あなたの歯には何円の価値がありますか?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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「人の一生は口から始まり、口で終わる」

 

人の始まりは、生まれてすぐに母乳を飲むことから、人の終わりは、年をとって歯を失うことで食べられずに、終えていくことを意味しています。

 

最近では、予防歯科が日本でも浸透していて、歯を大切にしている方が増えています。

 

しかし、歯の価値に気づかずに、治療を繰り返したり、抜歯をしたりする状態まで歯を放置している人がいるのも事実です。

 

歯は、心臓や足と同じように資産価値があります。

 

とはいえ、

・心臓が動かなくなったら生きていけない

・足がなかったら歩けない

というように「歯がなかったら○○」が、ピンとこない方もいると思います。

 

そこで今回は、歯にどれだけの価値があるのかについて解説していきます。

目次

1 日本人の歯の値段は高い?低い?

歯1本に値段をつけるなら、あなたの歯はいくらになりますか?

日本口腔科学は、2005年に一般の方を対象にした「歯の資産価値に対する意識調査」を行いました。

 

この調査で歯の価値の平均は、35万円という結果になっています。

歯は口全体で28本(親知らずを含めない)あるので、28×35=973万円。

 

口全体の資産価値が、973万円ということになります。

 

一方で、同じような調査をアメリカの国民に対して行った場合、歯1本の価値は、500万円になります。

 

その結果、口全体の総額は、28×500=1億4,000万円。

アメリカと日本の差額は、約1億3,000万円になります。

 

日本とアメリカでこんなにも歯に対する意識が違うのは、医療制度の違いも大きく関係しています。

 

アメリカは日本のように全国民の負担が少なく、医療が受けられるような保険制度がありません。

 

アメリカの場合には、民間の保険会社に入るのが一般的です。

 

保険は、必ず入らないといけない制度ではないため、医療保険を受けていない方も多くいます。

 

例えば、アメリカで詰め物の処置をする虫歯治療(1箇所)のケースでは、保険を利用して約100~ドルが一般的です。

 

1ドルが日本円で約150円になるので、虫歯治療だけで約15,000円の費用がかかります。

保険なしの場合には、約300~ドルになり、45,000円ほどの費用が必要です。

 

日本でアメリカと同じような虫歯治療をするケースでは、約3,000円の費用で済みます。

 

アメリカでは、保険制度を活用しても日本より歯科にかかる費用が高額なため、歯に対する資産価値も高く評価されています。

2 歯を良い状態で維持する「3つの方法」

歯の価値を高めたり、長く使えるように維持したりするには、次の3つの方法が効果的です。

2-1:自分に合った歯磨きケアをする

歯を失う主な原因は、虫歯や歯周病です。

口の中の細菌が増えて活発になることで、虫歯や歯周病といった症状を引き起こします。

 

細菌の住み家であるプラーク(歯垢)は、歯磨きで取ることができ、しっかりと除去できれば、虫歯や歯周病の予防になります。

 

ただ、色んな人がいるように、口の状態が同じ人はいません。

歯並びや歯の形、歯茎の厚さなどによって、歯磨きのケアの仕方は変わってきます。

 

そのため、自分で歯磨きをしていても、汚れが落ちにくい又は、歯の表面がザラつきや口の中の粘つきが取れないという方は、歯科医師や歯科衛生士から、歯磨きの仕方を教えてもらいましょう。

 

自分に適した清掃道具を使ったり、ブラッシングしたりするだけで、汚れを効率的に落として、歯をキレイに保つことが可能です。

2-2:定期検診

毎日の歯磨きと同じくらい大事なのが、定期検診です。

 

定期的にプロのクリーニングを行うことで、普段は取れない細かい汚れも除去することができます。

 

また、汚れを落とす以外にも、口の状態や噛み合わせのチェックを定期的に行うことは、歯の寿命を延ばすことにも繋がります。

2-3:早期発見・早期治療

“虫歯が小さい時にする治療”と“虫歯が進行している時にする治療”では、歯の寿命が変わってきます。

 

例えば、虫歯が小さい初期の段階では、歯を削らずに様子をみるケースがあります。

 

しっかりと歯磨きをして、定期的に虫歯の進行状態を確認すれば、治療は必要なく、歯を削らずに済むのです。

 

一方で、虫歯が進行している場合には、神経を取る処置が必要になることがあります。

 

神経を除去すると、歯に栄養が送られないので、歯の寿命を10年縮ませると言われているほどです。

 

定期的に歯科医院に通っていれば、口の異変に早く気づいて、神経を取る前の段階で対処できるため、歯への負担が少なく、歯の寿命も長くなります。

3 もし歯を失ってしまったら

もし、歯を失って治療が必要になった場合には、次の3つの治療法があります。

 

・インプラント

・ブリッジ

・入れ歯

 

それぞれの特徴について、詳しく見ていきましょう。

3-1:インプラント

インプラントとは、顎の骨の中に人工歯根(インプラント体)を埋め込んで、その上に被せ物を取り付ける治療法です。

 

インプラントは、健康な歯を削ったり、他の歯に負担がかかったりすることがなく、自身の歯と同じような見た目や噛む機能を再現することができます。

 

被せ物に使用する材料が、セラミックやジルコニアといった艶があって、透明感が強い物を使用する場合が多いので、自身の歯と変わらない見た目になり、他人からインプラントだと気づかれることがほとんどありません。

 

また、インプラントを骨の中に埋める時には、外科手術が必要になります。

 

インプラントを埋めるだけの一般的な手術の場合には、30分ほどで処置が終わることがほとんどで、「すぐに終わった」「痛みもなく気づいたら終わっていた」と感じる方が多いです。

 

インプラントの費用は、保険適応外で治療費が自己負担になります。

3-2:ブリッジ

ブリッジは、歯を失った部分の両側の歯を削って、その上に繋がった被せ物を装着する治療法です。

 

道と道を繋ぐ橋のように、歯がない部分を両側の歯を支えにして被せ物を取り付けます。

ブリッジは、自身の歯を土台としているので、自身の歯と噛み心地は変わりません。

 

ただ、歯がない部分の骨は、噛む刺激が伝わらないため、時間の経過と共になくなっていきます。

 

骨がなくなると、歯茎も痩せていくので、ブリッジの被せ物と歯茎の間に隙間ができて、食べ物が詰まりやすくなったり、見た目が悪くなったりするようになります。

 

ブリッジは、保険治療と自費治療のどちらかを選択できるようになっています。

保険の場合には、見た目が銀の被せ物です。

 

歯がない部分と両隣の歯の被せ物が必要なケースでは、約2万円の費用がかかります。

 

自費の場合には、使用する材料によって金額に差があります。

3-3:入れ歯

入れ歯とは、歯を失った部分に歯の形をした入れ歯を乗せて、噛む機能や見た目を回復させる治療法のことです。

 

部分的に入れる入れ歯では、金属のバネが付いていて、他の歯にひっかけて使用します。

入れ歯を入れる位置によっては、バネが目立って見た目が悪くなります。

 

バネを他の歯に引っかけることで、歯にかかる負担が大きくなり、歯の寿命が短くなる可能性が高いです。

 

また、噛む時には、入れ歯が歯茎に沈みこんで、痛みが出やすいといったデメリットもあります。

 

入れ歯はブリッジと同じく、保険治療と自費治療のどちらかを選ぶことができます。

 

保険の入れ歯で使用される材料はプラスチックなので、部分入れ歯の費用が、約4千円~8千円かかります。

 

一方で、自費の入れ歯の材料は、金属や特殊なシリコンを使用して作製されます。

4 歯はお金では買えない「自分だけの財産」

歯は一度、失うと再び生えてくることはなく、指や臓器などと同じように、換えがきかない大切な体の一部です。

 

また、歯は人生を楽しむためには、欠かせません。

 

食事を美味しいと感じたり、親しい人と会話を楽しんだり、好きな曲を歌ったりと、歯を使って楽しめることが多いです。

 

そのため、歯を失うことは、同時に人生の豊かさを失うことにもなります。

人生の豊かさを感じさせてくれる歯の1本の価値は、35万円ですか?

 

歯の価値を決めるのは、あなた次第です。

 

歯が大切だと気づいたら、まずは歯科医院で診てもらうことをオススメします。

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