歯を失うと、食事や会話など日常生活の様々な面で大きな影響が出ます。インプラントとブリッジは、どちらも歯を補う代表的な治療法です。

インプラントまたはブリッジを検討したことのある方は多いと思います。しかし、インプラントとブリッジの併用治療については、はじめて聞く方も多いのではないでしょうか？

この記事では、インプラントとブリッジの併用治療について詳しく解説します。

インプラントとブリッジの併用について解説する前に、それぞれの概要を説明します。

インプラントは、外科手術によって、チタンなどでできたインプラント体をあごの骨に埋め込み、人工歯をかぶせて固定する治療法です。インプラント体はあごの骨と固く結合することで安定し、天然歯とほぼ変わらないレベルまで噛む力を回復できます。

また、人工歯があごから生えているように見えるため、見た目も自然です。寿命が長く、手術から10年以上経過しても9割以上が使用できます。

基本的に保険が適用されず、1本あたり30万～40万円と治療費が高いこと、インプラント体とあごの骨の結合を待つため、治療期間が半年から1年くらいかかるといったデメリットもあります。

ブリッジは、失った歯の両隣の歯を削って土台にし、両隣の歯にかぶせる部分と一体化した人工歯をかぶせる治療法です。

1本あたりの治療費は、保険適用であれば1万〜2万円、自由診療であれば8万〜15万円が目安です。治療期間は1〜2週間ほどです。

入れ歯よりも噛む機能が優れており、見た目も自然です。特に自由診療であれば、天然歯とほぼ変わらないレベルまで外観を回復できます。また、インプラントと比べ、費用や治療期間の負担が軽いのも特徴です。

ただし、健康な歯を削り、失った歯の分も噛む力がかかるため、土台となる歯の負担が大きいというデメリットがあります。虫歯などによって歯の寿命が短くなる可能性があるので要注意です。

さらに、インプラントよりと比べると噛む力が弱く、天然歯の6割程度までしか回復しません。

インプラントとブリッジの主な特徴を表にまとめました。自分に合った治療法を選ぶにあたり、参考にしてください。

インプラントとブリッジを併用することで、それぞれのメリットを活かしつつ、デメリットを軽減できます。下記のような症例では、併用治療が効果的です。

例えば、歯が連続して3本欠損している場合、両端にインプラントを埋入し、その間をブリッジで連結します。

ブリッジの場合、失った本数分の歯の力が土台となる歯にかかり、3本以上の歯が連続して欠損していると負担が大きくなりすぎます。3本以上を失った場合は、ブリッジではなく入れ歯を選択することが多い傾向にあります。

インプラントと併用することで、土台となる歯にかかる負担を最小限にして歯を補えます。さらに、すべての歯をインプラントで補うよりも、本数を減らせるため、経済的なメリットも大きいでしょう。

あごの骨の量がインプラント体を十分に支えられる量より少ない場合、インプラント治療はできません。

歯周病であごの骨が溶けてしまった場合や、年齢により骨量が減っている場合は、骨を移植する等の方法で骨量を増やしてからインプラント治療をします。

骨量を増やす治療をすると、費用や治療期間の負担が大きくなります。

あごの骨量が十分でない部位はブリッジで補い、骨量が十分な部位にはインプラントを使用することで、骨を増やす処置をしなくても、効果的な治療ができます。

インプラントとブリッジを併用することで、どのようなメリットがあるのでしょうか？主なものを紹介します。

インプラントを入れるには、歯ぐきを切り開き、あごの骨にドリルで穴を開け、インプラント体を埋める外科手術が必要です。

インプラントを入れる本数が多くなるほど、傷ができる部分が多くなり、身体への負担が大きくなります。

また、埋め込んだインプラント体はあごの骨によって支えられます。あごの骨に多くのインプラント体を埋め込むほど骨量が減り、負担が大きくなります。

ブリッジを併用することで、あごの骨に開ける穴の数を減らし、負担を軽減できます。

インプラント治療は、基本的に保険が適用されません。外科手術が必要なこともあり、費用が高く、1本あたり30〜40万円が相場です。

インプラントを入れる本数が多いほど、費用の負担も大きくなります。自由診療のブリッジの費用は約8万〜15万円と、インプラントと比べて治療費が安い傾向にあります。

重要な部位にインプラントを埋入し、他の部位をブリッジで補うことで、費用をおさえつつ機能や見た目を十分に回復できます。

例えば、4本連続で歯を欠損した場合、すべてインプラントで補うと最低でも120万円ほどかかります。しかし、ブリッジを併用することで70万円前後から治療が可能になります。

通常のブリッジの場合、両隣の健康な歯を削って土台にする必要があります。インプラントを併用することで、健康な歯を削る必要はなくなります。

歯は削るともろくなり、寿命が短くなります。大切な天然歯を守るために、インプラントとブリッジを併用するのもひとつの方法です。

インプラントは咀嚼機能や見た目を大幅に回復できる治療法です。しかし、あごの骨量が少ない場合、インプラントを入れるのが難しい、手術による身体の負担が大きいなどのデメリットがあります。

ブリッジと併用することで、骨量が十分ある場所にはインプラントを入れ、骨量の少ない場所はブリッジで補う。目立つ前歯部分はインプラントにして、奥歯はブリッジで補うといったように、状況に合わせて柔軟な治療が可能です。

あごの骨量不足などの理由で、失った歯を全てインプラントにするのが難しい場合は、効果的な治療法だと言えるでしょう。

インプラントとブリッジを併用することで、手術による身体の負担や治療費を軽減できるといったメリットがあります。しかし、気をつけるべきデメリットもあるので、よく検討しましょう。

インプラントとブリッジを併用する際は、基本的に支えとなる歯2本とも天然歯かインプラントかどちらかです。インプラントと天然歯をブリッジでつなぐことはあまりありません。

ただし、インプラントと天然歯を連結するケースもまれにあります。その場合、インプラントと天然歯のどちらかに過剰な負担がかかる場合があります。

インプラント体ごと抜け落ちる・インプラントが破損する・天然歯が割れる・天然歯が折れるといったリスクがあるので、歯科医師とよく検討しましょう。

インプラント周囲炎は、歯周病菌がインプラントの周りにある歯ぐきに感染することで起きる病気です。歯ぐきの軽い炎症から始まり、進行すると歯ぐきやあごの骨が破壊されます。

あごの骨の量が減ることにより、インプラント体を支えきれなくなり、ぐらつきやインプラントが抜け落ちるといったトラブルが起きる可能性があります。インプラント周囲炎は歯周病と非常によく似た病気ですが、進行スピードが速く、気がついた時にはかなり進行している場合が少なくありません。

インプラントが使えなくなる主な原因のひとつといわれている恐ろしい病気です。

ブリッジは被せて装着するため、インプラントよりも構造が複雑になりやすく、汚れがたまりやすい傾向にあります。その結果、歯周病菌が増殖し、インプラント周囲炎のリスクが高まります。

インプラントとブリッジは、それぞれ治療法や特徴が異なります。併用して治療する場合は、それぞれの特性を理解し、患者の口の中の状態に合わせて最適な治療プランを立てなければいけません。

インプラントとブリッジ、両方の症例を多く経験し、優れた知識と技術を持ち合わせた歯科医師を選ぶ必要があります。

インプラントとブリッジはどちらも失った歯を補う治療法ですが、治療方法・噛む力・費用・治療期間など、さまざまな違いがあります。

3本以上の歯が連続して欠損している場合や、部分的に骨量が不足している場合など、インプラントとブリッジを併用して治療することがあります。

併用治療の主なメリットは、身体の負担をおさえられる・治療費の負担を減らせる・健康な歯を削る必要がない・患者の状態や希望に合わせて治療できるの4つです。

ただし、天然歯に負担がかかる・インプラント周囲炎になりやすい・治療の難易度が上がるといったデメリットもあります。

患者の口の中の状態や、治療に対する希望などによって、ベストな治療法は変わってきます。併用治療を希望する場合は、歯科医師とよく相談しましょう。