
- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラント治療を受ける際、患者によって、行われる治療の内容が異なるケースは多いです。
基本的な過程は同じでも、使う器具・装置が違うというのはよくあること。
その1つに、レーザーを使うか、使わないかというものがあります。
インプラントを受ける人は、必ずレーザーを使うというわけではありませんが、医師の判断によってレーザーが使われることがあるのです。
歯科治療に使われるレーザーは、歯科用レーザーといい、他にもさまざまな治療で使われます。
今回は歯科用レーザーとはどのようなものなのか、またインプラント治療においてはどのように、どの過程で使われるのかについて紹介します。
目次
- 1.歯科用レーザーとは
- 1-1.歯科用レーザーの種類
- 1-2.歯科用レーザーが使われる主な治療
- 1-3.歯科治療にレーザーを使うメリット
- 1-4.歯科治療におけるレーザー治療のデメリット・注意点
- 2.インプラントとレーザー治療
- 2-1.インプラント手術前
- 2-2.インプラント手術中
- 2-3.インプラント手術後
- 3.インプラント治療でレーザーは必須ではないが、メリットは多い
1.歯科用レーザーとは

歯医者で使われるレーザーとは、高エネルギー光線を放射し、歯や骨、歯肉や口腔粘膜などを対象に治療する特殊なレーザー装置です。
医学分野でレーザーを使って治療することは「光学治療」と呼ばれます。
歯科用のレーザーは、主に歯科医師や歯科衛生士が治療や処置に使います。
1-1.歯科用レーザーの種類
歯科用のレーザーにはいくつか種類があり、患者の症状や治療の必要性に応じて、適切なレーザーを選択し、使い分けています。
また、歯科技術の進歩により、新しいタイプのレーザーも開発されていると言われています。
今現時点で使われている歯科用レーザーは、主に次のような種類のものがあります。
・エルビウムヤグレーザー
エルビウムヤグレーザーは、主に歯や骨などの硬組織の治療に使用されます。
歯の表面の除去や、虫歯や歯石の除去に効果を発揮します。
歯のホワイトニングや根管治療にも使用されることがあります。
・ネオジウムヤグレーザー
ネオジウムヤグレーザーは、主に歯肉や口腔粘膜などの軟組織の治療に使用されるレーザーです。
歯周病や歯茎の炎症の治療、口内にできた傷の処置に効果が期待されます。
・ダイオードレーザー
ダイオードレーザーは、主に口腔内の軟組織や血管の処置などに使用されます。
歯茎を再形成したり、出血を止めたり、口内炎の治療に使用されることがあります。
・コアヤグレーザー
コアヤグレーザーは、主に歯科の外科手術に使用されます。
顎骨の手術やインプラント手術など、より高度な処置に使用されることが多いです。
1-2.歯科用レーザーが使われる主な治療
レーザー治療は次のような治療に使われます。
・虫歯治療
歯の組織に直接レーザーを使用すれば、麻酔やドリルを使用せずに虫歯を除去することができます。
・歯茎治療
歯周病や歯肉炎などの歯茎の炎症治療にも、レーザーが使用されることがあります。
レーザーの遠赤外線には殺菌作用が期待されるので、その作用を使った治療です。
・ホワイトニング
歯の着色を軽減するために、歯科用レーザーが使用されることもあります。
ホワイトニング剤を歯に湿布した後、レーザーを当ててホワイトニング剤を活性化させることで、歯の色素を分解します。
・根管治療
歯の神経内部(歯髄)にまで感染が広がった場合、感染や炎症した歯髄を除去し、根管をクリーニング、洗浄する根管治療が行われます。
非常に細かな技術が求められる治療ですが、その際にもレーザーを使って感染組織を取り除くことが多いです。
・知覚過敏
知覚過敏などの歯の神経組織治療にもレーザーが使われることがあります。
神経への刺激を抑制したり、血液循環を促進したりし、痛みを軽減します。
・顎関節症治療
顎の関節が痛む、口が開けられないなどの顎関節症の治療にもレーザーが使われることがあります。
顎関節やその周囲の組織にレーザーを当てることで、炎症の緩和、筋肉の緊張緩和、血液循環が促進され、痛みの軽減や組織の修復につながります。
・外科手術
インプラントなどの歯科の外科手術において、レーザーを歯茎の切開や縫合を行うために使用されることがあります。
レーザーを使用すると、出血を最小限に抑えることができると言われています。
1-3.歯科治療にレーザーを使うメリット
レーザーを歯科治療に使うと、次のようなメリットがあります。
・痛みが少ない
レーザー治療は、従来のドリルや手術に比べて痛みや不快感が少ないことがメリットの1つです。
よって、麻酔が必要だった治療も、麻酔なしで治療することも可能になります。
・出血の抑制
レーザーには組織をカッティングする際、レーザー照射することで血管を凝固させ、出血を止める作用があります。
これにより、治療中や手術後の出血量が少なくなります。
・傷の治癒促進
レーザーは切開した組織の再生を促進する効果も期待されています。
レーザーの光が細胞に刺激を与え、組織を活性化するためです。
また、消炎効果もレーザーのメリットの1つで、照射により炎症を抑えます。
・細菌の殺菌・消毒効果
レーザー照射により、処置や手術する部位の細菌や感染物質を殺菌・消毒する効果も期待されています。
これにより、術後の感染リスクを感染のリスクを低減することができます。
・組織の蒸散
根管治療や虫歯の除去など、組織の患部だけをレーザーは飛ばすことができます。
最小限の歯の組織を除去することができます。
・処置時間の短縮
従来の歯科治療方法に比べて、レーザーを使うと処置時間が短縮される場合もあります。
高精度で効率的に処理できるためです。
1-4.歯科治療におけるレーザー治療のデメリット・注意点
レーザー治療のメリットは多くありますが、反対にデメリットや注意点はあるのでしょうか。
・技術と経験を要する
レーザーを歯科治療に効果的に使うには、歯科医師の技術や経験が必要となります。
・全ての歯科治療に使えるわけではない
多くの歯科治療に適用されるレーザー治療ですが、全ての歯科治療、全ての症例に使えるわけではありません。
レーザーを使うかどうかは、歯科医師と相談することが必要です。
2.インプラントとレーザー治療

レーザーはインプラントなどの外科手術にも使われるケースがあると分かりました。
しかし、必ずしも使うというものではありません。
レーザーを使わなくても、インプラント治療は可能です。
そんな中、レーザーを使う場合には、どのような過程で使われることがあるのでしょうか。
2-1.インプラント手術前
インプラントの手術前に、手術を行う予定の歯茎、その周りが良好ではないケースで、レーザー治療が行われることがあります。
インプラントのしっかりとした土台になるよう、周辺組織の感染予防や、殺菌などの治療・改善を行います。
2-2.インプラント手術中
インプラントの手術中には、レーザーによる歯茎の切開が行われます。
通常切開時には多くの出血がありますが、レーザー切開の場合は切開すると同時に表面を熱凝固させるため、出血が少なく済ませられます。
また、レーザーの殺菌効果により、術部を滅菌することもできます。
その他、血管や組織を活性化させることで、治癒の促進効果を高めます。
2-3.インプラント手術後
インプラントの手術後には、消炎・鎮痛のためにレーザーが使われることがあります。
術後は抜糸をしたり、インプラントと顎骨の結合を待った後に2次手術を行なったりしますが、その際にレーザーを当てると、炎症を起こさないように予防もできます。
3.インプラント治療でレーザーは必須ではないが、メリットは多い

インプラント治療においてレーザーは、一般的に絶対必要というわけではありません。
レーザーを使わなくてもインプラント治療を行うことはできます。
しかし、先述したようにレーザーの使用には、さまざまなメリットがあります。
インプラント手術においても同じです。
術前の治療から、出血量の軽減、感染予防など、各課程においてメリットは多いと言えます。
ただし、レーザーの使用は歯科医師の判断と、専門的な知識に基づき行われます。
治療を行う歯科医院の持っているレーザーの種類はそれぞれ異なりますし、歯科医師の知識、技術、経験も歯科医院によって違うでしょう。
その上で、患者の個別の状態や希望に合わせ、歯科医師がレーザーの使用可否を判断します。
もし、レーザーを使ったインプラント治療を希望するのであれば、まずはカウンセリングの際に歯科医師に相談してみましょう。
症例にあった最適なプランを立ててもらってください。