インプラントに寿命はある?劣化の原因と長持ちの秘訣を解説

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

こんな噂を聞いたことはありませんか?

 

「インプラントは長く持たない」

「すぐにダメになってしまう」

 

それは本当ではありません。

インプラントは長く使い続けられる治療です。

実際に、インプラント治療を初めて受けた患者さんで亡くなるまでの40年以上、インプラントを使い続けた人もいます。

 

とはいえ、全ての方が何十年も使い続けられるわけではありません。

そこで今回は、インプラントの寿命や長持ちの秘訣などについて解説していきます。

 

・治療法に迷っている

・インプラントの寿命が気になっている

 

などと悩んでいる方は、この記事を読んでインプラント治療について前向きに考えてみてください。

目次

1 一般的なインプラントの寿命

ここではインプラントの寿命と他の治療法の寿命の違いについて、詳しく説明していきます。

1−1:インプラントの寿命とは

インプラントの寿命とは、インプラントを顎の骨の中に埋めてから、抜けるまでの期間のことを言います。

 

また厚生労働省が提示しているインプラントのガイドラインでは、次のようなデータがあります。

 

・インプラントの平均寿命は、10年〜15 年以上である。

・10年以上使い続けている人の割合が、上顎のインプラントで約 90%以上、下顎のインプラントでは 約94%以上いる。

・難易度の高い手術方法でインプラントを入れたときや骨造成(骨を増やす手術)をした場合では、生存率が少し下がるが、87〜92%以上の確率でインプラントが残っていることが報告されている。

 

ここでの生存率とは、インプラントが抜けずに残っている割合のことです。

上記のデータから10年以上インプラントを使っている人の割合が、90%以上いることがわかります。

 

また、インプラントを入れてから5年目と10年目の生存率はほとんど変わらず、見た目や噛む機能なども問題ないことが確認されています。

 

さらに、正しくメンテナンスをしていれば、天然歯と同じように30年以上使い続けることも可能です。

1−2:インプラントとブリッジ、入れ歯の平均寿命(耐久年数)の違い

歯を失ったときには、次の3つの治療法があります。

 

・入れ歯

・ブリッジ

・インプラント

 

それぞれの治療法の平均寿命は、以下の通りです。

 

入れ歯 ブリッジ インプラント
平均寿命 約4年〜5年 約7年〜8年 約10年〜15年

 

インプラントは、他の治療に比べて寿命が長い傾向があります。
ただ、寿命だけで治療法を選ぶのはオススメできません。

 

治療法には、それぞれメリット・デメリットがあります。

 

それぞれの特徴を理解して、「お口の状態」「生活習慣」「何を大事にしたいか」などで治療法を選ぶようにしましょう。

 

次の表は入れ歯、ブリッジ、インプラントの「メリット・デメリット」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メリット デメリット
【入れ歯】 ・保険治療でも作れて費用が安い ・他の歯に負担がかかりやすい

・金属のバネが目立つ、見た目が悪い

・噛む力が弱い

・劣化が早く定期的に作り直す必要がある

・歯磨きのときには取り外しの手間がかかる

【ブリッジ】 ・保険治療では費用が安くできる

・しっかりと噛める

・取り外しの手間がない

・治療期間が短い(1週間程度)

・健康な歯を削る必要がある

・場合によっては神経を取る処置が必要

・土台の歯に負担がかかりやすい

【インプラント】 ・見た目が美しい

・しっかりと噛める

・他の歯を傷つけない

・天然歯と同じように歯磨きできる

・外科手術が必要

・費用が高額になりやすい

・治療期間が長くなりやすい

2 インプラントの寿命を縮めてしまう主な要因

インプラントの寿命を縮めてしまう主な原因は、次の3つです。

 

・メンテナンス不足などによる細菌感染

・喫煙習慣

・歯ぎしりや食いしばり

 

それぞれについて、詳しく説明していきます。

2−1:メンテナンス不足などによる細菌感染

インプラントは、天然歯と同じように自宅での歯磨き歯科医院での定期的なメンテナンスが必要になります。

 

お口の清掃状態が悪いと、インプラント周囲炎を引き起こす可能性があるからです。インプラント周囲炎とは、インプラント周辺の顎の骨が細菌によって溶かされる病気です。

 

お口の中に残っている汚れには、多くの細菌が存在します。汚れがお口の中に残っている状態が長いと、細菌が増えて歯茎の中に侵入して細菌感染を起こします。

 

特にインプラントには、天然歯にある歯根膜(しこんまく)という組織がありません。歯根膜は、根の周りにある膜のことで、細菌を歯茎の中に侵入させない防御機能の役割があります。

 

インプラントには、歯根膜がないので細菌からの攻撃に弱くなっています。そのため、インプラント周囲炎の進行が早く、顎の骨が広範囲に溶けている場合も少なくありません。

 

最悪の場合には、インプラントが自然に抜けてしまうこともあります。

2−2:喫煙習慣

タバコに含まれているニコチンには、毛細血管を収縮させる働きがあります。

歯茎の中にある血管や神経が、歯に栄養を送っています。

 

しかし、ニコチンによって血管が細くなると、顎の骨や歯茎に十分な栄養が送れません。

その結果、骨や歯茎の免疫機能が下がって、インプラントが抜ける可能性が高くなります。

 

さらに、タバコは唾液の出る量を減少させる作用があります。

唾液には、細菌の増殖を抑える働きがありますが、唾液の量が減少することで細菌が活発になりインプラント周囲炎を引き起こしやすくなります。

2−3:歯ぎしりや食いしばり

歯根膜には、細菌が歯茎の中に入り込むのを防ぐ他に、歯にかかる力を分散させる役割があります。

 

しかし、インプラントには歯根膜がなく、噛んだときの力がそのままインプラントにかかりやすいです。歯ぎしりや食いしばりは、自分の体重かそれ以上の力が歯の負担になると言われています。

 

そういった強い力が頻繁にインプラントにかかると、被せ物が割れたり、負担が顎の骨にかかって溶けたりしやすいです。

 

そのため、歯ぎしりや食いしばりをする習慣がある場合には、マウスピースを作るのが一般的です。マウスピースを装着することで、歯やインプラントにかかる力を軽減できます。

3 インプラントを長持ちさせる3つの条件

インプラントを長持ちさせるには次の「3つの条件」が必須です。

 

・定期メンテナンス

・良いメーカーを選ぶ

・良いドクターを選ぶ

 

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

3−1:定期メンテナンス

インプラントを長持ちさせるには、細菌感染しないようにお口の環境を整える必要があります。

お口の環境を整えるには、セルフメンテナンス(自宅での歯磨き)プロのメンテナンス(歯科医院でのケア)が効果的です。

 

とはいえ、「毎日の歯磨きが苦手」という方も少なくないと思います。

毎日、自分なりに頑張って歯磨きをしても汚れが多く残っていては、お口の環境は良くならずインプラントの状態が悪くなります。

 

そこで、歯磨きの仕方を歯科医院で教えてもらうのがオススメです。

歯磨き指導では、歯のプロである歯科医師や歯科衛生士がお口の状態に適した、正しいブラッシング方法や必要な道具をアドバイスしてくれます。

 

正しいブラッシング法を身につけると、お口の状態を清潔に保つことが可能です。

 

また、プロのメンテナンスは、毎日のブラッシングで取れない細かい汚れや歯石などを取り除くことができ、インプラント周囲炎を防ぐのに効果的です。

 

他にもメンテナンスでは、顎の骨の状態や噛み合わせを確認して、インプラントにトラブルがないかをチェックします。

 

プロのメンテナンスは、定期的にすることで効果を発揮します。

そのため、インプラント治療後1ヶ月〜3ヶ月に1度の通院間隔でメンテナンスを勧める歯科医院が多いです。

3−2:良いメーカーを選ぶ

インプラントには数多くのメーカーがあり、歯科医院によって使用しているインプラントメーカーが違います。

 

そのため、信頼性の高いメーカーを使用しているかを確認しましょう。

良いメーカーのインプラントを選ぶことで、次のようなメリットがあります。

 

・長い臨床実績がある

良いメーカーのインプラントは、長年多くの歯科医院で使用されていて、豊富な症例実績があります。

 

そのため、形や構造などが違ったラインナップが揃っていて、さまざまなお口の状態に適したインプラント治療が可能です。

 

・メーカー保証がある

インプラント治療には、破損や事故などのトラブルが起きたときのために、5年〜10年の保証が付いています。

 

しかし、インプラントの品質に自信がないメーカーでは、保証を付けていない場合があります。

良いメーカーのインプラントは、品質が良く長年の実績もあり、メーカー保証が付いているのが基本です。

 

また、保証があることは、インプラントの質や安全性に自信があるという証明でもあります。

ではここで、世界的に有名なメーカーを4つ紹介します。

 

・ストローマン

・ノーベルバイオケア

・ジンマーバイオメット

・アストラテック

 

インプラント治療を受けるときには、上記のメーカーのインプラントを取り扱っているか確認しておくと安心です。

3−3:良いドクターを選ぶ

インプラントを長持ちさせるには、良いドクターを選ぶのも重要な要素の一つです。

良いドクターを選ぶポイントは、次の3つです。

 

・経験年数や症例実績

インプラント治療の経験が少ない人と多い人では、どちらの歯科医師に治療を担当してほしいでしょうか?

 

ほとんどの方が、経験豊富な歯科医師を選ぶでしょう。

インプラント治療の経験が長い人ほど、さまざまな手術をしている可能性が高く、安心して治療を任せることができます。

 

また、実績がどの程度あるかは、症例写真を見せてもらうのがオススメです。

現在は治療を開始するときに、お口の写真を撮影している歯科医院が多いです。

インプラント治療前と治療後の比較写真をいくつか見せてもらうと良いでしょう。

 

こういった、経験年数や症例写真はホームページで公開していることもあるので、事前に確認しておくと良いでしょう。

 

・技術・知識の研鑽

歯科医師が、学会や勉強会に参加しているかをホームページで確認しておきましょう。

歯科医療は、日々進歩しています。

 

定期的に学会や勉強会などに参加している場合には、自身の技術や知識の向上をし、患者さんにより良い治療を提供しようとする姿勢が感じられます。

 

 ・設備

インプラント治療は、外科手術が必要です。

手術時の細菌感染やインプラント事故を防ぐには、設備が充実していることが欠かせません。

 

そのため、骨の状態や血管や神経などの位置を正確に把握できる「CT機器」や衛生管理を徹底している「オペ室」などの設備が充実している歯科医院を選ぶのも大事な要素になります。

4 インプラントは長持ちする治療法

インプラントの寿命は、10年〜15年以上が一般的で、他の治療と比べても寿命が長いのが特徴です。

 

また、インプラントは次のような対策をすることで、さらに長持ちします。

 

・喫煙を控える

・歯ぎしりや食いしばりがある場合には、マウスピースを作る

・自宅や歯科医院でメンテナンスをする

・良いドクターを選ぶ

・良いインプラントメーカーを選ぶ

・設備が充実している歯科医院を選ぶ

 

治療法について担当医と話し合い、自分に合った治療を選ぶようにしましょう。

この記事が気に入ったら「評価」ボタンを押してください!

★★★★★

評価する