インプラントの成功率を高める2つの方法

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

インプラント治療を受けるにあたり、気になるのが「治療が成功するかどうか」です。インプラント治療は失った歯を補う効果的な治療法ですが、リスクもあります。そのため、各歯科医院が、成功率を上げるためにさまざまな対策をしています。

 

成功率を高める対策の代表的なものが「サージカルガイド」と「マイクロスコープ」です。この記事では、それぞれの概要や効果などを詳しく解説します。

目次

1.インプラントってどんな治療?知っておくべきリスクとは

インプラントの成功率を高める方法を紹介する前に、インプラント治療の概要や想定されるリスク、失敗した場合の治療について解説します。

1‐1.インプラントは失った歯を補う成功率の高い治療法

インプラント治療とは、虫歯や歯周病、事故などにより歯を失った場所のあごの骨に、人工歯根(インプラント)を埋め込み、上から人工歯を被せる治療法です。

 

歯根がなくても歯を補える、機能や見た目が天然の歯とほぼ変わらないといったメリットがあります。そのため、従来は歯を失った場合は入れ歯やブリッジといった治療法を行っていましたが、現在はインプラント治療が主流になってきています。

 

インプラント治療の成功率は、95~99%といわれており、インプラント治療に特化した歯科医院では、およそ95%以上にもなります。インプラントの成功率は、非常に高いといえます。

 

しかし、成功率が高いからといって、リスクやトラブルがないわけではありません。インプラント治療は、外科手術が必要な治療であり、歯やあごの骨などの精密な診断や高度な手術の技術が求められます。

1-2.インプラント治療の4つのリスク

インプラント治療の主なリスクは、下記の4つです

 

(1)感染症

インプラント体と骨のわずかな隙間に細菌が侵入し、感染症を起こす可能性があります。細菌に感染すると、腫れが長引いたり、膿が出たりするといったトラブルにつながります。

 

また、インプラントが細菌に感染すると、天然の歯と比べて、感染の進行が早いのが特徴です。「インプラント周囲炎」と呼ばれるインプラントに起きる歯周病にかかると、あごの骨が溶けて、インプラントが抜け落ちるリスクがあります。

 

(2)神経の損傷

インプラント治療をする際に、CTなどを用いて口の中の構造を立体的に把握していないなどの原因で、神経に損傷を与えてしまうケースがあります。神経が損傷すると、麻痺などの後遺症が残る場合もあります。

 

(3)インプラントの破損・抜け落ち

インプラントを埋め込む際に、角度や深さといった配置の精度が悪いと、充分な深さまでインプラントが入らない、インプラントとあごの骨が結合しないといったトラブルが発生。インプラントの脱落や、噛む力がかかりすぎることによる破損などにつながります。

 

(4)インプラントに失敗した場合の治療とは

もし、インプラント治療に失敗し不具合が生じた場合は、インプラントの再治療をします。入れたインプラントを除去してから、新たにインプラントを入れる流れになりますが、除去する際に多くのあごの骨を失います。

 

そのため、最初のインプラン治療よりも、難易度が大幅に上がり、身体的・金銭的負担も大きくなります。

 

インプラント治療を受ける際には、成功率を上げるためにサージカルガイドやマイクロスコープの使用など、対策をしっかりとっている歯科医院を選ぶのが大切です。

2.サージカルガイドってどんなもの?使用するメリットとは

インプラント治療の成功率を高める方法の一つが、サージカルガイドです。どのようなものなのかやメリットなどを解説します。

2-1.サージカルガイドとはどんなものか

サージカルガイドとは、インプラント手術時に用いられるマウスピース型の装置です。

 

インプラントの失敗の多くが、インプラントを埋め込む位置が不適切であることが原因で起きます。

 

サージカルガイドは、歯科用CTなどの検査によりあご骨の状態や神経の位置関係などの3Dデータを収集。他の検査結果などと合わせて、実際にインプラントを埋め込んだ状態を専用のソフトでシミュレーションし、つくられます。

 

インプラントを埋め込む際にドリルを固定する穴が空いています。データから穴の位置や角度が設定されていて、ドリルはその穴に沿ってしか通れません。使用しない場合に比べ、歯肉をあまり切らずに、正確な位置にインプラントを埋め込むことができます。

 

より緻密で的確なインプラント治療ができ、成功率アップに有効なため、年々導入する歯科医院が増加しています。

2‐2.サージカルガイドを使用する4つのメリット

サージカルガイドを使用する主なメリットを4つご紹介します。

 

(1)事前シミュレーションにより神経の損傷を防止

インプラント治療では、あごの骨の厚みや密度、かみ合わせ力の強度、神経や血管の位置など、さまざまな要素を総合的に判断し、インプラントのサイズや入れる位置を決定します。

 

サージカルガイドを使用した治療では、事前にCT画像より神経・血管の位置、骨のコンディションなどを見極め、コンピューター上でシミュレーションを重ね、最適な入れ方を考えます。

 

サージカルガイドは、事前のシミュレーション結果を正確に反映してつくられています。インプラントは、神経や血管などを損傷しないよう、それらの組織から2mm以上離れた場所に埋め込まなければいけません。そのため、高い正確性が要求されますが、サージカルガイド使用時の誤差は0.99mm〜1.24mm程度なので、しっかりシミュレーションをすることで、組織を傷つけるリスクを軽減できます。

 

(2)手術時間が短い

サージカルガイドを使用したインプラント治療では、歯茎にピンポイントに穴を開け、インプラントを埋め込みます。歯肉の切開や剥離、あごの骨を削るといった外科的な処置は最低限で済むので、通常のインプラント手術では1~2時間かかる治療でも、15分程度まで短縮可能です。

 

(3)痛みや腫れが少ない

サージカルガイドを使用したインプラント手術では、歯肉の切開や剥離、あごの骨を削るといった肉体的な負担の大きい処置は最低限です。そのため、一般的なインプラント治療と比較して、手術後の腫れや痛み、出血が少なくなる傾向にあります。

 

(4)仕上がりがきれい

サージカルガイドは、もともと安全性を高めるために開発されたものです。しかし、シミュレーションの過程で、見た目の美しさも考慮して設計します。

 

そのため、サージカルガイドを使用せずにインプラント治療をするよりも、きれいな仕上がりになりやすいといわれています。

3.マイクロスコープってどんなもの?使用するメリットとは

サージカルガイドと同じく、インプラント治療の成功率を高めるものにマイクロスコープがあります。

3-1.マイクロスコープとはどんなものか

マイクロスコープとは、歯科治療や手術に使う顕微鏡のことです。最大で約20倍まで拡大して見ることができます。手術用のルーペでは、肉眼の7倍程度が限界といわれており、非常に細かいところまで見ることが可能です。

 

治療部分を拡大しながら細かな治療ができるため、主に歯の神経を処置する根管治療で用いられてきましたが、現在は歯科治療のさまざまな場面で使用されています。

 

ものを拡大して見ると、肉眼と比べて視野が暗くなってしまいますが、マイクロスコープはLEDなどの強い光をあてながら、治療が可能です。そのため、緻密な処置もスムーズに行えます。

 

さらに、ビデオカメラを設置することにより、治療過程の記録も可能です。

3‐2.マイクロスコープを使用する3つのメリット

マイクロスコープをインプラント治療に使用する主なメリットは、次の3つです。

 

(1)より精度の高い治療ができる

肉眼よりも遥かに拡大して治療箇所を見ることができ、さらに明るく照らせるため、より緻密で精度の高い治療が可能です。的確な治療により、成功率は大きくアップします。

 

(2)損傷のリスクが低く、傷の回復が早い

治療箇所を大きく拡大して治療することで、緻密な処置ができ、神経や血管などの組織を傷つけるリスクを減らせます。さらに、傷口も正確に縫合できるため、傷が早めに治りやすくなります。

 

(3)自分の歯を残せる可能性が上がる

インプラント治療は失った歯を補うのに有効な治療法ですが、天然の歯が残せるのなら、それが一番です。根管治療に成功すれば、インプラントは必要ありません。マイクロスコープにより、細かい処置の多い根管治療の成功率は大幅に上がります。

 

マイクロスコープを使用する歯科医院であれば、他の医療機関では「抜くしかない」と診断された歯を残せる可能性は充分あります。

4.サージカルガイドとマイクロスコープを使った治療で、成功率アップ!

インプラントの成功率を高める方法として、サージカルガイドとマイクロスコープの使用があります。インプラントの成功率は高いですが、まれに感染症やインプラントの抜け落ちといった失敗が起きる可能性があります。

 

インプラント治療では、インプラントを埋め込む角度や位置などが非常に重要となり、高度な技術が必要です。この2つを使用することで、より緻密で繊細な治療ができるでしょう。

 

インプラント治療を受ける歯科医院を選ぶ際は、サージカルガイドとマイクロスコープを使用しているかどうかも、チェックするのをおすすめします。

この記事が気に入ったら「評価」ボタンを押してください!

★★★★★

評価する