インプラント後に「うがい薬」(イソジン)は使ってはいけないの?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

感染症対策や口臭予防、口の中をすっきりさせるなど、うがい薬を使ったうがいにはさまざまな効果があります。しかし「インプラントをしていてもうがい薬を使って大丈夫?」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。

 

この記事では、インプラント後にうがい薬を使っても大丈夫か、手術直後のうがいで気をつけるべきこと、うがい以外の注意点などを詳しく解説します。

目次

1.うがい薬の効果って?どんな種類があるの?

うがい薬がインプラントに与える影響について解説する前に、うがい薬の概要や種類について解説します。

1-1.うがい薬とは

うがい薬とは、うがい時に使用することで、口の中や喉を殺菌・消毒する効果が期待できる薬です。

 

うがいは、喉がもともと持っている細菌や刺激から身体を守る機能を高める、洗浄効果や殺菌作用により口の中や喉を清潔にする、口臭を防ぐといった作用があります。うがい薬を使うことで、薬の作用でよりうがいの効果が高まります。

 

うがい薬は下記のような時に使用するとよいでしょう。

 

・喉が痛む、腫れが出ている

・風邪やインフルエンザなどの感染症を予防したい

・口臭が気になる

・口の中のべたつき・ねばつきが気になる

 

1-2.うがい薬の種類

うがい薬は、配合されている成分によって大きく下記のようにわかれます。

 

(1)ヨード系

ヨード系のうがい薬は、「ポピドンヨード」を配合したうがい薬を指し、「イソジン」が有名です。強い殺菌作用があり、細菌・ウイルス・カビなどの微生物に対し幅広く効果を発揮し、喉の殺菌・消毒・洗浄・口臭対策に適しています。

 

ただし、副作用が強く、甲状腺機能に異常がある人や造影剤などのアレルギーがある人は避けた方がよいでしょう。

 

また、ヨードはインプラントによく使われるチタンと相性が悪いといわれています。チタンは腐食しにくい金属ですが、ヨードによって腐食する可能性があります。

 

インプラントにダメージを与えないよう、インプラント後はイソジンをはじめとするヨード系のうがい薬は使わないようにします。

 

(2)第四級アンモニウム塩系

「第四級アンモニウム塩」を配合したうがい薬としては、医院で処方される「ネオステリングリーン」などがあります。

 

殺菌作用はヨード系のうがい薬よりやや劣りますが、副作用のリスクが低いというメリットがある種類です。

 

インプラント体を腐食する可能性はほぼないため、インプラント治療後に処方する歯科医師もいます。

 

(3)アズレン系

「アズレンスルホン酸ナトリウム」を配合したアズレン系うがい薬の代表例としては、市販薬である「浅田飴AZうがい薬」や「パブロンうがい薬」があげられます。

 

炎症をやわらげる抗炎症作用が特徴で、口内炎のできているときなどによく用いられる種類のうがい薬です。また、傷口の治りを促進する効果があり、ヨード系のうがい薬にはないメリットがあります。

 

ただし、殺菌作用が低いというデメリットがあり、口の中や喉の殺菌・消毒や感染症対策としては、他の種類のうがい薬の方が適しているかもしれません。

2.うがい薬はインプラントに悪 影響を与える?注意点は?

インプラント後でも、薬の種類やうがいをする時期、方法などに気をつければ、うがい薬を使っても問題ありません。

 

適切な方法でうがいをすれば、口の中を清潔に保て、歯周病菌によってインプラント周辺の歯ぐきやあごの骨に炎症が起こる「インプラント周囲炎」などのトラブルを防げます。

 

ただし、口の中の状態など個人差があるので、念のために事前に歯科医師に相談するのをおすすめします。

 

インプラント後のうがいに関する主な注意点は下記の通りです。

2-1.手術直後は強くうがいしない

インプラント手術をした直後は、手術箇所は非常にデリケートな状態です。傷口に刺激を与えると、炎症が悪化し、痛み・腫れ・出血がひどくなる、傷の治りが遅くなるといったトラブルが起きるかもしれません。

 

インプラント手術後は口の中に違和感があったり汚れが気になったりするため、しっかりうがいしたくなりますが、軽くゆすぐ程度にとどめましょう。

2-2.手術直後は1日何回もうがいをしない

軽くすすぐ程度であっても1日何回もうがいをすると、血が固まり始めた傷口を刺激してしまい、出血や痛みなどを引き起こしかねません。

 

治療後2~3週間ほどは、朝晩1日2回ほどのうがいにとどめておくとよいでしょう。

2-3.手術直後はうがい薬を使っていいか歯科医師に相談する

インプラント手術直後は、強いうがいをすることができません。そのため、口の中に薬剤が残ってしまう可能性があります。残った薬剤に汚れが付着して細菌が繁殖する場合もあるので、要注意です。

 

さらに、薬剤が傷口にしみるなどのデメリットも考えられます。そのため、インプラント手術後の数日間は、うがい薬の使用を禁止する歯科クリニックもあります。うがい薬を使っていいか、かかりつけの歯科医師に確認するようにしましょう。

2-4.使用するうがい薬の成分を確認する

イソジンをはじめとするヨード系のうがい薬は、インプラントに悪影響を及ぼす可能性があります。インプラント手術から時間が経過しても、リスクはあるため要注意です。

 

成分を確認せずに市販のうがい薬を使用した場合、インプラントにダメージを与える成分が配合されているかもしれません。インプラント後にうがい薬を使うのであれば、事前に歯科医師に相談して、悪影響のないものを選ぶようにしましょう。

3.うがいだけじゃない!インプラント後に気をつけるべきこと

イ ンプラント手術直後の注意点は、うがいだけではありません。代表的なものをまとめました。

 

3-1.麻酔が効いている間は食事を控える

インプラント手術は、局所麻酔をして行います。手術が終わってからも麻酔の効果はしばらく続くので、切れたのを確認してから食事をしましょう。

 

麻酔の効果が続いていると、口の中の感覚が鈍っているため、食事中に誤って舌や頬を噛んでしまう可能性があるからです。

3-2.食べ物に気をつける

手術後の口の中はデリケートなので、熱いもの・硬いものや弾力のあるもの・辛いものといった刺激になる食べ物は避けましょう。手術から1週間程度は食べ物に注意してください。

 

・熱いもの

熱すぎるものは、通常の歯ぐきや口のなかの粘膜であっても火傷の原因になります。インプラント後の傷口に熱いものが触れると強い刺激となり、傷の治りが遅くなってしまうかもしれません。

 

・辛いもの

辛いものは刺激が強く、傷口の痛みや腫れを悪化させるリスクがあります。また、甘すぎるものなども、刺激となるので注意しましょう。

 

・硬いものや弾力のあるもの

せんべいやフランスパンといった硬いものやだんごなどの弾力のあるものは、何度も噛まないと食べられず、傷口に悪影響を与える可能性があります。また、インプラント手術直後は普段通りに噛めないため、他の歯に大きな負担がかかったり、あごがダメージを受けたりする原因になる場合も少なくありません。

 

手術当日は、熱すぎないおかゆやスープ、麺類、ゼリーといった柔らかい食べ物がおすすめです。インプラントを入れた側と反対側の歯で噛むと、傷口の負担を軽減できます。

3-3.アルコールを控える

アルコールを飲むと血行が促進され、炎症が悪化し、出血・痛み・腫れなどのリスクが高まります。手術当日はもちろん、1週間程度はお酒を控えましょう。

 

また、熱すぎる・冷たすぎる飲み物や炭酸飲料も傷口の刺激になるので、手術直後は飲まない方が無難です。

3-4.激しい運動は避ける

運動すると血のめぐりがよくなり、出血や痛みなどが悪化する可能性があります。手術から2~3日はウォーキングをはじめとする軽い運動も避け、激しい運動は1週間以上経過してからにしましょう。

3-5.お風呂は湯船に浸からずシャワーで済ませる

湯船に浸かって身体を温めると、血行がよくなり、痛み・腫れ・出血が起こる場合があります。手術直後の数日間は、湯船に浸からずシャワーで済ませると安心です。サウナも血行を促進するので、控えましょう。

3-6.治療箇所を避けて歯を磨く

インプラント手術直後の治療箇所はデリケートな状態なので、傷口を避けて歯磨きしましょう。傷口に歯ブラシが触れることで、治るのが遅くなる・傷口が開くといったリスクがあるからです。

 

ただし、歯磨きを全くしないのもNGです。口の中に汚れが付着したままだと、傷の治りが遅くなったり、細菌感染が起きたりする可能性があります。治療した部分以外はいつも通りに歯磨きし、清潔な状態を保ちましょう。

3-7.処方された薬をしっかり飲む

インプラント手術後は歯科医師から、細菌の増殖をおさえる抗生物質や痛みを和らげる鎮痛剤などが処方されます。

 

傷口の痛みや異常がないからといって、勝手に服用を止めると、細菌感染が起きて傷口が化膿するなどのトラブルが起きる可能性があります。必ず歯科医師の指示に従って服用するようにしましょう。

 

もし鎮痛剤を飲んでも耐えきれないほど痛む場合は、化膿などの異変があるかもしれないので、すぐに歯科医師に相談してください。

3-8.タバコをすわない

タバコに含まれる「ニコチン」には血流を妨げる作用があるため、傷口の治りが遅くなる・あごの骨とインプラント体の結合が進まなくなる・歯周病が悪化するといったトラブルの原因となります。インプラントをした後は、禁煙するのをおすすめします。

4.インプラント後もうがい薬は使える!注意点を守って長持ちさせよう

インプラント後も、うがい薬を使うことはできますが、イソジンをはじめとするヨード系のうがい薬は避けましょう。インプラントに使用するチタンを腐食させる作用があるため、インプラントが使えなくなってしまうかもしれません。

 

また、インプラント直後は口の中がデリケートな状態なので、うがいの強さや回数、うがい薬の使用には充分注意しましょう。

 

また、インプラント手術後しばらくは、傷口にダメージを与えないよう、食事・飲み物・入浴などさまざまな注意点があります。歯科医師の指示を守って気をつけることで、インプラントを長持ちさせられます。

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