
- この記事の監修者
- 医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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「歯を失っても食事や会話を楽しみたい」という人にとって、インプラントは有効な治療法です。しかし、60歳・70歳・80歳と高齢でも治療が受けられるか気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、60歳以上のシニア層のインプラントについて、メリット・デメリット・注意点などを解説します。
目次
- 1.60歳以上でもインプラントは受けられる
- 2.高齢者がインプラントを受けられない場合
- 2-1.あごの骨の量が少ない
- 2-2.外科手術に耐える体力がない
- 2-3.持病がある
- 2-4.メンテナンスが難しい
- 3.高齢者がインプラントにするメリット
- 3-1.しっかり食事ができ健康維持につながる
- 3-2.気兼ねなく会話を楽しめる
- 3-3.認知症のリスクを軽減できる
- 3-4.若々しい見た目を保てる
- 4.高齢者がインプラントにするデメリット
- 4-1.細菌感染のリスクが高い
- 4-2.インプラントが安定するのに時間がかかる
- 4-3.入れ歯などに比べて費用や治療期間の負担が大きい
- 5.高齢者のインプラントで注意したい点
- 5-1.高齢者のインプラントの症例実績が多い歯科医師を選ぶ
- 5-2.インプラント情報の管理
- 6.高齢でもインプラントはできる!健康維持などメリット多数
1.60歳以上でもインプラントは受けられる

結論 から言うと、60歳以上でも健康状態などに問題がなければ、インプラントを受けられます。
厚生労働省が実施した「平成28年歯科疾患実態調査」によると、歯を補う方法としてインプラントを選んだ人の割合が多い年齢層の上位5つは、下記の通りです。
・65~69歳:4.6%
・70~74歳:3.7%
・55~59歳:2.8%
・80~84歳:2.7%
・60~64歳:2.3%
60~80代でインプラントを受けた人は、むしろ他の年代よりも多いのです。50代以降になると歯を失うリスクが急激に高まるため、失った歯を補う方法としてインプラントを選ぶ人が多いと考えられます。
2.高齢者がインプラントを受けられない場合

60歳以上でインプラントをする人は多いですが、全ての人が治療を受けられるわけではありません。主なケースを紹介します。
ただし、当てはまる場合でも対策をすることでインプラントができるケースもあるため、まずは歯科クリニックに相談するとよいでしょう。
2-1.あごの骨の量が少ない

インプラントは、あごの骨を削り「インプラント体」と呼ばれる人工歯根を埋め込んで固定し、人工歯を装着する治療です。あごの骨の量が少なく、厚み・強度が不充分な場合、インプラント体をしっかり固定できないため、インプラントは難しいかもしれません。
ただし、近年の歯科治療技術の発達により、骨移植や再生療法など骨を増やす治療をし、骨量を回復すればインプラントをできるケースも増加しています。
2-2.外科手術に耐える体力がない

インプラントは、歯ぐきを切り開く・あご骨を削る・歯ぐきを縫合するといった外科手術が伴う治療のため、一般的な歯科治療と比べて大幅に体力が必要です。また、長時間口を開けたまま手術を受けるので、維持するのにも体力を消耗します。
そのため、高齢により体力が衰えると、インプラントが受けられない可能性があるでしょう。
2-3.持病がある

年齢を重ねると持病のある人の割合が高まります。持病があると、身体の状態や服薬している薬によって、インプラントの成功率が低下。そもそもインプラントを受けられない可能性があります。
特に、糖尿病や骨粗しょう症、心疾患、高血圧の持病があると、インプラントへの影響が大きいとされています。服薬治療などの適切な対応によりインプラントができる可能性もあるので、まずは持病の担当医と歯科医師、両方に相談してみましょう。
2-4.メンテナンスが難しい

インプラントは基本的に長持ちする治療ですが、歯磨きなどのケアや歯科クリニックでの定期メンテナンスが必須です。手入れを怠ると、歯周病とよく似た病気である「インプラント周囲炎」などのリスクが高まり、インプラントの脱落をはじめとするトラブルとなりかねません。
通院や日常生活が困難である場合は、家族のサポートや訪問診療などの対策が必要となります。
3.高齢者がインプラントにするメリット

インプラントは、入れ歯やブリッジといった歯を補う他の治療と比べ、しっかり噛める、見た目の違和感が少ないなどの長所があります。高齢者がインプラントにする主なメリットを解説します。
3-1.しっかり食事ができ健康維持につながる

インプラントはあごの骨に人工歯根を埋めて固定するため、天然の歯と同じくらいしっかり噛めます。高齢になると柔らかく消化のよいものが中心の食生活になりますが、インプラントを入れれば、食べられるものの幅が広がります。また、入れ歯とは異なり味の感じ方にも影響しません。
しっかり噛んで食事することで、食べ物が細かくすりつぶされ、胃腸の負担を軽減できます。さらに、食べ物に含まれる栄養を体内に吸収しやすくなり、免疫力や内臓、足腰といった身体機能を保てるのです。
また、食事は高齢者にとって大きな楽しみの1つです。インプラントであればおいしい食事を楽しめるため、ストレスが軽減でき、心の健康にもよい影響を及ぼします。
3-2.気兼ねなく会話を楽しめる

歯を失った状態だと、話している時に空気が隙間から漏れてしまい、タ行やサ行などを発音しにくくなる場合があります。そのため、相手にしっかり聞こえているのか不安に感じる人も多いでしょう。
入れ歯を入れたとしても、ズレたり外れたりする可能性があり、上手く発音しにくい、見た目が気になるといった悩みを持つ人も少なくありません。
インプラントであれば、ほぼ天然の歯と同じように話せるので、気兼ねなく会話を楽しめます。
3-3.認知症のリスクを軽減できる

よく噛んで食事をすると、脳に刺激が伝わり、認知症のリスクが軽減されるといわれています。
厚生労働科学研究班が65歳以上の健常者を対象に行った調査では、歯がほぼないにもかかわらずインプラントなどの義歯を使っていない人は、歯が20本以上残っている人と比べ、認知症リスクが1.9倍高いと報告されています。
入れ歯やブリッジでも歯を補えますが、インプラントの方が噛む機能が優れているので、認知症リスクの軽減を目的に、インプラントを入れる人も少なくありません。
3-4.若々しい見た目を保てる

見た目の若々しさは、歯の状態に大きく左右されます。インプラントは金具などが見えないため、入れ歯やブリッジと比べて、見た目の違和感が少ない治療法です。また、人工歯の色も天然の歯とほぼ変わりません。自然な美しい見た目を維持できるので、若々しい印象を与えられるでしょう。
4.高齢者がインプラントにするデメリット

高齢者がインプラントにするメリットは多いですが、デメリットも少なくありません。主なデメリットは下記の通りです。
4-1.細菌感染のリスクが高い

インプラント手術では、歯ぐきを切り開き、あごの骨を削る外科処置が必要です。そのため、傷口から細菌が侵入し感染するリスクがあります。
年齢を重ねると免疫機能が低下するため、細菌に感染がしやすく、より注意が必要です。専用の手術室がある、手術器具の滅菌消毒を充分に行っているなど、衛生管理が徹底している歯科クリニックであればリスクを軽減できます。
4-2.インプラントが安定するのに時間がかかる

インプラントは、手術後に時間の経過とともにあごの骨と結合することで、安定した状態になります。しかし、高齢者は、免疫力が低下しているため、インプラントと周囲の組織が結合しにくく、固定されるまで時間がかかるでしょう。
4-3.入れ歯などに比べて費用や治療期間の負担が大きい

インプラントは、基本的に保険が適用されない自由診療です。保険適用の入れ歯・ブリッジと比較すると、治療費は高額になります。
保険適用のブリッジや入れ歯であれば1本あたりの治療費は数千~2万円程度ですが、インプラントは1本あたり30~50万円ほどです。
また、入れ歯やブリッジの治療期間は、長くても数週間前後ですが、インプラントはあご骨とインプラントが結合するのを待つ必要があり、数ヶ月から半年かかります。
特に高齢者は、結合に時間がかかったり、あごの骨量を増やす治療が必要になったりするため、若い人に比べてさらに治療期間が長引くケースが多いでしょう。
費用や時間を節約したい人には、インプラントは適さないといえます。
5.高齢者のインプラントで注意したい点

高齢者がインプラント治療で満足できる結果を得るためには、次のような点に注意しましょう。
5-1.高齢者のインプラントの症例実績が多い歯科医師を選ぶ

高齢者のインプラントは、若者や中年と比べてリスクが高く、難しい症例が多い傾向にあります。適切な治療を受けるために、インプラントに関する専門性に優れ、高齢者の症例実績が多い歯科医師を選ぶのをおすすめします。
特にあご骨の状態は、年齢とともに悪化していきます。骨を増やす治療は高いスキルがないとできないため、歯科医師選びは非常に重要です。
また、高齢の患者が多い歯科クリニックのなかには、介護が必要になったり、通院が困難になったりした患者向けに、訪問診療を実施している医院もあります。
高齢者の症例実績の多い歯科医院であれば、さまざまなリスクに対応できる可能性が高いといえるでしょう。
5-2.インプラント情報の管理

かかりつけ医の閉院や本人の転居などにより、インプラントを受けた歯科クリニックに通えなくなる場合もあります。
新しく通う歯科クリニックでスムーズにメンテナンスを受けるために重要なのが、インプラントカードやインプラント手帳などに記載されているインプラント情報です。
いつ・どのように・どのインプラント体を使ったのかなど必要な情報がわかり、適切な処置をしてもらいやすくなります。
年齢を重ねるにつれ、自分でインプラント情報を管理するのが難しくなるケースもあるため、家族と保管場所を共有すると安心です。
6.高齢でもインプラントはできる!健康維持などメリット多数

高齢が理由でインプラントをためらう人もいるかもしれません。しかし、60歳以上でも健康状態などに問題がなければ、インプラントを受けられます。事実、歯を失った時にインプラントを選択する人の割合は、60~80代の方が他の年代よりも多いという調査があります。
高齢者がインプラントを受けるメリットとして、しっかり噛んで食事することで健康を保てる、気兼ねなく会話を楽しめる、認知症のリスクを軽減できる、若々しさを保てるなどがあげられます。このようにインプラントは、感染症のリスクなどのデメリットもありますが、利点の多い治療法です。
高齢者がインプラントを受ける際は、高齢者の症例実績が多い歯科クリニックを選び、インプラント情報の管理に気をつけると、よいでしょう。









