
- この記事の監修者
- 医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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事故や病気などで歯を失った場合、大人であればインプラント治療を受け、天然の歯に近い人工歯を入れられます。
しかし、子供の場合はインプラントを埋め込めないため、子供用の入れ歯を使うケースがあります。入れ歯というと年配の人が使用するイメージがありますが、歯を失った子供にとって入れ歯は非常に重要です。
この記事では、子供が歯を失くした時の対処法について、子供用の入れ歯を中心に解説します。
目次
- 1.子供はインプラントを使えない!子供用入れ歯を検討しよう
- 1‐1.成長途中の子供はインプラント治療ができない
- 1‐2.子供用の入れ歯とは
- 1‐3.保隙装置とは
- 2.子供用の入れ歯の目的&メリットを解説
- 2-1.永久歯が生えるためのスペースを確保する
- 2-2.かみ合わせへの影響を防ぐ
- 2-3.身体や顔のゆがみを防ぐ
- 2-4.発音の悪化を予防する
- 2-5.食事がしやすくなる
- 2-6.見た目が気にならなくなる
- 3.子供用の入れ歯の注意点とは
- 3-1.入れ歯を使えない場合がある
- 3-2.メンテナンスが必須
- 3-3.定期健診を受ける必要がある
- 4.子供が歯を失くしたら子供用入れ歯などでしっかり対処しましょう
1.子供はインプラントを使えない!子供用入れ歯を検討しよう
遊んでいる最中に転んで歯が抜けてしまったなどの理由で、子供が歯を失った場合、インプラントの埋め込みができません。子供用の入れ歯か「保隙装置(ほげきそうち)」と呼ばれる装置を装着して対処します。
インプラント治療を受けられない理由や、子供用の入れ歯と保隙装置の概要について説明します。
1‐1.成長途中の子供はインプラント治療ができない

インプラントは、あごの骨に人工歯根を埋め込み、その上から人工歯を装着して、失った歯を補う治療法です。
子供のあごの骨はまだ成長途中で、上下左右に大きくなり続けています。そのため子供のあごの骨にインプラントを埋めると、成長に伴うあごのサイズの変化によって、インプラントが正しい場所からずれてしまいます。
インプラントの位置がずれると、健康な歯にあたってしまい悪影響となるリスクがあります。そのため、成長途中の子供にインプラント治療は不向きです。
あごの成長が続く期間は、18~25歳くらいまでと言われており、個人差があります。身長が伸び続けている間は、あごも成長している可能性が高く、インプラント治療は受けられません。
1‐2.子供用の入れ歯とは

子供が歯を失うと多くのケースで、子供用の入れ歯を装着して対処します。子供用の入れ歯は、大人のものと比べ、歯や入れ歯の土台が小さくできています。また、大人用の入れ歯と同様、前歯など部分入れ歯をつくることも可能です。
歯を失った場合以外にも、生まれつき永久歯がない「先天性欠損」と呼ばれる状態であれば、子供用の入れ歯を使用することがあります。先天性欠損はレントゲン撮影などの際に、乳歯の下に永久歯がないことから発見されます。子供の約10%に見られ、珍しいものではありません。
1‐3.保隙装置とは

保隙装置とは、乳歯を失った後に、永久歯が生えてくるためのスペースを確保するためのものです。乳歯からの通常の生え変わりであれば、歯のない期間が短いので必要ありません。
保隙装置には、支えとなる乳歯に金属製のバンドを巻いてループによりスペースを確保する「バンドループ」、支えとなる乳歯に被せものをしてループを取りつける「クラウンループ」などいくつか種類があります。それぞれ特徴が異なるので、口の中の状況に合わせて選びます。
入れ歯と保隙装置どちらを使用するかなど対処法は、歯の状態や子供の成長段階によって、異なります。小児歯科医など、子供の歯の治療を得意とする歯科医師と相談し、検討しましょう。
2.子供用の入れ歯の目的&メリットを解説
「そのうち永久歯が生えてくるから、子供に入れ歯は必要ない」と考える方も、少なくありません。しかし、子供用の入れ歯は、大人用の入れ歯とは異なる理由で必要なものです。子供用入れ歯を使用する目的やメリットについて、詳しく解説します。
2-1.永久歯が生えるためのスペースを確保する

子供用入れ歯を使用する一番の目的は、歯並びを適切な状態に保つためです。歯がまっすぐ生えることができるのは、隣り合う歯と支え合っているからです。歯が1本でも欠けてしまうと、支えを失った隣の歯が倒れてしまう場合があります。放置していると、周囲の歯が徐々に傾き、最終的には周囲の歯が抜けてしまう可能性もあります。
乳歯が抜けた場合は、歯がない状態が長く続くことで、永久歯が正常に生えてくるためのスペースが不足してしまう場合があるでしょう。スペースが不足すると、永久歯の歯並びが悪くなるリスクが高まります。
乳歯から生え変わるタイミングなど短期間の場合は、影響はあまりありませんが、半年以上にわたり歯のない状態が続く場合は、子供用入れ歯の使用を検討しましょう。
2-2.かみ合わせへの影響を防ぐ

歯を失うと、かみ合わせにも大きく影響します。特に、奥歯が生えそろう前の段階で乳歯を失うと、奥歯がかみ合わず、全体のかみ合わせに大きな影響が及ぶ可能性があります。
かみ合わせの位置がずれるのに伴い、あごの位置が歪み、正常にものをかめなくなってしまうケースもあるでしょう。
成長に伴い、かみ合わせが変わってくるので、定期的に歯科医師にチェックしてもらうのをおすすめします。
2-3.身体や顔のゆがみを防ぐ

歯を失ってしまうと、無意識に歯が揃っている側だけで食べ物をかむようになります。たとえ交互にかむように言っても、子供が守るのは難しいでしょう。
ずっと片方だけでかんでいると、かむ側の顔の筋肉ばかりつかっているため、バランスが崩れて、顔のゆがみへとつながります。さらに、口の周りの筋肉は、頭や首、肩とつながっており、全身の筋肉に影響を及ぼします。
身体全体の筋肉がゆがむと、肩こりや腰痛などのリスクが高まります。入れ歯装着すれば、顔の左右の筋肉を均等に使え、顔と身体の筋肉のゆがみを防止できます。
2-4.発音の悪化を予防する

歯並びが悪化すると、舌の動きが妨げられたり、空気が漏れてしまい思ったような音が出なかったりする場合があります。発音が上手く行かないと、友達などと話しにくくなってしまうかもしれません。
子供用の入れ歯を使うことで、歯並びの乱れを防ぎ、発音の悪化を防げます。
2-5.食事がしやすくなる

子供の入れ歯も大人の入れ歯と同様、食べ物をかみやすくする働きがあります。残念ながら、子供用の入れ歯は大人用ほど、かみやすさを大幅に改善できるわけではありません。
しかし、子供の成長・健康にとって毎日の食生活は非常に大切です。場合によっては食事がしやすいよう、入れ歯を使用する方がよいでしょう。
2-6.見た目が気にならなくなる

子供が遊んでいるうちに前歯を負傷して、失ってしまうケースは少なくありません。前歯がないとどうしても、見たときに目立ってしまいます。見た目が気になる場合は、入れ歯を検討してみるのもよいでしょう。
また、子供のうちは、入園式や卒園式、七五三、誕生日など記念写真を撮る機会も多いものです。ベストな状態で写真を撮るために、イベント時に入れ歯を装着する方法もあります。
3.子供用の入れ歯の注意点とは
歯並びやかみ合わせ、見た目などメリットの多い子供用の入れ歯ですが、いくつか注意点があります。
3-1.入れ歯を使えない場合がある

子供用の入れ歯を使用できるのは、3~4歳以降が目安です。入れ歯をつくる際の歯型をしっかり取れる、口の中の環境を保つために、歯科医の指示にもとづいた使用やケアができる、食事の際の違和感を我慢できるといった条件をクリアして、初めて子供用の入れ歯を使えます。
3-2.メンテナンスが必須

入れ歯を使うことで、口の中に汚れが溜まりやすくなり、目に見えない細菌が多く付着します。特にプラスチック部分は汚れが溜まりやすいといわれており、虫歯予防などの点から、丁寧なケアは欠かせません。
保護者が歯科医師や歯科衛生士のアドバイスを聞き、入れ歯のメンテナンスの方法や歯磨きの仕方をしっかり理解する必要があります。
3-3.定期健診を受ける必要がある

事故により歯を失った場合、一時的にあごの骨が硬くなり、永久歯が生える時期が遅くなることがあります。また、外傷を受けたことにより、永久歯が通常とは違う位置に生えてくるケースも少なくありません。
その他にも、成長によるかみ合わせの変化や入れ歯に汚れが溜まることで虫歯ができやすくなるなど歯を失った場合、さまざまなリスクがあります。
さらに、あごの骨の成長により、かみ合わせや適切な入れ歯のサイズが変化するなど、歯を失った子供の口の中の状況は、日々変わっています。
定期健診を受けることで、早めに異変を把握でき、適切な対処が可能です。大切な子供の歯を守るために、しっかり定期健診を受けるのをおすすめします。
4.子供が歯を失くしたら子供用入れ歯などでしっかり対処しましょう

入れ歯は年配の人が使うイメージがありますが、歯を失った子供にとって入れ歯は非常に重要なものです。
歯を失ったまま何も対処しないと、永久歯が生えるスペースを保てず、歯並びに大きく影響するリスクがあります。乳歯は時間が経てば抜けてしまいますが、永久歯は一生ものです。
子供が歯を失った場合は、そのままにせず、必ず歯科医師に相談しましょう。子供の歯の状態や成長段階に応じて、永久歯への影響を最小限に抑える治療を提案してもらえるはずです。








