- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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完璧な治療はなく、どんな治療法にも限界があります。
しかし、治療するからには長く使い続けたいし、どの治療法を選べば良いか悩んでしまいます。
そこで今回は、歯を失った時の治療法である、ブリッジや入れ歯、インプラントの限界について解説していきます。
歯を失って、どの治療法が良いのか迷っている方は是非、この記事を参考にして下さい。
目次
- 1 一生持つ歯科治療はある?
- 2 入れ歯の「6つの限界」
- 2-1:違和感が続く
- 2-2:噛む力が弱い
- 2-3:他の組織に負担がかかる
- 2-4:頻繁な清掃が必要
- 2-5:治療を繰り返す必要がある
- 2-6:精神的ダメージが大きい
- 3 ブリッジの「3つの限界」
- 3-1:歯を弱らせる
- 3-2:虫歯や歯周病になるリスク
- 3-3:再治療が大変
- 4 インプラントの「2つの限界」
- 4-1:重度の歯周病には適さない
- 4-2:自己管理が必要
- 5 インプラントは限界が少ない治療法のひとつ
1 一生持つ歯科治療はある?
歯を失った時には、次の3つの治療法があります。
・入れ歯
・ブリッジ
・インプラント
それぞれの治療法は、一生持つことが可能なのかを見ていきましょう。
まず入れ歯は、歯と歯茎に似せた形を作って、歯を失った部分に被せる治療法で寿命は、約3年~5年が平均です。
次にブリッジは、失った歯の両隣の歯を削った上に、繋がった被せ物を取り付ける治療法です。
ブリッジの寿命は、平均で7年~8年と言われています。
しかし、自費治療でブリッジを作ったり、土台となる歯の神経が残っていたりする場合には、10年以上、問題なく使えている確率が80%になるという調査報告があります。※1
※1参考文献:補綴治療におけるスカンジナビアン アプローチ
つまり、ブリッジの場合には、10年間で20%の割合でダメになるということでもあるのです。
3つめのインプラントは、失った歯の骨の中に人工歯根(インプラント)を埋めて、その上から被せ物を取り付ける治療法です。
インプラントの寿命は、10年~15年が平均で、インプラントを入れてから10年以上問題なく使い続けている確率が90%~95%にもなります。
つまり、インプラントの場合には、10年間で5%~10%の方がダメになる可能性があるとことになります。
このように、どの治療法にも寿命があるので、一生持つとは断言できません。
ただ、治療法によっては、寿命までの年数に差があり、この寿命の差が、それぞれの治療法に限界とも言えます。
次からそれぞれの治療の限界について解説していきます。
2 入れ歯の「6つの限界」
入れ歯には、次の6つの限界があります。
2-1:違和感が続く
口の中は、髪の毛1本でもわかるくらい、
異物に対する反応センサーが敏感になっています。
入れ歯は、歯を失った部分の範囲が大きいと入れ歯で覆われる範囲も大きくなるので、口のセンサーが敏感に反応して、違和感を強く感じやすいです。
入れ歯が大きくなるほど異物感も強く、慣れるまでに時間がかかります。
2-2:噛む力が弱い
部分入れ歯の場合は、他の歯にバネをひっかけて固定します。
しかし、バネを歯に固定していても、噛んだ時に入れ歯が歯茎に沈み込むため、しっかりと噛むことができません。
特に保険の入れ歯は、プラスチックで作られていて、噛む力に耐えることが難しいです。
そのため、固い物を食べると入れ歯が割れたり、バネをひっかけている歯に痛みが出たりする可能性があります。
そういったトラブルを防ぐために、入れ歯では食べ物に制限がかかります。
2-3:他の組織に負担がかかる
例えば、右下の奥歯を2本失って保険の部分入れ歯を使用するとします。
その場合には、失った歯の手前の歯に金属のバネを引っかけて固定するので、歯に負担がかかって、グラグラと揺れてしまうことがあります。
最悪のケースでは、歯に負担がかかりすぎて抜けてしまう可能性が高いです。
また、食事の時には、歯茎が入れ歯で押されてしまいます。
入れ歯で過度な力が顎の骨にかかると、骨の量が減ると同時に歯茎の位置も下がっていきます。
そのため、入れ歯を入れている部分の歯茎は、凹んだような形になっていることが多く、見た目が悪くなりがちです。
このように入れ歯は、バネをかけている歯だけでなく、歯茎や骨にもダメージを与えます。
2-4:頻繁な清掃が必要
入れ歯を使って食事をすると、食べ物が入れ歯の中に詰まることも少なくありません。
特に保険の入れ歯は、硬い素材でできていて、歯茎にピッタリと沿うような形で作製するのが難しく、隙間ができやすいです。
そのため、食事のたびに入れ歯を外して清掃する必要があります。
入れ歯を清掃できずに、そのままにしておくとカスからニオイがするようになり、口臭の原因になる場合もあります。
2-5:治療を繰り返す必要がある
入れ歯の寿命は、約3年が一般的になります。
3年経つと、見た目がボロボロになっていたり、バネと入れ歯のつなぎ部分が脆くなっていたりするので、新しく作り直すことがほとんどです。
また、新しく入れ歯を作るまでも、入れ歯と歯茎との間に隙間ができて、何回か修理をすることも多いです。
入れ歯は、使えば使うほど、歯や歯茎などにダメージがかかるので、どこかが弱っていくたびに新しい形の入れ歯に作り変える必要があります。
そうなると、弱い部分をカバーするために、別の歯にバネをかけることになり、歯の負担がどんどん増えていき、悪循環を繰り返すことになります。
さらには、バネをかけていた歯がダメになるたびに入れ歯が大きくなるため、口の中の異物間が強くなる可能性が高いです。
2-6:精神的ダメージが大きい
入れ歯は、付ける場所によって金属のバネが目立つので、見た目が悪くなります。
奥歯に入れ歯を使用している場合でも、大きく笑うと見えてしまうことがあり、他人から入れ歯が見えてしまうのを恐れて、あまり笑わなくなる方もいるほどです。
また、入れ歯を使い続けて顎の骨がなくなると、顔貌も変わってきます。
骨の厚みや歯茎を失うと、皮膚がたるんだり、皺ができやすくなったりと老け込んだ印象に見えてしまいがちです。
そういった見た目の変化は、人に見られたくないから外出を控えるようになるほど、精神的ダメージを受けてしまいます。
3 ブリッジの「3つの限界」
ブリッジには、3つの限界があります。
3-1:歯を弱らせる
ブリッジには、大きくわけて2つのタイプがあります。
歯の神経があるブリッジと歯の神経がないブリッジの2つです。
歯の神経が有る無しは、非常に重要で歯の寿命にも関係していきます。
神経には、歯に栄養を運ぶ役割があります。
神経がなくなると歯に栄養が届かなくなるので、歯が脆くなりやすく寿命が短くなってしまいます。
例えば、歯を失った両隣の歯が神経のある健康な歯の場合には、大きく歯を削るので、歯の硬い部分であるエナメル質がほとんどなくなってしまい、歯が弱くなります。
ただ、ブリッジの土台となる歯に神経があることで、歯が割れたり折れたりする確率は低くなります。
また、健康な歯でも、削った時に痛みやしみるといった症状が強い場合には、神経を取る処置を行うケースも少なくないので、注意が必要です。
3-2:虫歯や歯周病になるリスク
ブリッジは、しっかりと清掃ができていないと虫歯や歯周病のリスクが高くなります。
健康な歯をブリッジの支えとしている場合には、歯を大きく削っていて、象牙質という部分が露出している状態です。
象牙質は、外側のエナメル質より柔らかくて虫歯になりやすいです。
ブリッジを歯に装着した後にしっかりとケアができていないと、被せ物と歯茎の隙間から細菌が侵入して虫歯になることもあります。
また、保険のブリッジで使用する金属は、使うほど隙間ができたり錆びたりして虫歯や歯周病を引き起こす可能性が高いです。
3-3:再治療が大変
ブリッジは、繋がった被せ物を歯に装着するため、どちらか一方の歯だけが虫歯になった場合には、被せ物を外さないと治療ができません。
虫歯や歯周病になった時には、一度ブリッジを壊してから治療を開始するので、再度ブリッジを作り直す必要があります。
4 インプラントの「2つの限界」
インプラントには次の2つの限界があります。
4-1:重度の歯周病に適さない
インプラントは虫歯にはなりませんが、インプラント周囲炎という病気になります。
インプラント周囲炎は、歯周病と同じでインプラントを支えている顎の骨が溶けてなくなっていく病気のことです。
この病気が重症化すると、インプラントが安定できなくなり抜けてしまう恐れがあります。
そのため、重度の歯周病の症状があるケースでは、インプラント治療は適しません。
ただ、歯周病治療を行い、口の状態をコントロールできるのであれば、インプラントが可能になります。
4-2:自己管理が必要
インプラントは、独立した状態で使用できるので、他の歯を削ったり過度な負担がかかったりせずに、噛む機能を回復させることが可能です。
ただ、インプラントは自己管理ができる状態が大切になります。
インプラントは、自身の歯に比べて細菌からの攻撃に弱く、インプラント歯周炎になると、症状の進行が速くなります。
インプラント周囲炎を防ぐには、毎日の歯磨きや歯科医院での定期的なクリーニングが必須です。
そのため、自身で歯磨きするのが難しい方や通院するのが困難な方には、インプラントの状態を良好に保つのが厳しいため、インプラント治療がお勧めされないこともあります。
5 インプラントは限界が少ない治療法のひとつ
一生使い続けることができる100%の治療法はありません。
どの治療法もダメになる可能性はあります。
特にブリッジや入れ歯は、他の歯や歯茎を支えにする必要があり、口のバランスを保つのが難しいでしょう。
インプラントは、他の歯や歯茎に負担をかけることも少なく、限界も感じにくい治療法ですが、100%の治療ではありません。
とはいえ、毎日の歯磨きケアや定期的な通院をしてしっかりと管理すれば、長期的に使い続けることは可能です。
失った歯の部分をどうするかも大事ですが、他の歯や組織についてもしっかり担当医と話しあって、自分に合った治療法を選ぶようにしましょう。