- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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歯の神経を抜いたら、歯が脆くなるという話を聞いたことがある人もいると思います。
神経は、歯を長持ちさせるのに必要な組織のひとつです。
かといって、神経を抜いた歯が必ずしも脆くなり、最終的には抜歯になるわけではありません。
条件が揃っている場合には、神経を抜いても歯が脆くならないこともあります。
そこでこの記事では、神経を抜いても歯を脆くしない、長持ちさせる方法について解説していきます。
・神経を抜いた歯を長持ちさせたい
・治療をした歯の抜歯を避けたい
といった方は、ぜひこの記事を治療するときの参考にしてください。
目次
- 1神経を抜くと歯は脆くなるって本当?
- 1−1:歯の耐久性が弱くなる
- 1−2:痛みを感じなくなる
- 2保険の土台や被せ物は歯を脆くする?
- 2−1:歯の根が割れやすい
- 2−2:隙間や段差ができやすい
- 3神経を抜いても歯を脆くしない「5つの方法」
- 3−1:土台の素材をグラスファイバーにする
- 3−2:アンレータイプの被せ物を作成してもらう
- 3−3:土台と一体になっている被せ物を作成してもらう
- 3−4:定期的に検診を受ける
- 3−5:最後まで治療をやり遂げる
- 4神経を抜いた後は、治療法とケアが大事
1神経を抜くと歯は脆くなるって本当?
神経を抜いたことは、歯を脆くする原因にならないと言われています。
例えば、有名なこの論文では、神経を抜いた歯に負荷をかける実験を行っています。
この実験の結果、神経を抜いても残っている歯の量が多ければ、歯の強度は弱くならないと結論づけています。
ただ、虫歯が広範囲で歯を削る量が多い場合には、歯は薄くなるので、脆くなりやすいとも述べています。
一方で神経を抜くと、歯が枯れ木のように脆くなってしまうと言われています。
この場合、歯の寿命は10年短くなり、約5年〜30年の期間しか持たないと言われるほどです。
それは、次の2つのことが関係しているからです。
1−1:歯の耐久性が弱くなる
神経には、歯に栄養や酸素などを送る役割があります。
神経を取るときには、神経の周りにある毛細血管も、一緒に除去することになります。
その結果、十分な栄養が血管を通して歯に送られなくなるので、歯の強度が低くなってしまいます。
1−2:痛みを感じなくなる
虫歯ができたときに痛いと感じるのは、神経があるからです。
虫歯が歯の内側に進行していくときに、これ以上虫歯が広がると危険!という信号を、神経が痛みで教えてくれます。
また、歯がしみる感覚も神経で感じています。
しかし、神経を抜くと痛みやしみる感覚がなくなって、虫歯になったことがわかりづらくなります。
気づいたときには虫歯が広範囲に進行していて、最悪の場合、抜歯になることもあります。
つまり神経を抜くと、虫歯を早期発見、早期治療が難しくなることが、歯が脆くなると言われている原因です。
2保険の土台や被せ物は歯を脆くする?
神経を抜いた後は、土台や被せ物を作成する治療になります。
土台や被せ物には大きく分けて2つの種類があります。
それが、「保険のもの」と「自費のもの」です。
保険のものは、国に決められた材料で作る土台や被せ物。
自費のものは、保険が効かない材料で作成する土台や被せ物のことです。
保険の材料で土台や被せ物を作成したときには、根の中の細菌が繁殖して再治療になりやすいことがわかっています。
次の表は、根管治療の成功率をデータ化したものです。
神経を抜いた後は、土台や被せ物を作成する治療になります。
土台や被せ物には大きく分けて2つの種類があります。
それが、「保険のもの」と「自費のもの」です。
保険のものは、国に決められた材料で作る土台や被せ物。
自費のものは、保険が効かない材料で作成する土台や被せ物のことです。
保険の材料で土台や被せ物を作成したときには、根の中の細菌が繁殖して再治療になりやすいことがわかっています。
次の表は、根管治療の成功率をデータ化したものです。
引用:歯内療法ウィキぺディア
根管治療後に保険の被せ物を入れているケースでは、約44%、または18%ほどの成功率しかないことがわかります。
つまり、保険の土台や被せ物をすると、再治療になる可能性が高いです。
再治療になり同じ歯に何度も治療を続けてると、歯をどんどん削ることになります。
その結果、歯の厚みがなくなって、脆くなります。
また、保険の土台や被せ物は、次のような理由から歯が脆くなりやすいです。
2−1:歯の根が割れやすい
保険の土台には、金属だけで作る「メタルコア」と、金属とプラスチックを使用している「レジンコア」の2種類が一般的です。
メタルコアは、歯より硬すぎてしまい、強い力が歯にかかったときに根が割れる可能性があります。
レジンコアは、金属のピンの周りにプラスチックを貼り付けた土台になります。
レジンコアはメタルコアに比べて強度は劣りますが、柔軟性がないため根が折れる恐れがあります。
2−2:隙間や段差ができやすい
保険の土台や被せ物は精度が低く、使っていると隙間や段差ができやすいです。
土台や被せ物に少しでも隙間ができると、そこから細菌が入り込んで虫歯になることがあります。
また、段差は汚れが溜まる原因になり、虫歯のリスクが高まります。
このように保険の土台や被せ物は、歯への負担になったり、再感染したりするリスクが高いため、歯が脆くなりやすいです。
3神経を抜いても歯を脆くしない「5つの方法」
神経を抜いた後の歯を長持ちさせるには、次の5つのポイントがあります。
・土台の素材をグラスファイバーにする
・アンレータイプの被せ物を作成してもらう
・土台と一体になっている被せ物を作成してもらう
・定期的に検診を受ける
・最後まで治療をやり遂げる
それぞれについて、詳しく解説していきます。
3−1:土台の素材をグラスファイバーにする
自費の土台で使われる材質は、グラスファイバーが一般的で、「ファイバーコア」と呼ばれています。
ファイバーコアには、次のような特徴があります。
・柔軟性があり、歯の割れる心配はほとんどない
・精度が高く、根の中を隙間なく接着できる
・金属を使っていないので、金属アレルギーの方でも使用できる
ファイバーコアは、硬さやしなりが歯とほとんど同じで、歯の割れるリスクが低いです。
柔軟性のあるファイバーコアは、歯に強い力がかかったときに力を分散させて、歯への負担を軽減できるため、歯が脆くなるのを防ぐのが期待できます。
また、歯にピッタリと合うように作成でき、再感染・再治療の予防にもなります。
他にもファイバーコアは、金属ではなくガラスでできていて、金属アレルギーの方でも安心して使うことが可能です。
3−2:アンレータイプの被せ物を作成してもらう
歯の全体をすっぽりと覆うタイプは、歯科で「クラウン(冠)」と呼ばれています。
アンレーとは、歯の噛み合わせの部分を覆う被せ物のことです。
クラウンのように歯茎の近くまで覆うのではなく、上半分くらいまでを覆うタイプの被せ物になります。
アンレーの形は、全体を覆うクラウンに比べて、歯を削る量を少なくできるのが魅力です。
歯の部分を多く残すことができるため、歯が脆くなるリスクを軽減できます。
ただ、保険の材料で作成するアンレーは、隙間や段差ができやすいです。
アンレータイプにするときには、セラミックやゴールドといった歯に優しく、隙間ができにくい自費の材料を選ぶのがおすすめです。
3−3:土台と一体になっている被せ物を作成してもらう
神経を取った後の治療では、根の中に土台を入れてからクラウンを取り付ける方法が一般的です。
しかし、この方法では、土台をつけてからクラウンを入れるので、さらに歯を削ることになります。
歯を脆くしないためには、歯をできるだけ残すことが重要です。
歯が十分に残っている場合には、土台とアンレーが一体になっているタイプが良いでしょう。
土台とアンレーが一体になっているタイプは、歯を極力削らず、歯の強度を残すことができるため、歯が脆くなるのに期待できます。
この場合にも、保険の材料で作るのではなく、セラミックで作成するのがおすすめです。
セラミックは、強度があり歯への馴染みも良いため、隙間や段差ができにくいからです。
3−4:定期的に検診を受ける
時間やお金をかけて精度の高い治療をしても、口の中が不衛生な状態では、虫歯になる可能性が高く、歯が脆くなる原因になります。
自宅での歯磨きとは別に、定期的に歯医者でクリーニングを受けるのがおすすめです。
被せ物は、表面がツルツルとしていますが、使っていると目には見えない傷が付くことがあります。
クリーニングでは、被せ物にできた細かい傷をケアして、被せ物が長持ちするようにフォローしていきます。
また、検診では、定期的にレントゲン写真を撮影するのが一般的です。
レントゲン写真では、治療した歯に問題がないか、虫歯や歯周病の有無を確認できます。
検診は、病気の早期発見・早期治療になり、歯を脆くするのを防いで長持ちさせるのに大切になります。
3−5:最後まで治療をやり遂げる
神経を取った後の根の中は、細菌がほとんどいない状態です。
しかし、そこで治療を止めてしまうと、細菌が根の中で増えてしまい根管治療をやり直す場合もあります。
治療をやり直すことは、歯にとって負担になり、脆くする原因になります。
歯を長持ちさせるためにも、一度治療を始めたときには、途中で投げ出さず最後までやり遂げるようにしましょう。
4神経を抜いた後は、治療法とケアが大事
神経を抜いた歯を脆くさせないためには、次の5つの方法が効果的です。
・土台の素材をグラスファイバーにする
・アンレータイプの被せ物を作成してもらう
・土台と一体になっている被せ物を作成してもらう
・定期的に検診を受ける
・最後まで治療をやり遂げる
歯の神経を抜いて、歯が脆くなるのを不安に思っている人もいると思います。
しかし、歯を多く残す削り方や被せ物の種類、定期的なケアによっては、歯が長持ちする可能性が高いです。
神経を抜いた歯を脆くしないためにも、担当医としっかりと治療法について話し合い、歯に優しい治療を選ぶようにしましょう。