【教えて!】歯周病の治療期間はどれくらい?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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歯周病は、放置していると「歯が抜ける」「骨が溶ける」といった取り返しのつかない深刻な状態になってしまう恐ろしい病気です。

 

しかし、歯周病のサインに気づいても「仕事で忙しくて継続的な通院が難しい」「治療が長期間になるなら面倒だな……」と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

そこで今回は、歯周病の治療期間の目安や、放置しておくとどのようなデメリットを被るかなどについて詳しく解説していきます。

目次

(1)歯周病の治療期間は症状によって変わる

もともと歯周病は、大別して「歯肉炎」(しにくえん)と「歯周炎」(ししゅうえん)に分けられるのですが、治療期間は症状の状態や進行度によって大きく変わります。

 

まずは各症状の特徴をふまえつつ、治療期間の目安をみていきましょう。

(1-1)子どもから大人までなりやすい「歯肉炎」

歯肉炎は、小中学生がもっともなりやすいといわれる歯周病です。

 

この記事を読んでいる方のお子さんに「お菓子が大好き」「寝しなにお菓子を食べる」「歯磨きが嫌い」「歯磨きの時間が短い」というケースが当てはまる場合は、すでに軽度の歯肉炎に陥っている可能性があります。

 

さて歯肉炎は、「歯茎が赤くはれる」「歯ブラシをあてると血がでる」といった症状が主なものです。もちろん歯肉炎は大人の方もなりやすい病気ですので、20代以降の人も日々気を付けるようにしましょう。

 

歯肉炎になってしまう大きな理由は、ずばり「歯垢(プラーク)」です。ブラッシングが届かない場所や、磨き足りなかった場所に、食べかすや細菌が蓄積していき、ねばねばとした物質を形成します。

 

歯垢(プラーク)とはつまり、細菌のかたまりに他なりません。これが歯肉(歯茎)を刺激することで、腫れや出血を引き起こしてしまうわけです。

 

「自分は5分以上かけて丁寧に歯磨きをしている」という方も注意してください。歯磨きにいくら時間をかけても、磨き残しがあれば、そこに歯垢(プラーク)が蓄積してしまうからです。

 

歯磨きのやり方には、一人ひとりクセがあります。ある部分は隅々まできれいにブラッシングが出来ていても、他の箇所は磨きが足りないということも決して珍しくはありません。

 

万が一歯肉炎になり、それを放置していると、さらに症状が深刻な「歯周炎」いわゆる「歯槽膿漏」になってしまうことも……。

 

気になる方は、歯周病のチェックのついでに、正しい歯の磨き方を歯科医師に教えてもらうことをおすすめします。

 

【主な治療方法と治療期間の目安】

歯肉炎の治療では、歯垢(プラーク)を除去して口内をクリーニングしていくのがメインとなります。適切に対応すれば、基本的に100%治る病気です。

 

歯磨きの仕方やブラシの当て方に気を付けて、日々の歯磨き方法を改善していくだけでも高い効果を期待することができます。

 

治療期間の目安は、半年から一年程度。定期的に通院して歯石を除去している方なら、もっと早く歯肉炎の治療を終えることができるはずです。

(1-2)重度の場合は抜歯も覚悟しなければならない「歯周炎」

歯肉炎を放置すると、場合によっては「歯周炎」と呼ばれる症状へと移行します。

 

取り除かれずに放置されていた歯垢(プラーク)が、歯と歯茎の間すなわち「歯周ポケット」にどんどんもぐりこんでいき、そこで繁殖した細菌が歯の根元(歯根)や骨を侵食していくのです。

 

歯周炎の初期段階は、歯茎の痛み・腫れ・出血・赤み・不快な口臭といった症状で現れます。

 

歯周炎の症状が進んでいく速さは、歯垢(プラーク)の量や細菌の数によってかなり個人差があるため注意しましょう。

 

どちらにせよ歯周炎が恐ろしいのは、進行していた症状が一時的に小休止状態のようになり、「歯周病を気にしていたが治ったようだ」と勘違いしてしまいやすいということです。

 

しかしそこで何も対処をせず症状を放置していると、歯周ポケットに棲みついた大量の細菌がどんどん歯根や骨を侵していき、やがては治療不可能なレベルにまで歯茎を後退させてしまうことになってしまいます。

 

 

【主な治療方法と治療期間の目安】

歯周炎が軽度~中度であるなら、歯周ポケットをクリーニングして丁寧に細菌を除去してくことで治療を行っていきます。

 

しかし、歯周ポケットが深ければ深いほど、細菌をクリーニングするのが難しくなります。5ミリ以上の深さになると、歯肉を切開して対応しなければならないのです。

 

症状が深刻な場合(例えば骨が溶けてしまっているケース)、骨移植などの施術も行う必要があります。

 

歯周炎の治療期間の目安は、症状の進度や歯の本数によって変わります。例えば、症状が軽く、一本の歯のみ歯周炎にかかっているとすれば、治療は歯肉炎と同様にクリーニングだけで済むため、半年ほどで治療を終えることが可能です。

 

しかし、症状の重さや菌に冒されている歯の本数(歯肉の範囲)が増せば増すほど、治療期間も長くなっていきます。重度の場合、2年ほどかかってしまうことも……。

 

そうならないためにも、定期的に歯科医院に行って歯石のクリーニングや検診をしてもらうことをおすすめします。歯周炎は早期発見がカギです。

(2)歯周病は保険・自費治療の2タイプある

多くの方は、歯周病治療を保険適用の範囲で行うのが普通だと考えているかもしれません。

 

もちろん歯周病は保険を適用して治療に臨むことができるのですが、実は保険の範囲内では限界があるのです。

(2-1)保険適用範囲内の歯周病治療はデメリットが多い?

どの治療においても同じことが言えるのですが、基本的に保険診療では、国が定めた厳格なルールを守らなければなりません。

 

歯科医師は日々最新の歯周病治療について学び、技術を習得していますが、保険診療では認められていないことが多々あります。

 

そのため、世界的にみても有効だと支持されている歯周病の治療を提供することができないのです。

 

さらにいえば、保険診療では1度の来院で行える治療内容も厳格に決められています。「今日のうちにここまで治療すれば高い効果を期待できるだろう」と歯科医師が思っていても、保険診療では実現することができません。

 

また、何度も通院しなければならないというのは、患者自身にとっても大いに負担となりえます。

 

おそらく「自宅から遠くて気軽に足を運べない」「仕事で忙しくてなかなか時間をとれない」という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

 

治療のために何度も通院するハードルが高いと、治療を継続できなくなり、症状が改善されかけていた歯周病が、再び悪化し、取り返しのつかないことになってしまうリスクもあります。

(2-2)自由診療なら歯周病治療がより効果的になる?

いまみてきたように、保険診療の歯周病治療には「提供可能な治療技術が限られる」「治療期間が長くなりがち」「何度も通わなければならないので通院のハードルが高くなる」といったデメリットがあります。

 

一方で、自由診療の歯周病治療はどうでしょうか。

 

自由診療であれば、保険診療のためにかけられていた諸制限が取り払われますので、「最新の歯周病治療を受けれる」「一度にできる治療が増えて期間を短縮できる」「歯科医院に通いやすくなる」といったメリットを享受できるようになります。

 

またその他にもメリットがあります。自由診療では、菌に冒されてしまった骨を再生する治療を行うことが可能です。

 

①GTR法

菌に冒された部分をそのまま放置して自然治癒を待つ場合、組織が回復・再生するのが拒まれてしまい、歯周組織を元も戻すことが難しくなってしまいます。

 

そこでGTR法では、きれいにクリーニングした歯周ポケットに「メンブレン」と呼ばれる特殊な膜を挿入し、菌の妨害を阻みつつ、安全に歯周組織を成長させていきます。

 

デメリットは、歯肉に差し込んだメンブレンを切開手術によって再度取り出す工程が必要だということです。

 

 

②エムドゲイン法

GTR法が歯周組織を菌から守る方法だとするなら、エムドゲイン法は、菌の侵入を防ぎつつ再生を促す薬剤治療です。

 

エムドゲインはゲル状の薬剤ですので、GTR法とは違い、治療後の再手術は一切必要ありません。負担が少ないため、おすすめです。

(3)歯周病を放置するとどうなる?

最後に、歯周病を放置することで被るリスクやデメリットについてご紹介します。一度かかると、自然治癒させることが難しいため、症状に気づいた際は速やかに歯科医院に相談することをおすすめします。

(3-1)糖尿病を悪化させてしまう

糖尿病を持っている方は、一般の人よりも糖尿病にかかりやすいといわれています。万が一歯周病にかかってしまい、それを放置していると、血糖値コントロールが乱れ、糖尿病の諸症状を悪化させてしまうリスクがあります。

(3-2)心疾患を引き起こすリスクが高まる

最新の研究では、歯周病菌が血管から全身をめぐり、心臓に到達すると、動脈硬化などの疾患を引き起こす可能性があるといわれています。最悪の場合、「細菌性心内膜炎」という感染症に罹患してしまうことも……。

(3-3)歯を失う

歯肉炎が進行し、歯周炎に至った場合、「歯を失う」という最悪のリスクも覚悟しなければなりません。

 

歯を失うというのは、単に審美性を損なうだけでなく、食べ物を嚙みしめる楽しさ・喜びを手放すということを意味します。

 

また、歯を失った後のフォローを考えると、金銭的な負担を強いられてしまうというデメリットも強調しておくべきでしょう。

(4)まとめ

今回は、歯周病の治療でかかる期間の目安と、「歯肉炎」「歯周炎」という2つの歯周病の特徴について解説しました。

 

歯周病の治療期間を短くして、効果的に治療を行うには、概して3つのポイントがあります。

 

①定期的に検診にいって歯のクリーニングを行う

②早期発見につなげる

③自由診療で治療効率をあげる

 

「歯茎から血がでる」は歯周病のサイン。これを見逃さず、心当たりのある方は、いますぐに歯科医院に診てもらいましょう。

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