金属アレルギーのある人はインプラントできない?安全にインプラントをするために

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

金属アレルギーのある方は、インプラントが体に反応して失敗するのが心配ですよね。

 

とはいえ、見た目が悪くなりやすい入れ歯や自身の歯を削るブリッジには、したくないと思っている方も多いでしょう。

 

そこで今回は、金属アレルギーがある方がインプラントできるのかについて解説していきます。

 

これからインプラント治療を考えている方は、是非この記事を参考にしてください。

目次

1 金属アレルギーでもインプラント治療はできる?

金属アレルギーがある方でも、インプラント治療は可能です。

なぜならインプラントは、アレルギーが出にくい金属を使用しているからです。

 

また、1,965年に初めて人にインプラントを入れた頃に比べて、現在では、歯科医療の技術が向上しています。

 

金属アレルギーがある方でも安心してインプラントができるように、インプラントシステムも進化しているのです。

2 金属アレルギーでも安全にインプラントをする方法

とはいえ、いくら歯科医療の技術が向上していても、100%金属アレルギーにならないとは言えません。

 

そこで、インプラントをするときには、次のようなポイントを歯科医院で確認しましょう。

3 純正に近いチタンインプラントを選ぶ

インプラントでは、チタンという金属が使われているのが一般的です。

チタンには、次の3つの特徴があります。

 

それぞれについて、詳しく説明していきます。

3−1:生体親和性が高い

生体親和性とは、身体への馴染みやすさのことです。

 

チタンは身体への馴染みやすさから口だけでなく、頭蓋骨の代用や人工関節などの医療でも使われています。

 

インプラント治療で使われるチタンは、純正の割合が高いものがほとんどです。

チタンを使っている割合が多いほど、純正と呼ばれます。

 

100%チタンでインプラントを作製した場合には、強度が足りず、噛み合わせに耐えられずに折れてしまう可能性があります。

 

そのため、チタン以外の金属を含めてインプラントを作っているのが一般的です。

 

以前はチタンの他に、バナジウムニッケルといった金属を含めて、強度を高くしていました。

 

しかし、これらの金属は、口の中に溶けやすくアレルギーを起こす可能性があります。

 

特に、バナジウムは単体で発がん性物質を放出する可能性もあり、1980年を境にほとんど使われていないのが現状です。

 

現在では、アルミニウムニオブといった金属が約6%〜8%含まれたチタン合金のインプラントがほとんどです。

 

チタン合金は、整形外科でも使用されていて、金属アレルギーが出る心配はほとんどなく安全性が高く安心です。

3−2:腐食しにくい

金属は、長く使っていくほど錆びる傾向があります。

 

錆びた金属が口の中に溶けだして粘膜に触れると、湿疹や痒みなどのアレルギー反応が出る場合があります。

 

チタンは、金属の中でも腐食しにくく、唾液や飲み物などに触れても溶けにくいのが特徴です。

3−3:骨と結合しやすい

インプラントは、顎の骨と結合して安定します。

 

体がインプラントを異物と判断した場合には、拒否反応を起こして抜けてしまう恐れがあります。

 

しかしチタンの表面には、骨に似た成分をコーティングしていて、顎の骨に入れたときには拒否反応が出にくいです。

 

骨に似ている性質があるチタンインプラントの場合は、アレルギー反応も少なくインプラントが安定しやすいです。

4 ジルコニアインプラントを選ぶ

近年では、チタン以外にもジルコニアの材質を使ってインプラントを作製しているメーカーがあります。

 

ジルコニアインプラントの特徴は、次の通りです。

4−1:金属フリーな素材

ジルコニアインプラントは、酸化ジルコニウムを主成分としているセラミックでできたインプラントです。

 

金属を使用していないので、金属アレルギーのある方でも安心して使用することが可能です。

 

また、ジルコニアインプラントの場合には、長期的に使用しても口の中に金属が溶け出したり、金属同士の電磁波が発生したりすることもありません。

4−2:生体親和性に優れている

ジルコニアは、チタンと同様に人体との相性が良く、馴染みやすいのが特徴です。

 

体の拒否反応が起きにくく骨と結合しやすいので、しっかりと固定されます。

4−3:強度がある

ジルコニアは、人工ダイヤモンドと呼ばれるほど硬くて丈夫な素材です。

噛む力に負けない、耐久性に優れています。

4−4:審美性が高い

ジルコニアインプラントは、見た目をより美しくするのに適しています。

 

チタンインプラントの場合には、歯茎の位置が下がったときに金属部分が露出する可能性があります。

 

そうなると、金属の部分が目立って見た目が悪くなりやすいです。

 

一方で、ジルコニアインプラントは、歯茎が下がったときに露出した部分が白いので目立ち

5 アバットメントの材質にもこだわる

インプラントは、主に次の3つの構造からできています。

 

・インプラント体(顎の骨の中に埋める部分)

・アバットメント(インプラント体と被せ物を繋ぐ部分)

・被せ物(歯茎から上に取り付ける部分)

 

この中のアバットメントの材質にもこだわると、金属アレルギーが発症するリスクを低くできます。

 

アバットメントは、被せ物とインプラント体を繋ぐ言わば、架け橋のような役割があります。

 

架け橋といっても、歯茎や粘膜に触れる部分なので、金属アレルギーがある方は、アバットメントの材質も重要です。

5−1:チタン製

一般的なインプラント治療で使われるアバットメントは、既製品チタン製の2つがあります。

 

既製品のアバットメントは、価格が安いメリットがありますが、さまざまな金属が使われていて金属アレルギーが発症する可能性があります。

 

チタン製のアバットメントは、インプラントのチタンと同様に数%だけアルミニウムやニオブといった金合金が含まれているため、金属アレルギーが出にくいです。

5−2:ジルコニア製

ジルコニアアバットメントは、ジルコニアで作製されていて、金属が使われていません。

 

また、歯茎が薄い前歯では、金属のアバットメントが歯茎から透けて見た目が悪くなる場合があります。

 

ジルコニアアバットメントは、薄い歯茎でも透けづらく自然な見た目になりやすいです。

 

他にも過度な力がインプラントにかかると、アバットメントが割れたり折れたりするケースがあります。

 

ジルコニアを使っている場合には、耐久性が強いため、そういったトラブルが起きにくいです。

6 被せ物はメタルフリーが基本

金属アレルギーの方は、インプラントに取り付ける被せ物にも注意が必要です。

 

最近では、歯科技術が進み、金属ではなくても噛む力に耐えられる材質のものがあり、金属フリーの材質でも長期的に使い続けることができます。

6−1:ジルコニア

ジルコニアは、艶があり、美しい見た目に仕上げることが可能です。

金属を使っていないので、金属アレルギーを起こしにくく安全に使えます。

 

また、ジルコニアの強度は、メタルボンドといった被せ物でよく使われる金属の約4倍〜12倍にもなります。

 

ジルコニアは、噛み合わせがすり減って、噛みにくくなる心配がなく長期的に使用し続けることが可能です。

6−2:ジルコニアセラミック

ジルコニアセラミックは、ジルコニアの上にセラミックを貼り付けた被せ物のことです。

 

ジルコニアの上にセラミックを貼り付けることで、透明感が増して自身の歯のような自然な見た目に仕上がります。

 

特に、透明感や艶が重要視される前歯のインプラントで使われるケースが多いです。

 

7 治療後の保証制度も確認しておく

金属アレルギーの心配がほとんどないチタンであっても、稀にアレルギー反応が出るケースもあります。

 

インプラントが骨と結合せずに炎症を起こしたときには、インプラントを撤去していきます。

 

その場合、どのような保証があるのかをしっかりと確認しておきましょう。

 

例えば、もう一度インプラントをするときは、費用の割合はどのくらいになるのかといった保証内容を事前に担当医と確認しておくのがおすすめです。

 

なお、アレルギー症状が軽度で一時的なものと判断された場合には、様子を見ながらケアをしていく歯科医院もあります。

8 金属アレルギーでもインプラントで美しい歯を取り戻せる!

金属アレルギーの方でもインプラント治療は可能です。

 

特に、今回紹介したポイントを押さえて治療を受けるようにしましょう。

 

・純正に近いチタンインプラントを選ぶ

・ジルコニアインプラントを選ぶ

・アバットメントの材質にもこだわる

・被せ物はメタルフリーが基本

 

また、チタンのアレルギー反応について1,500名の患者を対象に行った調査では、インプラント埋入後の患者のチタンアレルギー率は約0.6%という結果が報告されています。※1

※1生体材料としてのチタンおよびチタン合金

 

この結果から、チタンインプラントによるアレルギーが出る確率は低いものの、心配な方は、パッチテストといったアレルギーテストを受けてから治療をするのが安心です。

 

現在では、金属アレルギーがある方でも安心してインプラントができるような技術や材質があります。

 

最初からできないと諦めずに、まずは信頼できる歯科医院で相談することから始めましょう。

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