インプラント治療をする際、禁煙するように言われることが多いでしょう。

タバコを吸うと血流が悪くなり、インプラント手術の傷の治りが遅くなったり、細菌に対する抵抗力が弱まったりするためです。

しかし、禁煙しなさいと言われたからといっても、喫煙習慣のある方にとっては簡単なことではありませんね。

では、最近の健康ブームから愛用者も増えている、加熱式タバコや電子タバコの場合はどうでしょうか。

普通のタバコとは違い、煙が出ず、灰にもならないことから、インプラント治療時もなんとなく問題なさそうだと考える方がいるかもしれません。

普通のタバコと異なり、インプラントには影響が出ることはないのでしょうか。

今回はインプラント治療時、またその治療後において、加熱式タバコや電子タバコは使用してもいいのかについてまとめました。

インプラント治療において、なぜ禁煙した方がいいと言われているのかご存知でしょうか。

まずはインプラント治療とタバコの関係についておさらいしておきましょう。

インプラント治療をする際に、禁煙した方がいい理由は次の通りです。

1-1-1.ニコチンによる血流阻害

まずはタバコに含まれる有害物質として有名なニコチン。

そのニコチンは血流を阻害すると言われています。

血流が阻害されると、インプラントを支える骨や歯茎に栄養が行き渡らず、傷の治りが遅くあってしまったり、細菌への抵抗力が下がったりし、最悪の場合埋め込んだインプラントが抜け落ちてしまうこともあります。

1-1-2.一酸化炭素による細菌に対する抵抗力の弱まり

タバコを吸うと、一酸化炭素が発生します。

この一酸化炭素も、歯肉への酸素や栄養が行き渡るのを妨害することがあります。

結果、細菌に対する抵抗力が弱まり、インプラントを安定させることの弊害となります。

1-1-3.白血球の機能低下

タバコは白血球の機能を低下させる作用もあります。

白血球は細菌と戦う役割を持ち、細菌感染等から体を守る働きをしますが、その機能がタバコにより低下してしまうと、細菌への抵抗力が弱まります。

1-1-4.細胞の増殖を抑制

インプラントを安定させるには、歯肉の回復が必要です。

喫煙していると、歯肉の回復に必要な細胞の増殖を妨げてしまうことがあります。

1-1-5.唾液の減少

タバコを吸うと、タバコに含まれる有害物質を中和するために唾液が使われます。

その他、ニコチンが交感神経を刺激する作用により、唾液を減少させてしまうことがあります。

このように唾液が別の役割に使われたり、分泌量が減少したりすると、口内の細菌の増殖を抑える機能が低下すると、細菌感染のリスクが高まります。

インプラントを支える歯肉が細菌感染すると、インプラントがその影響で最悪抜け落ちてしまうことがあります。

1-1-6.免疫力の低下

タバコに含まれる有害物質により、免疫力が低下することもあります。

免疫力が低下すると、骨とインプラントが結合しにくくなるなど、インプラントの脱落につながります。

また、傷の治りが遅かったり、そのほかの治療においても症状が改善しにくかったりすることがあります。

1-1-7.インプラント周囲炎へのリスクが高まる

喫煙者は非喫煙者に比べて、歯周病やインプラント周囲炎になるリスクが高いと言われています。

そのリスクの差は2〜6倍とも言われており、特に1日10本以上吸う方は非常にリスクが高まります。

インプラント手術自体は成功に終わったとしても、インプラント周囲炎になってしまうと、インプラントが抜け落ちてしまうことがあります。

これら全てのリスクを減らすためには、インプラント治療中だけでなく、治療後も禁煙することが必要なのです。

副流煙の問題や健康リスクの解消として、登場した加熱式タバコや電子タバコ。

インプラントへの影響の有無を知る前に、通常のタバコとはどういう点が違うのか確認しておきましょう。

加熱式タバコとは、通常のタバコと同じくタバコの葉やその加工品を使用しています。

しかし、通常のタバコが800℃の高温でタバコの葉を火で燃焼させるのに対し、加熱式タバコは電気などを使って加熱します。

高温で加熱させるタイプと、低温で加熱させるタイプとがあり、高温加熱のタイプはヒーターでタバコ葉を加熱します。

低温加熱タイプは、タバコ葉を直接加熱せず、液体を加熱して霧化し、タバコ葉を通過させると言うものです。

どちらのタイプも、通常のタバコと違って火を使わないため煙が発生せず、タバコ特有の臭いが発生しません。

また、灰も出ません。

しかし、タバコ葉を使っているため、その有害物質は同様に含まれています。

電子タバコはタバコ葉を使用しないと言う点が特徴です。

装置内、もしくは専用のカードリッジ内に入っている液体を電子加熱し、発生する蒸気を楽しむという製品です。

タバコ葉を使わないため、健康に良いと言われることがありますが、中には加熱する液体にニコチンを含むものもあります。

通常のタバコはインプラント治療時には吸わないように指導されることが多いですが、加熱式タバコや電子タバコはどうでしょうか。

結論から言うと、加熱式タバコや電子タバコも、通常のタバコと同じく、インプラント治療時、少なくとも手術後1週間は禁煙した方がいいでしょう。

加熱式タバコはタバコ葉やその加工品が使われているため、有害物質が除去されていると言うわけではありません。

中でもタバコによるインプラント治療の失敗の原因物質とも言われているニコチンは、加熱式タバコには含まれています。

電子タバコも、先述したようにニコチンが含まれているタイプのものもあります。

日本ではニコチンを含まないタイプの電子タバコが主流ではありますが、全ての電子タバコにニコチンが含まれていないわけではありません。

また、電子タバコも安全性がまだ不明なところがあります。

できればインプラント治療のように、骨や歯肉の回復に影響が出るリスクが0と言い切れないものに関しては、避けるのがベストでしょう。

喫煙の習慣がある方が禁煙をするのは大変なことですが、術後1週間経ち、経過が順調である場合も、できる限り喫煙は控えた方がいいと言われています。

これは通常のタバコだけでなく、加熱式タバコ、電子タバコでも同じことです。

インプラント手術後に、インプラントと結合する骨が再生されるまで、一定の期間がかかります。

その再生にタバコによる悪影響が及ぶことを避けるためにも、できる限り喫煙する本数、機会などを減らしていけるといいでしょう。

また、先述したように喫煙した場合としない場合とでは、インプラント周囲炎になるリスクの差があります。

もちろん、インプラント周囲炎は喫煙だけが原因ではありません。

ケアやメンテナンスの不十分さも関係がありますが、原因の1つとなる喫煙を控えることで、インプラントの寿命を伸ばすことにつながります。

歯科医院によっては、インプラント治療を受ける前に禁煙が絶対条件となる場合もあります。

特にインプラントを埋める際に、骨量が足りない場合には、骨を作るための治療を行います。

しかし、この骨を作る治療は喫煙習慣がある方は難しいと判断されることがあります。

手術は問題なくできたとしても、その後のインプラントが脱落リスクを考えると、歯科医院によっては治療を避ける場合もあるようです。

インプラントの治療が無事に成功した後も何年か経ったとき、喫煙習慣が戻った影響で、歯茎や骨が痩せており、インプラントが抜けてしまうケースも見られます。

これらのことから、インプラントをこれから受けようとしている方は、まずは禁煙を検討していくといいでしょう。

喫煙はインプラント治療においてたくさんの悪影響をもたらします。

通常のタバコだけでなく、近年愛用者も増えてきた、加熱式タバコ、電子タバコにおいても、その悪影響のリスクはあります。

インプラント治療においては、タバコに含まれる有害物質の影響は深刻です。

歯茎、骨の回復を促進し、インプラントを早く安定させるためにも、リスクが少しでもあるものは避けるようにしましょう。

また、治療後においても、喫煙習慣はインプラント治療後の最大のリスクとも言われるインプラント周囲炎を引き起こす可能性があります。

インプラント治療の成功率を高め、インプラントの寿命を少しでも伸ばすためにも、喫煙習慣を少しでも減らしていくことが大切です。

できれば、自身の体の健康のためにも、インプラントをきっかけに禁煙を考えるのもいいでしょう。