【根管治療】マイクロスコープは保険で使える?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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虫歯を放置して進行させてしまうと、菌の繁殖が歯髄にまで達してしまいます。

このような悪化した虫歯を治療する方法として根管治療があるのですが、これにはマイクロスコープを使った診療が理想です。

しかし、マイクロスコープ診療には保険が使えない場合も。今回は、根管治療におけるマイクロスコープの使用についてご紹介します。

目次

1 保険適用とマイクロスコープの使用には関係がない

まず大事なことは、保険が適用される範囲についてです。

保険は「根管治療を行うこと」に対して適用されるため、マイクロスコープを使っているかどうかが判断基準にはならないのです。

これだけを聞くと、「すべての根管治療にマイクロスコープが使えて、しかも保険適用対象になる」と感じるかもしれませんが、そうとは限りません。

1-1 どうして根管治療にマイクロスコープを使用するのか?

まずは、根管治療にマイクロスコープを利用するのがいいとされる理由についてご説明します。

手術用顕微鏡であるマイクロスコープは、通常の肉眼よりも20倍以上も物体を拡大して見ることができる顕微鏡です。

根管治療は、虫歯になっている歯の歯髄(神経)を取り除いて、空洞を埋めるための素材を充填する、という方法で行います。

根管は非常に複雑な構造をしているため、より細部までチェックできるマイクロスコープを使用することで、精度の高い治療を行うことができるようになります。

そのため、根管治療にはマイクロスコープを使用することが理想的、ということができるのです。

1-2 診療報酬改定で保険適用範囲が拡大=診療報酬増加

2020年に保険が適用される範囲が改訂され、多くのCTスキャンとマイクロスコープを使用した治療が保険診療の点数加算対象となりました。

これによってマイクロスコープを使用した根管治療の診療報酬が少し上がり、患者負担額が少しだけ増えています。

従来はマイクロスコープを利用しているかどうかに関わらず根管治療を行ったことに対して診療報酬が設定されていたのに対して、2020年以降は、根管治療を行った診療報酬にプラスして、マイクロスコープを利用した診療報酬も計算されるようになったためです。

1-3 保険適用ができない場合もある

ただし、マイクロスコープを使った治療が、必ず保険適用で受けられるわけではありません。

まず、かかっている歯科医院にマイクロスコープが導入されていないケースが考えられます。

マイクロスコープは非常に高価な精密機器であるため、そもそもマイクロスコープ自体を持っていない歯科医院の方が多いのです。

 

また、保険適用治療の場合、定められた治療器具や補填材料の使用が求められます。

治療の精度を追求したい場合や審美性を上げる素材を使いたいという希望がある場合は、保険適用外の自由診療を受けることとなります。

それ以外の場合でも、歯科医院の都合によってマイクロスコープを使用した根管治療は保険適用外診療扱いとしているケースもあります。

2 保険が適用されない治療しか受けられないと言われた……

歯科医とマイクロスコープを使った根幹治療について話し合った際、「うちでは対応できない」「保険は適用できない」などと言われてしまった方もいるかもしれません。

その場合には、次のことを検討してみてください。

2-1 セカンドオピニオンを取ってみる

担当医の治療方針に納得がいかない場合には、セカンドオピニオンを取ってみることが重要です。

その歯科医院にマイクロスコープがないのか、担当医の治療方針によって自由診療の治療を受けたほうがいいと考えているのか、あるいは本当に保険適用の治療は受けられない治療なのかを、別の歯科医にも判断してもらいましょう。

また、保険適用でマイクロスコープを利用した根管治療を行ってくれる歯科医院もありますので、どうしても保険適用で治療を受けたい場合には、その医院に連絡を取ってみてください。

2-2 治療方針・治療内容によっては保険が適用できない場合もある

例えば国が指定している治療器具以外のものを使う場合は、保険が適用されません。

より精密に歯髄を取り除きやすい器具や、劣化しにくい充填材、外見上治療していない歯と見分けがつかないようなキレイな素材などを使用したいと希望している場合には、保険の適用から外れてしまいます。

2-3 保険適用対象外でもマイクロスコープで治療を受けるのがおすすめ

様々な理由から保険適用の対象外となってしまうこともあるマイクロスコープでの根管治療ですが、自費診療となってしまうような症例・治療方針であったとしても、マイクロスコープでの治療を受けることをおすすめします。

根管治療を裸眼やルーペによる目視確認のみで行うことはかなり困難で、数年後に再治療になるリスクが高くなってしまいます。

また、保険適用外診療の中には海外で高い評価を受けているような最新の治療法も存在しています。

保険診療の場合、歯科医院が治療にかけられる時間的制約、使える器具や素材などの面から、必ずしも期待するような治療効果が得られないケースも、ないとは言い切れません。

まずは信頼のおける歯科医に治療してもらうことが最善ですが、根管治療を行う場合は、マイクロスコープを利用した保険対象外の自由診療にすることも視野に入れておいたほうがいいでしょう。

3 根幹治療のマイクロスコープは保険適用にできるかどうかはケースバイケース

根幹治療にマイクロスコープを利用した場合、保険適用となるケースかどうかは歯科医院の治療方針や、使用する素材、器具などによって変わってきます。

担当の歯科医と相談したうえで治療方針を決め、それに納得ができない場合は、セカンドオピニオンをとるようにしましょう。

保険適用外の治療では、再治療が必要になる確率が抑えられ、見た目がより美しく仕上がる治療を受けられる可能性が高まります。

自分が治療にかけられる費用と治療の成果を比べて、自分が最良だと思える治療を受けられるよう、担当医に相談してみてください。

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