インプラント治療で「FGG」と「CTG」違いは?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラント治療の成功において、歯茎の健康は大切な要素だと言われています。

健康な状態よりも下がっている場合、インプラント治療を行う際に、歯茎のトラブルが起きやすくなってしまうためです。

 

しかし、歯茎は歯周病や加齢、歯ぎしりや矯正、ブラッシングなどの影響で下がることも多いもの。

そんなときには、インプラントの治療前に「FGG」と「CTG」という治療が行われることがあります。

インプラント治療中、または治療後に、歯肉トラブルが起きるリスクを減らすためです。

 

「FGG」は日本語で遊離歯肉移植術と言い、「CTG」は、結合組織移植術と言います。

どちらも歯肉移植の治療で、下がった歯茎を増やし、歯肉組織の再生を目的とした治療です。

遊離歯肉移植術、結合組織移植術という日本語の文字を見ただけでは違いが分かりにくく、目的はほとんど同じため、同じものだと捉えられることが多いですが、この2つの手術方法は異なります。

 

今回はインプラント治療のリスクを下げるために注目されている、「FGG」と「CTG」の治療はどのようなものであるのか、また2つの治療にどのような違いがあるのかについて紹介していきます。

目次

1. 「FGG(遊離歯肉移植術)」とは

FGGはFree Gingival Graftの略で、日本語では遊離歯肉移植術と言います。

歯茎の足りない部分に、主に患者の口蓋から「上皮」を切り取り移植する手術です。

インプラント埋入部分の歯肉を拡大するために行われます。

1-1.FGGの治療の流れ

FGGは次のような流れで行われます。(一例です)

 

①歯茎の切開

まずは下がっている歯茎の周囲を切り、めくって、移植に必要な歯茎のサイズを測ります。

切開する際には、痛み止めの局所麻酔を行います。

 

②上皮組織を採取

上顎の口蓋から、移植に必要な上皮をまとめて切り取り、採取します。

 

③上皮組織を移植

②で採取した上皮を下がっていた歯茎部分に移植し、糸で縫い合わせて固定します。

 

④口蓋部分をカバー

上皮を採取した口蓋部分は、治りを早めるために、コラーゲンなどでカバーをします。

 

⑤抜糸

手術から1〜2週間後に、抜糸をして傷の治りを待って、FGG治療は完了です。

1-2.FGGのメリット

FGGを行うメリットは、次のようなものがあります。

 

まずは、歯肉の量を増やせることです。

歯周病の進行や、加齢などによって歯肉が退縮した場合にとても有効な治療法で、歯肉の再生を促進します。

 

また、もう1つの歯肉を増やす治療であるCTGよりも、技術的に容易な治療であることもメリットの1つです。

痛みも少なく、手術後の回復も比較的早いと言われています。

1-3.FGGのデメリット

反対にデメリットは、移植した歯肉と、元々の歯肉部分の色に違いが出てしまう点です。

審美性を高めるためには、別の処置が必要になる場合があります。

 

また、FGG手術で移植した後、歯肉の一部が萎縮し、歯肉の厚みが不均等になるケースがあります。

その場合は歯肉の再移植が必要となります。

 

手術のリスクを最小限に抑えるためには、事前の適切な処置や手術後のケアが必要です。

2. 「CTG(結合組織移植術)」とは

CTGとはConnective Tissue Graftの略で、日本語では結合組織移植術と呼ばれています。

歯茎の足りない部分に、主に上顎の口蓋から「結合組織」だけを切り取って、移植する手術です。

歯肉の薄い箇所を補強するために行われます。

2-1. CTGの治療の流れ

CTGは次のような流れで行われます。(一例です)

 

①歯茎の切開

まず歯茎が下がっている部分を切開し、めくって、移植が必要な歯茎のサイズを測ります。

切開前には痛み止めの麻酔注射を行います。

 

②結合組織を採取

上顎の口蓋を切ってめくり、上皮は残して必要な量の結合組織を切り取ります。

 

③結合組織を移植

②で採取した結合組織を、①でめくった部分に移植します。

めくった歯茎で結合組織を多い、糸で縫い合わせます。

 

④口蓋部分を縫合

口蓋部分は上皮を戻し、糸で縫います。

 

⑤抜糸

CTGから1〜2週間ほど経ったら、抜糸をし、傷の治りを待ちます。

2-2. CTGのメリット

CTGを行うメリットの1つに、見た目が歯茎の色に左右されないという点があります。

移植するのは上皮の内側の部分である結合組織で、表面はまた上皮で覆うため、見た目に違和感が出ません。

 

また、歯茎の厚みや形状を維持することができます。

その結果、歯茎が下がっている、歯茎の量が足りないことでインプラント手術ができない症例でもCTGを行うと、インプラント手術が可能になることがあります。

 

その他、CTGにより、歯周組織の再生が促進されます。

移植された結合組織は、新しく血管や細胞を生成し、歯周病の進行などを防ぎます。

インプラント治療の最大のリスクとも言われるインプラント周囲炎のリスクも減らせると言われています。

歯肉の厚みを増やしたことで、インプラント周囲の骨を保護できるからです。

2-3. CTGのデメリット

CTGのデメリットは、FGGの治療よりも治療が難しいことが挙げられます。

医師の技術力も必要となる治療です。

治療後、歯茎を切開した移植部はもちろん、ドナー部位であった口蓋部の傷の回復には時間がかかります。

しばらくの間、痛みや腫れが続く場合もあります。

少しでも痛みや腫れの期間を最小限に抑えるためには、適切な事前の処置と、術後のケア、医師との十分な相談が必要です。

 

また、移植部と口蓋部では歯肉の特性や質感の違いもあるため、色などの見た目はFGGよりも自然だと言われているものの、違和感があるケースもあります。

3.FGGとCTGの違いは?

FGGとCTGは、どちらも歯肉の欠損や退縮を修復し、健康的な歯肉へと再生を促す目的で行われます。

この2つの違いはどのようなところがあるでしょうか。

3-1.治療法の違い

FGGとCTGでは、口蓋から採取する組織が違っています。

両方とも口蓋部分から歯茎の下がった部分へ補う組織を採取しますが、FGGは上皮組織を、CTGは結合組織を採取します。

歯茎の表層は「上皮」でできており、内側は「結合組織」というもので構成されています。

それぞれの手術では、その表層部分と内側部分を採取して、歯茎の下がった部分へ移植する治療法です。

上皮を移植するFGGでは歯肉の量を拡大でき、結合組織を移植するCTGでは歯肉の厚みを増やすことにつながります。

 

このように2つの治療法は異なりますが、どちらも下がった歯肉の量や厚みを増やし、インプラント治療等の治療を進められる状態にするものです。

3-2.その他の目的の違い

FGGでは歯肉の量を増や酢だけでなく、歯肉を保護し、組織再生を促して、歯茎の炎症や感染症を予防するという目的もあります。

つまり、歯周組織の健康を維持するための予防が目的とも言えます。

 

CTGは、歯肉の厚みを増やし、美しく健康な歯肉を再生させるだけでなく、歯周病の進行を防止するという目的もあります。

歯周病や歯肉炎の治療後にも、歯肉再生を促します。

 

どちらも健康的な歯周組織の再生を促すという目的は同じです。

3-3.治療費の違い

FGGとCTGはどちらも治療費は保険適用外の自由診療です。

そのため、基本的には保険が適用されません。

 

治療費は患者の歯周状態や、歯肉の欠損の程度、治療する部位などによっても異なり、歯科医院や地域によっても差があります。

 

FGGとCTGの治療費の相場としては、1本あたり数万円から数十万円と言われています。

そして、一般的にCTGの方がFGGよりも手術が複雑であり、治療期間も長くなることから、CTGの方が高額になる傾向はあります。

 

また、治療の前には検査が必要なため、検査代もかかりますし、麻酔をするため麻酔費、術後には経過観察や処置のための費用がかかります。

治療費については事前に医師と相談し、詳しく聞いておくといいでしょう。

歯科医療保険や医療費控除などの自己負担を少なくするサポート制度を使える場合などもあるため、事前に確認しておきましょう。

4.FGGとCTGは似たような治療法でありながら方法は異なる!自分に合った適切な方法を選ぼう

歯茎が下がると聞くと、歯周病を想像する人も多いと思いますが、歯茎が下がる原因は歯周病だけではありません。

加齢、歯ぎしり、強い力でのブラッシングなどによっても、歯茎が下がることがあります。

一度下がった歯茎は、放置していても自然と元に戻ることはありません。

 

そのため、インプラント治療を受けたいと思っても、そのままでは受けられないこともあります。

FGGとCTGはそんな歯肉状態を改善し、インプラント治療などを可能にしたり、インプラント治療時のリスクを減らせる手術です。

歯肉が健康であってこそ、天然歯はもちろん、人工歯の健康も守れます。

 

FGGとCTG、どちらの手術が自分の歯肉状態、歯周辺の状態に向いているのか、受けた方が良いのかについては、歯科医師に相談してみてください。

どちらも自由診療のため、高額にはなりますが、将来的な歯の健康を守るために、自分に合った適切な方法を選び、歯茎から健康になりましょう。

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