- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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「歯周病と全身疾患」は人間で例えると、「親子」のように関わりが深いです。
お互いに別々の病気で、特に関係がなさそうに見えますが、多くの研究でも密接な関係があるのがわかっています。
また、「全身疾患の人しか関係無い話しでしょ?」と思われがちですが、そんなことはありません。歯周病が、身体への健康被害を及ぼすこともあるのです。
そこで、今回は歯周病と全身疾患の関係について解説していきます。
具体的には、
・歯周病と全身疾患がどう関係しているのか
・関係していることで、身体にどんな影響があるのか
・予防や対策はあるのか
といった、基本的なことを簡単に説明していきます。
歯周病にかかっている方や全身疾患を持っている方、また家族にどちらかの病気を持っている方は、是非一度、読んでみて下さい。
目次
- 1. 歯周病と全身疾患の関係性
- 1-1:狭心症・心筋梗塞
- 1-2:脳梗塞
- 1-3:糖尿病
- 2. 全ての疾患に共通する「4つの対策」
- 2-1:歯周治療をする
- 2-2:ホームケア
- 2-3:定期検診に通う
- 2-4:生活の改善
- 3. 歯周病と全身疾患は切っても切れない関係
1. 歯周病と全身疾患の関係性
まず、全身疾患とは次のような病気のことです。
・狭心症・心筋梗塞
・脳梗塞
・糖尿病
・誤嚥性肺炎
・骨粗鬆症
・早産・低体重児出産
・メタボリック症候群
それぞれの病気と歯周病には、一体どういった関係性があるのかを見ていきましょう。
1-1:狭心症・心筋梗塞
狭心症や心筋梗塞は、動脈硬化によって引き起こされる病気です。今までは不規則な食生活やストレスといった生活習慣が原因とされていました。
しかし、歯周病でも動脈硬化になることがわかっています。日本歯周病学会では、歯周病になっている人は、歯周病になっていない人に比べて、動脈硬化や心筋梗塞になっている人の割合が高いと述べています。日本歯周病学会 歯周病と全身の健康より
また、歯と歯茎の間には、歯根膜という膜があり、歯周病になると、菌によって歯根膜が破壊されて、歯茎の中に侵入しやすくなります。歯茎の中にある毛細血管の中に菌が入り込み、血管を傷つけながら血栓を生み出します。そうすると、血管は細くなり、心臓への血流が止まってしまい、狭心症や心筋梗塞を引き起こすのです。
1-2:脳梗塞
脳梗塞は脳の血管が詰まる病気です。脳梗塞も狭心症や心筋梗塞と同じで、血管を通して菌が侵入し、血栓を作ることで病気が発症します。
歯周病が原因で脳梗塞を引き起こすきっかけになり、脳梗塞の合併症が歯周病のリスクファクターにもなります。
リスクファクターとは、危険因子のことです。簡単にいうと、病気になる可能性が高くなること。例えば、パンはカビが生えると食べられなくなります。カビは、パンを湿気の多い場所に置いておくと生えますよね。このパンが病気になる(カビが生える)原因が湿気の多い場所。このパンのリスクファクターは、湿気の多い場所になります。
脳梗塞の合併症は次の2つです。
・半身麻痺、全身麻痺
・口の痺れ
・半身麻痺、全身麻痺
脳梗塞の合併症が原因で、半身麻痺や全身麻痺になることがあります。麻痺によって身体を思い通りに動かしにくくなるため、歯磨きが難しくなる場合があります。
・口の痺れ
口の痺れがあることで、うがいが十分にできなかったり、上手く噛めないことで、食べカスが多く口の中に残ります。
上記のような合併症が原因で、歯周病になる可能性が高くなることは、日本脳卒中学会も認めています。
参考文献:日本脳卒中学会
1-3:糖尿病
糖尿病は身体に取り入れた糖を分解できずに、血液に多く残ってしまった状態が続く病気です。歯周病と糖尿病はお互いがリスクファクターになります。それぞれにどんな影響をもたらすかを紹介していきます。
・歯周病から糖尿病の影響
歯周病菌が歯茎の毛細血管から侵入して、身体全体へと回っていきます。その時に糖の分解を助けるホルモン、インスリンの働きの邪魔をして糖尿病を発症させることがあります。
また、歯周病になっている人は、なっていない人に比べて、2倍以上の確率で糖尿病になる可能性があります。
・糖尿病から歯周病の影響
糖尿病になると身体の抵抗力が弱まったり、傷が治りにくくなったりします。抵抗力が弱い時は菌に感染しやすく、歯周病にもなりやすく、進行が早いと言われています。
参考文献:歯周病と糖尿病の合併症との関連性について
1-4:誤嚥性肺炎
誤嚥とは食べ物や菌が、食道ではなく、肺に流れてしまうことです。
誤嚥性肺炎とは、誤嚥で入ってしまった菌が原因で肺炎を起こしてしまう病気のことです。
特に高齢の方は、飲み込む力や咳き込む力が年齢と共に弱くなってくるので、誤嚥性肺炎を引き起こしやくなります。
また、誤嚥性肺炎の原因になる菌のほとんどが、歯周病菌であることがわかっていて、
これは、口の中の乾燥や口の機能の低下が原因で歯周病が発症しやすい環境を作り出していることが影響しています。
参考文献:日本歯周病学会 歯周病と全身の健康
1-5:骨粗鬆症
骨粗鬆症は、骨の強度が低下して、骨が脆くなって骨折しやすい状態になる病気です。
この病気のほとんどは、女性に多くみられます。
その原因として、閉経後の女性ホルモンの低下が関係しています。
骨は再生と破壊を繰り返していて、女性ホルモンの1つであるエストロゲンが、骨の破壊を防ぐ働きをしています。しかし、閉経後はエストロゲンの分泌が弱くなってしまうため、骨の活動のバランスが崩れて、骨粗鬆症になってしまうのです。
骨の破壊は身体だけではなく、歯を支えている骨にも影響してきます。
骨粗鬆症の進行が早いと顎の骨も吸収されて、歯周病の進行も加速すると言われています。
そのため、骨粗鬆症の治療をすることで、歯周病の進行を止めたり、逆に歯周病治療をして、骨粗鬆症の進行を減退できたという報告もある程、骨粗鬆症と歯周病の関係は密接であると、日本骨粗鬆症学会で研究奨励賞を受賞した、稲垣教授の文献でも証明されています。
参考文献:愛知学院大学歯学部 稲垣幸司
1-6:早産・低体重児出産
女性は妊娠すると歯周病にかかりやすくなります。
それは、エストロゲンという女性ホルモンが歯周病菌と結び付くからです。他にも、悪阻で歯磨きができなかったり、口の中が常に渇いていたりする状態が妊娠中は続きやすいことが原因です。
妊娠中に重度の歯周病になると、菌が血管を通して胎盤まで侵入することで、早産や低体重児の出産になる確率が高くなります。その確率は、歯周病になっていない妊婦さんと比べて約2~4倍も多くみられます。
参考文献:日本歯周病学会 歯周病と全身の健康
1-7:メタボリック症候群
メタボリック症候群は肥満に加えて、高血圧、高血糖、高脂質を合わせ持った病気です。治療せずに放置していると、動脈硬化や脳卒中になる可能性があります。そのため、歯周病にもなりやすくなるのです。
また、メタボリック症候群になっていない人に比べて、歯周病になるリスクは約1.5倍もあると研究でわかっています。
参考文献:メタボリックシンドロームに及ぼす歯周病の影響についての総合的研究
2. 全ての疾患に共通する「4つの対策」
それぞれの疾患に効果的で、共通する対策が4つあります。
それは
・歯周病治療をする
・ホームケア
・定期検診に通う
・生活習慣の改善
の4つです。
1つ1つ詳しく解説していきます。
2-1:歯周治療をする
歯周病や疾患を悪化させないためにも、歯周病になっている方は歯周治療を受けましょう。
そのまま放置していてもよくなりません。時間の経過とともに悪化していくだけです。
歯周病治療では歯石等を除去する他、ケースによっては歯茎の奥深くまで入り込んだ細菌を外科処置で除去することも行います。治療をすることで、歯茎が引き締まり、歯茎の中に歯周病菌が侵入するのを防ぎます。
2-2:ホームケア
ホームケアとは、普段する歯磨きのことです。
治療をして、歯周病が改善しても、普段の歯磨きが疎かでは歯周病が再発する可能性があります。そのため、自分の口の状態に合った歯磨きや、しっかりと汚れを落とす歯磨きを習慣にすることが必要になってきます
2-3:定期検診に通う
定期的に歯科に通うことは、歯と身体の健康に繋がります。
例えば、誤嚥性肺炎の方の場合では、
・嚥下ができているかの確認や練習ができる
・定期的にクリーニングをすることで、菌の数を減らす
といったことができ、歯周病と疾患の両方の予防ができます。
2-4:生活習慣の改善
偏った食生活、喫煙、飲酒、運動不足は、歯にも身体にも悪影響です。
特に喫煙は、歯周病の進行を加速させたり、肺炎のリスクを高めたりします。
一旦、立ち止まり自分の生活週刊を見直すことも重要です。
3. 歯周病と全身疾患は「切っても切れない関係」
歯周病と全身疾患は、関係無いようで深いところでの繋がりがあり、切っても切れない関係性です。
そのため、どちらかだけを治療すれば良いということではありません。歯周病と全身疾患の両方の治療をすることで、健康を維持できるのです。
歯周病の方は歯周治療を最後まで受けること。治療後も定期的なクリーニングをして歯周病予防することが、歯と身体の健康を作っていくのに重要です。
歯科の担当医と内科の担当医と相談しながら、一緒に病気を改善していきましょう。