激安インプラントの安全性に関して

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

インプラントは自費診療であり保険診療報酬の点数が決められていないため、歯科医院によって治療費が異なります。

クリニックによっては、相場の半額以下で施術をしてくれるという広告を出しているところもあるほどです。

これらの激安インプラントは安全なのか、気になるその内容についてご紹介します。

目次

1 インプラントの費用の相場は総額1本30~50万円

1本15万円を下回るような激安インプラントも存在しています。

15万円でも高い、と感じるかもしれませんが、相場の半額以下で治療ができると考えれば、かなりお得であることは間違いないでしょう。

1-1 通常は2回法

一般的なインプラントは、2回法という施術で行われます。2回法では、まず歯根の代わりとなるインプラントを埋入して骨造成を行い、インプラントが固着したことを確認してから再度歯肉を切開して、アバットメントというパーツを挿入します。

アバットメントは、人工歯とインプラントをつなぐための接続パーツです。

アバットメントがあることで、インプラントの挿入角度によらず、人工歯を垂直にくっ付けることができるようになっているのです。

1-2 激安インプラントは1回法の場合が多い

一方、激安インプラントでは、アバットメントがインプラントと一体になっているものを埋入する1ピース1回法で行われるケースがよくあります。

1回法ではインプラントとアバットメントを同時に骨に埋め込み、固着が確認できたのちにアバットメントに人工歯をかぶせる、という工程で治療が終了します。

 

最初からアバットメンットがインプラントと接合しており、患者それぞれにあった角度に修正ができませんので、インプラント自体を垂直に埋入させておかなければなりません。それだけでなく、歯の自然な平行性を保つために、1本の歯に対して1本のインプラントを挿入する必要があります。

 

人工歯についても、不自然になってしまいやすいという難しさがあります。1回法の場合、歯を支えるあごの骨の角度に対して必ず垂直にインプラントを埋めざるを得ません。人工歯もあごの骨に対して垂直にしか生やせなくなってしまうため、歯列が不自然になってしまう可能性があるのです。

1-3 激安インプラントは1本10万円以下になるケースも

それでも激安インプラントが大きな魅力となるのは、やはりその価格です。

クリニックによっては1本10万円以下での施術になる場合もあり、お金に余裕はなくてもインプラントを受けたいと考えている人にとっては、強い味方となる存在であることは間違いありません。

2 激安インプラントのメリットとデメリットは?

こうした激安インプラントで気になるのは、その安全性を含めたメリット・デメリットです。

2-1 激安インプラントのメリット

何といっても安いことは大きなメリットです。

実際にそうした医院を選ぶかどうかは別として、他の平均的なインプラント治療の価格を引き下げる競争力が発生することも重要となります。

 

また、選択肢として価格帯の安いインプラントが残されていることも重要です。

また、もし1回法でインプラントを行っている場合は、手術回数が1回で済むため、肉体的負担も軽微で済みますし、治療にかかる期間も比較的短くなります。

2-2 激安インプラントのデメリット

1回法の場合、埋め込んだインプラントに対して十分な骨造成を行うことができない場合があります。

そのため、顎の骨が薄いようなケースでは、1回法での治療が難しくなることから、激安インプラント治療自体が受けられない可能性があるのです。

 

歯周病など、口内環境が良くない場合には、細菌感染のリスクが高いという難点があります。

1回法では、アバットメントが露出した状態で長期間骨との癒合を待つこととなります。

この際に口内で細菌が繁殖している状態だと、アバットメントと歯肉の境目から化膿するかもしれません。

また、人工歯が周囲の天然歯から浮いて目立ちやすくなってしまいやすいというデメリットもあります。

 

2-3 メリット・デメリットは自分で判断を

激安インプラントで治療した場合には、保存性に疑問があるケースが少なからずあるようです。

しかし、これについては継続治療などでかかる費用も安価に抑えようとした結果、必要な定期通院をサボったり、口腔内の衛生に気を遣わなかったりして、インプラントがすぐにダメになってしまっているのではないか、という指摘もあります。

 

口内環境の状態がよく、またあごの骨が十分に厚い場合であれば、激安インプラントを受けることが可能でしょう。

しかし、外見的な美しさにこだわりがある場合や、できる限りリスクを抑えて治療を進めたい場合には、必ずしも激安インプラントがいいというわけでもありません。

メリット・デメリットを踏まえたうえで、どのような施術を受けるかを決めていきましょう。

3 なぜ激安でインプラントができる?

気になるのが、「どうして10万円程度で行えてしまうのか」ということです。

もちろん、利益を削るだけで半額以下に抑えることは出来ませんので、それなりの理由がある、と考えるのが妥当です。

3-1 部品費・工程の削減(1ピース1回法の場合)

インプラントとアバットメントが一体になったインプラント体を埋め込む1ピース1回法で施術を行う場合、まずは部品が1つ減り、それだけで費用が低減されていると考えられます。

 

1回法であれば、手術の回数が2回から1回に減りますので、それだけ治療費自体も安くなるのです。

ここまでなら、まだそれほど大きな問題にはなりません。

 

気を付けたいのは、安全性に対して疑問符がついてしまうようなケースです。

 

インプラントは高度な歯科治療技術が求められますし、治療に用いられるインプラント自体の信頼性も非常に重要なものとなります。

しかし、信頼性の高いインプラントは高コストになりやすく、激安インプラントに使えるような価格では仕入れることができません。

 

そこで用いられるのが、激安の海外輸入品です。

インプラント自体だけでなく人工歯に安価な素材を用いれば、さらにコスト自体は下げることができます。

もちろん一定の基準を満たした素材として売られているはずですが、中には粗悪品が紛れ込んでいる場合もあり、やはりある程度高額なものに比べれば、信頼性は低下してしまいます。

 

また、こうした安価な輸入材の場合、保証が付いていない可能性もあります。

経過によって不良が発生しやすいインプラントだからこそ、保証がどうなっているのかについては事前にしっかり確認しておきましょう。

3-2 診療経験の浅い歯科医師が担当している?

インプラント施術には非常に高い技術・知見が要求されます。

しかし、高い技術や多くの執刀経験を持つ歯科医に対しては、高い報酬(給料)を支払わなければ働き続けてくれません。

そこで、経験の浅い歯科医師を雇って、インプラント治療の対応に当たらせているケースが考えられます。

企業が支出する費用の中でも人件費は大きなウェイトを占めていますので、ここを削減できれば、確かに安くインプラント治療を提供することはできるでしょう。

その代わり、技術力が低下してしまっているため、安全性について疑問視されてしまう場合もある、ということになります。

3-3 悪質な詐欺まがいの広告も報道されている

クリニックによっては、詐欺的とも言える広告を打って患者を集めているようなところもある、という報道が過去になされています。

「1本○万円から治療可能」と大々的に掲示しているものの、実際にはその施術を受けることが出来ないだとか、手術費用が別途で請求されるなどといったことが報告されているのです。

こうしたケースはごく稀であるとは思いますが、あまりにも安すぎる広告である場合は、その内容の真偽について一度考えてみたほうがいいかもしれません。

4 激安インプラントでも安全性は担保されているはずだが……。

激安インプラントであれば、高額な治療との経過、仕上がりの差が出ることは避けられません。

安い場合は安いなりの仕上がりになる、ということは理解しておく必要があるでしょう。

それ以上に、口腔内衛生を悪化させるような悪質な治療が行われてしまうケースも無いとは言い切れません。

これは、激安インプラント自体が悪いのではなく、特定のクリニックの治療方針が合っていないだけ、という可能性もあります。

 

インプラント治療に対して自分が払える金額というものもあるとは思いますが、まずはそれぞれの歯科医院に行って、インプラント治療のメリット、デメリットについて確認してみましょう。

 

もし激安インプラントの治療を行っており、かつ異常なまでにインプラント治療を勧められた場合は、ほかの歯科医院でのセカンドオピニオンを受けることをおすすめします。

 

また、高額なインプラントであっても、激安インプラントであっても、治療中、治療後のケアや定期通院は必須であり、怠ればインプラントの寿命がぐっと短くなるリスクが高まることは念頭に置いておきましょう。

 

いずれにせよ、後悔のない選択のために、念入りな情報収集や複数の歯科医院を訪れることが望ましいと言えます。

 

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