合わない入れ歯を使い続けるとどうなってしまうの?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

入れ歯が変形したり、嚙み合わせそのものが変化したりして、知らず知らずのうちに「ぴったりの入れ歯」が「合わない入れ歯」になっていきます。

 

入れ歯を使用者の中には、初めて入れ歯を作製してから、一度も病院に行かず、ずっと同じ入れ歯を使い続けている方も……。それは歯と身体の健康に様々な悪影響を及ぼします。

 

今回の「合わない入れ歯を使い続けるとどうなるのか」の内容を参考に、少しでも違和感や痛みに覚えがある方は、かかりつけの歯科医院に相談してください。

目次

(1)合わない入れ歯を使うと起こるトラブル6つ

(1-1)顎関節症のリスクが高まる

おそらくあなたも、「顎関節症(がくかんせつしょう)」という病名を聞いたことがあると思います。

 

顎関節症は、「口を動かすと顎が痛む」「口を開けられない」「顎を動かすとポキポキ・ゴキゴキと音がする」といった症状を伴う病気です。

 

もともと顎関節症は、噛み合わせが悪かったり、歯並びのバランスが悪かったりすることで生じるといわれています。

 

ですから、合わない入れ歯を使用し続けると、不自然な噛み合わせで食べ物を噛むことになるため、本来なるはずのなかった顎関節症を引き起こしてしまう可能性が高まります。

 

もしも入れ歯をしていて「肩こりがひどくなった」「背中の張りが気になる」といった症状に心当たりのある方は、それは入れ歯が合わなくなってきているサインかもしれませんので、一度かかりつけの歯科医院で調べてもらうことをおすすめします。

(1-2)喋りにくくなる(発音しにくくなる)

初めて入れ歯をつくってもらったとき、だいたいの患者は「発音のしにくさ」を感じると思います。

 

入れ歯という人工物を口の中にふくむわけですから、以前のように舌をスムーズに動かせなくなるのは当然です。一般的には、1週間も経てば慣れてきますので、入れ歯のある状態でもきれいに発音をすることができるようになります。

 

しかし、2~3週間経っても、しゃべりにくさを感じる場合は、入れ歯のフィッティングが間違っている可能性があります。または、入れ歯を使って生活しているうちに、噛み合わせが変化して、入れ歯が変形してしまうというケースも考えられます。

 

どちらにせよ、入れ歯をもう一度細かく調整し直す必要がありますので、すぐにかかりつけの歯科医院に相談してください。

 

「ちょっとくらい喋りにくくても仕方ないか」と考えるのはNGです。その少しの違和感は、やがて大きな歪みとなって身体に現れてきます。正しい噛み合わせの入れ歯は、歯や身体の健康を維持するために極めて大切な要素です。

(1-3)虫歯や歯周病になりやすくなる

特に部分入れ歯ユーザーの方には気を付けてほしいのが、嚙み合わせの悪い入れ歯を使って食事をすることで、虫歯や歯周病を引き起こしてしまうこと。

 

合わない入れ歯で食べ物を咀嚼(そしゃく)すると、歯と歯茎の間に食べかすを詰まらせ、やがて虫歯や重度の歯周病を引き起こしてしまう可能性があります。

(1-4)歯茎に異常が起こる

合わない入れ歯は、噛むときの力が不自然に伝わってしまいますので、入れ歯の金具で歯茎を傷つけ、歯周病や歯槽膿漏のような状態に至ってしまうことがあります。

 

またあるいは、嚙み合わせの悪い入れ歯の長期的な使用によって、「義歯性線維腫」(ぎしせいせんいしゅ)や「フラビーガム」(摩擦性角化症)といった異常もしばしば発生します。

 

義歯性線維腫慢性的に入れ歯や金具は歯肉に刺激を与え続けることによって生じうる現象。粘膜が炎症することで、入れ歯に沿うようにポリープ状のできものが発生します。場合によっては切除が必要です。
フラビーガム

(摩擦性角化症)

歯肉がまるでコンニャクのようにブヨブヨになってしまった状態のこと。これも入れ歯や金具の慢性的な刺激によって起こる粘膜異常の一つです。

 

義歯性線維腫もフラビーガムも、ケースによっては切除手術を伴うこともありますので、大事になってしまう前に、「入れ歯の噛み合わせが悪くなった」「使いにくくなった」と感じたら、すぐに医師に相談するようにしてください。

(1-5)吐き気を催すようになる

入れ歯が合わなくなってくると、次第に吐き気を催すようになることがあります。噛み合わせがズレた入れ歯の土台(義歯床)が喉の奥にまでいってしまい、気分が悪くなってしまうためです。

 

入れ歯使用時の吐き気は、入れ歯のフィッティングをし直すサイン。「もともと自分には入れ歯は合っていなかったんだ」と早とちりせずに、まずは歯科医院に相談して嚙み合わせをチェックしてもらいましょう。

(1-6)健康な歯にも負担をかける

「入れ歯のある部分でものを噛むと痛い」「金具が歯茎に当たって痛む」「入れ歯をつけると吐き気がする」といった理由で入れ歯の装着をしなくなると、他の歯(健康な歯)に負担を強いることになります

 

健康な歯の寿命を極端に短くすることになりかねませんので、嚙み合わせをしっかり調整した入れ歯で食事をするように心がけましょう。

(2)入れ歯が合わなくなるのはなぜ?

(2-1)嚙み合わせのクセで歯の位置が変わる

入れ歯を使用していると、多かれ少なかれ、以前とは違った噛み合わせになっていきます。無意識のうちに、入れ歯ではない歯で咀嚼する回数が増えることもあると思います。

 

そうした負荷のかけ方をしているうちに、健康な歯の位置がズレていってしまい、やがて入れ歯そのもののフィッティングがおかしくなってしまうことも……

 

またその逆に、入れ歯の嚙み合わせがズレることで、周囲の歯の位置がズレていくケースもしばしばあります。

 

入れ歯のズレが先か、健康な歯の位置移動が先か。まさに「タマゴが先かニワトリが先か」といった話ですが、とにかく常日頃から意識しておきたいのが、「(部分)入れ歯と健康な歯のバランスが大切」だということです。

 

健康な歯の移動は、望んでいない位置に歯を矯正するようなものですから、くれぐれも気を付けていきたいところです。定期的に歯科医院で部分入れ歯の調整や噛み合わせチェックを行うようにしましょう。

(2-2)入れ歯が変形して口の形に合わなくなっている

 

合わない入れ歯を長期的に使用し続けてしまう人の中には、「入れ歯は一度つくれば調整はもう必要ない」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかしそれは大きな誤りです。もともと入れ歯は、プラスチックや樹脂といった素材でつくられた人工歯。嚙み合わせのバランスにしっかりと気を付けて、日頃の手入れも万全に行っていたとしても、入れ歯の変形を避けることはかなり難しいといえます。

 

入れ歯は、いつかは作り直す必要性のある消耗品であるという認識を持ち、最低でも半年に一度は歯科医院でフィッティングを調整してもらうようにしてください。

(2-3)嚙み合わせのバランスが変わる

入れ歯を使用して間もない(つくったばかり)にもかかわらず、入れ歯が合わなくなってしまうケースもあります。その理由が、嚙み合わせ自体の変化です。

 

「肉をあまり食べなくなった」「硬い食べ物を好んで食べるようになった」「力仕事で無意識に歯を食いしばることが多くなった」など……私たちの嚙み合わせは、普段の食事内容はもちろんのこと、仕事などのライフスタイルによっても変化していきます。

 

これらのことにより、作製当初は入れ歯の嚙み合わせがぴったり合っていたとしても、すぐにフィッティングがズレてしまう可能性が高まります。

 

嚙み合わせはライフスタイルが原因で変化していくものだという意識を持ち、定期的な検診をすることが大切です。

(2-4)金具がゆるむ

部分入れ歯の金具は、負荷がかかり続けることで、ゆるんだり歪んだりしてしまいます。

 

入れ歯が痛む原因の中でも、金具の変形は非常に多く見られますので、使用しているときに異物感や痛みを感じたら、すぐに歯科医院に相談するようにしましょう。

 

「目立たない場所にある入れ歯だから」「歯科医院に行くのが面倒だから」「そもそも入れ歯が嫌いだから」という理由で部分入れ歯の使用をやめてしまうのはNGです。

 

もともと私たちの歯は、全体で一つを成しています。

 

全体の嚙み合わせバランスの上で、正常なかみ合わせを保っているわけですから、入れ歯を装着せず、“歯の無い状態”のまま食事をしたり日常を過ごしたりすると、頭痛・肩こり・口臭といった現象となって、不調が生じてくるようになります。

 

場合によっては、健康な歯が望んでいない方向に移動してしまったり、歯と歯茎の間に歯石が溜まり、重度の歯周病を引き起こしてしまったりしてしまいますので、「入れ歯の金具が当たって痛い」という症状が出たら、すぐに歯科医院に相談しましょう。

(3)より自分に合った入れ歯を選ぶなら自由診療も選択肢に

「入れ歯が合わなくなる」という現象をできるだけ回避し、快適に入れ歯を使い続ける方法もあります。それは、保険適用外の入れ歯、すなわち自由診療で素材や形にこだわった入れ歯を作成するという選択肢です。

 

確かに保険適用内の入れ歯は、制作期間が短くて済みますし、何より安いため、金銭的な負担も自由診療タイプに比べて非常に軽いといえます。

 

しかし、保険適用内の入れ歯は、素材や設計の面では自由診療タイプに劣るため、すぐに嚙み合わせがズレるといった弱点もあります。

 

それでは、自由診療タイプの入れ歯にはどんなものがあるのでしょうか。以下におすすめを3つご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

(3-1)コンフォートデンチャー(シリコン義歯)

「歯茎に入れ歯が当たって痛む」という従来型の入れ歯の問題を克服するのが、シリコン製の義歯床から出来ているコンフォートデンチャー(シリコン義歯)です。

 

コンフォートデンチャー(シリコン義歯)の特徴
メリット・装着感がよい

・柔らかいので痛みを気にせず強く噛みしめることが可能

・外れにくい

・金属アレルギーの心配がない

デメリット・汚れがつきやすい

・一度破損すると作り直す必要がある

・保険対象の入れ歯よりも費用が高くなる

・年に一度はシリコンの張替えが必要

(3-2)ノンクラスプデンチャー

金具の変形によるフィッティングのズレは、従来型の部分入れ歯に特有のものです。それに、金具がズレて合わなくなると、引っ掛けている健康な歯にも負担を強いてしまい、結果として歯が移動してしまうということにもなりかねません。

 

しかし、金具を一切使用せず、柔らかい特殊素材で固定するノンクラスプデンチャーなら、嚙み合わせのズレによる痛みを抑えることが可能です。

 

もちろん、ノンクラスプデンチャーでも、定期的に嚙み合わせのズレを歯科医院でチェックする必要はありますが、金具タイプの部分入れ歯のように、他の歯に負担をかけるといった二次的な健康被害を回避することができます。

 

 

ノンクラスプデンチャーの特徴
メリット・金具不使用なので装着/使用の痛みがない

・歯茎や歯肉の色を再現しているので目立ちにくい

・柔らかい特殊樹脂製なのでものを噛んでも痛まない

デメリット・残存歯の状況によっては使用できないケースできない

・消耗しやすいので定期的に作り直す必要がある

・2~3年ごとに費用負担がかかる

・壊れたら修理できない(作り直しの発生)

(3-3)インプラントオーバーデンチャー

自分に合った入れ歯を実現するには、自分の歯のように噛むことのできる入れ歯が理想です。しかし総入れ歯になってくると、なかなかそれも難しいのが現状です。

 

明らかに“人工物”感を拭いきれないため、不自然な噛み合わせのまま、食事をしなければなりません。すると必然的に、嚙み合わせの変化や入れ歯そのものの変形により、不本意にも「合わない入れ歯」になってしまうわけです。

 

インプラントオーバーデンチャーは、保険適用内で総入れ歯を製作している方におすすめしたい選択肢の一つ。あごの骨に数本の人工歯根(インプラント)を埋め込み、そこに総入れ歯を連結させて固定するため、入れ歯であるにもかかわらず、まるで自分の歯のように自然体でものを噛むことができるようになります。

 

 

インプラントオーバーデンチャーの特徴
メリット・抜群の安定感でズレにくい

・食事を楽しめる

・発音しやすくなり会話が自然に

・取り外し容易でメンテナンス簡単

・少ないインプラントの埋め込みだけでOK

デメリット・外科手術を伴う

・糖尿病などの持病があると手術ができない

・費用が高額になる

・人によっては装着の違和感がある

 

(4)まとめ

合わない入れ歯を使用し続けるデメリット顎関節症のリスクが高まる

喋りにくくなる(発音しにくくなる)

虫歯や歯周病になりやすくなる

歯茎に異常が起こる

吐き気を催すようになる

健康な歯にも負担をかける

入れ歯が合わなくなる理由嚙み合わせのクセで歯の位置が変わる

入れ歯が変形して口の形に合わなくなっている

嚙み合わせのバランスが変わる

金具がゆるむ

 

より痛みが少なく、口の形に合わせやすい自由診療タイプの入れ歯
コンフォートデンチャー(シリコン義歯)・装着感がよい

・柔らかいので痛みを気にせず強く噛みしめることが可能

・外れにくい

・金属アレルギーの心配がない

ノンクラスプデンチャー・金具不使用なので装着/使用の痛みがない

・歯茎や歯肉の色を再現しているので目立ちにくい

・柔らかい特殊樹脂製なのでものを噛んでも痛まない

インプラントオーバーデンチャー・抜群の安定感でズレにくい

・食事を楽しめる

・発音しやすくなり会話が自然に

・取り外し容易でメンテナンス簡単

・少ないインプラントの埋め込みだけでOK

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