インプラント治療で「CGF」ってどんな治療ですか?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

インプラント治療は、あごの骨に穴を開けて歯根の代わりに「インプラント体」を埋め込み、人工歯をかぶせて固定する治療法です。

 

インプラントは、失った歯の噛む機能や見た目を天然歯とほぼ変わらないレベルまで回復できます。しかし、あご骨が少なく厚みや幅が不充分だとしっかり固定できないため、インプラントを入れられません。

 

インプラントができるよう、あごの骨量を補う治療法として注目を集めているのが「CGF」です。この記事では、CGFの概要や治療の流れ、メリット・デメリットなどを解説します。

目次

1.CGFはどんな治療法?

最初に、CGFの概要や、CGFと同じく患者の血液からつくられた材料である「AFG」について解説します。

1-1.CGFとは

CGFは 、「完全自己血液由来フィブリンゲル」とも呼ばれます。患者本人の血液からつくったCGFにより、骨や歯ぐきなど歯周組織の再生を促し、不足している骨量を補います

 

CGFは、ケガが治るプロセスを応用した治療法です。ケガにより出血が起きると、血管の穴を修復するために血小板が集まり血栓をつくり、傷口を塞ぎます。

 

しかし、血小板だけでは充分に止血できません。そこで、血液中の凝固因子が刺激され、「フィブリン」と呼ばれる、粘着性の高いタンパク質が生成されます。フィブリンは、網のように血栓にかぶさって傷口を塞ぎ出血を止め、乾燥してかさぶたになります

 

さらにフィブリンには、組織の修復を促す作用のある「成長因子」が含まれており、傷の治りを早める効果があります

 

CGFは、患者から採取した血液を遠心分離機という機械にかけることで、フィブリンを集めてゲル状にしたものです。CGFには、成長因子や血小板などが多く含まれており、骨が足りない箇所に、人工骨などの骨補填材とともに入れることで、骨を増やせます。充分な骨ができるまでの期間は、約4~6ヶ月です。

 

骨だけではなく他の組織にも効果があり、最先端の再生療法として、医療現場で広く用いられています。

1-2.AFGとは

CGFと 良く似た材料にAFGがあります。AFGは、血液凝固剤を配合していない、最も自然の状態に近い「血漿(けっしょう)」を指します。

 

血漿には、細胞に栄養を届ける、老廃物を回収する、細胞内の水分量を調節するといった働きがあります。AFGに骨補填材を混ぜるとゲル状に固まり、再生能力や操作性が高まります

 

そのため、インプラント治療時の骨の増量や歯ぐきの再生といったさまざまな再生療法に用いられます。

2.CGFの流れ

CGFは一般的に下記のような流れで行います。

 

(1)血液採取

CGFを抽出するために、患者本人から採血します。歯科治療で使用する血液量は、20〜40CCほどで、健康診断時の採血と同じくらいの量です。

 

(2)血液を遠心分離機にかける

採取した血液を遠心分離器にかけると15分ほどで、白血球・赤血球などを含む「血球部分」と、血漿・血小板・成長因子などを含む「血漿部分」にわかれます。血漿部分は、血小板・成長因子の量によってさらに3つにわかれ、一番下の濃度の濃い部分がCGFになります。

 

(3)手術

骨を増やしたい部分に、必要に応じてCGFやAFGを骨補填材に混ぜ合わせて使います。また、CGFを膜のように加工して縫いつけ、骨が再生するスペースを確保する処置などをする場合もあります。

3.CGFのメリット

CGFによる骨量の回復には、下記のようなメリットがあります。

3-1.骨が少なくてもインプラントを入れられる

CGFを行うことで、従来であれば骨量不足のためインプラントを入れられなかった症例でも、治療ができるようになりました。

 

他の歯科クリニックで骨量不足が原因でインプラントを断られた人であっても、CGFに対応しているクリニックで相談すれば、治療を受けられる可能性があります。

3-2.安全性が高い

CGFは、患者本人の血液からつくられているため、感染症のリスクが低く、安全性の高い治療法といえます

 

また、添加物などを一切添加しておらず、すべて本人の細胞由来の成分のため、アレルギーの心配もほぼありません

 

また、牛や豚などのコラーゲンを使用した材料を使用する場合は、人間以外の動物由来のものを体内に入れることによるリスクが考えられます。CGFを使うことで、万が一のトラブルを防げます。

3-3.治療期間を短縮できる

他の再生療法に使用する薬剤とは異なり、全て本人の血液由来の成分で、血小板や成長因子を多く含んでいるため、再生能力が高いという特徴があります。

 

比較的短期間で骨量を増やせるため、早くインプラントを入れて、噛む機能や見た目を回復できます。また、通院の負担を軽減でき、忙しい人や遠方の人でも受けやすい治療法です。

3-4.身体の負担が少ない

少量の血液を採取して使用する治療法のため、他の部位の骨を切除して移植する方法などと比べ、ダメージを抑えることができます

 

CGFに含まれる血小板と成長因子の作用で、治療後の傷の治りが早いのも特徴です。手術後の腫れや痛みもおさえられ、体力が少ない高齢者なども安心して治療を受けられます

3-5.短時間で準備できる

CGFに必要な血液量は少なく、遠心分離機に15分ほどかければ準備ができるため、あごの骨を再生する他の治療と比べ、時間がかかりません。

3-6.さまざまな使い道がある

CGFは、骨補填材など従来の再生療法用の材料と比べて、幅広い使い道があります。膜のように加工でき、糸で縫えるほど強度があるので、骨が成長するスペースを確保して成長を促す「GTR法」に使う膜にも適している材料です。

 

他にも、膜に厚みを持たせ患部に骨の土台を築く、骨をつける際の支えにするなど、さまざまな用途があります。

4.CGFのデメリット

CGF は、骨量が少なくてもインプラントを受けられる、安全性が高い、再生能力が高いなど、メリットの多い治療です。しかし、デメリットもあるので注意が必要です。

4-1.対応できる歯科クリニックが少ない

CGFを行うには、血液から血小板や成長因子を取り出すための遠心分離機が必要です。また、厚生労働省の認可がないと治療ができません。

 

比較的新しい治療法のため、まだ対応できる歯科クリニックが少ないので、探すのに苦労する可能性があります

4-2.治療費が高い

インプラントに伴うCGFは保険適用外のため、全額自己負担となります。自由に価格設定できるので、歯科クリニックによって費用は異なります

 

インプラント手術の費用と合わせると金銭的負担は少なくないため、診察・カウンセリング時に見積りを出してもらうとよいでしょう。

4-3.病気などで適用できないケースがある

病気などの理由で、CGFを受けられないケースがあります。主な理由は下記の通りです。

 

・患者本人が感染症にかかっている

・重度の心疾患がある

・先天性血液凝固因子欠乏症

・白血病

・腎臓透析を受けている

・末期の悪性腫瘍などの疾患がある

・本人から治療の合意を得るのが難しい

 

生活習慣病など上記以外の疾患でも、CGFやインプラント手術を受けられない・影響がある可能性が考えられます。通院や服薬をしている場合は、必ず歯科医師に伝えるようにしましょう

4-4.副作用のリスクがある

CFGは副作用がほとんど報告されていない、安全性の高い治療法です。しかし、採血によって腕に一時的な内出血が出る、手がしびれるといった症状を生じる場合があります

 

内出血・しびれどちらも時間が経つにつれ和らいでいくので、あまり心配はいりません。全くリスクのない治療法は存在しないので、不安な点は診察時に歯科医師に確認しておきましょう。

5.CGFをすればインプラントができる場合も!まずは歯科医師に相談を

インプラントを入れるには、インプラント体を固定するのに充分な量のあごの骨がなければいけません。あごの骨量が足りない場合は、骨を増やす処置をすることで、インプラントを入れられる場合もあります。

 

骨を増やす処置のひとつが、CGFです。CGFは、患者本人の血液から血小板や成長因子を取り出したものを指し、組織の修復を促し、傷の治癒を促進する作用があります。CGFを施術箇所に使用することで、あごの骨を増やせます。

 

CGFの主なメリットは、骨が少なくてもインプラントが入れられる・安全性が高い・治療期間を短縮できるなどです。しかし、対応できる歯科クリニックが限られている・治療費が高いなどのデメリットがあります。

 

以前は骨量不足でインプラントを入れられなかった方でも、CGFによって治療ができるようになるかもしれません。

 

インプラントにすることで、機能も見た目も大幅に改善されます。CGFに対応している歯科クリニックを探し、一度相談するとよいでしょう

この記事が気に入ったら「評価」ボタンを押してください!

★★★★★

評価する