インプラントを最短で終える「抜歯即時荷重インプラント」は安全?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

インプラントがしたくても、治療が長引いたり顔が腫れたりする可能性があるのを理由に治療を諦めていませんでしたか?

 

抜歯即時荷重インプラントは、痛みや腫れを最小限にできたり、治療期間を大幅に短くできる治療法です。

 

とはいえ、どんな治療法でもメリットがあればデメリットもあります。

 

抜歯即時荷重インプラントは、インプラント手術の中でも難易度が高く、限られた歯科医院でしか行っていない場合があります。

 

難易度が高い手術と聞くと、安全性が気になる方も多いと思います。

 

そこで今回は、抜歯即時荷重インプラントについて詳しく解説していきます。

目次

1 患者さんの負担が少ない「抜歯即時荷重インプラント」

そもそも従来のインプラント治療では、歯を抜いた部分の骨や組織が安定するまで数ヶ月待ってから、インプラントを入れるのが一般的な方法でした。

 

しかしそれでは、治療が終わるまでに長い時間がかかります。

 

なお、外科手術を2回する必要性があり、痛みや腫れが強く出て身体的にも精神的にも負担が大きくなります。

 

一方で抜歯即時荷重インプラントは、1回の手術に次の処置を詰め込む治療です。

 

・抜歯

・骨造成(骨を増やす手術)

・軟組織移植(歯茎を足す手術)

・インプラント埋入

・仮歯の取り付け

 

インプラントを入れる部分の歯茎や骨の状態によっては、骨造成や軟組織移植といった処置をしないケースもあります。

 

この手術方法では、1回の手術で5つの処置を同時に行うため、身体への負担が少なく気傷口の治りが早いのが特徴です。

 

例えば、何度も同じ箇所の歯茎を切って刺激を与えてしまうと、周辺の組織細胞が潰れて血流が悪くなります。

 

血流が悪くなったことで、免疫機能が傷口を回復させようと炎症を起こして、腫れが強くでる場合があります。

 

他にも、基本のインプラント治療では、骨造成や軟組織移植の処置をした後、傷口の治りや歯茎や骨が回復するのを待つ治癒期間が必要で、約1年の治療期間がかかるケースも少なくありません。

 

抜歯即時荷重インプラントは、約2ヶ月〜3ヶ月で治療完了でき、手術当日に仮歯を取り付けるため、歯がない期間がないのが魅力的です。

2 抜歯即時荷重インプラントの「4つのリスク」

メリットが多い抜歯即時荷重インプラントですが、次の「4つの大きなリスク」があります。

2−1:見た目のリスク

抜歯即時荷重インプラントの「荷重」には、力が加わるという意味があり即時荷重は手術後すぐに噛めることを指します。

 

手術後すぐに噛める状態では、インプラント周囲の骨や歯茎に悪影響を与える可能性があります。

 

特に過度な負担がインプラントにかかった場合には、骨が吸収されると同時に歯茎の位置が下がってしまいます。

 

そうなると、歯茎の位置が隣の歯と違ったり、インプラントの金属の部分が露出したりと見た目が悪くなりやすいです。

 

奥歯に比べて前歯は、骨や歯茎が薄い状態のことが多くダメージを受けやすいため、見た目が悪くなりやすい傾向があります。

2−2:インプラント周囲炎のリスク

インプラント周囲炎とは、細菌が歯茎の中に侵入してインプラントの周囲の骨を溶かしていく病気です。

 

インプラントは顎の骨に支えられているので、骨がなくなるとグラグラと動くようになり最悪の場合、抜けてしまう恐れがあります。

 

抜歯即時荷重インプラントは、前歯の治療で行われることがほとんどで、インプラントを入れるポジション(位置)を間違えてしまうと、インプラント周囲炎のリスクが高くなります。

 

例えば、インプラントを深く埋入しすぎた時の歯茎が厚い場合には、周囲炎のリスクが増し、薄い歯茎の場合は歯茎が下がるリスクが高くなります。

 

薄い歯茎の場合では、歯茎が下がるだけでインプラント周囲炎のリスクは高くならないのでは?と思う方もいるでしょう。

 

しかし、歯茎が下がるとインプラントの一部が露出します

 

インプラントの表面は、骨と結合しやすいようにザラッとした構造になっていて、露出してしまうと汚れが溜まりやすく、インプラント周囲炎を引き起こす可能性が高くなります。

2−3:抜けるリスク

抜歯即時荷重インプラントの治療法で仮歯を固定しているのは、抜歯前の歯茎の形態を崩さないことが目的です。

 

しかし、仮歯を付けたことで過度な負担が顎の骨にかかると、インプラントと骨が結合せずに抜けてしまう恐れがあります。

2−4:細菌感染するリスク

骨造成や軟組織移植をした後には、切った歯茎をしっかりと封鎖するのが基本です。

 

それは細菌感染して骨が十分に増えなかったり、移植した歯茎が壊死したりするのを防ぐためです。

 

抜歯即時荷重インプラントでは、骨造成や軟組織移植を行った後、仮歯を取り付けるので完全に傷口を封鎖している状態ではありません。

 

そのため、一般的なインプラント治療に比べると、細菌感染する確率が高くなりやすいと言われています。

3 抜歯即時荷重を成功させるための「5つのポイント」

抜歯即時荷重インプラントを成功させるには、次の5つのポイントが大切です。

3−1:衛生面や機材の十分な設備

インプラント手術は外科手術になるので、衛生面も大切なポイントになります。

衛生管理が、しっかりと行き届いている環境で手術を行っているかを確認しましょう。

例えば、手術時に使用するガウン(手術着)やグローブなどが1回で使い捨てしているか、器具の滅菌は世界基準の滅菌器で行っているかなどを事前にホームページを見たり、歯科医師に直接聞いてみたりしましょう。

3−2:診査・診断の見極め

抜歯即時荷重インプラントができる条件を満たしているかの判断ができる歯科医師のもとで治療を受けましょう。

 

誤った診断は、口の中の神経や血管などを傷つけて、重大な医療事故をまねく恐れがあります。

 

インプラント事故を防ぐためには、CT撮影を必ず行い3次元的に骨の量や厚さの他にも、神経や血管の位置を正確に把握するのが大切です。

 

また、インプラントシステムを活用する方法もあります。

 

インプラントシステムでは、実際の手術と同じ流れをコンピュータ上でシミュレーションでき、問題なく手術が可能か確認できるようになっています。

 

一つの診査から情報を得るのではなく、さまざまな方向から多くの情報を得て、正確な診断している歯科医院が良いでしょう。

3−3:未来を見据えたプランニング

インプラント治療が問題なく終わっただけでは、成功とは言えません。

 

インプラントをしばらく使い続けた後も変化なく、快適に過ごせるように治療計画を立てるのが重要です。

 

例えば、前歯は顎の骨や歯茎が薄い場合が多く、最終的な被せ物を入れてしっかりと噛めるようになった後に、骨の一部が吸収されて歯茎の位置が下がってしまうケースもあります。

 

・前歯にかかる力を調整してコントロールする

・歯茎がどのくらい下がるのかを予想して被せ物を作製する

 

といったことなどを考えて、インプラントのプランニングをするのは当たり前です。

 

特に、抜歯即時荷重インプラントは前歯で良く行われる治療で、インプラント治療後の見た目が不自然になっては意味がありません。

 

インプラント治療後のトラブルを防ぐためには、手術方法やインプラントの種類、最終的な被せ物を入れた後に、どれだけ歯茎の位置が下がるのかなどを見据えたプランニングを立てていないと、本当の意味でインプラント治療の成功にはならないのです。

 

そのため、歯科医師が治療前、治療中、治療後でどんなプランニングを立てているのかしっかりとチェックしておきましょう。

3−4:術者の知識や技術

適インプラント治療には、術者の知識や豊富な経験が必要不可欠です。

 

とはいえ、どうやって歯科医師の技術力を見極めるのは難しいと悩む方も多いと思います。

 

ホームページがある場合には、歯科医師のブログを見るのがオススメです。

治療に対する考え方やどういった症例に対応しているのかが見えやすいからです。

 

ホームページや個人のブログをやっていない場合には「インプラントを入れた後に骨や歯茎の位置が変わって見た目が悪くなることはありませんか?」や疑問に思っていることを質問して見ましょう。

 

知識がある歯科医師は自身の経験を元に、わかりやすく丁寧に答えを出してくれるはずです。

3−5:セルフケア

セルフケアとは、自宅での歯磨きのことです。

手術後の毎日の歯磨きが、細菌感染を防ぐのに効果的です。

 

歯垢が多くある状態では、細菌感染を引き起こしてインプラントが失敗に終わることがあります。

 

インプラント治療する前に事前に歯科医師や歯科衛生士から、自分に適した歯磨き方法を教えてもらうと、さらに効率的に歯磨きができるようになります。

4 負担の少ない方法で美しい歯を手に入れよう!

抜歯即時荷重インプラントは、痛みや腫れを抑えて、短期間でインプラントできるのが魅力です。

 

しかし、この治療法は高い知識と技術力が必須で、誰でもできるわけではなく、治療をここで受けようと思える歯科医院を選ぶことが大切です。

 

また、どんな優れた治療法でも”100%安全”と言いきれる治療はありません。

 

抜歯即時荷重インプラントはリスクがありますが、信頼性の高い歯科医院で治療を受け、セルフケアで口の健康を保つことができれば、患者さんの負担が少なく美しい見た目を手に入れることができます。

 

まずは、信頼できる歯科医院にインプラントの相談することから始めましょう。

 

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