
- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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根管治療は、歯科の中でも難しい治療で失敗する可能性も少なくありません。
とはいえ、繰り返し治療はしたくない、失敗したくないと考えている方がほとんどだと思います。
そこで今回は、根管治療が失敗する原因や失敗した後の治療法などについて解説していきます。
・根管治療が必要と言われた
・根管治療を失敗したくない
といった方は、このページを参考にしてください。
目次
- 1根管治療が失敗する確率は?
- 2根管治療が失敗する原因
- 2−1:細菌が多く残っている
- 2−2:根管充塡や被せ物に隙間があった
- 2−3:根管内に穴が空いている
- 3根管治療が失敗すると起きること
- 3−1:痛み、腫れ
- 3−2:根尖性歯周炎
- 3−3:歯根嚢胞
- 4根管治療が失敗した後の治療法は?
- 4−1:精密根管治療
- 4−2:歯根端切除術
- 4−3:抜歯
- 5根管治療は初回が大事
1根管治療が失敗する確率は?

根管治療の成功率はあまり高いとは言えません。
治療する医院によっても異なりますが、およそ30~40%と言われています。
2根管治療が失敗する原因

最初にも述べたように、根管治療は歯科の中でも難易度が高い治療法で、失敗するリスクがあります。
根管治療が失敗する原因は、大きく分けて次の3つになります。
・細菌が多く残っている
・根管充塡や被せ物に隙間があった
・根管内に穴が空いている
次からはそれぞれについて、詳しく解説していきます。
2−1:細菌が多く残っている

根管治療は、細菌感染を起こしている根の中を無菌状態(細菌のいない状態)にするのが目的です。
ただ、実際の根管治療では、菌が見えないので無菌に近い状態にしています。
根の中が無菌状態に近いほど、細菌感染が再発するリスクが低くなります。
逆に、根の中に多くの菌を取り残したまま治療を終えた場合には、再治療をする可能性が高いです。
細菌が根の中に多く残る理由は、次の通りです。
・唾液が根の中に入る状態で根管治療をした
・感染している根を見逃した
・細菌感染した部分が取りきれていない
このような処置不足があると、根の中に多くの菌が残ってしまうことがあります。
その結果、根管治療が失敗して再治療が必要になります。
2−2:根管充塡や被せ物に隙間があった

根管治療は、根の中をキレイにした後の処置も重要になります。
根管治療で根の中を洗浄、消毒した後は、根管充填(こんかんじゅうてん)という処置をします。
根管充填とは、根の中に隙間ができないように専用の薬を詰めていく処置です。
このときに、根の先までしっかりと薬が詰められていない場合には、根の中に空洞ができます。
その結果、空洞内で菌が増殖して、炎症を引き起こします。
また、根管充填後は、土台や被せ物を作製していくのが一般的です。
土台や被せ物が歯にピッタリではない場合には、細菌感染を引き起こすことがあります。
2−3:根管内に穴が空いている

根管内(神経が通っている”くだ”のこと)は、狭く複雑な形をしています。
歯科医師が細菌感染した部分を除去しようと、必死になるあまり根に穴を開けてしまうことがあります。
穴が空いても塞ぐ処置をすれば、問題はありません。
しかし、根管内に穴が空いているのに気づかず根管治療を終えた場合には、その部分から細菌が入り込みます。
細菌感染が起こって痛みや腫れるといった症状だけでなく、長時間放置していると歯の外側の骨が溶けてしまうこともあります。
3根管治療が失敗すると起きること

根管治療が失敗した後には、次のような症状や状態が起きやすいです。
・痛み、腫れ
・根尖性歯周炎
・歯根嚢胞
それぞれについて、簡単に説明していきます。
3−1:痛み、腫れ

根管治療が失敗している根は、内で細菌が増殖して活発になっている状態です。
活発化している細菌が根の先に溜まり、周辺の組織が炎症を起こすことで、痛みや歯茎が腫れるといった症状が出やすいです。
3−2:根尖性歯周炎

根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)とは、大きく分けて2つの種類があります。
・急性根尖性歯周炎:何もしなくても強い痛みを感じる
・慢性根尖性歯周炎:自覚症状がほとんどなく、刺激を加えると違和感を感じる
どちらの根尖性歯周炎も根の中に細菌が入り込んだ後に、根の先の部分で病巣を作っている状態です。
根尖性歯周炎の症状がひどい場合には、周囲の骨まで炎症が進んで歯がグラグラすることがあります。
3−3:歯根嚢胞

根管内が細菌で満たされた後は、細菌が根の先から押し出されて歯の周りに炎症を起こします。
その炎症を放置していると、膿の袋ができてきます。
この袋状の膿ができる病気のことを、歯根嚢胞(しこんのうほう)と言います。
4根管治療が失敗した後の治療法は?

根管治療が失敗したときの対処法は、大きく分けて次の3つがあります。
・精密根管治療
・歯根端切除術
・抜歯
4−1:精密根管治療

精密根管治療とは、自費の根管治療のことです。
根管治療には、保険と自費の2種類の治療法があります。
保険の根管治療は、治療費が安いという特徴があります。
しかし、保険の根管治療では、使用する薬剤や治療の工程が国によって決められているので、治療の精度が低くなりがちです。
また、根管治療は、治療回数を重ねるほど根管内の歯質が薄くなり、歯が弱くなっていきます。
保険の根管治療を繰り返していると、最終的には抜歯になる可能性が高いでしょう。
一方で、精密根管治療をしている歯科医院では、「マイクロスコープ」「ラバーダム」「ニッケルチタンファイル」などの道具を使っていることが多いです。
このような道具は、保険の根管治療で使われることがほとんどありません。
また、この他にも根の中を洗浄・消毒する薬剤も保険治療で使うときとは違う歯科医院もあります。
優れた器具や効果的な薬剤などを使い、精度の高い根管治療をすることで、根管治療の失敗するリスクを軽減できます。
4−2:歯根端切除術

根管治療で症状の改善が見られなかったときには、外科的治療が必要になることがあります。
特に歯根嚢胞が根の先にできている場合は、歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)をするケースが多いです。
歯根端切除術は、根の先端の一部と嚢胞を一緒に除去する処置のことです。
治療手順は、以下の通りです。
①麻酔をして顎の骨を削ってから、嚢胞を摘出する
②細菌感染している根の先端の一部分や、根の周りの炎症部分を除去する
③根の先は、歯科用のセメントで封鎖して完了
また、歯根端切除術が必要と判断されるケースは、他にもいくつかあります。
・土台を外すと歯が折れる可能性がある
・根管が複雑な形をしている、根の先が大きく曲がっていて精密な根管治療ができない
・根の先端が割れたり、折れたりしている
このような歯の状態のときには、外科処置をして症状の改善を待つことが多いです。
4−3:抜歯

精密根管治療や外科的処置などを行っても症状が改善しない場合には、抜歯になります。
5根管治療は初回が大事

根管治療が失敗した場合は、次の3つの治療法があります。
・精密根管治療
・根尖切除術(外科的処置)
・抜歯
同じ歯で根管治療を繰り返していると、歯が少しずつ弱くなり最終的には抜歯になることがあります。
再治療を繰り返さないためには、歯科医院選びが重要です。
設備や精密根管治療の経験が豊富など、信頼できる歯科医院で根管治療をするのがオススメです。