- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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値段が高いのに秘密があるように、安いのにも秘密があります。
インプラント治療も、例外ではありません。
インプラントの費用が安かったり、高かったりするのは、歯科医院によって値段が自由に設定できるからです。
とはいえ、格安インプラントをしている歯科医院で治療するのは、安全なのでしょうか?
また、一回の治療費が80万円といった金額でインプラントをしている歯科医院は、適正価格なのでしょうか?
インプラントの費用について調べるほど、適正価格なのかわからなくなってしまいがちです。
そこで今回は、インプラント費用の「3つの秘密」について解説していきます。
これからインプラント治療を始める方は、是非この記事を参考にして下さい。
目次
- 1 インプラント治療の全体の費用
- 1-1:診査・診断料
- 1-2:インプラント料
- 1-3:手術料
- 1-4:被せ物料
- 2 インプラント治療費の秘密その1「部位によって費用が違う」
- 3 インプラント治療の秘密その2「格安インプラントとの値段の差」
- 3-1:送料のコストを下げている
- 3-2:広告費を抑えている
- 3-3:一部の費用しか提示していない
- 3-4:コピー商品を使用している
- 4 インプラント治療費の秘密その3「医療費控除の対象」
- 5 賢くインプラント治療を受けよう!
1 インプラント治療の全体の費用
インプラント治療でかかる費用の内訳は、次の通りです。
1-1:診査・診断料
まず、インプラントが可能なのかをしっかりと診査、診断していきます。
口の状態を把握するためには、次のような診査を行います。
・口の模型を製作する
・歯周病の検査
・レントゲン写真や口内の写真の撮影
インプラントの診査の中で特に重要なポイントは、骨の厚さや量です。
もし、顎の骨の厚みや量が足りない場合には、骨造成の処置が必要になることがあります。
骨造成とは、骨が足りない部分に、人工骨や自家骨(自分の骨のこと)を使用して骨の量を増やす手術のことです。
骨造成が必要になると、治療法だけではなく、治療期間や費用が変わってきます。
そのため、骨の状態を把握する精密な診査は、インプラント治療には欠かせない項目です。
精密な診査をする時には、CTという機器を使用します。
CTは、骨の厚みや量を様々な角度から、立体的に診ることができる機器です。
また、CTでは骨の厚さや量以外にも、神経や血管の位置を把握することが可能です。
血管や神経のある位置に気づかずにインプラントをすると、出血が止まらなかったり、顔面麻痺が生じたりと、インプラント事故に繋がる原因になります。
インプラント事故を防ぐには、的確な診査・診断が必要です。
そのため、インプラント治療をする時は、CTを活用する歯科医院が多くなっています。
インプラント治療が、保険適用外になるので、診査・診断料も自己負担になるケースが多いです。
ただ、CTは、全ての歯科医院にあるわけではありません。
CTを活用するには、専用の機器とシステムが必要です。
専用機器には、2千万~3千万円の費用がかかるため、設置していない歯科医院も少なくありません。
歯科医院にCTの設備がない場合には、大学病院や医療センターなどでCT撮影をすることがあります。
1-2:インプラント料
インプラント料とは、使用するインプラントの費用のことです。
使用するインプラントは、インプラントメーカーによって金額が違います。
特に、有名で信頼性の高いインプラントメーカーの場合には、インプラント料も高く設定している歯科医院が多いです。
なぜなら、信頼性のあるインプラントは、使用している素材や構造へのこだわりや安全性の高いことが証明されているからです。
例えば、インプラントの表面をフッ素コーティングすることで、骨伝導能力(骨を作りだす機能)を高めて、傷口の治癒を早めることが期待できます。
このような構造になるまで、多くの研究や開発が行われているため、インプラントの値段も高くなっています。
1-3:手術料
インプラント治療では、外科手術を行うので、手術費用がかかります。
外科手術では、術中の細菌感染を防ぐために、滅菌した材料や器具を使用します。
一度使用したオペ着やグローブなどの材料は、再利用せず、廃棄処分になります。
そのため、手術では、使用する材料費や滅菌費がかかります。
1-4:被せ物料
インプラントは、自費治療になるので、被せ物も自費の被せ物を選ぶのが一般的です。
自費の被せ物には、見た目が優れているジルコニアという被せ物や、ゴールドといった金合金の被せ物などがあります。
2 インプラント治療費の秘密その1「部位によって費用が違う」
インプラント治療は、難易度の高さによって費用に差がでます。
特に、上の前歯にインプラントを入れる場合には、奥歯より見た目の改善が必要です。
前歯は、見た目を重視した治療になるので、歯茎や骨の厚みがしっかりと出るように手術を2回する場合が多く、1回の手術より手術料がかかります。
さらに、骨造成の手術を行う場合には、追加で費用が必要です。
骨を足す手術にもいくつか種類があります。
・GBR
・ソケットリフト
・サイナスリフト
骨造成の値段は、手術の難易度によって変わってきます。
特に、サイナスリフトは、術者の高度な技術が必要になるので、手術費を高く設定している歯科医院がほとんどです。
他にも担当医の技術料が、インプラント治療費の中に含まれていることがあります。
インプラントに長く携わり、経験が豊富で年間のインプラント手術をする件数も多い歯科医師になると、技術料も高く取られることもあります。
とはいえ、高額すぎるインプラント治療費を提示された場合には、かかる費用の内訳を細かく聞いたり、他の歯科医院に相談できるシステム、「セカンドオピニオン」を活用したりすると良いでしょう。
3 インプラント治療の秘密その2「格安インプラントとの値段の差」
インプラント費用の相場より、格安インプラントを提示している歯科医院もあります。
一般的なインプラント費用より、安い費用で治療できるのには、次のような理由があります。
・送料のコストを下げている
・広告費を抑えている
・一部の費用しか提示していない
・コピー商品を使用している
それぞれについて、解説していきます。
3-1:送料のコストを下げている
日本のみならず、世界中で使用されているインプラントメーカーは、海外が発祥地です。
インプラントの製造も海外で行っている場合が多く、日本に取り寄せるには送料がかかります。
年間のインプラント治療が多い歯科医院の場合には、大量にインプラントを発注することで、コストを抑えることが可能です。
つまり、大量にインプラントを輸入することで、送料のコストを抑えられて、インプラント1本あたりのコストも下がることで、格安インプラントを実現しています。
3-2:広告費を抑えている
例えば、道ばたの看板や電車に出す歯科医院の宣伝などの、広告をせずに経営をしている歯科院もあります。
広告費をかけない分、インプラント治療にかかる費用を、少しでも安く提供している歯科医院もあります。
3-3:一部の費用しか提示していない
広告やホームページには「インプラント8万円~」という表示をして、実際に相談にいってみると、8万円は手術料だけといった返答をされることがあります。
これは、費用の一部だけを提示して、お得にインプラント治療ができるとインパクトを与えて、歯科医院に足を運ばせるのが目的の手法です。
3-4:コピー商品を使用している
インプラントメーカーは、世界中で100種類以上存在しています。
数あるインプラントメーカーの中でも、世界中で使用されている会社のインプラントは、歴史も古く、信頼性が高いのが特徴です。
さらに、長年の研究開発や豊富な症例数で、インプラントの質が高く安心、安全に使用できていることが証明されています。
一方で、日本で承認されていない、有名インプラントメーカーのコピー商品が存在します。
コピー商品のインプラントは、価格が安く、治療費も抑えることができるため、使用している歯科医院もあります。
しかし、有名なインプラントメーカーに比べて、性質や安全性が劣り、インプラントが抜けたり、治療後にトラブルが起きたりする可能性が高いので、格安インプラントを売りにしている歯科医院には注意が必要です。
4 インプラント治療費の秘密その3「医療費控除の対象」
インプラント治療は、医療費控除の対象になります。
医療費控除とは、年間の医療費が10万円以上の場合に一部の所得税が戻ってくるシステムのことです。
インプラントの治療費は、医療費控除を活用することで、治療費を節約できます。
ただ、医療費控除は自分で申告をする必要があったり、期限内でないと控除を受けられなかったりすることがあるので、注意しましょう。
5 賢く、安全にインプラント治療を受けよう!
インプラントは、自費治療で自由に値段設定をすることができるため、歯科医院によって費用に差があります。
ただ、費用の安さを重視していると、インプラントの質が悪かったり、インプラント治療が失敗したりする可能性があります。
インプラント治療を安全で適正な価格で受けるには、インプラント費用の相場や医療費のシステムを知っておくことが大切です。
歯科医院を見極めて、賢く安全にインプラント治療をしましょう!