インプラント治療は「ワクチン接種後」どれくらい待つべき?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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新型コロナウイルスの感染対策のために、ワクチンを接種する機会が増えています。インプラント治療を予定していたり、検討したりしている人のなかには「ワクチンを打った後にインプラント治療を受けてよいのか」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

 

インプラント治療は外科処置を伴うため、一般の歯科治療と比べて身体の負担が重く、ワクチンの影響が気になるところです。

 

この記事では、ワクチン接種からどのくらい待てばインプラント手術ができるのかなど、ワクチン接種と歯科治療のタイミングについて詳しく解説します。

目次

1.ワクチン接種後はインプラント治療からどのくらいあけるべき?

新型コロナウイルスワクチンやインフルエンザワクチンを打ってから、インプラント手術をする場合は、一定の期間をあけるよう推奨されています。具体的な日数や日にちをあける理由などを解説します。

1-1.ワクチン接種後は3日以上あける

ワクチン接種後に、局所麻酔または点滴による麻酔である「静脈内鎮静法」を用いてインプラント手術を行う場合は、下記のような対応が推奨されています。

 

・新型コロナウイルスワクチン:接種からインプラント手術までの待機期間は3日以上

・インフルエンザワクチン:接種からインプラント手術までの待機期間は3日から1週間以上

 

新型コロナウイルスワクチンに関しては、日本口腔外科学会が2021年6月に発表した「mRNA COVID-19 ワクチン接種と口腔外科手術のタイミングについて」を参考にしています。

 

また、インフルエンザワクチンには、注射によって体内に入れる「不活化ワクチン」と鼻から吸入する「生ワクチン」があります。

 

広く普及している不活化ワクチンは、接種からインプラント手術までの待機期間として、3日~1週間以上が望ましいとされていますが、生ワクチンはさらに期間をあけなければいけない可能性があります。インプラント治療の日程を調整する際に、生ワクチンを接種する旨を医師に伝え判断をあおぎましょう。

1-2.ワクチン接種直後はインプラント手術を避けた方がいい理由

ワクチン接種後に待機期間を設ける理由は、インプラント手術が外科処置を伴うためです。

 

インプラント治療では、インプラントを埋め込むために歯ぐきを切り開き、あごの骨に穴をあけ、歯ぐきを縫合します。そのため、充分な免疫力と体力が必要な治療といえるでしょう。

 

ワクチン接種後は、副反応が出るため体調が悪く、インプラント治療には向いていません。ワクチンの副反応が特に強く出るのは接種当日と翌日なので、その間はインプラント治療を控えるよう推奨されているのです。

 

体調が優れない状態で外科手術をすると、傷口が治るのに時間がかかったり、出血が長引いたりするケースがあります。さらに感染症のリスクが高まり、場合によってはインプラント治療の失敗にもつながるでしょう。

1-3.インプラント治療を延期する方がよい場合

ワクチン接種からインプラント治療まで最低3日あけるのが推奨されていますが適用されるのは、ワクチン接種後の副反応が軽い場合のみです。副反応の状態によっては、インプラント治療を延期した方が良い場合もあります。

 

下記のような症状が出ている場合は、かかりつけの歯科医師に相談してください。無理せずに副反応が落ち着くまでインプラント手術を控え、スケジュールを決め直しましょう

・発熱

・悪寒

・吐き気や嘔吐

・下痢

2.インプラント治療をしてからワクチンを接種する場合のスケジュールは?

インプラント治療後にワクチンを接種する場合は、手術から最低1週間は空け、抜糸が終わってから打つのが推奨されています。ただし、術後の経過によっては、さらに期間をあける場合もあります。

 

ワクチン接種からインプラント治療まで期間をあける理由は、副反応が出るからです。

 

インプラント手術後は、身体のダメージや麻酔の影響で免疫機能が低下しています。そのため、ワクチンが効果を発揮するために必要な抗体が生まれる作用に悪影響が出ないよう、間をあける必要があるのです。

 

ワクチンの副反応は、倦怠感・発熱などインプラント治療後の症状とよく似ているため、区別がつきにくい点もネックです。

 

また、ワクチン接種日は抗生物質や痛み止めの服用は避けた方がいいとされています。しかし、インプラント治療後の抗生物質や鎮痛剤は、痛みや炎症をおさえ、回復を促すために欠かせません。そのため、インプラント治療直後は、ワクチン接種は控えたほうがよいでしょう。

3.ワクチン接種の予定があるならインプラント治療の予約は避けた方がいい?

インプラント治療を検討しているけれど、これからワクチン接種をするため「予約しない方がいいのでは?」と考えている人も多いのではないでしょうか。

 

インプラント治療の流れは、下記の通りです。

【1】診察・カウンセリング

【2】検査・診断

【3】治療計画の提案・治療費の見積り

【4】インプラント手術

【5】かぶせものの製作・装着

 

初回の診察・カウンセリングは、体調不良でなければワクチン接種直後でも問題はありません。インプラント治療の場合、すぐに外科手術など身体の負担が大きい処置をするわけではないので、タイミングによってはワクチン接種が終わるのを待つ必要はないのです。

 

また、ワクチン接種とインプラント治療を同時期に行う場合は、歯科医師と相談しながら進めるとスムーズです。初回の診察・カウンセリング時に、ワクチン接種について相談してみるのをおすすめします。

4.インプラントのトラブルなど緊急時は例外

インプラント治療は、ワクチン接種後3日~1週間ほどは控えるのが推奨されています。しかし、下記のようなトラブルが起きた場合は緊急対応が必要なので、例外的にすぐに処置する場合があります

 

・インプラントが抜け落ちてしまった

・転倒などの事故でインプラント治療をした箇所に損傷が起きた

・インプラントを入れた場所に痛みが出ている

 

もし、これらのトラブルが起きたら歯科医師に相談し、緊急対応が必要か判断をあおぎましょう。正しい判断ができるよう、ワクチン接種のスケジュールや、接種した日を伝えてください。

5.インプラントではない歯科治療もワクチン接種の予定とずらすべき?

ワクチン接種の予定がある場合、インプラントの他の歯科治療は、どのタイミングで受けるとよいのでしょうか。抜歯など外科処置を伴う歯科治療と外科処置を伴わない歯科治療にわけて解説します。

5-1.外科処置を伴う歯科治療

抜歯をはじめとする外科処置をする場合、ワクチン接種の時期はインプラント手術と同様に考えます。

 

外科処置が先:1週間以上経過してからワクチンを接種

ワクチン接種が先:3日以上経過してから、副反応の状態によって判断し外科処置

 

ただし、上記はあくまで目安で、手術の種類や難易度、本人の健康状態などをもとに、歯科医師が総合的に判断します。患者の健康のために治療の延期などを提案されるケースもあるでしょう。

5-2.外科処置を含まない歯科治療

歯を削って詰め物をする場合など外科処置を含まない歯科治療は、ワクチンを接種するタイミングへの配慮は必要ありません

 

ただし、歯科治療の内容や体調によっては、治療後に炎症を起こし腫れや痛みが出る可能性があります。そのため、治療した後にワクチンを接種すると、副反応により腫れや痛みが悪化するかもしれません。

 

心配な場合は、歯科医師と相談して治療スケジュールを決めましょう。また、治療の予約を入れていたとしても、副反応で体調が悪い場合は、予約をキャンセルして取り直すのもおすすめです。

 

6.ワクチン接種後の待機期間は3日以上!まずは歯科医師と相談しましょう

ワクチン接種とインプラント手術の間隔は、新型コロナウイルスワクチンであれば接種から3日以上、注射を打つタイプのインフルエンザワクチンであれば接種から3日~1週間以上がよいといわれています。

 

待機期間がある理由は、ワクチン接種後は副反応が影響し、手術後の傷の回復が遅くなったり、出血が止まりにくくなったりするリスクがあるためです。また、推奨されている待機期間が過ぎても、発熱や悪寒などワクチンの副反応が続く場合は、歯科医師に伝え手術日を調整してもらいましょう

 

ただし、すでに入れているインプラントが脱落したなどの緊急トラブル時は、すぐに治療をするケースもあります。早めに歯科クリニックを受診しましょう。

 

また、インプラント治療を検討中で、ワクチン接種を予定しているのであれば、初回の診察・カウンセリング時に、歯科医師に相談しましょう。

 

インプラント手術が終わってからワクチンを接種する、またはワクチン接種前後に歯科治療を考えている場合も、時期の調整が必要になる可能性があります。歯科医師と相談のうえ日程をすり合わせると安心です。

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