- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラントを検討する際に、歯ぎしりの癖があっても大丈夫か気になる人も多いのではないでしょうか?インプラント治療にはお金と時間がかかるので、歯ぎしりが原因で使えなくなってしまうのは避けたいものです。
この記事では、歯ぎしりがあってもインプラントができるかどうか、セルフチェック項目、おすすめの歯ぎしり対策など詳しくご紹介します。
目次
- 1. 歯ぎしりの癖があってもインプラントは可能
- 2. インプラント前におすすめ!歯ぎしりのセルフチェック
- 3. 実は遺伝も大きい!歯ぎしりの原因とは
- 3-1. ストレス
- 3-2. 生活習慣
- 3-3. 歯の噛み合わせ
- 3-4. 遺伝
- 3-5. 病気
- 4. インプラントを長持ちさせるために!歯ぎしり対策を紹介
- 4-1. ナイトカード
- 4-2. 矯正治療
- 4-3. 生活習慣の改善
- 5. インプラント治療の工夫で歯ぎしりの影響は減らせる!
- 6. 歯ぎしり対策をしてインプラントを長持ちさせよう!
1.歯ぎしりの癖があってもインプラントは可能
結論から言いますと、歯ぎしりの癖があってもインプラントは可能です。実は日本人の7割が歯ぎしりをしたことがあると言われており、多くの人がインプラントを使用しています。
しかし、歯ぎしりの程度が強いとインプラントが使えなくなる原因となります。なぜなら、インプラントやかぶせもの、歯茎などに過度な負担を与え、インプラントやかぶせものの破損や「インプラント周囲炎」を引き起こすからです。
かぶせものが割れただけであれば、すぐにリカバリーができますが、インプラントがあごの骨のなかで折れてしまった場合は、そうはいきません。まず折れたインプラントと骨の一部を取り除き、骨が再生してからインプラントを再度入れる必要があります。
また、インプラント周囲炎は、インプラントが使えなくなる原因の代表的なものとして知られています。
インプラント周囲炎とは、インプラントの周りの歯茎に炎症が起きる歯周病に似た病気です。腫れや痛み、出血などが出て、進行するとインプラントを支えているあごの骨を少しずつ溶かしてしまいます。最終的には、あごの骨が少なくなりすぎてインプラントを支えられなくなり、インプラントが抜け落ちてしまいます。
さらに、インプラントには天然の歯のように「歯根膜(しこんまく)」がありません。歯根膜は、あごの骨と歯根の間にある薄い膜で、クッションのような役割を担っています。歯根膜がない分、インプラントは歯ぎしりの影響をダイレクトに受けます。
歯ぎしりがあってもインプラント治療は受けられますが、リスクが高いので、長持ちさせるにはしっかり対策する必要があるでしょう。
2.インプラント前におすすめ!歯ぎしりのセルフチェック
歯ぎしりは寝ている間に無意識でしてしまうものなので、自分では気がつけないことが多く「家族から指摘されて初めてわかった」というケースも少なくありません。
下記の項目にひとつでも当てはまる場合は、歯ぎしりをしている可能性があるので、インプラント治療の際に、歯科医師に相談しましょう。
- 家族や友人など周囲の人から歯ぎしりを指摘されたことがある
- 車の運転中やパソコン作業中など集中しているときに無意識に噛みしめている
- 起床したときに、あごが重い・だるい・こわばると感じる
- 肩こりや頭痛になりやすい
- 虫歯がないのに噛んだときに歯のしみや痛みを感じる
- 上あごや舌の下にこぶのようなものがある
- 歯の付け根が割れたり、かけたりしている
- 歯の噛み合わせの面が非常にすり減っている
- 歯・つめもの・かぶせものが、かけたり割れたりしたことがある
- 舌に歯型がつく
3.実は遺伝も大きい!歯ぎしりの原因とは
歯ぎしりが起きるメカニズムは、まだはっきりわかっていない部分も大きいです。ですが、就寝時の歯ぎしりの8割近くは、睡眠の浅いときに起こると言われています。つまり、睡眠と何らかの関係がある可能性が高いです。
ここでは、歯ぎしりの主な原因として考えられる「ストレス」「生活習慣」「歯の噛み合わせ」「遺伝」「病気」の5つについて解説します。
3-1.ストレス
ストレスは、歯ぎしりの原因として一番有力視されています。嫌なことや大変なことがあったときに、無意識に歯を食いしばった経験のある方も多いと思いのではないでしょうか。
ストレスを感じると、口の周りにあるものを噛むときに使う筋肉が緊張し、こった状態になり、歯ぎしりが起きる場合があると言われています。ストレスが溜まると、就寝時にストレスを解消するために、歯ぎしりをする可能性があります。
また、ストレスがかかるとホルモンの一種である「コルチゾール」が分泌されます。コルチゾールは、起床時に分泌されるホルモンです。コルチゾールが寝るタイミングで出ると、眠りの妨げになり、歯ぎしりが起こりやすくなります。
3-2.生活習慣
コーヒーなどカフェインの含まれた飲み物をたくさん飲む、飲酒や喫煙をするといった生活習慣が、歯ぎしりの原因となるケースもあります。
カフェインのとりすぎや飲酒・喫煙により、直接歯ぎしりが起こるわけではありません。しかし、睡眠の質を低下させ、歯ぎしりをしやすくなる状態をつくりだしてしまう可能性があります。
3-3.歯の噛み合わせ
歯の噛み合わせがアンバランスだと、歯ぎしりが起こりやすく、インプラントや歯、あごにかかる負荷も大きくなります。特に、歯が1本だけ高い場合、他の歯と強く接触するため、歯ぎしりしやすい傾向にあります。
また、もともとの噛み合わせは正常でも、詰め物をいれたことでバランスが崩れ、歯ぎしりをするようになるケースもあるでしょう。
3-4.遺伝
歯ぎしりをする人の多くが、両親や兄弟も歯ぎしりをすると言われています。実際に、遺伝子の特徴と歯ぎしりの関係を発表した科学論文もあります。
もし、家族に歯ぎしりをする人がいる場合は、歯ぎしりをしていないかチェックしてみるとよいでしょう。
3-5.病気
不眠症などの睡眠に関係する病気にかかっている場合は、睡眠の質が低下して、歯ぎしりを起こしやすくなります。また、抗うつ剤のSSRIなど特定の薬剤も睡眠の質に影響し、歯ぎしりのリスクを高めると考えられています。
4.インプラントを長持ちさせるために!歯ぎしり対策を紹介
歯ぎしりの程度が強い場合、歯ぎしりによる負担を軽減したり、歯ぎしりそのものを改善する必要があります。歯ぎしりは無意識の行動なので、自分でやめるのは難しいものです。
しかし、そのままにしておくと、インプラントに悪影響を及ぼすだけではなく、頭痛や肩こりなどの不調にもつながります。
主な対策として「ナイトガード」の使用と矯正治療、生活習慣の改善をご紹介しますので、お悩みの方は、ぜひチェックしてください。
4-1.ナイトカード
ナイトガードとは、就寝時に装着するマウスピースを指します。マウスピースと比べ、睡眠の妨げにならないよう、快適なつけ心地のものが多いです。
ナイトガードをつけることで、上下の歯が直に当たらないため、寝ている間のインプラントや歯、あごにかかる負荷を軽減できます。
費用は、保険適用の場合は、3割負担の約8,000~9,000円が目安です。
デメリットとして、毎日の就寝時にナイトガードを装着する必要があるため、手間に感じるかもしれません。しかし、インプラントが使えなくなると、再治療などにお金や時間がかかるため、歯ぎしりが気になる場合は検討してみるのをおすすめします。
4-2.矯正治療
矯正治療により、歯並びや噛み合わせを整えることで、歯ぎしりが改善するケースもあります。
ナイトガードを使用すれば負担は軽減できます。しかし、矯正治療であれば、根本的に原因を改善できる可能性が高いです。また、毎日ナイトガードを装着する手間が省けます。
デメリットとしては、矯正治療は基本的に自費診療のため、全額自己負担で約50~150万円と高額な治療費がかかります。また、治療期間も長くかかるため、知識と技術を兼ね備えた歯医者を選び、しっかり治療法を相談しましょう。
4-3.生活習慣の改善
歯ぎしりを改善するには、睡眠の質を高めるために生活習慣を見直すのが大切です。カフェイン入りの飲み物やお酒の飲みすぎ、タバコの吸いすぎはやめましょう。
ストレスを溜めないようにこまめに気分転換をしたり、軽い運動をしたりするのもおすすめです。
また、昼寝のしすぎも眠れない原因となるので、30分を超える長時間の昼寝は避けるようにしましょう。
5.インプラント治療の工夫で歯ぎしりの影響は減らせる!
歯ぎしりによるインプラントへの影響で最も注意したいのが、あごの骨のなかでインプラントが折れてしまうトラブルです。インプラントが折れると、再治療するのに費用も時間もかかります。
歯ぎしりの改善も重要ですが、治療の工夫でインプラントが折れるリスクを軽減できる可能性があります。主な工夫は下記の通りです。
・かぶせものをネジで固定する
インプラントにかぶせものを装着する際に、歯を接着剤ではなくネジで止めます。過剰な負荷がかかると、ネジがゆるんでかぶせものが取れるため、インプラントが折れる前に異変に気がつけます。
・高品質なインプラントを使用する
インプラントメーカーによって、折れにくいものと折れやすいものがあります。高品質な製品をつくるインプラントメーカーを厳選し使用することで、インプラントが折れるリスクを軽減できます。
歯ぎしりのある方がインプラントを入れる際は、少しでも長持ちする方法で治療を受けるのがおすすめです。歯科医師に、歯ぎしりがあることを伝え、より適した方法を提案してもらいましょう。
6.歯ぎしり対策をしてインプラントを長持ちさせよう!
歯ぎしりがあっても、インプラントを入れることはできますが、インプラントや歯、かぶせもの、歯茎、あごの骨に大きな負荷がかかります。そのため、歯ぎしりの程度によっては、インプラントの寿命が短くなる可能性もあるでしょう。
インプラントを長持ちさせるためには、歯ぎしりを改善することが重要です。歯ぎしりを改善する主な方法は、ナイトガードを使用して寝る、歯の矯正治療を受ける、生活習慣を整えるの3つです。
また、インプラント治療時に、耐久性の強いメーカーの製品を選んだり、接着剤ではなくネジで止めたりすると、インプラントが折れるのを防げます。
歯ぎしりのある場合は、歯科医師に相談して対策を考えてからインプラント治療を受けると、寿命を伸ばせる可能性が高まります。