- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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歯ぐきは食事などの衝撃による負担に加え、飲食物の刺激や口内細菌の増殖などによるダメージを受けやすい部位です。
そのため、炎症を起こしやすくさまざまな症状が出る場合も少なくありません。なかでも歯ぐきの腫れは、発生頻度が高い症状です。痛みや違和感、出血を伴う場合も多く、重大なトラブルが潜んでいる可能性もあります。歯ぐきの腫れを感じたら、早めに原因を突き止め対処するようにしましょう。
この記事では、歯ぐきの腫れの主な原因や対処法などを解説します。
目次
- 1.歯ぐきが腫れる主な原因を7つ紹介
- 1-1.歯周病
- 1-2.重度の虫歯
- 1-3.親知らず
- 1-4.歯根の割れ
- 1-5.歯ぐきやあごの骨の腫瘍
- 1-6.ストレス・疲労・睡眠不足・栄養不足
- 1-7.薬の副作用
- 2.歯ぐきが腫れたときに必要な治療とは
- 2-1.歯周病治療
- 2-2.根管治療
- 2-3.親知らずの抜歯
- 2-4.歯根を取り除く
- 2-5.歯ぐきやあごの骨の腫瘍の治療
- 3.歯ぐきが腫れたときの注意点
- 3-1.血行が良くなることをしない
- 3-2.膿を出そうとする
- 4.歯ぐきが腫れたときの応急処置とは
- 4-1.腫れている部分を冷やす
- 4-2.口の中を清潔にする
- 4-3.市販の痛み止めを使う
- 4-4.部分入れ歯を外す
- 4-5.安静にする
- 5.歯ぐきの腫れを予防する方法
- 5-1.歯と歯ぐきの間を丁寧にブラッシング
- 5-2.歯磨き粉や歯ブラシを見直す
- 5-3.生活習慣を整える
- 6.歯ぐきが腫れる原因と対処法を知って口の中の健康を守ろう
1.歯ぐきが腫れる主な原因を7つ紹介
歯ぐきが腫れる主な原因は以下の7つです。
1-1.歯周病
歯ぐきが腫れる原因として、最も可能性が高いのは歯周病です。歯磨きが充分でないなどの理由で口の中に汚れが付着すると、歯と歯ぐきの間の溝である「歯周ポケット」に歯垢が溜ります。歯垢のなかには細菌が多く潜んでおり、歯ぐきに感染する炎症を起こし、歯周病を引き起こします。
歯ぐきに炎症が起こると、赤み・腫れ・出血といった症状が見られます。悪化するとあごの骨が溶け、歯のぐらつきが生じ、最終的には歯が抜け落ちかねません。
軽度の歯周病の場合、痛みなどの目立った症状がないので、いつの間にか進行する可能性があります。
1-2.重度の虫歯
虫歯が進行し、一般的に「歯の神経」と呼ばれる「歯髄(しずい)」まで到達している、または歯髄が壊死している場合、歯ぐきの腫れや白いニキビのようなできものが見られるケースがあります。
歯髄が壊死すると歯根に膿が溜まるケースがありますが、神経が機能していないため痛みを感じないかもしれません。歯磨きのときに血や膿が出ることがあります。
歯ぐきの腫れを放置すると、膿が大量に溜まり激しい痛みを感じる可能性が高いでしょう。また、炎症の影響であご骨が溶けて、歯が抜けてしまう恐れもあります。
また、虫歯が再発し、かぶせものや詰めものが細菌に感染して歯根に膿が溜まった場合も、同じように歯ぐきが腫れます。
1-3.親知らず
親知らずが真っすぐではなく、歯ぐきを圧迫するような生え方・埋まり方をしている場合、炎症や腫れを引き起こします。
また、親知らずの生え方によっては、ブラッシングがしにくく汚れが溜まりやすいケースもあります。汚れが溜まると歯ぐきが細菌に感染し、腫れてしまう場合もあるでしょう。
1-4.歯根の割れ
歯根が割れていると、その部分から細菌が入り込み感染を起こし、歯ぐきが腫れる場合があります。歯根の割れの原因としては、歯科治療でかぶせものを装着するための土台と歯根の接触によるダメージ、歯髄の除去による歯の劣化などが考えられます。
1-5.歯ぐきやあごの骨の腫瘍
良性腫瘍である「エナメル上皮腫」やがんなど、歯ぐきやあごの骨の腫瘍によって、歯ぐきが腫れるケースもあります。初期は痛みもなく、歯周病や口内炎などと区別がつきにくく、放置されがちです。
進行すると手術などの大がかりな治療が必要になり、場合によっては命を落とす可能性もあります。
1-6.ストレス・疲労・睡眠不足・栄養不足
ストレス・疲労が溜まっている、睡眠不足が続いている、栄養が不足しているといった場合、身体の抵抗力が落ち、口内炎により歯ぐきが腫れることがあります。
歯ぐきは、毛細血管が集中している部位なので体調の影響が出やすいのが特徴です。特に歯科疾患などの病気がない場合は、10日~2週間ほどで症状が落ち着くでしょう。
1-7.薬の副作用
全身疾患など歯の病気以外で服用している薬が原因で、歯ぐきが腫れてしまう場合があります。症状によっては、歯科医師と他の病気の担当医が連携して、他の薬で代替するなどの対処が必要です。
2.歯ぐきが腫れたときに必要な治療とは
歯ぐきが腫れたときは、歯科クリニックを受診して必要な治療を受けましょう。特に、激しい痛みがある、膿や血が出る、2週間ほど症状が続くといった場合は、早めの受診をおすすめします。
歯ぐきが腫れた場合に、行われる主な治療を紹介します。
2-1.歯周病治療
歯周病の治療のメインは、歯垢を減らす「プラークコントロール」です。プラークコントロールのために、歯科クリニックで歯垢や歯石を取り除いてもらい口内環境を改善するとともに、歯磨き指導を受け、正しいブラッシングを身につけます。
日ごろのセルフケアをしっかりすることで、歯周病菌が繁殖しにくくなり、徐々に歯ぐきの腫れがおさまっていくでしょう。
重度の場合は、歯ぐきを切り開いて歯石を取り除くなどの外科手術が必要な場合もあります。
2-2.根管治療
歯髄が虫歯菌に感染している場合、歯を削っただけでは治らないため、「根管治療」をする必要があります。根管治療では、歯髄を取り除き、空洞になった「根管」と呼ばれる部分を洗浄・殺菌し、薬剤をつめて密封のうえ、かぶせものをします。
2-3.親知らずの抜歯
親知らずの影響による歯の炎症をおさえるために抗生剤を使用しても、繰り返し炎症が起こるケースもあります。腫れや痛みの状態によっては、親知らずを抜歯して再発を防ぎます。
2-4.歯根を取り除く
歯根の割れによって歯ぐきが痛む場合は、歯根の破片を取り除くことで、炎症がおさまり、腫れが引く可能性が高いと思われます。割れてしまった歯根は、放置しても修復しないため、早めに歯科クリニックの治療を受けましょう。
2-5.歯ぐきやあごの骨の腫瘍の治療
腫瘍の可能性がある場合は、歯科医師より専門の医療機関の診察を受けるようアドバイスがあります。歯科クリニックによっては、提携の医療機関を紹介してもらえ、スムーズに診察を受けられるでしょう。
腫瘍の種類や進行度合いによって治療法は異なりますが、がんの場合は手術・化学療法・放射線療法などが行われます。
3.歯ぐきが腫れたときの注意点
歯ぐきが腫れたときにした行動によって、症状が悪化してしまう場合があります。主な注意点を紹介するので、悪化しないよう参考にしてください。
3-1.血行が良くなることをしない
通常であれば血行が良くなると健康に良い影響を与える場合が多いですが、腫れがあるときは悪化の原因となり、痛みが強くなるリスクがあります。運動や入浴、サウナ、飲酒といった行動は、血行を促進するので、歯ぐきの腫れがあるときは控えましょう。
3-2.膿を出そうとする
指や舌を使って腫れている場所を押して、膿を出すのは避けましょう。膿には多くの細菌が潜んでおり、感染が広がる可能性があります。また、膿を潰した傷口から菌が入り、さらに腫れているところの症状が悪化する可能性があるので、注意が必要です。腫れている場所は、極力触らないようにして、早めに歯科医師に相談してください。
4.歯ぐきが腫れたときの応急処置とは
歯ぐきが腫れていても、すぐに歯科クリニックに行けない場合もあるでしょう。ここでは、歯ぐきが腫れたときの応急処置について解説します。
4-1.腫れている部分を冷やす
歯ぐきが腫れるのは、多くは何らかの原因で炎症が起きているからです。膿が溜まっている場合も多く、鈍い痛みやズキズキとする痛みを感じます。
腫れている部分を冷やすと炎症が落ち着き、腫れが軽減します。冷やす際は、冷たい水で絞ったタオルや氷・保冷材をタオルで包んだものを、頬の外側にあてます。氷・保冷剤を直接肌にあてると、肌にダメージを与える可能性があるので要注意です。
また、冷やしすぎると血行が滞り、薬の効果が出にくくなる、回復に時間がかかるなどのデメリットがあるので、適度に冷やすのが大切です。
4-2.口の中を清潔にする
腫れた部分が気になって歯磨きをしないようにすると、口の中で細菌が増殖し炎症が悪化するかもしれません。
毛がやわらかい歯ブラシを使い、腫れのある部分に刺激を与えないよう、優しくブラッシングしましょう。殺菌作用のあるデンタルリンスやうがい薬で消毒するのも有効です。
4-3.市販の痛み止めを使う
痛みが強い場合は、ロキソニンなど市販の鎮痛剤を服用し、痛みを和らげて様子を見るのもよいでしょう。痛みがひどいと、食欲の低下による栄養不足や睡眠不足などにつながり、さらに炎症が悪化する場合があります。歯ぐきが腫れているときは、痛みを軽減し、体調を整えるのが大切です。
ただし、痛み止めはあくまで応急処置なので、痛みが和らいでも早めに歯科クリニックで診療を受けましょう。
4-4.部分入れ歯を外す
腫れている場所に部分入れ歯の金具があたることで、痛みが強くなったり、炎症が悪化したりするリスクを防ぐために、部分入れ歯は外しておきましょう。
部分入れ歯を外したままだと食事や会話がしにくいので、早めに歯科医師に相談するのをおすすめします。
4-5.安静にする
疲労が蓄積しているときや体調が悪いときは、抵抗力の低下により細菌が増えやすく、歯ぐきの腫れが強くなる場合があります。なるべく安静にして体力を回復することで、腫れがおさまりやすくなるでしょう。
5.歯ぐきの腫れを予防する方法
日ごろのセルフケアをしっかりし、生活習慣を整えれば、口内環境や体調が改善し、歯ぐきが腫れにくくなります。
5-1.歯と歯ぐきの間を丁寧にブラッシング
歯ぐきが腫れる最も多い原因である歯周病は、歯周ポケットに歯垢が溜まり、歯ぐきが歯垢に潜む細菌に感染して起きます。汚れが蓄積し細菌が繁殖しないよう、歯と歯ぐきの間を重点的にブラッシングしましょう。
5-2.歯磨き粉や歯ブラシを見直す
口内環境を整えるには、歯磨き粉や歯ブラシ選びも大切です。腫れが起きやすい場合は、歯周病菌を防ぐ効果のある歯磨き粉を使い、菌の増殖を防ぐのをおすすめします。
ブラシが届きにくい奥歯までしっかり磨けるへッドが小さい歯ブラシや、ムラなく磨ける電動歯ブラシを選ぶと効果的です。
5-3.生活習慣を整える
ストレス・寝不足・栄養不足による抵抗力の低下は、歯ぐきが腫れる原因のひとつです。また、糖分の多い食生活が続くと、糖分をえさにする細菌が増え、歯周病のリスクが高まります。
適度に運動してストレスを解消する、しっかり睡眠をとるようにする、野菜や肉などバランスのよい食事をとるなど、生活習慣を整えるのが大切です。
6.歯ぐきが腫れる原因と対処法を知って口の中の健康を守ろう
歯ぐきが腫れる原因のうち一番多いのは歯周病です。その他、重度の虫歯や親知らずなどさまざまな原因が考えられます。
なるべく早めに歯科クリニックを受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。すぐに歯科クリニックに行けない場合は、腫れる場所を冷やす、市販の痛み止めを服用するなどの応急処置をして症状を和らげます。
また、歯ぐきの腫れの予防として、歯磨きや生活習慣の見直しをするのも大切です。正しい対処法を行うことで、口の中の健康を守れます。