「保険適用」の入れ歯は本当に噛める?噛めない?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

目次

1 保険の入れ歯の「メリット」

保険適用の入れ歯の「メリット」は次の2つです。

・費用が安い

・短期間でできる

 

1-1:費用が安い

保険の範囲内の治療だと、自身の負担が3割で済むため費用が安くなります。

金額は総入れ歯の場合で、約10000円部分入れ歯の場合には5000円程になります。

1-2:短期間でできる

保険の入れ歯は作る手順や使う素材が決められているので、入れ歯を作るまでに時間がかかりません。型取りをしてから、約2週間~3週間で完成します。

2 保険の入れ歯の「デメリット」

保険の入れ歯の「デメリット」は次の7つです。

 

入れ歯にかける時間が決められている

・使用できる素材が限定されている

・発音障害を引き起こす可能性がある

・熱を感じにくい

・見た目が悪くなる

・割れやすく劣化しやすい

・入れ歯の微調整が必要なことがある

2-1:入れ歯にかける時間が決められている

保険の入れ歯を作製するのに、かけられる時間は決められています。

なぜなら、保険診療は厚生労働省によって、保険点数が厳密に定められていて、決められた保険点数の範囲内で治療を行わないと、採算が合わずに歯科医院が赤字になってしまうからです。

 

例えば、保険の総入れ歯を作製した場合では、健康保険から約3万円~6万円の支払いがあります。しかし、そのほとんどが歯科技工士への技工料になるのです。

入れ歯を作製する時には、技工料以外にも、型取りをする材料費、治療で使った器具の滅菌費用などがかかってきます。他には、受付や助手のスタッフの人件費もかかります。

 

このように、保険治療の範囲内で少しでも利益を得ようとするのは難しく、赤字になることが多くあります。そのため、保険治療の場合は、しっかりと時間をかけることができないのが現実です

 

しかし、数ある歯科医院の中には、赤字覚悟でじっくり時間をかけて、保険の入れ歯を製作するところもあります。その場合でも、使う素材は変わらないので、しっかりと噛めるのではなく、「ある程度噛める入れ歯」くらいの物しか出来上がりません

 

2-2:使用できる素材が限定されている

保険の入れ歯は、レジンといったプラスチックの素材で、作製しなければいけません。他にも、保険の部分入れ歯の場合は、歯に引っかけるバネは金属を使う決まりがあります

保険治療は自費治療とは違い、制限が多くあるので、それぞれの口の状態に合わせた入れ歯を作るのは、難しいです。

2-3:発音障害を引き起こす可能性がある

レジンというプラスチックで入れ歯を作製すると、必ず2~3㎜程、入れ歯が分厚くなります。なぜなら、レジンは割れやすいので薄くするのが難しいからです。

入れ歯が分厚くなると、口の中が狭くなって、舌を上手く動かすことができずに、食べ物が飲み込みにくくなることもあります

また、舌が動かしづらいのが原因で、一時的に発音障害を引き起こす可能性があります

 

2-4:熱を感じにくい

保険の入れ歯は分厚いことや、プラスチックの素材を使っていることから、熱を感じにくくなります。熱を感じにくいと熱い物を食べた時、すぐに熱いと感じることができずに、口の中を焼けどする可能性があります。

また、熱いや冷たいという感覚は味覚の1つです。年齢と共に衰えてくる味覚が保険の入れ歯では、さらに感じにくくなり、食事を楽しむことが難しくなるでしょう。

 

2-5:見た目が悪くなる

保険の入れ歯は、決められた材料で作製しなければいけないので、歯の色や歯茎の色は選べません。特に、部分入れ歯を作製した場合には、自分の歯と人工の歯に、色の違いが出たり、歯に引っかけるバネは金属になって、目立ったりするので、見た目を気にする方には、おすすめできません。

2-6:割れやすく、劣化しやすい

入れ歯を作製する時に使われるレジンはプラスチックなので、水分や食べ物の色を吸収する性質を持っています。水分を吸収すると、入れ歯が変形して、痛みを引き起こしたり、割れたりする原因になります

 

また、水分や食べ物の色素を吸収しやすいことで、入れ歯の劣化が早く進んでいきます。

そのため、1~2年に1度の頻度で、入れ歯を作り直した方が良いとされています

 

さらには、劣化したままの入れ歯を使い続けると、口の中の菌が数を増やしていき、口臭を引き起こす原因になることがあります

 

2-7:入れ歯の微調整が必要なことがある

保険の入れ歯は、厚みがあるので痛みや違和感があることが多く、入れ歯が完成した後も微調整をするために、何回も歯科医院に通う必要がある場合が多いです

また、何度も調整をしている間にも劣化は進んでいき、新たに違う部分に痛みや違和感があることがあり、入れ歯を付けている間はずっと、どこかに痛みなどがある状態になります。そうなると、ストレスも溜まって精神的、身体的にも苦痛になってしまいます。

 

3 本当に噛めるようになりたいなら

保険治療は、使用できる素材、かけられる時間が制限されています。その中でも歯科医師は良い物を作ろうと最善は尽くしますが、やはり限界があります。

 

入れ歯は噛めないと意味がありません。噛める入れ歯を目指すには、口に合った素材を使うこと、精密な型取りや噛み合わせに時間をかけることが必要です。

そして、痛みや違和感が続く入れ歯では、安心して日常生活を送ることが難しくなります。入れ歯を使うことがストレスになっては、何のために入れ歯を作ったのかわかりません。

 

入れ歯を作る時には、費用だけに目を向けるのではなく、これからどんな人生を送りたいのか、歯科医師の入れ歯に対する思いに目を向けて見て下さい。

 

きっと答えは、すぐに見つかるはずです。

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