
- この記事の監修者
- 医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラント治療はその高額な費用が治療のハードルを上げる1つの要因になっています。一方で近年は、インターネットなどで“1本10万円から”などを謳った激安インプラントの広告もよく目にします。
治療費が高額であればこそ「同じ治療なら1円でも安いほうを選びたい」という心理が働くのも当然なこと。ただここで一歩踏みとどまり、「なぜこんなに安いの?」と疑問を持つことが賢い患者になるための鉄則といえます。ここでは相場よりもはるかに安いインプラントの”からくり“や、歯科医院によってインプラント治療の費用に差が出るポイントなどをご紹介していきます。
目次
- 1.激安インプラントの“からくり”
- 1-1.料金の一部しか表記されていない
- 1-2.無名のインプラントメーカーを採用
- 1-3.準備や設備が不十分
- 1-4.経験の浅い歯科医による治療
- 2.ここで差が出る!インプラント治療の費用の違い
- 2-1.治療前の診査・診断
- 2-2.使用するインプラントの種類
- 2-3.医院の設備
- 2-4.歯科医の技術
- 2-5.治療後の保証
- 3.まとめ
1.激安インプラントの“からくり”
はじめに、いわゆる「激安インプラント」がなぜ相場よりもはるかに安い価格を設定できるのか、その“からくり”についてみていきましょう。
1-1.料金の一部しか表記されていない

相場よりも大幅に安いインプラントのうち、とくに多くみられるのが「表記されている価格が実は”費用の一部“だった」というケースです。より沢山の人にインプラント治療を受けてもらうには、なによりまずはクリニックに来てもらうことが肝心。そこで”呼び込み“を目的に、インターネットなどの広告に「1本あたり、なんと〇万円!」といった激安価格を大々的に載せるわけです。
たとえば広告には”インプラント本体のみ“の価格を表記しておき、そこに後から検査料や技術料などを追加していく例がこれに当てはまります。このようなケースでは、最終的に提示された価格が相場とほぼ変わらないのがほとんどです。ほかにも実際に来院すると、「広告に設定された価格で治療できる症例に当てはまらない」などといわれ、費用が釣り上げられるケースもあります。
ただこれらのケースの救いとなるのは、実際の治療がはじめる前にその“からくり”に気づくことができる点です。“安く治療できる”という期待は裏切られるものの、おかしいと思った段階で治療を断れば実害を受ける心配はありません。
1-2.無名のインプラントメーカーを採用

ンプラントを取り扱うメーカーは国内外で数百社のおよび、メーカーごとに品質や価格、治療実績などが異なります。どのメーカーのインプラントを採用するかは歯科医の判断に任されますが、その際に単価の安い無名のメーカーを採用し、治療コストを抑えている歯科医院もあるようです。
世間では価格がその品質に一致しない例も多くみられますが、ことインプラントに関しては価格と品質には一定の相関性があることを知っておく必要があります。事実、あまり名前の知られていないメーカーは治療の実績が少なく、長期的にみた安全性や品質に関するデータに乏しいのが実状です。インプラントは自身の体内に数十年にわたって維持されるものですから、“安かろう悪かろう”ではすまされないことを理解しておきましょう。
1-3.準備や設備が不十分

インプラント治療が一般の歯科治療と大きく異なるのは、治療に“外科手術“をともなう点です。その手術に際してはそれなりの準備と設備、器材が必要であり、そこには莫大なコストがかかります。激安インプラントの中にはこれらの準備や設備にコストをかけないことで、費用を抑えているものがあります。
患者側がこのからくりに気づきにくいのは、歯科治療の多くは検査から治療までにあまり時間をかけないのが一般的だからです。たとえば虫歯を治療する場合、レントゲンを撮ってすぐさま歯科医が診察し、治療をはじめるという流れにとくに違和感をおぼえません。しかし体のどこかを手術する場合に、医師がレントゲンをみて「さあ、切りましょう。そこに寝転んでください」といわれても、すぐに応じることしないでしょう。インプラント治療でもこれと同じ心構えが必要であることをぜひ知っておいてください。
1-4.経験の浅い歯科医による治療

インプラントの治療件数が増えれば、当然ながらそこに携わるスタッフの人件費も増大します。一方で優秀な人材は報酬も高くなるため、経験の浅い歯科医を採用し、人件費を抑えることでインプラント治療の費用を安くしている医院もあります。いわゆる質を無視した“量産型”の手法です。
一方で経験豊富なドクターが必ずしも技術に優れるとは限らないため、一般の人がこの点を判断するのは非常に難しいといえます。ただ「担当するドクターがコロコロ変わる」「最初に説明を受けたドクターと治療するドクターが違う」といった場合は要注意でしょう。
2.ここで差が出る!インプラント治療の費用の違い
インプラント治療の費用については歯科医院が自由に価格を設定することができるため、同じ治療であっても受診する歯科医院によって費用が異なります。ではその費用の差はどこで生まれるのか、以下に詳しくみていきましょう。
2-1.治療前の診査・診断

インプラント治療ではインプラントを埋め込む場所の歯並びや骨の状態(幅・厚み)などを正確に把握し、それを元に綿密な治療計画を立てることがとても重要です。診査・診断が不十分なまま治療をはじめるのは、地図を持たないまま航海に出るのと同じで、のちのち大きなトラブルを招きます。
そこで事前の診査では通常の問診やレントゲン検査にくわえ、歯科用CTによる精密診査や口内の写真撮影、歯型の採取などさまざまな検査をおこないます。その費用として「検査費」が発生し、検査内容が充実しているほどその費用は高くなります。ただ不必要な検査を受けないためにも、検査の項目やその必要性については十分に説明を受けておきましょう。
2-2.使用するインプラントの種類

インプラントを取り扱うメーカーは国内外に多数存在していますが、歯科医院の多くは”老舗“または”大手“といわれるメーカーのインプラントを採用しています。具体的には、世界4大メーカーである「ストローマン」「ノーベルバイオケア」「ジンマー」「アストラテック」、国内では「京セラ」「プラトン」などが挙げられます。
これら有数のブランドメーカーは他のメーカーよりもコストが高くなりますが、それに見合うだけのメリットがあります。その1つは、これらのメーカーは治療実績が豊富であり、長期的にみた安全性や品質などが科学的に実証されている点です。また国内外で広く利用されるメーカーであれば、もし転勤などで引っ越した場合でも、同じメーカーを採用している別の歯科医院で治療が続けられるというメリットもあります。
2-3.医院の設備

インプラント治療の費用は、その歯科医院がどの程度設備投資をおこなっているかによっても差が出ます。たとえばインプラント手術の専用ルームを設置している医院であれば、設置していない医院よりも費用が高くなることが予想されます。専用ルームについては「必ずないとダメ」というわけではありませんが、他の治療と診療室をわけることで無用な異物の侵入や細菌の感染を防ぐというメリットがあります。
一方で専門ルームの有無にかかわらず、院内の清掃や感染対策にコストをかけていない歯科医院は、たとえ費用が安くても治療を受けるのは得策ではありません。また歯科用CTなどの精密検査機器を設置している医院は多少費用が高くなりますが、治療を的確に、安全に進めるうえで歯科用CTは今や欠かせない機器となっています。以上のようにインプラントに必要な設備が整った歯科医院では、上乗せされた金額に治療の安全性や確実性が担保されていると考えてよいでしょう。
2-4.歯科医の技術

インプラント治療の費用には、検査料やインプラント本体の費用のほかに「技術料」が発生します。技術料とはプロの職人の“技”に対する対価であり、歯科治療のみならず美容院のカット代や車の整備費、建築費用などにも含まれるのが一般的です。自らの技術に金額をつけるということは、相手からはそれ相応のクオリティが求められるわけですから、職人側も努力を惜しむことなく自身の技を磨いています。
インプラント治療は外科手術をともなうほか、周囲の歯や歯ぐきのバランスを考えて新たな歯(人工歯)を作り出す点において、他の治療よりも高度な技術が必要となります。したがって研修会やセミナーに参加したり、学会認定の資格を取得したりなどして技術の習得に励む歯科医であれば、それに見合う技術料を請求することも何ら不思議ではありません。反対に技術料を低く見積もるというのは自らの技術に自信がないか、もしくは”手抜き“を前提にした価格設定である可能性が高いといえるでしょう。
2-5.治療後の保証

近年は治療したインプラントに保証をつける歯科医院が増えています。インプラントはいかに完璧な治療であっても100%成功するとは限らず、また予測不可能なトラブルに見舞われることも少なくありません。そのような際に保証制度を設けている歯科医院では、一定の期間内であれば無料、また費用の一部のみの負担で修理や再治療をおこなってくれます。
ただ保証の内容については歯科医院によってバラつきがあるため、事前に保証の内容をしっかり確認しておくことが大切です。とくに安いインプラントでは、治療直後に起こったトラブルでも有料であったり、年数が経つと負担する金額が増えたりするケースが多くみられます。反対に任意で有償(保険料がかかる)の保証を設けている歯科医院では、最長10年まで無料(ただし上限あり)で修理や再治療をおこなってくれるとこともあります。
3.まとめ
以上のように、インプラント治療の費用には安いには安いなりの、高いには高いなりの理由が必ずあります。簡単に買い替えができる商品であればさほど問題にはなりませんが、インプラント治療はたった1回の失敗が自身の体や心に大きな傷を残すリスクをはらんでいます。目先の利益にばかりとらわれず、慎重さを忘れずに治療する医院を選びましょう。









