- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラント治療中に「引っ越しが決まった」「歯科クリニックの治療が不満」といった理由で、治療の中断・転院をしたくなるケースがあります。
しかし、インプラント治療中に、中断・転院できるのかわからないと悩む人も多いのではないでしょうか。この記事では、中断・転院が可能なのかや注意点などを解説します。
目次
- 1.インプラント治療中の中断はNG?その理由とは
- 1-1.仮歯の破損や脱落
- 1-2.最終的に入れる人工歯が合わなくなる
- 1-3.感染リスクがある
- 1-4.インプラントが脱落する
- 1-5.見た目が悪くなる
- 2.インプラント治療中の転院ってどうなの?転院したい場合の対処法
- 2-1.引っ越しに伴う転院の場合
- 2-2.歯科クリニックに不満がある場合
- 3.転院する場合の注意点とは
- 3-1.紹介状を書いてもらう
- 3-2.使用しているインプラントについて確認する
- 3-3.保証内容の確認
- 3-4.費用について話し合う
- 4.転院先を選ぶ際のポイントとは
- 4-1.転院でのインプラント治療を受け入れているか
- 4-2.同じインプラントを取り扱っているか
- 4-3.インプラントの治療実績が豊富か
- 4-4.治療費用はどのくらいか
- 4-5.質の高いメンテナンスを受けられるか
- 5.インプラント治療中に中断・転院するときは慎重に!
1.インプラント 治療中の中断はNG?その理由とは
インプラント治療中は、仮歯を入れた後だとしても、基本的には中断しない方がよいでしょう。主な理由は下記の通りです。
1-1.仮歯の破損や脱落
仮歯でもある程度はかむ機能を回復できますが、あくまでも一時的なものです。プラスチックでできているため、最終的に入れる人工歯と比べて耐久性が低く、長期間にわたり使用するうちに破損したり、外れたりしてしまうかもしれません。
インプラントの寿命の目安は10〜15年以上なので、中断せずに人工歯を入れた方が長く快適に使えます。
1-2.最終的に入れる人工歯が合わなくなる
仮歯を入れる前に治療を中断してしまうと、歯は隙間を埋めるように動く性質があるため、向かい合う歯や両隣の歯が寄ってきて、歯並びやかみ合わせが悪くなるリスクがあります。
また、仮歯のまま放置した場合も、同様のリスクがあります。仮歯は摩擦やかむ力によって少しずつすり減っていくため、長い間使っていると歯の間に隙間が生じるためです。
最終的なかぶせものである人工歯は、治療時点の歯並びに合わせて製作しているので、手術から時間が経過した後に装着しようとしても、合わなくなっている可能性があります。
その場合、人工歯をつくり直す必要があり、費用や治療期間がさらにかかるかもしれません。
1-3.感染リスクがある
仮歯を装着しておらず、インプラント体が粘膜を貫通して口の中に露出している場合は、細菌による感染リスクがあります。
また、仮歯を入れていたとしても感染リスクはあります。仮歯は細菌感染からインプラント箇所を守る役割があるのですが、摩擦やかむ力によってヒビ割れなどの破損が起きた場合、そこから細菌が侵入するかもしれません。
細菌に感染すると、炎症による痛みや腫れが起きるだけでなく、インプラントが抜け落ちて再治療が必要となる可能性もあるので、要注意です。
1-4.インプラントが脱落する
仮歯がすり減ってかみ合わせが変化すると、ものをかんだ時にインプラントに過剰な負荷がかかり、インプラントが脱落する場合があります。
インプラントが外れた場合、自分で元の位置に戻すと細菌に感染するリスクがあるので、必ず歯科クリニックの診察を受けましょう。
1-5.見た目が悪くなる
仮歯はプラスチックでできているため、食べ物や飲み物の色が残りやすく、長期間使用しているうちに変色して見た目を損なう可能性があります。
また、仮歯を長期間使用することによる歯並びの変化も、見た目に影響を与える場合があるでしょう。
このように、インプラント治療の中断はさまざまな悪影響につながります。引っ越しや体調、仕事・家庭の都合などで中断せざるを得ない場合は、まずはかかりつけの歯科クリニックに相談しましょう。
もし、何らかの理由でインプラント治療を受けている歯科クリニックに通えなくなったとしても、歯や口の中の健康のために、放置するのではなく他の歯科クリニックの診察を受けるのをおすすめします。
2.インプラント治療中の転院ってどうなの?転院したい場合の対処法
インプラント治療の中断はさまざまな悪影響の原因となりますが、転院にもリスクがあります。
インプラントは緻密な治療計画に基づいて行われるため、治療中はもちろん、治療後のメンテナンスも同じ歯科クリニックで行う方がスムーズです。
また、インプラントメーカーは多数あり、ネジやドライバーなど治療・メンテナンスに使用する器具や素材なども、インプラントごとに異なります。そのため、インプラント治療を引き継いでくれる歯科クリニックが見つからない可能性もあるでしょう。
さらに「保証制度」の問題もあります。保証制度とは、インプラント治療後にトラブルが起きた場合、一定の条件を満たしていれば、無償または格安で再治療やメンテナンスを受けられる制度です。加入している保証制度によっては、転院すると対象外となるので注意してください。
上記のような理由から、インプラント治療中や治療後の転院は避けた方がよいといわれています。転院したいと思ったら、まずは下記のような対処法を試してみましょう。
2-1.引っ越しに伴う転院の場合
スケジュールにもよりますが、治療中でも毎週通院が必要なケースはほぼありません。また、治療完了後のメンテナンスは数ヶ月に1回ペースです。
遠方への引っ越しだと通うのが難しい場合がありますが、車・電車・バスで通える範囲であれば、転院をしない方が無難でしょう。また、治療完了までは元の病院に通い、メンテナンスは他の病院で受けるといった方法もあります。
2-2.歯科クリニックに不満がある場合
「予約が取りにくい」「治療内容がわかりにくい」など、歯科クリニックに不満がある場合は、まずは担当医に不安や要望を相談してみるのをおすすめします。患者の抱える不満や不安のなかには、歯科クリニックに伝えれば改善できるものはたくさんあります。
相談してみて対処してもらえるようであれば、引き続きその歯科クリニックで治療を受ける方がスムーズに治療できるかもしれません。
もし、話をしっかり聞いてくれない、問題が解決しないといった場合は、転院を視野に入れるのも方法のひとつです。
3.転院する場合の注意点とは
遠方への 転居や治療への不満が改善されないなどやむを得ない理由で転院する場合、下記のような点に注意しましょう。
3-1.紹介状を書いてもらう
治療を受けている歯科クリニックに紹介状を書いてもらえば、これまでの治療の経過や使用したインプラントの種類といった、転院先での治療に必要な情報をわかりやすく正確に伝えられます。ただし紹介状の発行には手数料がかかります。
3-2.使用しているインプラントについて確認する
インプラントを埋め込み治す場合など、使用しているインプラントメーカーの専用器具を使わなければ対処できないケースもあります。
インプラントメーカーは数多くあり、どのメーカー製のインプラントを使っているかは歯科クリニックによって異なります。
転院する場合は、インプラントの製造元・インプラントの種類・インプラントの直径の3点を必ず確認しておきましょう。
また、複数のインプラントを入れる場合、場所ごとに異なる種類のインプラントを入れるケースもあるので、使用している全てのインプラントの情報を把握するのが大切です。
3-3.保証内容の確認
保証制度を利用できる条件は、使用するインプラントメーカーや歯科クリニックによって大きく異なります。
クリニック独自の保証制度を利用している場合、転院すると基本的に保証は受けられません。メーカーの保証制度や第三者機関の保証制度であれば、条件を満たせば保証対象となる可能性があります。いざ転院してから慌てないよう、保証内容を確認してから歯科クリニックを変えるようにしましょう。
3-4.費用について話し合う
すでに治療費を全額支払っていて治療途中で転院する場合は、返金についても歯科クリニックと話し合わなければいけません。
転院するとトータルの治療費は高くなることが多いため、ある程度治療が進んでいる場合など、治療完了までは転院しない方がよいケースもあります。
4.転院先を選ぶ際のポイントとは
スムーズなインプラント治療のために、転院先を選ぶ際は次のようなポイントに注意しましょう。
4-1.転院でのインプラント治療を受け入れているか
歯科クリニックによっては、他院からの転院を受け入れていないケースもあります。また、特殊なインプラント治療が必要な場合は、対応できる歯科クリニックがさらに限られるので要注意です。
ホームページをチェックして、転院での治療の可否や対応できる治療法を確認すると効率的に歯科クリニックを探せます。特にセカンドオピニオンを歓迎しているところであれば、受け入れ体制が整っている可能性が高いでしょう。
4-2.同じインプラントを取り扱っているか
インプラント治療は非常に高い精度が求められるため、インプラントに合わせて、使用するパーツや器具などが細かく決まっています。
転院先が同じ種類のインプラントを取り扱っていないと対応できないため、事前に歯科クリニックが使用しているインプラントを確認しておきましょう。
4-3.インプラントの治療実績が豊富か
インプラント治療を成功させるには、高度な知識・スキルが必要です。転院した患者を受け入れる場合、治療の経過をしっかり理解したうえで適切な対応をする必要があるため、より難易度は高くなります。
インプラントの治療実績が豊富な歯科クリニックであれば、経験を活かした適切な治療が期待できるでしょう。また、インプラントに力に入れている歯科クリニックであれば、検査機器やオペ室などの設備が充実していたり、幅広いメーカーのインプラントを取り扱っていたりする場合が多いので、転勤先として適しています。
4-4.治療費用はどのくらいか
インプラントは基本的に保険適用外のため、歯科クリニックによって治療費用が異なります。全く同じ治療であっても、数万円差が出る場合も少なくありません。
転院後に予算オーバーで困らないよう、事前に見積りをしてもらいましょう。
4-5.質の高いメンテナンスを受けられるか
インプラントを長持ちさせるには、治療後のメンテナンスも重要です。数ヶ月に1回、定期メンテナンスを受けることで、歯周病のような病気である「インプラント周囲炎」や人工歯への着色などのトラブルを防げます。
しかし、歯科クリニックによってはメンテナンスの質が低い、予約が取りにくいなど、充分なメンテナンスを受けられない可能性もあります。診察時に、メンテナンスの方法や予約の取りやすさなどについて確認しておくとよいでしょう。
5.インプラント治療中に中断・転院するときは慎重に!
インプラント治療中は、できるだけ中断や転院を避けましょう。特に、中断してしまうと、仮歯の破損や脱落・人工歯が合わなくなる・感染リスクが生じるなどさまざまなデメリットがあります。
インプラント治療は綿密な計画が必要なため、転院により治療に支障が出るケースもあります。また、保証制度の対象外となる可能性があるので注意が必要です。
やむを得ず転院する場合は、紹介状を書いてもらったり、インプラント情報や保証内容を確認したりするとスムーズです。
転院先選びでは、転院する患者を受け入れているか・同じインプラントを取り扱っているか・治療実績の多さに注目すると、納得のいく治療が受けられる可能性が高いでしょう。