- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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歯はスポーツをするときに大事な役割を持っています。
人は力を入れたいときや、瞬発的な能力を発揮するときに歯を、無意識のうちに食いしばっています。逆に、歯を強く噛みしめられないと、力が入らないとも言われているくらいです。
スポーツ中は、知らず知らずのうちに大事な場面で、歯を使っています。
そんな、力を入れるのに大切な歯が折れてしまったら、どんな治療法があるのでしょうか?
また、今後もスポーツを続けて行く上で注意することはあるのか?気になりますよね。
そこで本記事では、歯が折れてしまった時の治療法や、歯が残せなかった場合などに合わせた治療方法を詳しく解説していきます。
スポーツをしていて、「歯が折れて治療法に悩んでいる」「今後も歯を守りながらスポーツを続けたい」と思っている方は是非参考にして下さい。
目次
- 1:「歯根破折」はどんな状態
- 1-1歯根破折の症状
- 2:歯が折れたときの「2つの治療法」
- 2-1:口腔内接着法
- 2-2:口腔外接着再植法
- 3:歯が残せないときの「3つの治療法」
- 3-1:インプラント
- 3-2:入れ歯
- 3-3:ブリッジ
- 4:スポーツを続ける方へのおすすめの治療法
1:「歯根破折」はどんな状態
歯根破折は、歯ぐきの中の「根」の部分が割れている状態のことです。
身体でいうと、骨折しているのと同じ状態になります。
歯根破折は自分では気づきにくく、気がついたら割れていたなんてこともありえる話しです。
1-1:歯根破折の症状
歯根破折は「あ!今、歯の根が折れたな」と気づくことはほとんどありません。
歯の根が割れると次のような症状がでます。
このような症状が口の中に現れたら、すぐに歯科医院で見てもらいましょう。
① 歯ぐきが腫れる、袋ができる
歯ぐきが赤く腫れ膿がでるときもあります。
また、ニキビのような袋ができることもあります。
② 被せ物が取れる
何度も取れる被せ物は、根が割れているために被せ物が接着しにくくなっている可能性があります。
③ 違和感がある
噛むときに痛みや違和感があるのは、歯の根が割れている確率が高いです。
④ 根の治療が改善しない
根の治療を繰り返し行っていても、膿が出続けて改善が期待できない。
⑤ 激痛がある
まれに、神経が残っている歯でも負荷がかかると、歯が割れてしまうことがあります。
神経が生きている歯なので、激痛がはしります。
2:歯が折れたときの「2つの治療法」
歯根破折になったときには2つの治療法があります。
この2つの治療法の違いは、歯の根が割れている「範囲」によって決まります。
では、どちらの治療になるのかを詳しく見ていきましょう。
2-1:口腔内接着法
口腔内接着法は抜歯をせずに、口の中で専用の材料を使って割れている歯を接着する治療方法です。口の中で行う処置なので、歯根破折した範囲が小さい場合に適応することができます。抜歯をしないので、身体にかかる負担も抑えられます。
2-2:口腔外接着再植法
口腔外接着再植法は割れた歯を一度、抜歯して外で接着させてから、元の場所に戻す治療方法です。この治療は、比較的に歯根破折した範囲が大きい場合に適応するため、抜歯をする前の最後の手段といえます。
詳しい治療の流れは次の通りです。
・麻酔後に、破折した歯を抜歯します。
・抜歯した歯を洗浄、消毒して専用のセメントで接着します。
・抜いた歯の所の汚染部分を除去し、接着した歯を元の位置に戻します。
・動かないようにしっかりと縫合し固定していきます。
・戻した歯がしっかりと固定するまで約1ヶ月待ってから被せ物を作っていきます。
3:歯が残せないときの「3つの治療法」
歯が折れた範囲が大きすぎて、歯が使えない、又は歯を残すのが難しいとなったときは、そのままにしておくのが一番危険です。
歯をそのまま放置していると、細菌が隙間から入り込んでしまい、歯を支えている骨を溶かしてしまう可能性があるからです。
そのため、早めの治療が重要になってきます。
次では、3つの治療法についてそれぞれ詳しく解説していきます。
3-1:インプラント
インプラントとは人工歯根のことで、ほとんどの物がチタンという金属で出来ています。
画期的な治療法と言われているインプラント治療の特徴は次の通りです。
・他の歯を削ったり、負担をかけたりしない。
・見た目が美しい。
・今までと同じように生活ができる。
・自分の歯のようにしっかり噛める。
一度、削った歯は元には戻りません。
また、歯は削ることで弱くなり寿命も短くなっていくので、なるべく歯に負担はかけたくありません。その点インプラント治療は、歯を失ったところに人工歯根を埋め込む治療法のため、他の歯を傷つけることもありません。
さらに、見た目の美しさも特徴的です。
インプラント治療は自費治療になります。保険が効かない治療になるので、治療は少し高額になってしまいますが、高額な分、被せ物を作るときの微調整が可能になります。見た目で何が大事かというと、形と色です。保険が効く治療では、一般的な色に統一されています。しかし、自費治療ではその制限がないので、微妙な歯の色までを再現することができます。そのため、インプラントとわからないほどの自然な仕上がりになるのです。
歯を1本でも失うと、口の機能のバランスが崩れていきます。今まで噛めていた物が、工夫しないと噛めないという状態はよく耳にします。例えば、入れ歯は歯ぐきに入れ歯が当たって痛みや傷ができてしまい、不快に感じることも。痛みがでるたびに歯科医院に調整しに行く手間もかかってきます。その点、インプラントは外科手術が必要なものの、被せ物まで入ってしまえば、自分の歯と同じように噛めるので、今までと同じ生活を送ることが可能です。
3-2:入れ歯
入れ歯は、プラスチックの材料で歯と歯ぐきを再現して、歯が無いところにはめ込む治療法です。入れ歯の特徴は次の通りです。
・短期間でできる。
・取り外しができる。
・費用がかからない。
失った歯の本数にもよりますが、保険の入れ歯は短期間で作ることができます。
基本的な入れ歯だと、型取りをして入れ歯が完成するまでは約1週間が目安です。
3-3:ブリッジ
ブリッジとは、歯を失ったところの両隣の歯を削って、橋のような被せ物を作ることです。この治療方法は、失った歯の両隣に歯があることが必須です。例えば、一番奥の歯が抜歯になってもブリッジをするには、さらに奥の歯が必要になるので、この場合はブリッジができません。ブリッジの特徴は次の通りです。
・被せ物が短期間でできる。
・身体への負担が少ない。
・噛む機能が回復する。
ブリッジの治療は、失った歯の両隣の歯を大きく削って被せ物が入るように調整します。調整後に型取りをして、数日後には被せ物が完成して口の中に入れることができます。このように、短期間で被せ物ができあがるのがブリッジの利点でもあるのですが、健康な歯を削る必要があるという欠点もあります。
4:スポーツを続ける方へのおすすめの治療法
結論から言いますと、歯を失った方にはインプラント治療がおすすめです。
冒頭でもお伝えしたように、スポーツをする上で噛む力は非常に大事です。食いしばれるかどうかで勝敗が決まると言っても過言ではありません。
ここまで、3つの治療法を紹介してきましたが、これからも積極的にスポーツを続ける場合には、耐久性や長期的な安定を考えるとインプラントが適切です。スポーツを楽しむために、適切な治療を受けながら、歯を守っていきましょう。