ザイゴマインプラントはどんな人に向いていますか?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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歯を失うと、食事や会話など日常生活の様々な面で大きな影響が出ます。インプラント治療は、失った歯の機能を回復する効果的な方法のひとつです。

しかし、上あごの骨量が極端に不足していると、通常のインプラント治療が難しいことがあります。そのような場合に選択肢となるのが、ザイゴマインプラントです。

この記事では、ザイゴマインプラントとはどのような治療法か、どんな人に向いているのか、そのメリットとデメリット、さらに成功させるためのポイントについて詳しく解説します。適切な治療法を選ぶために、ぜひ参考にしてください。

目次

1.ザイゴマインプラントとは何か

ザイゴマインプラントは、主に上あごの奥歯部分の骨が極端に少ないなど、通常のインプラント治療が困難な場合に行われる特殊なインプラント治療です。1998年にスウェーデンの歯科医師ブローネマルクによってコンセプトが考案され、その後商品化されました。

通常のインプラントが歯を失った部分のあごの骨に直接埋め込まれるのに対し、ザイゴマインプラントは通常よりも2~3倍長いインプラント体を使用し、上あごの骨を通って頬骨に固定します。この方法により、上あご全体の人工歯を2~4本のインプラント体で支えられます。

長いインプラント体を使用して、非常に硬い骨である頬骨に埋め込むため、高い安定性を得られます。通常のインプラント治療とは異なり、骨移植など骨量を補うための追加手術を避けられる可能性が高い治療法です。

2.ザイゴマインプラントが向いている人

どんな人にザイゴマインプラントが向いているのか、詳しく説明します。

2-1.上あごの骨量が極度に不足している人

ザイゴマインプラントは、頬骨を利用してインプラント体を固定するため、あごの骨が少なくても安定した状態を得られます。加齢や歯周病などが原因で上あごの骨量が極端に不足している患者に適した治療法です。

2-2.骨を増やす処置を避けたい人

骨量が不足している患者のインプラント治療では、骨移植などの追加手術が必要になることがあります。ザイゴマインプラントは、骨の量を増やさなくても治療できるため、追加手術を避けられます。

骨を増やす処置は、手術回数の増加や心身の負担増、治療期間の延長、さらなる費用負担につながります。また、追加手術にはそれぞれリスクが伴います。ザイゴマインプラントを選択することで、負担やリスクを軽減できるでしょう。

2-3.上あごの広い範囲の歯が欠損している人

ザイゴマインプラントは、2~4本のインプラント体で上あご全体の歯の欠損を補えるため、上あごの多くの歯を失っている方に適しています。

 

通常のインプラントでは、失った歯の数だけインプラント体を入れる必要があります。上あごの広い範囲の歯が欠損しているケースでは、ザイゴマインプラントを使用することで、必要なインプラント体の本数をおさえられ、手術の負担や費用を軽減できる可能性があります。

2-4.治療期間を短縮したい人

歯を失うと、噛む機能・発音・見た目などに影響が出ます。ザイゴマインプラントは、仕事やプライベートの都合で、なるべく早く歯の機能や見た目を回復したい方に効果的な治療法です。

骨量が不足している場合、通常のインプラント治療をする前に骨を増やす処置が必要となり、骨の定着まで3~10カ月程度かかります。

ザイゴマインプラントは骨を増やす処置が不要なため、トータルの治療期間を短縮できる可能性があります。特に、手術当日に仮歯を装着する「即時荷重」が可能な場合、より早く機能と外見を回復できます。

2-5.通常のインプラントが難しいと言われた人

通常のインプラントが難しいと診断されても、ザイゴマインプラントであれば治療できる可能性があります。

重度の歯周病や骨粗しょう症であごの骨量が極端に減少している、悪性腫瘍などであごの骨を切除している、先天的にあご骨が欠損しているなど、通常のインプラントでは対応が難しい状況でも、ザイゴマインプラントなら適用できる場合があります。

2-6.細菌感染などのリスクをおさえたい人

骨を増やす処置を行う場合、細菌感染や副鼻腔炎などのリスクが生じます。また、骨が定着するまでの期間は取り外し式の入れ歯で対応するため、傷口に入れ歯があたり負担がかかるなどのトラブルが起きる可能性があります。

ザイゴマインプラントは骨を増やす処置が不要なため、手術回数をおさえられる分、リスクも少なくなります。また、手術当日に仮歯を装着できるケースが多いため、入れ歯によるダメージを防止できます。

2-7.全身の健康状態が良好な人

ザイゴマインプラントは、通常のインプラント治療よりも大がかりな手術をするため、全身の健康状態が良好であることが重要です。

長時間の手術に耐えられる体力が必要であり、また手術後の回復も考慮する必要があります。

ただし、糖尿病や高血圧などの持病がある場合でも、事前に適切な治療を行ったり、インプラントに悪影響を及ぼす薬の服用を一時的に中止したりすることで、治療を受けられる可能性があります。

3.ザイゴマインプラントのデメリット

ザイゴマインプラントには多くのメリットがありますが、いくつかのデメリットもあります。治療を検討する際は、これらのデメリットについても十分に理解しておく必要があります。

3-1. 一部の歯科クリニックでしか対応できない

インプラント対応の歯科クリニックでも、ザイゴマインプラントを行っているとは限りません。

理由としては、1998年に開発された比較的新しいインプラント治療であること、特殊なインプラント体を使用して頬骨に埋め込むための高度な技術が必要であること、さらに正確な検査や緻密なシミュレーションが求められるため高度な検査機器や設備が必要となることが挙げられます。

対応している歯科クリニックが少ないため、住んでいるエリアによってはクリニック探しに苦労する可能性があります。

3-2.上顎洞炎のリスクがある

ザイゴマインプラントの代表的なリスクの一つが、上顎洞炎(じょうがくどうえん)です。上顎洞とは、奥歯の上方にある空洞のことです。

インプラント体を埋め込む際、上顎洞の内部または横を通過する必要があるため、その過程で上顎洞の粘膜を傷つけ、上顎洞炎を引き起こす可能性があります。

上顎洞炎の症状には、歯や歯ぐきの痛み、鼻づまり、黄色い膿、頬の圧迫感、発熱などがあります。悪化すると脳や目に影響する可能性があるので、服薬など早めの治療が必要です。

3-3.瘻孔のリスクがある

瘻孔(ろうこう)とは、炎症などが原因で身体にできる管状の異常な穴のことです。

頬骨に入れたインプラント体の先端は、皮膚や粘膜、目の近くに位置しています。患者が何かのはずみでインプラント体の先端に触れると、瘻孔ができてしまう可能性があります。腫れ、炎症、見た目の変化などの症状が出る場合があるので注意が必要です。

3-4.手術時間が長い

ザイゴマインプラントの手術は、高度な技術が求められることに加え、頬骨が非常に硬いため穴を開ける手間がかかり、手術時間が長くなる傾向にあります。

通常のインプラント手術が1本あたり30分前後で済むのに対し、2時間程度かかります。

3-5.治療費が高い

ザイゴマインプラントの治療費の相場は240万~300万円程度で、通常のインプラントの治療費が1本あたり30万~40万円であるのと比べると高額です。

これは、長いインプラント体や特殊な器具が必要であることや、高度な技術が求められることなどが理由です。

ただし、骨を増やす処置が不要で、使用するインプラント体の本数をおさえられるため、トータルのコストは大きな差がない可能性もあります。

4.ザイゴマインプラントを成功させる方法

ザイゴマインプラントを成功させるためには、以下のような対策をしましょう。

4-1.しっかりリサーチして歯科クリニックを選ぶ

ザイゴマインプラントは、高度な技術を要する治療であるため、歯科医師の経験やスキル、設備の充実度によって成功率が大きく左右されます。

歯科クリニックのウェブサイトやブログで症例実績や設備などをよく確認し、信頼できる医療機関を選ぶことが重要です。

4-2.歯科医師から詳しい説明を受ける

ザイゴマインプラントはあごの骨が極端に少ない患者にも適用できる治療法ですが、場合によっては他の治療法の方が適している可能性もあります。

メリット・デメリットや他の治療法との違いなどについて詳しい説明を受け、納得してから治療を決めることが大切です。

また、上顎洞炎や瘻孔などのリスクや対処法についても、事前に確認しておくと安心です。説明に不安がある場合は、セカンドオピニオンを受け、他の医師の意見も参考にすることをおすすめします。

4-3.手術後のメンテナンスに力を入れる

ザイゴマインプラントを成功させるには、他のインプラントと同様に、手術後のメンテナンスが非常に重要です。

毎日の歯磨きはもちろん、デンタルフロスなどを使用した丁寧なセルフケアが大切です。歯科クリニックで歯磨き指導を受け、正しいブラッシングを身につけるとより効果的です。

また、定期的に歯科クリニックでメンテナンスを受け、口腔内の状態チェックやクリーニングを行うことで、インプラント周囲炎やインプラントの破損などのトラブルを避けられます。

4-4.禁煙する

他のインプラント治療と同じくザイゴマインプラントも、タバコに大きな悪影響を受けます。

タバコに含まれるニコチンにより血流が悪くなると、傷の回復やインプラント体と骨の結合が遅くなる可能性があります。また、免疫力の低下による細菌感染やインプラント周囲炎の発症・悪化のリスクも高まります。

インプラントをすると決めたら、できるだけ禁煙しましょう。禁煙が難しい場合は、タバコの本数を減らすなどの対応をします。

5.あごの骨量が極端に少ない人にも対応!ザイゴマインプラントを検討しよう

ザイゴマインプラントは、通常のインプラント治療が難しい場合でも受けられる可能性が高い画期的な治療法です。

上あごの骨量が極端に少ない方や、骨を増やす処置を避けたい方、上あごの広い範囲の歯が欠損している方などに特に適しています。

一部の歯科クリニックでしか対応していない・上顎洞炎のリスクがあるなどのデメリットもありますが、検討する価値は十分にあります。

 

しっかりリサーチして歯科クリニックを選ぶ・歯科医師から詳しい説明を受ける・メンテナンスに力を入れるといった対策により、成功率を高められます。

 

以前「インプラントは難しい」と断られた方も、一度ザイゴマインプラント対応の歯科クリニックに相談してはいかがでしょうか。

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