根管治療が失敗しやすい5つの理由とその対処法

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

根管治療とは、歯を削って神経を取り除き、神経の入っていた根管を洗浄、除菌をした後にかぶせものをするという治療方法です。

重度に進行した虫歯の治療として行われることが一般的ですが、神経を抜いたはずなのに痛みが生じるケースが少なくありません。

 

根管治療が失敗しやすい理由を5つにまとめ、どのような対処が取れるかもご紹介します。

目次

1 痛みや腫れの原因は細菌の繁殖によるものが中心

根管治療後に痛みや腫れが起こる原因は、主に根管内で細菌が繁殖することにあります。

もちろん治療時には根管部に雑菌が入らないよう細心の注意が払われますが、完全に成功するとも言い切れないのがこの治療の難しいところなのです。

1-1 根管治療は難しい手術

そもそも、根管治療は非常に難しい手術です。

虫歯となっている場所をすべて削り取り、歯に空けた小さな穴の先で神経を取り除いたのち、神経の通っていた根管を押し広げて、そこに薬剤を充填する、という流れで治療していきます。

この間、根管部に雑菌が入らないようにする必要があるのですが、口の中にはおびただしい数の雑菌がおり、無菌状態を保つためにはかなりの技術が必要です。

 

根管治療が失敗しやすい点は、

・虫歯の箇所を削り取り切れていない

・治療用の穴が小さすぎて器具が適切な場所に届かない

・根管内部の神経が取り切れていない

・根幹が十分に広がっておらず薬剤の充填がうまくいかない

・詰め物をした部分に隙間があり後日そこから雑菌が入ってしまう

 

という5つに大別することができます。

いずれも、歯科医の技術によって左右される部分がほとんどで、患者側からできることはほぼありません。

1-2 根管治療中は痛みが生じることも普通

ただし、雑菌の増殖とは別に、根管治療の途中で痛みが生じることもあります。

これは医療過誤などではなく、正常な治療の過程で生じる痛みですので、痛み止めなどを服用して痛みが引くのを待つしかありません。

 

例えば根管の内部に充填剤を詰めると、一時的に根充痛と呼ばれるズキズキとした痛みが生じるケースがあるのです。

1週間ほどで痛みが引くようであれば問題ありませんが、もし1週間以上も長引いたり、夜中に目が覚めたりするような耐えがたい痛みである場合は、担当してくれた歯科医院に連絡して再度状態を確認してもらうことをおすすめします。

 

また、治療後すぐの時点では充填剤の詰まった歯の状態に対して、治療していない周囲の歯が刺激を受け取り、痛みや不快感を覚えることもあります。

1-3 再治療はなお難易度が上がる

再治療の際には、一度充填したものを除去して、さらに繁殖している菌を除去してから再度埋め戻す必要があります。

また、虫歯の病巣がうまく除去しきれていないためにトラブルが起こっている場合は、この虫歯も削り取る必要があります。

 

前回の治療がうまくいかなかった理由を確認してからの再処置になるため、より難しい手術となります。

このような施術では、2回、3回と回数を繰り返しても必ず状態が良くなるとは限らない点にも注意が必要です。

2 患者側にできることは『いい歯医者を選ぶこと』程度

それでは、患者である私たちにできることは、いったい何なのでしょうか。

実は根管治療に関して患者側ができることはほとんどありません。

その中でも、少しでも良い状態に近付けるためにすべきことは、「良い歯科医師・歯科医院を選ぶ」程度のことなのです。

2-1 腕のいい歯科医を選ぶ

ここでいう『腕のいい』とは、根管治療の経験がある程度豊富にある歯科医のことを指しています。

 

根管治療は歯に空けた小さな穴の先で行う治療です。

そのため、器具を正確・緻密に操作する技術と、イレギュラーな事態にも臨機応変に対応できるような経験量が重要となってきます。

 

一見してそのような歯科医を見分けることは非常に難しいのですが、かかりつけの歯科医、もしくは根管治療の実績などでアピールしている歯科医院を頼るなどして、最適な治療を受けられるように気を配りましょう。

2-2 最新の設備が整っている歯科医院を選ぶ

根管治療は、極めて小さな穴の奥で治療を行います。

この治療のために、マイクロスコープなどの機器をしっかり準備している治療院であれば安心です。

 

逆に、あまりに古い機器を使用していたり、目視のみで根管治療を進めようとしていたりする場合には、精密な治療は難しくなってきます。

歯科医の技量だけではなく、こうしたハード面の技術力も高い歯科医院を選んでみてください。

2-3 虫歯を増やすような習慣はやめる

そもそもの話しになってしまいますが、「虫歯になりやすい習慣をやめる」ことが大切です。

そのために基本的な歯磨きや歯間ブラシによる清掃を習慣にしましょう。

 

これには、2つの目的があります。

1つは口内環境を正常に保つことで、これ以上の虫歯を予防し、複数個所で根管治療を行わなくてもいいようにする、というものです。

 

もう1つは、口内細菌が治療した歯根部に到達するリスクを少しでも下げる、というものです。

もちろん気を付けていても虫歯になってしまうことは避けられないこともありますし、詰め物と歯根部の間に唾液が少しでも入り込めば口内細菌が繁殖することは避けられません。

しかし、こうしたリスクを少しでも低下させることが、患者側からできる最善の再発防止策なのです。

 

3 根管治療を受けなくても済む努力を!

根管治療が失敗する理由は、基本的に「歯科医の技術力不足」「歯科医院の設備不足」が中心であり、患者側から治療失敗のリスクを減らすためにできることはかなり限られています。

もちろん最良なのは、根管治療を受けなくても済むよう、日頃のブラッシング等に気を使うことです。

 

もし根管治療が必要になった場合は、信頼できる歯科医を頼って治療を受けに行くようにしましょう。

技術が問われる手術ですので、「とりあえず近所にあるから」というような理由だけで歯科医院を選ぶことはあまりおすすめできません。

 

また受診してみて不安に感じることがあれば、治療前のセカンドオピニオンを受けることもおすすめします。

再治療となると、さらに完治させるのが難しくなるため、歯科医の力量などを早い段階で見極めることが大切です。

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