差し歯が外れてしまうこともある

差し歯の耐久性には限度はありますし、何かのはずみでポロリと外れてしまうこともあります。

 

「使い続ければいずれそうなる」ということを、あらかじめ理解しておきましょう。耐久性の目安は7~10年だといわれています。

 

②保険適用だと差し歯の質が低くなりがち

保険適用で差し歯をつくることができるのはメリットのひとつですが、一方では材質のクオリティや耐久性は、自費診療タイプの差し歯に劣ります。

 

人目に触れやすい前歯を差し歯にする方は、無理のない予算の範囲で材質にこだわったほうがいいかもしれません。

 

③自然な噛み心地は期待できない

入れ歯と同様、差し歯もまた、インプラントやブリッジに比べると自然な噛み心地を実現することは難しいといわれています。

 

 

差し歯治療をおすすめできる人の特徴
・一部の歯を欠損している

・スピーディーに治療を終わらせたい

・費用を安く抑えたい

 

 

(2-3)より自然な噛み心地やフィット感を実現できる「ブリッジ」

ブリッジとは、欠損した歯の“両隣の歯”に義歯を被せ、欠損部分をカバーする方法です。

 

最大のメリットは、入れ歯や差し歯に比べて非常に自然な噛み心地やフィット感を実現できること。

 

義歯の支えとなる健康な歯を削ることになりますが、そのデメリットを補って余りあるメリットがあるといえるでしょう。

 

  • ブリッジを選択するメリット

①自然な噛み心地の再現

歯を失ってしまった人の中には、「ものを噛む」という点において、何かと苦労する方が多いといわれています。

 

入れ歯や差し歯でいくら見た目をキレイにすることができても、噛み心地だけはどうすることもできないのです。

 

「また食事を楽しめるようになりたい」という方は、ブリッジ治療を検討する価値があると思います。

 

②治療にかかる期間も短くてスピーディー

「仕事があるし、通院する時間をとるのが難しい」「何度もクリニックに通うのが面倒」という方も、けっして少なくないはず。

 

ブリッジ治療は、一般の歯科医院でも行うことができますし、そう何度も通う必要はありません。忙しくてなかなか通院時間がとれない方にも非常におすすめです。

 

③保険適用も可能

ブリッジ治療は保険適用が可能です。

 

材質にこだわれば自費診療でさらにグレードの高いブリッジを装着することができますので、「ひとまず自然な噛み心地を取り戻したい」という方は、予算を都合するまでの間に、一旦保険適用の範囲でブリッジを作成するとよいかもしれません。

 

  • ブリッジを選択した際のデメリット

①健康な歯を削る必要がある

先述したように、ブリッジを装着するためには、支えとなる歯を最低でも2本削らなくてはなりません。

 

健康な歯を削るということに抵抗を感じる方もいることでしょう。

そんな方には、後述するブリッジ治療を検討してみてください。

 

②メンテナンスを怠ると歯周病や虫歯のリスクも

ブリッジを装着すると、その隙間に虫歯が入り込んでしまう恐れがあります。

 

虫歯になったり歯周病になったりしてしまうと、ブリッジの支えとなっている歯が揺らいでしまい、ブリッジそのものを外さなければならなくなるリスクがありますので、注意が必要です。

 

③保険適用のブリッジは耐久性が劣る

保険適用の範囲で装着するブリッジは、「レジン」と呼ばれる材質が主に使われています。こちらの材質は、長期間使い続けていると、割れてしまったり、変色したりすることがあります。

 

レジン製ブリッジの耐用年数は、だいたい5~8年が目安といわれています。

その間に予算の都合をつけ、ブリッジ交換のタイミングで自費診療にスイッチするとよいかもしれません。

 

 

ブリッジ治療をおすすめできる人の特徴
・自然な噛み心地を実現したい

・スピーディーに治療を終えたい

・何度も通院する時間がない(忙しい)

 

(2-4)ものを噛む喜びを実現したいなら「インプラント」

歯を失った部分に人工の歯根(しこん)を埋め込み、義歯を装着するのがインプラントです。

 

固定性は抜群で、噛み心地はまるで自分の歯のようだといわれています。

 

加えて、インプラントは歯根を埋め込む際に繊細な位置調整を行うため、歯を失う以前よりもキレイな歯並びを実現することも可能です。

 

費用はけっして安くありませんが、「どうせなら、噛み心地や審美性を徹底的に追求したい!」という方におすすめです。

 

  • インプラントを選択するメリット

①自分の歯のような自然な噛み心地

人工の歯根を直接埋め込むわけですから、その噛み心地は非常に自然で、違和感がほとんどありません。

 

ものを噛む喜びを味わいたい(取り戻したい)なら、インプラントが最上の選択肢だといえるでしょう。

 

②美しい歯並びを実現できる

インプラントなら、芸能人のような美しい歯並びにすることも可能です。

それだけでも、高い費用をかけてインプラントを選ぶ価値はあると思います。

 

きっと、毎日鏡を見るのが楽しくなりますよ。

 

③健康な歯を削る必要がない

先程紹介したブリッジ治療では、失った歯をカバーするのに、健康な2本の歯を削らなければなりません。

 

しかしインプラントなら、失った部分にのみ施術を行うため、他の健康な歯を守ることができます。

 

  • インプラントを選択する際のデメリット

 

  • 費用が高い

インプラントにおける最大のネックは費用です。

とはいえ、ほとんどのクリニックでは費用の分割払いに対応することができますし、医療費控除で年間の費用を軽減することも可能です。

 

  • 外科手術が必要

糖尿病や骨粗鬆症などの持病がある方は注意が必要です。

インプラントは外科手術ですから、手術に伴うリスクを考慮すると、インプラントができないという場合もあります。

 

 

インプラント治療をおすすめできる人の特徴
・審美性や噛み心地を追求したい

・義歯が長期的に安定する方法を望んでいる

 

(3)まとめ

失った歯をカバーする方法はいくつもあります。

費用やメンテナンス性、フィット感や噛み心地など、それぞれに違いが存在しますので、今回の記事を参考にしながら、自分に合った最適な方法を選んでみてくださいね。

この記事が気に入ったら「評価」ボタンを押してください!

★★★★★

評価する