費用を抑えて「ボロボロの歯」を治療する方法

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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虫歯は進行すればするほど、高額の治療費用がかかるものです。歯が全てなくなるほどボロボロの歯を安く治療する方法としては、総入れ歯やインプラントがありますが、入れ歯は違和感や見た目の問題があります。

 

機能や見た目の面ではインプラントが優れていますが、従来のインプラント治療では、全ての歯を失った場合、上下どちらか片方のあごにつき最低8本インプラントを入れる必要があり、治療費が非常に高額になる傾向があります。

 

歯を全て失った患者が、なるべく安い費用かつ短期間で、インプラント治療を受けられる治療法が「オールオン4」です。

 

この記事では、新しいインプラント治療であるオールオン4の特徴や費用、治療期間など詳しく解説します。

目次

1.オールオン4はどんな治療法?費用や治療期間は?

オールオン4の概要と費用、治療期間について解説します。

1‐1.オールオン4とは

オールオン4は、上あごと下あご、それぞれにつき最低4本のインプラントで、片あご全体の人工歯を支えるインプラント治療のことです。

 

奥のインプラントを、骨がある部分に斜めに埋め込むことで、噛むときにインプラントにかかる力を分散させ、少ない本数でも全ての人工歯を支えられます。

 

オールオン4以前のインプラント治療は、基本的に1本の歯につき1本のインプラントを埋めていました。そのため、上下どちらかの歯を全部失った場合、8~10本のインプラントを埋めることになります。

 

また、日本人は上あごの骨が薄い人が多く、インプラントを埋める際に、骨の高さや厚みが不足しているケースがあります。あごの骨が足りないと、インプラントが骨を突き抜けたり、歯肉から出たりしてしまう原因となります。

 

従来のインプラントでは、骨が不足している場合は、「骨造成」と呼ばれるあごの骨を増やす手術を受け、数ヶ月かけて土台となる骨を育てる必要がありました。

 

オールオン4の場合は、骨の薄い箇所を避けてインプラントを埋め込めるため、骨造成が必要なケースはほとんどありません。

 

つまり、オールオン4は使用するインプラントの数を最小限に抑え、短期間で治療可能な、効率的なインプラント治療といえます。

1-2.オールオン4の治療費用

オールオン4の費用は従来のインプラントに比べて、半額ほどに抑えられるケースもあります。

また、オールオン4の費用は、人工歯の材質によっても変わります。

 

ちなみに、保険適応の総入れ歯の費用の3割負担で治療できます。

また、保険適応外の総入れ歯も、オールオン4よりも安価です。

 

しかし、本来の歯のような感覚でものを噛めるオールオン4と総入れ歯とでは、全く快適さが違うので、オールオン4を選ぶ人も多いといわれています。

 

歯が全てなくなった状態からでも、本来の歯が生えていたときと変わらずに過ごせるようになるため、オールオン4の費用対効果は大きいといえるでしょう。

1-3.オールオン4の治療期間

一般的なインプラントの治療期間は、3ヶ月~1年くらいといわれています。人工歯根と骨がくっつくまで時間がかかり、あごの骨が薄い場合は骨造成のための期間も必要です。

 

オールオン4の場合は、6ヶ月程度が目安なので、従来のインプラントで治療すると時間のかかるケースでは、治療期間を短縮できる可能性があります。

2.オールオン4の費用以外のメリット

オールオン4には費用以外にもさまざまなメリットがあります。

2‐1.その日のうちにしっかりした歯を入れられる

状態にもよりますが、固定式の仮歯を治療当日に入れられるので、その日のうちにしっかり噛めるようになり、見た目も劇的に改善します。

 

従来のインプラントでは、人工歯根を埋め込む手術をして、あごの骨とくっつくのを待って、固定の歯を入れます。そのため、歯の機能性や見た目が回復するまで、数ヶ月かかります。

2-2.身体の負担が少ない

オールオン4では、ほとんどの場合、骨形成は不要です。そのため従来のインプラントでは約2回手術が必要なケースが多いのに対し、1回の手術で治療ができます。手術はどうしても身体に負担がかかり、腫れや痛みを引き起こします。

 

オールオン4であれば、手術の回数が少ない分、腫れや痛みを軽減できます。

3.オールオン4のデメリット

費用面などメリットの多いオールオン4ですが、デメリットもあります。デメリットを事前に知っておくことで、より後悔のない治療法を選択できます。

3‐1.治療できる歯科医師が少ない

オールオン4はまだ新しい治療法で、従来のインプラントと比べ、高度な技術を求められます。多くの治療経験を積んだり、研修などによるスキルアップをしたりすることが不可欠です。そのため、適切な治療をできる歯科医師はまだまだ限られています。

 

また、長期間のメンテナンスが必要なので、ずっと付き合える歯科医師を選ぶのも重要です。

 

歯科医院のホームページや口コミなどを参考に、高いスキルを持ち、信頼できる歯科医師を探しましょう。

 

「ICOI(国際口腔インプラント学会)」の認定医・指導医の資格を持っている歯科医師であれば、一定以上の実力があると考えられます。

3-2.メンテナンスが必要

通常のインプラントと同様に、取り外しができないため、汚れが溜まりやすくなります。そのため歯科医院でのメンテナンスが不可欠です。

 

メンテナンスが不充分だと、インプラントが長持ちしないだけではなく、インプラント歯周病などのトラブルの原因となります。オールオン4を受ける場合は、メンテナンスに必要性をしっかり認識しておきましょう。

3-3.歯が残っていると治療対象にならない

オールオン4は、上下どちらか、または両方歯を全て失った場合に行う治療法なので、歯が残っている人は原則受けられません。ただし、歯がある人でも歯を抜く予定の人は、治療を受けられます。

 

4.オールオン4が向いている人

これまでのインプラントよりも費用を大幅に抑えて、本来の歯のような機能性と見た目の人工歯を入れられるオールオン4は、特に「入れ歯が合わない人」や「若くして歯を失った人」から人気のある治療法です。

4-1.入れ歯が合わない人

保険適応の入れ歯はもちろん、比較的高額な保険適応外の入れ歯をつくっても、結局入れ歯が合わない人は意外に多くいます。装着中にずれてしまったり、食べ物が間に挟まったりしてしまうと、毎日のことなので大きなストレスとなります。

 

また、総入れ歯の場合、旅行中などに外さなければならない、食べ物のおいしさが損なわれるといったメリットもあります。味覚を感じる場所である上あごが、入れ歯のプレートでおおわれてしまうので、味を感じにくくなる可能性は少なくありません。

 

そのため、より本来の歯に近く、従来のインプラントよりも費用の安いオールオン4を選ぶケースも多数あります。

4-2.若くして歯を失った人

歯を失って総入れ歯になるのは高齢者というイメージがあります。しかし、実際には歯医者へ恐怖心がある、仕事が忙しいなどの理由で、歯科治療を受けられず、歯がボロボロになり、総入れ歯にせざるを得ない人もいます。

 

しかし、現役世代で入れ歯を使用していると、会話で話しにくい、見た目が気になる、仕事関係の人との会食で不自由するなど、高齢者以上にデメリットが大きいケースもあります。

 

オールオン4であれば、本来の歯とほとんど変わらない機能・見た目の人口歯を入れられます。最短で手術当日に、見た目に違和感がなく、しっかり噛める固定の仮歯を装着することも可能です。

 

また、従来のインプラント治療に比べ、治療期間も短いため、多忙な人でも通院しやすいのもメリットです。

 

そのため、働き盛りの30代・40代でオールオン4を選ぶ人もたくさんいます。

5.歯がボロボロの場合、オールオン4は検討の価値あり

歯がボロボロで、上あごまたは下あごの歯を全て失ってしまった場合、従来のインプラントでは、インプラントを埋め込む本数が多くなるため、非常に高額な治療費がかかります。

 

オールオン4は、インプラントの本数を最小限に抑える治療法で、本数が少なくなる分、費用も安くなります。

 

オールオン4は、費用以外にも短期間で歯の機能や見た目を回復できる、手術の回数が少なく身体の負担を軽減できるといったメリットがあります。

 

その一方、治療できる歯科医師が少ない、メンテナンスが必要、歯が残っていると治療対象にならないといったデメリットがあります。

 

しかし、費用を抑えつつ、本来の歯に近い機能と見た目を取り戻せるため、歯がボロボロで悩んでいるのなら、検討の価値がある治療法です。

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