インプラントと骨粗しょう症は関係がありますか?

インプラントは、あごの骨に穴を開けインプラント体を埋め込み、骨とインプラント体が結合してから、人工歯を固定する治療法です。骨に関係する治療のため、「骨粗しょう症でもできる?」と不安を感じている人も多いのではないでしょうか。

 

この記事では、インプラントと骨粗しょう症の関係や注意点、インプラント以外の歯を補う方法などについて解説します。

目次

1.骨粗しょう症とはそもそも何?

骨粗しょう症は、骨の密度が低下してもろくなり、骨が折れやすくなる病気です

 

骨粗しょう症になる原因は、「骨代謝」のバランスの乱れです。骨代謝とは、古い骨を壊して新しい骨をつくるという、骨の生まれ変わりのサイクルを指します。古い骨の破壊に、新しい骨の形成が追いつかなくなると、骨粗しょう症になります。

 

骨代謝のバランスが乱れる主な原因は、女性ホルモンである「エストロゲン」の減少による骨の再生能力の衰えや年齢です。女性が閉経してエストロゲンの分泌量が減ると、急速に骨量が低下します。そのため、骨粗しょう症は女性に圧倒的に多い病気です。

 

その他、遺伝的な体質や食生活の乱れ、極端なダイエット、喫煙なども骨粗しょう症の原因となります。

 

2.インプラントと骨粗しょう症の関係

骨粗しょう症であっても多くの場合は、インプラントができます。実際に、骨粗しょう症の患者にインプラントを行い、その経過を観察した結果、「特に問題はない」と報告している研究も存在します。

 

ただし、骨粗しょう症の患者がインプラントをする場合、いくつか注意点があります。

3.骨粗しょう症患者がインプラントを受ける時の注意点

骨粗しょう症患者がインプラントを受けるにあたって。気をつけるべき点を5つ紹介します。

3-1.治療に時間がかかる

骨粗しょう症の患者は、あごの骨量が少ない人が多く、通常よりもインプラント体とあごの骨が定着するまで時間がかかります。

 

通常はインプラント手術をしてから定着するまでの期間は3~6ヶ月程度です。しかし、骨粗しょう症の場合は2倍程度の期間、定着するのを待つと成功率が上がるといわれています。

3-2.薬の服用を一時的に止めなければならない場合がある

骨粗しょう症であっても、基本的に問題なくインプラント治療を受けられますが、「ビスホスホネート製剤」を服用している場合は要注意です。

 

ビスホスホネート製剤は骨の代謝を妨げ、骨が壊れるのを防ぐ効果があります。しかし、骨の代謝が起きないと、インプラント体とあごの骨は結合しません。

 

ビスホスホネート製剤を服用している患者が抜歯・インプラントといった骨に対する外科的治療を受けると、10万人に1人くらいの割合で、骨の治りが遅い・細菌感染する・骨が壊死するなどの予後不良が発生します。

 

ビスホスホネート製剤を含め、骨粗しょう症の薬を服用している場合は、事前に歯科医師と骨粗しょう症の主治医どちらにも相談しましょう。

 

一定期間服用を止める、インプラントに影響しない薬に切り替えるなどの対処が必要な場合もあります。

3-3.骨造成が必要な場合が多い

骨を増やすために行う手術を「骨造成」といいます。インプラント治療をするには、ある程度の骨量が必要です。あごの骨量が不足した状態でインプラント治療を受けると、インプラント体がぐらついて安定しない、インプラント体があご骨を突き抜けるなどさまざまなトラブルが起きるでしょう。

 

骨粗しょう症の患者は、インプラント体を支えるのに充分な骨量がない場合も多いため、骨造成によって骨量を補ってからインプラント手術をするケースがあります。

 

骨造成は、手術が必要なため身体がダメージを受ける・骨が増えてインプラント手術を受けられるようになるまで数ヶ月かかる・骨造成の費用がかかるといったデメリットがあります。

3-4.骨粗しょう症に対応したインプラント手術が必要

骨粗しょう症患者のインプラント治療では、通常のインプラント手術よりもあご骨に開ける穴を大幅に小さくします。小さな穴に太いインプラント体をねじ込むことで、骨に圧力がかかりインプラントの周囲の骨密度が高まり、しっかりインプラント体を支えられます。

3-5.インプラント周囲炎にかかると影響が大きい

「インプラント周囲炎」とは、歯ぐきなどインプラントの周りの組織が歯周病菌に感染して起きる病気です。

 

初期のインプラント周囲炎の症状は、歯ぐきの軽い炎症が主で一般的に痛みなどの自覚症状はありません。しかし、症状が進行すると炎症によって歯ぐきやあごの骨が破壊されます。骨量が少なくなった結果、インプラント体を支えきれなくなり、ぐらついたり抜け落ちたりしてしまう場合もあります。

 

骨粗しょう症の患者は、骨がもろいため、インプラント周囲炎によってあご骨に炎症が起きると、骨が減少しやすく、ぐらつきや脱落が起きるリスクが高いと考えられます。

 

インプラント周囲炎を防ぐには、歯科クリニックの定期メンテナンスに欠かさず通う、毎日の歯磨きをしっかり行うの2点が重要です。

 

定期メンテナンスでは、歯科健診とクリーニングを行います。健診でインプラント周囲炎を早期発見し、クリーニングで歯垢・歯石を落とし歯周病菌の増殖を防ぐことで、インプラント周囲炎の悪化を防げます。

4.インプラント以外で歯を補う方法

失った歯を補うインプラント以外の方法として、入れ歯やブリッジがあります。どちらもインプラントとは異なり、あごの骨量が少なくてもできる治療法です。それぞれの特徴について解説します。

4-1.入れ歯

入れ歯は、人工歯と人工歯を支える床(しょう)の部分からできている、歯を補うための器具です。入れ歯には、全ての歯を失った場合に使う総入れ歯と一部分の歯を失った場合に使う部分入れ歯があります。

 

総入れ歯は床の部分を口の中の粘膜部分につけて固定し、部分入れ歯は金属製のバネを両隣の歯にかけて固定します。

 

入れ歯は、外科手術が必要ない・保険適用で治療できる・治療期間が短いといったメリットがあります。

 

ただし、噛む力が弱い・食事中や会話中にずれる・見た目に違和感が出る・噛む力が弱いため骨がやせてしまうといったデメリットもあります。

 

治療期間は、保険診療の場合は2週間~1ヶ月、より細かく調整する自費診療の場合は2~3ヶ月ほどです。

 

人によっては入れ歯の違和感が大きい場合があるので、まずは価格が安い保険適用の入れ歯をつくり、違和感があまりなければ自費診療でより高品質の入れ歯をつくるとよいでしょう。

4-2.ブリッジ

ブリッジとは、人工歯と両隣の天然歯に被せる冠がつながったもので、天然歯を削って固定します。

 

ブリッジは、インプラントには及ばないものの、噛む力が強く、見た目が自然な治療法です。また、インプラントと比べ費用が安く、治療期間も短めです。

 

しかし、健康な歯を削らなければならず、天然歯の寿命が短くなる原因になります。治療期間は1~2ヶ月が目安です。

5.インプラントにするメリットとは

インプラントにしなくても、入れ歯やブリッジで歯を補うことは可能です。さらに、入れ歯やブリッジであればあごの骨量に関係なく治療できます。

 

しかし、インプラントには他の治療法にはないメリットもあります。

 

5-1.しっかり噛める

インプラントは、あごの骨に歯根の代わりとなるインプラント体を埋め込んで骨と結合させるため、入れ歯やインプラントと比べ、安定性が高い治療法です。

 

天然の歯とほとんど変わらないくらいまで噛む力を回復でき、硬いものや弾力のあるものなども問題なく食べられます。

5-2.あごの骨がやせるのを防げる

骨には、刺激が少ないと次第にやせていく性質があります。インプラントであれば、天然歯と同じくらい強く噛めるため、あごの骨に充分な刺激が加わり、やせにくくなります。

 

骨粗しょう症の患者はあごの骨量が少ないため、骨がやせにくいインプラントにするメリットは大きいといえるでしょう。

5-3.周囲の天然歯を守れる

ブリッジや入れ歯は、残っている歯で人工歯を支えるため、周囲の歯に負担がかかります。特にブリッジは、両隣の天然歯を削るので、負担が大きい治療法です。天然歯に負担がかかると、寿命が短くなり、歯を失うリスクが高まります。

 

インプラントは、一般的にインプラント体を1本ずつ埋め込み人工歯を装着するため、他の歯への影響はほとんどありません。

5-4.見た目の違和感が少ない

インプラントは、天然歯と同じように歯ぐきから歯が生えているような自然な仕上がりになります。色や質感も違和感がほぼありません。

 

入れ歯やブリッジは、金具が見える、保険適用の場合は色や質感が天然歯と大きく異なるといったように、違和感のある仕上がりになるリスクがあります。

5-5.お手入れがしやすい

入れ歯は、食事のたびに取り外して磨いたり、夜に洗浄液につけて洗ったりする必要があり、天然歯の歯磨きでの手入れと比べて手間がかかります。

 

インプラントは、歯科クリニックでの定期メンテナンスに通う必要がありますが、毎日のお手入れは基本的に歯磨きだけで問題ありません。

6.骨粗しょう症でもインプラントはできる!まずは歯科医師に相談しよう

インプラントは、あごの骨に穴を開ける処置がありますが、骨粗しょう症でも多くの場合は治療できます。

 

ただし、治療に時間がかかる・薬の服用を一時的に止める場合がある・骨造成が必要な場合が多いといった点に注意しなければいけません。

 

入れ歯やブリッジで歯を補うこともできますが、噛む機能や見た目はインプラントの方が優れています。歯科医師と相談し、自分にぴったりの治療法を見つけましょう。

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