- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラント手術は歯茎を切開して、骨を削り、人工歯根であるインプラントを埋め込む手術です。
そのため、手術後は歯肉の腫れや出血が起きやすくはあるのですが、出血は数日から1週間程度、腫れも2週間程度で治ります。
しかし、中にはなかなか出血が止まらず続いたり、出血量が増えたりしてしまうこともあります。
出血が多いと不安になりますし、どのような対処をしていいのか心配になる方もいるでしょう。
そこで今回はインプラント治療後の出血について、出血の原因や、出血した際の対処法などを紹介していきます。
出血をできるだけ防ぐため、また出血した際に慌てないためにも、原因と対処法はインプラント手術前に知っておきましょう。
目次
- 1.インプラント治療後に出血が起こる原因
- 1-1.運動量が多く血の巡りが良くなった
- 1-2.入浴して血流が良くなった
- 1-3.食事や歯磨きで口内が傷ついた
- 1-4.飲酒や喫煙をしてしまった
- 1-5.インプラント周囲粘膜炎になった
- 2.インプラント手術後、出血した時の対処法
- 2-1.安静にする
- 2-2.手術部を傷つけないように気をつける
- 2-3.大量に出血している、出血が止まらない場合は受診を
- 3.ある程度の出血は仕方がないもの!続くようなら対処しよう
1.インプラント治療後に出血が起こる原因
インプラント治療では、先述したように歯茎を切開します。
つまり、手術して傷があるため出血は必ずあるものであり、正常な反応と言えます。
しかし、怪我をした時と同じように、傷口が塞がれれば出血は止まります。
インプラント手術でも、一般的に数日から1週間程度で出血はしなくなります。
手術後はクリニックでも止血をしますが、出血しなくなるまでに1週間程度かかる方もいるため、帰宅後も出血することは予測されます。
しかし、通常の出血以上に、以下のような原因で、出血が多くなることがあるので注意しましょう。
1-1.運動量が多く血の巡りが良くなった
インプラントの手術後は、安静が基本です。
運動はもちろん、運動量が多いと、血の巡りが良くなり、出血や痛みにつながります。
また、免疫力の低下につながることもあるので、無理はせず、しっかりと体を休めることを心がけましょう。
ウォーキングなどの軽い運動も、術後2、3日後からです。
普通に生活している中でも出血が起こった時には、すぐに安静にしましょう。
1-2.入浴して血流が良くなった
入浴も血の巡りが良くなり、出血しやすくなります。
出血がひどい時や、インプラント手術から数日は湯船には浸からず、サッとシャワーを浴びるだけにしておくのがいいでしょう。
1-3.食事や歯磨きで口内が傷ついた
インプラント手術当日は、麻酔をしているので口内の感覚が鈍くなります。
感覚が鈍っている中で食事をとると、熱さや痛みを感じにくいため、頬や唇を噛んでしまうことも。
その怪我で出血したり、気付かないうちに手術部分を傷つけてしまうことがあるので、食事は完全に麻酔が切れてからにしておきましょう。
また、当日は柔らかい食べ物を、手術した箇所と反対側の歯で噛むようにしてください。
食べ物が原因で、手術した箇所を刺激し、出血してしまうのを防ぐためです。
その他、辛い食べ物は術後1週間程度避けます。
刺激が強いので、出血や痛み、腫れの原因になることがあるからです。
歯磨きも毛先の柔らかい歯ブラシを使用し、手術部の周辺は抜糸まではブラッシングを避けましょう。
抜糸はインプラント手術後、だいたい1週間〜10日程度後を目安に行われます。
それまではクリニックから処方された抗生剤で感染症を防ぎながら、専用のうがい薬でケアをしていきましょう。
ただし、うがいも激しくすると傷口が開き、出血の原因にもなるので、軽く行うようにしてください。
1-4.飲酒や喫煙をしてしまった
アルコールの摂取も血流が良くなるため、出血の原因になります。
腫れや痛みを引き起こす可能性もあるので、手術後1週間は避けてください。
手術後は抗生剤や鎮痛剤が処方されます。
アルコールはその薬の効果を妨げてしまうこともあるため、禁酒を心がけてください。
また、アルコールだけでなく、炭酸飲料やとても熱い飲み物、とても冷たい飲み物も傷口への刺激となり、出血を引き起こすこともあります。
喫煙は反対に歯肉の血行を悪くし、粘膜の治癒に悪影響を及ぼすことで、傷口の治りを遅くしてしまうことがあります。
治りが遅くなると、出血がなかなか止まらなかったり、傷口が化膿したりしてしまうことも。
また、タバコに含まれるニコチンの成分が、インプラントと顎骨の結合を妨げます。
インプラント手術の成功のためにも、少なくとも術後8週間は禁煙することを心がけてください。
1-5.インプラント周囲粘膜炎になった
インプラント周囲粘膜炎とは、埋め込まれたインプラントの周囲に溜まっていたプラークが原因で起こる炎症のこと。
本来、歯周病の治療をしてからインプラント手術することがほとんどですが、治療がされなかったり、治療が不十分だったりしたままインプラントの手術へ入ると、インプラント周囲粘膜炎を引き起こしてしまいます。
インプラント周囲粘膜炎の症状は、歯肉の腫れや少量の出血です。
進行すると、化膿することもあります。
手術から日数も経っているのに出血があった場合は、周囲粘膜炎の可能性も考え、クリニックに相談してみましょう。
2.インプラント手術後、出血した時の対処法
手術後は帰宅後、数日間は出血するものです。
しかし、なかなか良くならない、どんどん出血の量が増えるようであれば心配ですよね。
そのような場合、どう対処すればいいでしょうか。
2-1.安静にする
出血した際には、まずは安静にしましょう。
先述したように、運動量が増えたり、入浴、飲酒などにより血の巡りが良くなると出血しやすく、また出血量が増えやすいです。
口の中が血で気持ち悪くなった時には、軽くうがいをして対処しましょう。
出血した際に傷口が気になり、手で触ったり、舌で何度も舐めてしまうと、感染症が起こる可能性が上がったり、傷口が開いてしまうことがあります。
手術した箇所には触らずに、安静にして出血が止まるのを待ちましょう。
手術当日はクリニックから、ガーゼ等で止血するように言われる場合もあります。
止血する時には必ず清潔なガーゼを使い、10〜15分程度で新しいガーゼに交換しましょう。
また、寝ている時は体が温まり、血流が良くなることから、多く出血してしまうこともあります。
術後はタオルを枕に敷いて寝たり、汚したくないパジャマは避けたりなどの対策を行いましょう。
2-2.手術部を傷つけないように気をつける
手術部はちょっとしたことで傷ついてしまい、傷口が開き、さらに出血してしまう可能性があるので、十分に気をつける必要があります。
出血が気になる時には、ついつい傷口を舌で触ったり、指で触って確認してしまいやすいですが、それはNGです。
手術部を傷つけないように注意しながら、安静にして出血の様子を見ましょう。
特に食事や歯磨きには注意しましょう。
先述したように食事は手術部とは反対側で噛んで食べるようにします。
しばらくは柔らかい食べ物を中心に食べ、刺激物、アルコール類は避けましょう。
歯磨きやうがいも優しく、軽く行うようにし、術部を刺激しないよう、出血が止まるまで様子を見てください。
2-3.大量に出血している、出血が止まらない場合は受診を
手術部からの出血は、数日〜1週間程度で徐々に治ってきます。
しかし、量が変わらず、ダラダラと出血続く場合や大量に出血している場合は手術を受けたクリニックを受診しましょう。
また、上顎の手術の場合、まれに鼻からの出血や膿が出る場合もあります。
手術した組織の周辺で問題が起きていると考えられるので、必ず受診してください。
受診した際には、どのくらいの頻度で、出血量はどのくらいかなどを伝えると、スムーズに診てもらえます。
その他、出血はなくても痛みや腫れがひどい場合も、受診しましょう。
痛みや腫れは1週間程度で治る場合が多いです。
痛みや腫れの場合も安静にしたり、腫れた部分を顔の外から冷えピタや濡れたタオルなどで軽く冷やすとマシになることがあります。
それでもひどく痛む場合や下痢や湿疹などがあった場合、処方された鎮痛剤があっていないという可能性もあるので、我慢し過ぎず受診するのがおすすめです。
3.ある程度の出血は仕方がないもの!続くようなら対処しよう
インプラント手術後は抜歯する時と同じく、歯茎を切開するので、出血することは避けられません。
通常であれば徐々に出血は治りますし、傷口も治ってきます。
しかし、何らかが原因で、出血がダラダラと続いたり、大量に出血したりすることもあります。
その場合は慌てずに、まずは体を横にし、安静にするようにしましょう。
それでも続く場合には、手術したクリニックを受診するのがおすすめです。
今回紹介したように、インプラント手術後は、普段の生活において気をつけるべきことが多いです。
これらの注意点や、薬の飲み方等、しっかりとこれらについて丁寧に説明してくれるクリニックで、手術を依頼すると安心できるでしょう。
患者自身も、出血することはもちろん、その他手術後に起こりうるトラブルにおいて理解しておき、慌てず対処する方法を知っておきましょう。