インプラント治療で後悔したくない方へ。注意点と対処法!

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

インプ ラントは、虫歯や歯周病などで失った歯を補う優れた治療法ですが、何らかのトラブルが起きた場合など、後悔してしまうケースもあります

 

インプラント治療後に「こんなはずでは」となるのを防ぐために、後悔しがちな点や対処法を解説します。インプラント治療に興味のある方は、ぜひチェックしてください。

目次

1.インプラント治療でよくある後悔9選

インプラント治療での後悔のなかでも、代表的 なものを9つ紹介します。

1-1.治療に失敗した

インプラントは、成功率の高い治療法ですが、難易度は決して低くありません。事前の検査が不充分だったり、手術中の処置に失敗したりして、インプラントを埋めた位置・角度・深さが不適切な場合など、治療が失敗する場合もあります

 

失敗した結果、インプラントと骨が結合しない、痛み・出血があるといった状態では、治療を受けたことを後悔してしまうでしょう。また、周囲の組織に存在する神経・血管を傷つけてしまい、麻痺が残ったケースも報告されています。

1-2.短期間でインプラントが使えなくなった

インプラントの寿命は10~15年といわれていますが、破損や治療後のメンテナンス不足が原因で、すぐに使えなくなってしまう可能性があります

 

多くの場合、かぶせものである人工歯とインプラント体はネジによって固定されているため、事故や歯ぎしり・食いしばりなどによってかぶせものに大きな力が加わると、かぶせものが破損したり、取れたりする可能性があります。

 

また、毎日のブラッシングや歯科クリニックでの定期クリーニングなどをちゃんと行わないと、口の中の衛生状態が悪化し、歯周病菌に歯ぐきが感染して「インプラント周囲炎」になる場合があります。

 

このように、インプラントを入れても、適切なメンテナンスをしないと、満足のいく結果にならないかもしれません。

1-3.痛みが出るようになった

インプラントを入れた後、かみ合わせが悪い、破損しやすい素材のインプラントを使用している、インプラント周囲炎が発症したといった理由で、痛みが出る場合があります。

 

痛みがあると、インプラントで噛む機能を回復したにもかかわらず充分に噛めない場合があり、後悔を感じるかもしれません。

1-4.見た目が不自然になった

インプラントの大きなメリットは、天然の歯と変わらない見た目にできる点です。しかし、残念ながら不自然な見た目になってしまう場合があります。よくある例は下記の通りです。

 

・歯が長く見える

歯周病などで歯肉が下がっていたり、歯を支えるあごの骨の高さが低くかったりすると、歯が長く見えてしまう可能性があります。

 

・歯並びが悪く見える

前歯部分を治療する場合、自然に見えるようインプラント体を埋め込む位置や角度、かぶせものの厚みや形を決めます。しかし、シミュレーションが不充分だと、かぶせものを装着した際に、出っ歯など歯並びが悪く見える場合があります。

 

・歯の色が不自然

かぶせものをつくる際は、天然の歯との色の差が出ないような色で人工歯に着色します。しかし、色の調整が不充分だと、かぶせものの色が周りの歯から浮いてしまうかもしれません。

 

上記のような理由で見た目の美しさが損なわれると、インプラントを入れたことを後悔してしまう可能性は高いでしょう。

1-5.上顎洞にインプラントが入り込んだ

上あごの骨の上方には「上顎洞(じょうがくどう)」と呼ばれる空洞があります。まれにインプラント体が、上顎洞の骨や粘膜を突き抜け上顎洞に達する場合があります。上顎洞にインプラント体が入ると炎症が起こり、蓄膿症や副鼻腔炎などのリスクが生じます

 

治療法によってはインプラント体などを意図的に上顎洞に入れるケースもありますが、影響が出ないよう配慮して行うため、安全性は高いといえます。しかし、リスクはゼロではないため、メリット・デメリットをよく理解して治療を受けましょう。

1-6.費用が想像以上にかかった

インプラントは基本的に保険適用外のため、保険が適用される入れ歯やブリッジと比べて治療費は高めです。また、歯科クリニックごとに自由に費用を決定でき、見積りをしてもらうまでは総額がわかりにくいでしょう。

 

さらに、実際に治療を進める過程で、あごの骨量が不充分なため移植などをする、他の歯もインプラントをしなければいけなくなるといったように、追加の治療が必要になり、予想以上に費用がかかるケースは少なくありません。

 

治療を決める前に、歯科医師に費用のシミュレーションをしてもらうとともに、余裕を持って費用を準備しておきましょう。デンタルローンなど費用を分割できる制度を、チェックしておくと安心です。

1-7.治療が想像以上に長引いた

インプラント治療は、手術でインプラント体を埋め込んだ後にあご骨とくっつくのを待つ必要があるため、入れ歯やブリッジといった他の歯を補う治療よりも、治療期間が長くなります

 

治療期間の目安は、入れ歯が2~3ヶ月、ブリッジが1ヶ月ほどなのに対し、インプラントは約半年、長い場合1年以上かかります。

 

歯科クリニックでの治療期間の説明が不充分な場合、治療期間の長さを後悔するかもしれません。

1-8.他の歯科クリニックに転院できない

遠方に引っ越した、歯科クリニックとの相性が悪いといった理由で他の歯科クリニックに転院しようとしても「保証制度」との兼ね合いで難しい場合があります

 

保証制度とは、治療後にインプラントが使えなくなった場合、一定の条件を満たせば、無償または安い価格で再治療やメンテナンスができる制度です。ただし、他の歯科クリニックで治療を受けた場合などは、対象外となるケースがあります。

 

インプラント保証会社を利用する場合は、登録している歯科クリニックでの再治療であれば、保証対象となるケースもあります。

 

このように、保証内容はさまざまなので、万が一の場合に備え、インプラント治療を受ける前に保証内容をよく確認しておきましょう

1-9.トラブル時に診てくれる歯科クリニックが見つからない

引っ越しや閉院などが原因でインプラント治療を受けた歯科クリニックに通えなくなり転院する場合、診てくれる歯科クリニックが見つからない可能性があります

 

特に、治療時の情報や使用しているインプラントの製品情報がわからないと、治療が難しいため、対応してもらえない場合が少なくありません。

 

また、必要な情報を伝えても、使用しているインプラントの種類によっては断られてしまう可能性があります。インプラントにはたくさんの種類があり、メーカーによって使用する器具が異なります。そのため、歯科医院で取り扱いのないメーカーには対応できない場合が多いのです。

 

広く使われているインプラントであれば、対応できる歯科クリニックを見つけやすいのですが、費用をおさえる目的で知名度の低いメーカーのインプラントを使用している場合、見つけるのに苦労する可能性が高いでしょう

2.インプラント治療で後悔しないための対処法

 

費用 と時間をかけてインプラントを入れるのであれば、後悔はしたくないものです。後悔しないためのおすすめの対処法を紹介します。

2-1.信頼できる歯科クリニックを探す

インプラント治療で後悔しないためには、病院選びが最も大切です。信頼できる歯科クリニックで治療を受ければ、トラブルを最小限におさえられるでしょう。

 

病院選びのポイントは下記の通りです。

 

・インプラントの症例実績が多いか

インプラントの症例実績が多い歯科医師であれば、質の高い治療を受けられるのはもちろん、トラブル時の対応もスムーズです。歯科クリニックのホームページに症例数を記載している場合も多いので、チェックしましょう。

 

・インプラントの専門医資格を持っているか

インプラントの専門医資格は、症例実績など各学会による独自の基準をクリアしないと取得できません。そのため、専門医の有無を確認することで、一定のレベルに達しているかをチェックできます。

 

・設備が充実しているか

口の中の状態を正確に把握するためのCT、徹底した感染対策を実現する専用オペ室など、設備が充実した歯科クリニックであれば、インプラントの成功率が高まります

 

・患者に寄り添った対応ができるか

インプラント治療は、他の歯科治療と比べて費用も時間もかかるため、歯科医師との信頼関係が重要です。患者の悩みや希望にしっかり耳を傾け、丁寧に治療方針を提案できる歯科医師が望ましいでしょう

2-2.セカンドオピニオンを受ける

歯科医師によって、得意とする治療やインプラントへの考え方はさまざまです。より自分に合った歯科医師を見つけるためには、セカンドオピニオンを受けるのがおすすめです。

 

特に説明に疑問がある場合は、別の歯科医師の説明を聞くことで、疑問が解消することがあります。

 

疑問や不安を抱えたまま治療を進めると後悔してしまう可能性が高いので、納得いくまで説明を受け、しっかり検討しましょう。

2-3.格安インプラントに飛びつかない

相場よりも極端に安いインプラント治療は、トラブルが起きやすい傾向にあります。1本数万円の格安インプラントの場合、下記のようなリスクがあります。

 

・価格が安い代わりに低品質のインプラントを使用している

・歯科医師のスキルや経験が不足している

・事前の検査が不充分

・治療後のアフターケアをしてくれない

 

口の中の健康を守るために、値段だけで判断するのはやめましょう。

2-4.治療後のメンテナンスをしっかりする

インプラント治療に成功したとしても、歯磨きや歯科クリニックでの定期メンテナンスを怠ると、歯周病によく似た病気である「インプラント周囲炎」やかぶせものの破損などにより、インプラントが使用できなくなる可能性があります

 

また、定期メンテナンスに行かないと、保証制度の対象外となり、再治療の際に全額自己負担となるリスクもあります。インプラントを長く使用するために、治療後のメンテナンスをしっかりするようにしましょう。

3.インプラント治療による後悔は事前の対処で防げる!

インプラント治療は、失った歯を補うのに適した治療法ですが、治療後に後悔してしまうケースもあります。

 

後悔する主な理由は、治療に失敗した・短期間でインプラントが使えなくなった・痛みが出るようになったなどです。

 

後悔しないためには、信頼できる歯科クリニックを探す・セカンドオピニオンを受ける・格安インプラントに飛びつかない・治療後のメンテナンスをしっかりするといった対処法が効果的です。

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