- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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入れ歯を使っていて気になるのが、寝る際の入れ歯の取り扱いです。洗浄するところまでは全員共通していますが、その先、入れ歯を口に戻して寝るべきか、それとも朝まで外しておくのがいいのか。
実は歯科医から受けるアドバイス自体が異なっていることがあるのです。この記事では「入れ歯はできるだけ装着して寝る」ことをおすすめし、理由付きでご紹介します。1つの見解として、ご確認ください。
目次
- 1 部分入れ歯の場合
- 1-1 適切に清掃・洗浄してから付けて寝る
- 1-2 日中も外れやすい・炎症がある場合などは入れ歯修理を
- 2 総入れ歯の場合
- 2-1 適切に清掃・洗浄後、少なくとも上だけは付ける
- 2-2 できれば上下ともつけておいたほうがいい
- 3 入れ歯を外して寝るとどうなるのか
- 3-1 【部分入れ歯】夜中に歯列が動く
- 3-2 【総入れ歯】口呼吸になりやすい
- 3-3 【総入れ歯】緊急時に対応できない
- 4 入れ歯は寝ている間も「歯の代わり」
1 部分入れ歯の場合
部分入れ歯の場合は、基本的に「付けたまま寝る」ことをおすすめします。
1-1 適切に清掃・洗浄してから付けて寝る
入れ歯は、歯磨きなどのタイミングで適切に清掃・洗浄する必要があります。
部分入れ歯ユーザーの中には、寝る前に外して洗浄液に浸けておき、翌朝すすいで再度はめるという人もいるかもしれません。
確かに、入れ歯の洗浄はある程度の時間をかけて行うことをおすすめしますが、一般的な入れ歯洗浄剤を利用すれば、5~10分程度も浸け置きすれば、充分な洗浄効果が得られるのです。
そのため、ブラッシング後に約10分入れ歯洗浄液に浸け込み、よくすすげば洗浄完了です。
もちろん、この後装着して寝れば、夜中も入れ歯が入った状態を保てます。
1-2 日中も外れやすい・炎症がある場合などは入れ歯修理を
「間違って寝ている間に外れてしまったらどうしよう」と心配に思われる方もいるかもしれません。
しかし、日中に外れない部分入れ歯であれば、寝ている間にも外れることはほとんどないのです。
もし日中から外れやすくなっている場合は、部分入れ歯がうまく適合していない可能性が考えられます。
かかりつけの歯科医に相談に行き、入れ歯の調整や作り直しを検討しましょう。
また、「歯茎を休めるために外す時間を取ったほうがいいのでは?」と考える方もいると思います。
これも、体に合った入れ歯であれば、歯茎へのダメージはそこまで大きいものではありません。
それよりも、入れ歯を外して寝たときに生じるデメリットのほうが大きくなってしまう可能性が高いと考えられるので、なるべく装着したまま寝ることをおすすめします。
2 総入れ歯の場合
総入れ歯の場合も、基本的には付けたまま寝るといいでしょう。
2-1 適切に清掃・洗浄後、少なくとも上だけは付ける
総入れ歯も、部分入れ歯同様に5~10分程度入れ歯洗浄液に浸け置きすれば、十分な洗浄効果が期待できます。
ブラッシング、洗浄液浸け込み、すすぎを行って、再度お口にはめて寝ることがおすすめです。
特に、上の歯列が総入れ歯になっている場合は、上だけでもはめて寝ましょう。
上の入れ歯をはめずに寝るデメリットは、後述します。
2-2 できれば上下ともつけておいたほうがいい
上下とも総入れ歯をしても違和感が少ない場合は、できれば両方入れておくことをおすすめします。
上下とも総入れ歯の場合、あくまでも上下セットを基本として考えられており、上だけを入れて生活する(この場合は、寝る)ことはあまり想定されていないのです。
ですから、器具の自然な状態として、上下が1対になっているほうが、お口の中で入れ歯が安定しやすいと言えます。
3 入れ歯を外して寝るとどうなるのか
入れ歯を外して寝ると、以下のようなデメリットが生じるリスクがあります。
3-1 【部分入れ歯】夜中に歯列が動く
寝ている間に、人は無意識に奥歯を噛み締めたり、歯ぎしりをしたりしています。
これらは歯に大きな力をかける行為です。
部分入れ歯を付けたまま寝ていると、入れ歯の部分にも相応の力が入るため、普段の歯列が保たれます。
一方、部分入れ歯を外して寝ると、日中入れ歯になっている部分、つまり歯のない部分に向かって、歯が傾いたり、スライドしたりします。
これは、歯のない部分だけ空間が広くなっているため、そこだけが圧力が低い状態になってしまうことで生まれる現象です。
歯が動くことで、翌朝部分入れ歯がうまく入りにくくなったり、特定の歯が浮いたような感覚になったり、といったトラブルに見舞われる可能性が高まります。
3-2 【総入れ歯】口呼吸になりやすい
総入れ歯の場合、外して寝ると前歯がない状態になってしまいます。
仰向けに寝ていると、前歯の支えがないため唇が口の内側に落ちてきやすくなります。
また、寝ているときには舌が前歯の裏側に押しあたっている状態が正常なのですが、前歯がないことで舌の位置がずれ、喉側に落ちて行ってしまうこともあります。
これらの状態は口呼吸を促します。
睡眠時の口呼吸は、いびきなどの原因になるほか、口内の乾燥による口臭の発生や感染症リスクの増大につながるのです。
健康面からも、唇を支え、舌の位置を安定させる上の歯は、あったほうがいいと考えられます。
3-3 【総入れ歯】緊急時に対応できない
寝ている間に地震に襲われた場合など、緊急避難しなくてはならない状態になることも想定しておく必要があるでしょう。
しかし、いざというときに入れ歯を忘れてしまう可能性は大いにあります。
特に、洗浄液に浸け込んだままにしている場合、丁寧にすすいでいるような時間はありません。
入れ歯がないと、避難先で適切な食事を摂ることも難しくなってしまいます。
これらのことから、睡眠時にも入れ歯をしたままにしておくほうがいいと言えるのです。
4 入れ歯は寝ている間も「歯の代わり」
入れ歯は、失ってしまった歯の代わりとなってくれる大切なアイテムです。
それは、寝ている間も同じ。
無意識のうちに生じる噛み締めや歯ぎしりから天然の歯を守ってくれる役割や、唇や舌といった他の口腔器官が適切に機能できるように働いてくれているのです。
健康的な睡眠、起床後の生活のためにも寝ている間も入れ歯をしておくことをおすすめします。
ただし、あくまでも入れ歯の洗浄は日に1回を目安に行うことは忘れないでください。
洗浄しないまま付けっぱなしにしていると、菌が増殖して歯肉炎や悪臭の原因となってしまいます。