根管治療は医療費控除の対象になりますか?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

結論から言うと、根管治療は医療費控除の対象になります。

ただし、根管治療が医療費控除の対象になるには条件があります。

 

このいくつかの条件を満たせていれば、医療費控除を受けることが可能です。

 

今回は、根管治療と医療費控除についてわかりやすく解説していきます。

目次

1 根管治療が医療費控除の対象になる条件

根管治療を医療費控除の対象にするには、次の3つの条件を満たすことが必要です。

1-1:条件その①「自費の根管治療」

根管治療には、大きくわけて2種類あります。

ひとつめが、保険治療制度を利用した根管治療。

 

ふたつめが、自費の根管治療です。

医療費控除の対象となるのは、自費の根管治療のみになります。

 

そもそも、医療費控除は10万円を超える医療費が、家計にとって大きな負担になるので、その負担を少しでも軽くしようと設置された制度です。

 

歯科治療の中で医療費控除が対象になるのは、保険の効かない自費治療や高価な材料を使用する治療などです。

1-2:条件その②「一般的な治療費の金額であること」

治療内容によっては、治療費がかなり高額になり家計の負担になるので、医療費控除の対象になっています。

 

ただ、一般的な治療費の水準を著しく超えるような金額の特殊なものの場合には、医療控除の対象にはなりません。

 

例えば、根管治療後の被せ物治療をする時に、被せ物を製作する材料が一般的な歯科で使われていない材質の物の場合には、医療費控除の対象にはなりません。

 

ゴールドやセラミック、メタルボンド、ジルコニアなどの材質は、歯科の自費治療として使用されているため医療費控除の対象になります。

1-3:条件その③「病気を治すことが目的の治療」

歯の治療が、歯を美しくしたいという目的であれば、医療費控除の対象にはなりません。

医療は、病気を治すことが目的だからです。

 

根管治療が必要になるケースは、虫歯や歯周病菌による細菌が原因になることがほとんどです。

2 自費の根管治療は抜歯を防ぐ治療法

自費の根管治療をすることで、抜くしか手の施しようがないと言われていた歯でも残せる可能性が高くなります。

 

虫歯や歯周病が重症化すると、炎症している範囲が広く、色んな組織に大きなダメージがある状態なので、抜歯を勧められることも少なくありません。

 

また、何度も根管治療を繰り返している歯は、厚みがなく薄くなっていて、割れたり折れたりするトラブルを防ぐために、抜歯を提案することもあります。

 

他にも、根管治療をした歯では、過去の治療が不完全であれば、歯の根が割れることがあります。

 

根管内に汚れや細菌が残ったままだと、根の先に膿の袋ができることがあり、しばらくすると痛みが強くなって、治療に時間がかかったり、歯を抜いたりする処置が必要になるケースもあります。

 

しかし、自費の根管治療では、歯の根が割れている状態でも汚れを徹底的に取り除き、割れた部分を専用の薬剤で保護しつつ修復するため、抜歯をせずに自身の歯を使い続けることが可能です。

 

ただ、根の割れた範囲や状態によっては、自費の根管治療でも歯を残すのは難しいケースもあります。

 

自費の根管治療は、全ての歯科医院で行っているわけではありません。

歯内治療専門医根管治療専門医が、自費の根管治療を行っています。

 

歯内治療とは、歯の内側にある神経を残す処置や、神経を取る処置のことです。

根管治療は、根管内の処置なので、歯内治療に含まれます。

 

歯内治療専門医や根管治療専門医は、歯を残すプロフェッショナルです。

豊富な技術や知識を持ち合わせているので、抜くしか手段がないと言われた歯でも、残せる可能性が高いです。

3 医療費控除ができる根管治療とは?

ここでは、自費の根管治療の流れや特徴について詳しく解説していきます。

3-1:診査・診断

一般的な根管治療では、口の状態が2次元的にわかるレントゲン写真を取ります。

 

2次元の表面的な画像では、根管の本数が正確にレントゲンに映っていなくて、見落とす可能性があります。

 

自費の根管治療では、治療する根の本数を正確に知るために、CT撮影をするケースが多いです。

 

CTは、360°どの角度からでも、歯の状態を診ることが可能になるので、正確な根管数を知ることができ、正確な治療をすることができるようになります。

3-2:使用する材料・機材

自費の根管治療では、使用する材料や機材があります。

まず、ラバーダムというゴム製のシートを、治療する歯の周辺に取り付けます。

 

ラバーダムをすることで、唾液が根管内に入るのを防ぐのが目的です。

 

唾液の中には、虫歯菌や歯周病菌が多くいて、根管内に唾液が入ってしまうと細菌感染を引き起こします。

 

そうなると、再治療になる確率や治療が失敗する確率が高くなります。

他にも、根管治療の時には、高性能のマイクロスコープを使用します。

 

マイクロスコープは、根管内を裸眼で見るより、約20倍の視野で根管内を拡大して見ることが可能です。

 

根管内の汚れの付き具合は勿論、隠れた根管を発見することにも繋がります。

まれに、根管が根の先で枝別れしていることがあります。

 

マイクロスコープは、狭い根管内でも光を当てて、見つけるのが難しい細い根管も発見することが可能です。

 

また、根管内がより見えることで、正確に汚れ除去してキレイにすることができます。

 

根管内がキレイになった後は、神経の代わりになる薬剤を詰めていきます。

自費治療では、特殊なセメントを使って根の先に薬剤を詰めていくケースが多いです。

 

この時に使われるセメントは、いくつか種類があり、歯科医院によって薬剤や価格が違います。

 

この薬剤を詰める処置は、慎重に行う必要があります。

 

なぜなら、根管内をキレイにした状態でも、このセメントを根管内に入れた時に隙間が空いていたり、しっかりとくっついていなかったりすると、細菌が侵入して、再治療になることがあるからです。

3-3:治療回数・治療時間

自費の根管治療の1回の治療時間は、約60分~90分が一般的です。

1回の治療時間を長くすることで、根管内の汚れをしっかりと除去していきます。

 

また、根管治療の回数は、1~3回と少ない回数で処置を終わらせるのは、治療の成功率を上げるためです。

 

治療回数が増えるほど、根管内に残っている細菌が増えて再治療になったり、失敗したりする確率が高くなると言われています。

 

自費治療では、治療期間を短く、1回の治療に時間をかけることで、根管治療を確実に行っていきます。

3-4:被せ物

根管治療と神経の代わりになる薬剤を入れる処置の完了後は、歯の土台とその上に取り付ける被せ物を製作していきます。

 

自費の根管治療をした場合には、土台や被せ物も自費の材質を使用するのが基本です。

 

使用する土台や被せ物が、隙間ができやすく、歯との適合性が悪い材質では、細菌が侵入して細菌感染を引き起こす可能性があります。

 

そうなると、時間と費用をかけて行った自費の根管治療の意味がなくなってしまうので、歯にピッタリで、負担にならない材質を選ぶのが大事になってきます。

4 医療費控除を上手く活用して良い治療を受けよう!

自費の根管治療は、医療費控除の対象です。

治療をするのが、前歯や奥歯、又は根管の本数によって治療費は変わってきます。

 

自費治療は、高額になりやすく、受けるのを渋ってしまう気持ちもわかります。

ただ、削った歯や抜いた歯は、爪のようにまた生えてくることはありません。

 

歯を抜くことは、いつでもできます。

まずは、医療費控除を上手く活用して、専門医のところで歯を残す治療を受けましょう。

この記事が気に入ったら「評価」ボタンを押してください!

★★★★★

評価する