根管治療の治療回数はどのくらい?治療期間は?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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根管治療に、次のイメージを持っている方も多いのではないでしょうか?

 

・治療期間が長い

・治療回数が多いのに、治療が終わらない

 

しかし、根管治療が1回で終わるケースも少なくありません。

 

1回で終わる根管治療と何ヶ月もかかる根管治療では、一体何が違うのでしょうか?

 

そこで今回は、根管治療の治療回数や治療期間について解説していきます。

 

この記事では、根管治療の治療回数を減らして、最短で治療を終わらせる方法についても解説しているので是非、最後までお付き合いください。

目次

1保険の根管治療は回数も多く、長引く

そもそも、根管治療には次の2つの種類があります。

 

・保険の根管治療

・自費の根管治療

 

何回も根管治療をしている、根管治療が終わらないといった場合には、保険の根管治療を受けている可能性が高いです。

 

保険の根管治療は、使用する道具や薬剤、治療時間などが国に指定されていて、その範囲内で治療をする決まりがあります。

 

そのため、保険の根管治療では1回の治療時間を長くすることができず、何回も通院して治療が5分で終わった…なんてケースも珍しくありません。

 

根管治療の期間が延びるほど、根の中で細菌が数を増やして、どんどん汚染される範囲を広げていくので、治療がなかなか終わらずに長引いてしまう原因になります。

2根管治療を最速で終わらせる「4つの条件」

根管治療を早く確実に終わらせるには、次の4つの条件が必須です。

 

・CTを使った正確な診査・診断

・唾液の侵入を防ぐ「ラバーダム」

・根の中を隅々まで見逃さない「マイクロスコープ」

・細菌の除去に優れている「ニッケルチタンファイル」

 

それぞれについて、詳しく解説していきます。

2-1:CTを使った正確な診査・診断

診査方法や診断が間違っていれば、どんな病気も治りません。

 

特に、歯の根の病気は、歯の「内側」「外側」のどちらが原因で炎症が出ているのかを見極めることが重要です。

 

例えば、虫歯が原因の場合には、歯の内側、つまり根の中の細菌が感染を起こしている部分を取り除けば治療は終わりです。

 

一方で、歯周病が原因で歯を支えている骨にまで、細菌の汚染が進行しているケースがあります。

 

これが歯の外側の病気で、根の先に嚢胞(のうほう)といって細菌の住処になっている膿の袋のようなものができます。

 

そういった時には、歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)といった処置をするのが一般的で、歯茎を切って、根の先にある嚢胞や汚染された部分を除去する手術を行います。

 

歯の中ではなく、歯の外側の細菌感染が原因の場合には、根管治療をしても症状が治らないことがあり、汚染された部分と根の先を数ミリ除去して、専用の薬剤を詰めることで症状が改善し感染の再発を防ぐ効果があります。

 

そういった「病気の元」を一般的なレントゲン写真では、ぼやけてしまい、細菌の汚染が根の内側から発生しているのか、外側が原因なのかを明確に判断するのが難しく見逃してしまうことも少なくありません。

 

根管治療を専門とした歯科医院や、自費の根管治療をしている歯科医院では、細菌の範囲を明確化するために、診査でCTを活用します。

 

CTは、歯や歯を支えている骨などを、立体的に見ることができる機器のことです。

 

一般的なレントゲン写真では見ることができない、さまざまな角度から歯や骨の状態を確認できるので、正確に治療の方向性を決めることが可能になります。

2-2:唾液の侵入を防ぐ「ラバーダム」

根管治療中にうがいをしてませんか?

 

根管治療では、根の中の細菌をなくすことが、治療の成功の鍵になると言っても過言ではありません。

 

唾液には、色んな細菌が多く存在していて、うがいをすると根の中に唾液が入ってしまいます。

 

根管治療でせっかく汚染された部分を取り除いているのに、唾液中の細菌が入ってきてしまうと、いつまで経っても根の中が細菌に汚染されたままの状態で、根管治療が終わることはありません。

 

実際に、根管治療が終了した後、治療した歯に痛みといった症状が出るのは、ラバーダムを使用していないのが原因であることが調査でわかっています。※1

※1: 根管処置におけるラバーダム防湿の現状

 

そのため、根管治療をする時にはラバーダムを使用します。

 

使う時には、口全体に薄いゴムの性のラバーダムで被せて、処置する歯だけを露出させて根管治療を行います。

 

治療中は、処置する歯を専用のリングで固定しているので、うがいをすることはできません。

しかし、安心してください。

 

アシスタントの方がこまめに唾液を吸ってくれたり、唾液を吸う細い道具を口の中に入れたまま治療をしたりするので、口の中に唾液が溜まって苦しいことはほとんどありません。

 

ラバーダムを使用することで、外部からの細菌の侵入を防ぐことができ、治療がスムーズに進むため、治療期間が短くできます。

2-3:根の中を隅々まで見逃さない「マイクロスコープ」

保険の根管治療では、マイコロスコープを使用することが、ほとんどありません。

治療では、裸眼、良くてルーペという拡大鏡を、使用しながら行うことが多いです。

 

1センチほどの小さい穴の中を、裸眼やルーペで隅々までキレイにするのには限界があります。

 

歯科用ルーペでは、歯を最大10倍まで拡大して見ることができますが、マイクロスコープは最大20倍まで拡大して見ることができ、複雑になっている根の中をハッキリと確認することが可能です。

 

歯の中は、複雑で一つでも見落としてしまうと、細菌が残って痛みや腫れが再発する原因になります。

 

マイクロスコープは、根の先端や根っこにヒビが入っていないかなど、細かいところまで確認することができるため、根管治療には欠かせないアイテムの一つになっています。

2-4:細菌の除去に優れている「ニッケルチタンファイル」

神経の通り道をキレイにする時に使われる、針のような道具のことをファイルと言います。

 

このファイルには2種類あって、ひとつがステンレスファイル、ふたつ目がニッケルチタンファイルです。

 

一般的な根管治療では、ステンレスファイルが多くの歯科医院で使われています。

 

ステンレスファイルは、硬くて真っ直ぐな形をしていて、神経の通り道とは違う方向に進んで他の組織を傷つけてしまったり、途中で折れて取れなくなったりする原因になります。

 

特に、ステンレス制のファイルは、消耗が早く使い続けるうちに、細菌を取り残してしまう可能性が高いです。

 

一方、ニッケルチタンファイルは、柔らかく曲がる性質があり、複雑な形をしている根管内でも隅々まで届きやすいです。

 

また、ニッケルチタンファイルは、電動の機械に付けて使うことができるため、根管内を効率良くきれいにすることが可能で治療期間の短縮にも繋がります。

3自費の根管治療は通院回数が少なく、治療期間が短い

・根管治療でのCT撮影の使用

・ラバーダム

・マイクロスコープ

・ニッケルチタンファイル

 

この4つを使用する根管治療は、自費診療になります。

自費の根管治療は、保険対象外になるので、治療費が自己負担になります。

 

ただ、ラバーダムは、保険の根管治療で使うケースもあり、歯科医院によって扱いが違います。

 

自費の根管治療の特徴は、根管治療を1回で終わるケースが多いことです。

 

とはいえ奥歯は、根の数が増えて根管内が複雑になるため、多くても3回〜4回の治療で完了でき、治療も1ヵ月〜2ヶ月の期間で終わることがほとんどです。

 

また、1回の治療時間が60分〜90分と長い理由は、根管治療を長引かせるほど、治療した歯が炎症を起こして再治療が必要になったり、抜歯をしたりする確率が高くなるのを防ぐためになります。

4根管治療を最短で終わらせよう!

根管治療を早く終わらせるためには、次の4つが欠かせません。

 

・CTを使った正確な診査・診断

・唾液の侵入を防ぐラバーダム

・根の中を隅々まで見逃さないマイクロスコープ

・細菌の除去に優れているニッケルチタンファイル

 

また、この条件に加えて歯科医師の知識や技術も重要になります。

 

根管治療を行うのは、機械ではなく人です。

 

治療ができる道具を揃えるのは、もちろん、治療をする歯科医師が汚染された部分をしっかりと取り除くことができれば、治療回数や期間が少なく済みます。

 

同じ歯を何度も繰り返し治療をするのは、精神的にも辛く、余計に費用がかかります。

 

辛い思いをする前に、信頼できる歯科医院で根管治療をして最短で痛みや腫れといった症状から解放されましょう!

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