インプラントの隣の歯がダメになった時の「9つの対処法」

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

インプラントの隣の歯が、虫歯や歯周病、根っこが折れたことで細菌感染などを引き起こした時には抜歯を宣告されることがあります。

 

そうなった時には、インプラント治療をするしかないのでしょうか?

 

一般的に1本のインプラントを入れるのに30万円〜50万円ほどの治療費がかかるため、治療をするのを迷ってしまう方もいると思います。

 

そこで今回は、インプラントの隣の歯がダメになったときの対処法について解説していきます。

目次

1 インプラントの隣の歯がダメになったときの「9つの対処法」

インプラントの隣の歯がダメになったときには、9つの対処法があります。

 

ここでは、それぞれの治療法について注意点などについて詳しく解説していきます。

1−1:インプラントを入れる

インプラント治療の経験がある方が歯を失ったときには、またインプラントを入れることが多い傾向があります。

 

「思っていたより手術がすぐに終わった」

「手入れがしやすく、しっかりと噛める」

「自然な見た目になる」

 

などのインプラントの快適さを気に入って、再度インプラント治療を選択するのが選ばれる理由です。

 

しかし、インプラントの隣にインプラントを入れる場合には、術者の技術や知識が不可欠です。もし、インプラント同士の距離が近すぎる状態で顎の骨の中にインプラントを埋めてしまうと、骨が吸収されてグラつく原因になります。

 

また、抜歯をすると歯の根の周辺にある歯根膜からの血流がなくなるので、歯茎の形が維持しにくくなります。失う歯が前歯の場合には、見た目が重要になり、隣のインプラントの歯茎の形を壊さずに前歯を慎重に抜歯する必要があります。

 

他にも骨の状態や歯茎の位置などを予知する必要があるため、1箇所だけにインプラントを入れる治療よりも難易度が高くなります。

1−2:歯を動かして隙間を埋める

自身の歯を移動させて、抜歯後にできた隙間を埋める方法があります。インプラントは動かすことができないので、自身の歯を動かすのが基本です。

 

ただ、この方法は、ダメになった歯がインプラントより奥歯にある場合にのみ適応できます。失う歯が前歯の場合には、噛み合わせがズレたり、見た目が悪くなったりするため適応できないことがほとんどです。

 

失う歯の奥側に歯がある場合には、奥歯を手前に引っ張って隙間を埋めるようになります。隙間が広く歯を移動する距離が大きいほど、治療期間が長くなることがあります。

1−3:歯を移植する

抜歯をすると同時に歯を移植する、自家歯牙移植という治療法があります。

移植する歯には、次のような条件があります。

 

・真っ直ぐに生えている親知らず

・機能していない、小さすぎない歯

 

・真っ直ぐに生えている親知らず

他の歯と同じように真っ直ぐに生えている親知らずは、移植歯として使うことが可能です。

 

親知らずが虫歯になっていたり、斜めに生えていたりするケースは移植歯の対象にならないことが多いです。

 

・機能していない、小さすぎない歯

親知らずではない歯でも、移植する歯として使えることがあります。

 

例えば、噛み合う歯がなく孤立している歯は、移植歯として活用できる可能性が高いです。

 

また、移植する歯が小さすぎると歯と歯の間に隙間ができるため、移植に向いていないと判断されることも少なくありません。

 

逆に奥の歯のように大きい歯は、少し削って大きさをある程度調整できるので、移植歯にできると判断する歯科医院が多いでしょう。

1−4:インプラントと自身の歯でブリッジ治療をする

ダメになった歯の隣に他の歯があるときは、インプラントと自身の歯でブリッジができる場合があります。

 

ブリッジとは、失った歯の両隣を被せ物で繋いで、噛む機能や見た目を改善する治療法です。失った歯の部分にはダミーの歯が入るため、見た目が悪くなる心配がありません。

 

ただ、インプラントは過度な力がかかると周囲の骨が溶けて、グラつくようになります。ブリッジにすると、本来なら噛む力を3本の歯で支えるところを、インプラントと歯の2本で支えるようになるため負担が大きくなります。

 

そのため、歯科医院によってはインプラントにかかる負担を考慮して、インプラントを繋げてのブリッジはできないと判断する場合もあります。

 

また、失った歯の本数が多い場合、この治療法は対象外と言われる可能性が高いです。

1−5:1本のインプラントで歯2本分の支えにする

インプラントの被せ物を歯2本分の形にして、失う歯の部分を補う方法です。

 

ブリッジのように、失った歯の両側が支えるのではなく、インプラント1本で失う歯を支えるようになります。

 

失う歯がインプラントより手前の歯の場合には、噛み合わせをコントロールすればインプラントに過度な負担がかからずに使用できる可能性があります。

 

しかし、ダメになった歯がインプラントより後ろの歯の場合には、この方法が適応できないと判断する歯科医院もあります。

 

噛む力は奥歯になるほど大きくなるので、インプラントで2本分の力を支えてしまうと過度な力がかかり抜けてしまう恐れがあります。

 

そのため、奥歯でこの方法を行うときには、ほとんど噛まない状態にしてインプラントに負担がかかりすぎないようにするケースが多いです。

1−6:被せ物の形を大きくして2本のインプラントで支える

奥から2番目の歯(第一大臼歯)は、人によっては大きく、抜歯をすると広いスペースが空いてしまうことがあります。

 

隙間が大きい部分に通常の感覚でインプラントを入れると、被せ物が大きくなりすぎて見た目が悪く、歯磨きがしにくくなり、細菌が溜まりやすい環境を作り出しやすいです。

 

そのため、広いスペースが空いている場合には、まずインプラントの位置をズラして埋めていきます。

 

その後、以前入れたインプラントと新しく入れたインプラントを繋げたブリッジの被せ物を作製していきます。

 

その結果、大きなスペースがある場合でも見た目が悪くなることなく、機能面でも快適に使用できるようになります。

1−7:インプラントデンチャーにする

インプラントデンチャーは、インプラントを支えにしてその上に、入れ歯を装着する方法です。インプラントが入れ歯を支えているため、痛みや噛めないといったことが起きにくいのが特徴です。

 

また、インプラントの手術をする必要がなく、治療期間が短くできたり、入れ歯を作製する費用しかかからないので、経済的負担が軽減できたりするメリットがあります。

1−8:All-on-4の治療法を行う

All-on-4は、上下の顎どちらかの歯が全てない場合に行うインプラント治療です。

 

All-on-4では、4本〜6本のインプラントを入れた上から、繋げた長い被せ物を取り付けて噛む機能や自然な見た目を改善していきます。

 

例えば、ダメになった歯以外にも失いそうな歯が数本ある状態は、歯に限界が来るたびに何度も治療をすることになり、そのたび、治療期間や費用がかかってしまいます。

 

そういった患者さんの負担を軽減するために、ダメになった歯と同時に他の不安定な歯も抜いて歯がない状態を作り出して、顎に4本〜6本のインプラントを埋めていきます。

 

そうすることで、歯がいつダメになるのかという心配が無くなったり、経済的な負担が軽くなったりします。

 

また、何度もインプラント手術を行うのは、精神的にも身体的にも辛く患者さんの負担になりやすいです。

 

All-on-4は、1回の手術で数本のインプラントを入れるため、何度も手術を行う必要がなく、痛みや腫れを最小限に抑えることが可能です。

1−9:何もしない

「治療をしない」という方もいます。

 

患者さんによっては「歯が無くなっても噛み合わせや見た目などに問題がない」「生活に支障がない」などの理由から何もせずに様子を見ることを選ぶ方がいます。

 

例えば、ダメになった歯が下の一番奥歯の歯で、上の一番奥の歯は元々ないケースでは、普段と変わらない生活ができているからと治療をしないこともひとつの選択だと言えるでしょう。

 

しかし、多くのケースでは治療しないことによるデメリットの方が大きくなります。治療が遅くなるほど、口のバランスが壊れていき、大掛かりな治療になってしまう可能性もあります。

 

将来的に後悔しないように、担当医に治療をしないメリット・デメリットをしっかりと聞いて、判断するようにしましょう。

2 担当医としっかり話し合いをしよう!

インプラントの隣の歯がダメになったときには、次のような9つの方法があります。

 

・インプラントを入れる

・歯を動かして隙間を埋める

・歯を移植する

・インプラントと自身の歯でブリッジ治療をする

・1本のインプラントで歯2本分の支えにする

・被せ物の形を大きくして2本のインプラントで支える

・インプラントデンチャーにする

・All-on-4の治療法を行う

・何もしない

 

患者さんにどの治療法を提案するかは、歯科医師の治療方針や技術力で変わってきます。

 

技術力や知識がない歯科医院では、提案できる治療法の数が少なく選択肢が限られる可能性があります。

 

そのため、提案された治療法に納得できない場合には、他の医院で適切な治療法なのか、他に治療法はないのかを相談するのがオススメです。

 

最後に治療法を決めるのは、患者さん自身です。

担当医としっかりと話し合い、納得したうえで最善の治療法を選ぶようにしましょう。

この記事が気に入ったら「評価」ボタンを押してください!

★★★★★

評価する