- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラントの死亡事故やトラブルがテレビや新聞で報道されて、不安に感じた方もいると思います。
インプラント事故やトラブルは実際に起こっているのは事実です。
一方で、インプラント治療をしてから亡くなるまで使い続けた方がいるのも事実です。
この記事では
・インプラントが失敗する8つの原因
・安全に受けるために注意すること
を中心に解説していきます。
目次
- 1 インプラントの失敗ってなに?
- 2 インプラント治療が失敗する8つの原因
- 2-1:診査・診断が不適切
- 2-2:術者の経験や技術不足
- 2-3:インプラントメーカー
- 2-4:アレルギー
- 2-5:細菌感染
- 2-6:インプラント周囲炎
- 2-7:メインテナンスを受けていない
- 2-8:喫煙
- 3 インプラントを安全に受けるためには?
- 3-1:問診が細かい
- 3-2:設備が整っている
- 3-3:安全性の高いインプラントメーカーを使用している
- 3-4:術者に豊富な経験や技術がある
- 3-5:メインテナンスを受ける
- 3-6:生活習慣を見直す
- 3-7:保証内容の確認
- 4 自分が納得できる歯科医院でインプラント治療をしよう
1 インプラントの失敗ってなに?
そもそもインプラントの失敗とは、どんな状態なのでしょうか?
例えば、インプラントを顎骨の中に埋め込んで、数ヶ月の期間が経ってもインプラントが安定せずにグラグラして抜けてしまうのも失敗の1つです。
他にも、インプラントに被せ物を取り付けた後、被せ物が何回も壊れたり、インプラントの部分で食べ物を噛むことができなかったりする場合も、患者さんが快適に過ごせていない点では、失敗と言えます。
また、世界的に有名なインプラントメーカーのでは、10年後の生存率は約98%以上と報告があります。
検診もしっかりと受けているのにインプラントが10年以内に抜けてしまうのも失敗に含まれるでしょう。
2 インプラント治療が失敗する「8つの原因」
インプラントが失敗するのは、次の「8つの原因」が関係しています。
それぞれを詳しく解説していきます。
2-1:診査・診断が不適切
インプラント治療が可能なのかは、インプラントを埋める位置の骨の状態で決まります。
インプラント治療で重要な骨の厚さや量、血管や神経の位置は、歯科用CT機器で立体的に撮影し確認することができます。
現在では、インプラント治療をする際にCT撮影をする歯科医院がほとんどです。
CTがあまり普及していなかった時期は、レントゲン写真だけで判断しインプラントをするケースもありました。
しかし、レントゲン写真だけで判断するのは、トラブルの原因になりやすいです。
歯科医院で一般的に使われるレントゲン撮影では、一面だけしか撮影されません。
そのため、神経や血管に気づかずに傷つけて、麻痺や痺れの症状が残る事故が起きてしまう可能性が高くなります。
2-2:術者の経験や技術不足
インプラント治療は、外科手術が必要です。
外科手術では、専用のドリルでインプラントを埋め込む穴を掘っていきます。
インプラントが入る大きさまで少しずつ穴を広げていきながら、ドリルで掘り続けます。
この時に術者が、ドリルの回転数や速度を制限できなかったり、ドリルが正しく使われなかったりするとオーバーヒートが起きます。
オーバーヒートとは、高温の熱が顎骨に伝わることで、骨が壊死してしまう現象のことです。
オーバーヒートしたことを知らずに、インプラントを入れて歯茎を閉じてしまうと、強い痛みや腫れといった症状が出る原因にもなります。
2-3:インプラントメーカー
歯科医院によって使用しているインプラントメーカーは違います。
インプラントの費用を抑えるのを重視した歯科医院は、名前も聞いたことがない会社で、歪な形をしているインプラントを使っていることがあります。
何の金属なのか謎なインプラントは、安全とは言えず、インプラント手術をしてから5年も経たないうちに抜けてしまったというケースも珍しくありません。
2-4:アレルギー
現代病のアレルギーは、日本人の2人に1人がかかっている病気です。(2011年段階)
金属アレルギーの方はインプラントができないと思われがちですが、ほとんどのインプラントがチタンという金属からできています。
チタンは、体の拒否反応を引き起こしにくいと言われているため、金属アレルギーの方でも比較的安心して使用することができます。
ただ、人体への影響が少ないと言っても、まれに金属アレルギーの症状が出る場合があるのです。
そうなると、体はインプラントを異物として判断するため、骨とインプラントが結合することは無く脱落してしまいます。
2-5:細菌感染
インプラント手術で使用する器具や道具は、滅菌しているのが基本です。
しかし、滅菌をしていない器具を使ったり、衛生管理が整っていない歯科医院で手術を行ったりすると、傷口に菌が入り込み、インプラントと骨の周りが細菌感染を起こします。
細菌感染は傷口の治りが悪い以外にも、腫れや痛み、インプラントの脱落の原因になるのです。
2-6:インプラント周囲炎
インプラントは歯と同じように歯周病になります。
インプラント周囲炎とは、歯茎が赤く腫れて、インプラントを支えている骨が溶ける症状です。
インプラント周囲炎が軽度(歯茎が腫れているが、骨は溶けていない状態)の場合では、炎症を改善すると症状は落ち着きます。
しかし、重度(歯茎が腫れて、骨もかなり溶けている状態)では、インプラントを残すことが難しく、撤去する可能性が高くなるのです。
2-7:メインテナンスを受けていない
インプラントは、入れたら終わりではありません。
例えば、歯科医院では口をすっぱくして、「インプラントはメインテナンスが大事になるので、3ヶ月に一度はクリーニングに通って下さい。」と言います。
にもかかわらず、メインテナンスを受けない期間が長いと、インプラント周囲炎を引き起こしたり、噛み合わせが変わって被せ物が外れたりする確率が上がります。
最悪の場合には、インプラントに過度な負担がかかっている噛み合わせの状態で生活していると、インプラントが折れることがあるのです。
2-8:喫煙
喫煙は、体だけではなくインプラントにも悪影響を及ぼします。
タバコのニコチンは、歯茎や血管を収縮して、十分な酸素を送るのを妨げるのです。
酸素が十分に供給されないと、傷口の治りが遅くなり、治療期間が長くかかります。
また、タバコが原因でインプラントが安定せずに抜けてしまう可能性もあるのです。
3 インプラントを安全に受けるためには?
インプラントを安全に受けるには、次のことに注意しましょう。
3-1:問診が細かい
問診は、患者さんを知るために必要な情報です。
問診を疎かにしている歯科医院は、トラブルが起きやすいでしょう。
例えば、インプラント周囲炎になった原因が糖尿病だった場合には「患者さんが全身疾患を持っているなんて知らなかった。だから、再治療の費用は全額支払ってもらう。」なんてことを言うことも考えられます。
また、問診は患者さんの不安を聞く時間でもあります。
問診の内容が細かい歯科医院は、患者さんが安全に不安なく治療できるように努めている証拠でもあるのです。
3-2:設備が整っている
インプラント治療を受ける時はCT機器の設置や、衛生管理を徹底している歯科医院が良いでしょう。
ただ、CTの設置は歯科医院の規模や費用面で難しい場合があります。
CTが医院に無くても、撮影するように病院に手配してくれるなら問題ありません。
衛生管理の見極めは、器具を滅菌する機器の「レベル」を確認しましょう。
例えば、「クラスB」滅菌器は世界基準で、あらゆる種類や形状の被滅菌物を滅菌できる性能を備えています。
他にも、グローブやオペ着を使い回していないかなどを医院のHPがあれば確認しておきましょう。
3-3:安全性の高いインプラントメーカーを使用している
世界中で使用されているインプラントメーカーは、品質に強いこだわりをもっています。
不要物が含まれていない、純チタンの金属や使い回しではない証拠としてインプラント1つずつに番号を付けています。
また、インプラントが長期的に安定している実績が豊富なのも信頼できるポイントです。
特に次の4つは、世界4大インプラントと言われているほど、信頼性や安全性が高いメーカーになります。
・ストローマン
・ノーベルバイオケア
・アストラテック
・バイオメット3i
3-4:術者に豊富な経験や技術がある
インプラントを成功させるには、経験や技術は欠かせません。
インプラント治療歴が長く、年間の治療数が多いのも1つの判断材料になります。
技術面を判断するには、骨造成の手術数を確認しましょう。
骨造成とは、骨を造り出す手術のことで、高度な技術や知識が必要な処置になります。
特に、上顎で行うサイナスリフトやソケットリフトという手術は、技術がないとできない治療になるので、経験があるかないかでも確認できると良いでしょう。
3-5:メインテナンスを受ける
インプラントを長く使い続けるには、メインテナンスが必須です。
メインテナンスでは、次のことを行います。
・インプラントと被せ物の接続部が緩んでいないか
・正しい位置で噛み合わせているか
・インプラント周囲炎を引き起こしていないか
上記の他にも全体的に問題が無いか、歯磨きでは届かない部分をプロにクリーニングしてもらうことができます。
3-6:生活習慣を見直す
喫煙を続けたままでは、インプラントのリスクは高いままです。
インプラント治療をきっかけに禁煙するのがオススメです。
とはいえ、長年の習慣を変えるのは難しく、自分の意思だけでは禁煙できるのが不安な方は、禁煙外来を利用すると、スムーズに止められる可能性が高くなります。
また、喫煙だけではなく糖尿病といった全身疾患も、インプラントにとっては不安要素になります。
インプラントを長く使い続けるために、日頃の生活習慣を見直してみましょう。
3-7:保証内容の確認
インプラント治療後、保証してくれる歯科医院がほとんどです。
保証内容は、保証期間中にインプラントにトラブルが起きた時に費用の何%かを負担してくれるのが一般的です。
しかし、歯科医院によっては、保証が一切なかったり、治療後の保証する年数が極端に短かったりします。
保証内容に疑問を感じた場合には、専門家に相談するようにしましょう。
4 自分が納得できる歯科医院でインプラント治療をしよう
インプラント事故のニュースを聞いて、不安になる気持ちは良くわかります。
特にインプラント治療は、外科手術が必要で怖く感じやすいです。
しかし、自分が治療内容に納得し、任せられる歯科医院で治療を受ければ、インプラントで失敗するのを防ぐことができるでしょう。
インプラントは、見た目や噛み心地が良いだけではなく、先の人生を豊かにする治療法です。
「インプラントをしておけば良かった」と思わない選択をしましょう。