ボロボロになった歯の治療費はどれくらい?治療法と一緒に紹介。

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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虫歯が進行して、歯がボロボロになってしまった場合、治療費が気になって、診察に行くのをためらう方も少なくありません。

 

しかし、そのままにしていると虫歯はますます進行してしまい、最悪の場合、全ての歯を失ってしまう可能性があります。

 

歯がなくなると、食事や会話などの機能面はもちろん、見た目の面でも大きなマイナスになります。この記事では、ボロボロになった歯の治療費について解説します。

目次

1.虫歯が悪化するほど治療費は高くなる

虫歯が進行するにつれ、治療費は高額になります。軽度の虫歯であれば数千円程度で治療できますが、重度の虫歯を保険適用にならない自由診療で治療すると、数百万円かかる場合もあります。

 

一度虫歯が進行すると、そのままにしていても回復することはありません。一時的に痛みがおさまることもありますが、実際は神経が壊死するなどさらに進行している可能性が高いです。

 

また、虫歯が進行すると歯を失うだけではなく、虫歯菌が神経の血管から全身にまわり、脳梗塞や心筋梗塞など重大な病気の原因にもなります。

 

なるべく早めに歯の治療をすることで費用を最小限におさえられます。歯がすでにボロボロになってしまった人も、勇気を出して早めに歯科医院に相談しましょう。

2.ボロボロになった歯を治療する基本的な流れ

ボロボロになった歯は、基本的に下記のような流れで治療します。

 

(1)クリーニング

歯がボロボロになっている場合、口の中のお手入れが行き届いておらず、歯垢や歯石が多数付着しています。細菌の塊である歯垢や歯石は歯周病や虫歯の原因となるので、クリーニングで除去します。

 

(2)根管治療や歯周病治療

歯がボロボロになっている場合、虫歯が進行し神経が壊死している可能性が高く、根管治療が必要になります。

 

また、歯周病が進行している場合、そのままにしていると歯を支えるあごの骨が溶けて、歯が抜けてしまいます。歯を残すため、根管治療と並行して歯周病治療を行います。

 

虫歯が進行しすぎて根管治療ができない、または根管治療をしたものの改善しなかった場合は、抜歯します。

 

(3)入れ歯やインプラントなど

根管治療や歯周病治療が終わり、歯や歯茎の状態が整ったら、失った歯を補うため、入れ歯やブリッジ、インプラントといったかぶせものを製作します。

 

・入れ歯

入れ歯には、全ての歯を人工歯で補う「総入れ歯」と、金属の部品で固定して部分的に失った歯と歯周組織を補う「部分入れ歯」があります。

 

・ブリッジ

失った歯の両隣の歯を削り、人工歯のついた器具を橋のようにかけて固定する治療法です。

 

・インプラント

失った歯を支えていたあごの骨に、人工歯根(インプラント)を埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法です。

3.保険適用でボロボロの歯を治療する場合の費用

ボロボロの歯であっても保険適用で、必要最低限の治療を受けられます。3割負担で治療できるので、治療費用をおさえたい場合は、保険治療を検討してみるとよいでしょう。

 

保険適用の治療は、歯の噛む機能を回復させるためのものに限定されており、治療法や使用する素材など厳密にルールが定められています。

 

そのため「見た目を考えてセラミックのかぶせものをしたい」といった場合は保険適用外になります。また、失った歯を補う有効な治療法であるインプラントも残念ながら保険適用外です。

4.ボロボロになった歯に「フルマウス治療」を行う場合の治療費

自由診療であれば、治療方法やかぶせものに使用する素材、検査器具などに制限はありません。そのため、ボロボロになった歯でも、機能も見た目も健康だったときの状態に近づけられます。

 

ボロボロの歯に有効な治療法が「フルマウス治療」です。ここではフルマウス治療について、詳しく解説します。

4-1.フルマウス治療とは

フルマウス治療は別名「全顎治療(ぜんがくちりょう)」と呼ばれ、文字通り口のなか全体を治療し、それぞれの歯や歯茎が健康的に機能を果たせるようにする治療法です。虫歯や歯周病の治療や、インプラント治療、噛み合わせ治療、矯正、審美的な治療など、さまざまな治療を組み合わせ、健やかな状態に整えます。

 

口のなかは、一つひとつの歯や土台となる歯茎の健康状態、噛み合わせなど、全体のバランスが保たれることにより、正常に働いています。

 

虫歯や歯周病などが起きて、抜歯などの対症療法をしても、根本的な原因が解消されていないと、時間が経てばまたトラブルが起きてしまうことは少なくありません。そうして、何度も再発と再治療を繰り返すと、歯や歯茎、歯を支えるあごの骨にダメージが蓄積され、最終的に歯を失ってしまう場合があります。

 

フルマウス治療では、対症療法的な治療と合わせて、食生活や生活習慣、咬み合わせ、ブラッシングなど口腔ケアの習慣など、根本的な原因を解消します。

 

また、一人ひとりの口の中の状態に合わせてトータルに治療するため「すべての歯を一度にきれいしたい」「再発をしないようにしたい」といったニーズにも応えられます。

4-2.フルマウス治療の費用の相場

フルマウス治療は、自由診療で一人ひとりの口の中の状態に合わせて最適な治療法を組み合わせ行います。そのため、歯科クリニックや症例により価格が大幅に異なりますが、参考として2例ご紹介します。

 

(1)前歯の抜け落ちや中度の歯周病の症例

前歯など数ヶ所の歯が抜けており、銀歯の臭いや歯のデコボコ、全体の中程度の歯周病がありました。

 

土台となる歯茎を整えるため歯周病治療を行い、インプラントによって噛み合わせを整えました。部分矯正で歯並びを整えてから、見た目に優れたオールセラミックのかぶせもので歯を補填。大きな痛みもなく、快適な噛み合わせになり、見た目も大幅に改善されました。

 

(2)虫歯・歯周病で歯がボロボロでぐらつきも大きい症例

虫歯や歯周病が進行し、歯がボロボロになっていて、歯のぐらつきも大きく、そのままだと歯が抜け落ちてしまうリスクがある状態でした。

 

歯周病治療などで口の中全体の状態を整え、歯が残せる箇所はセラミックのかぶせもので補填し、抜歯した箇所にはインプラント治療を実施。歯がぐらつかずしっかり噛めるようになっただけではなく、見た目もきれいに改善されました。

 

フルマウス治療の場合、自由診療かつ複数の治療を組み合わせるため、高額な費用がかかります。しかし、しっかり噛めて見た目も美しく回復するので、高額な費用を払う価値があるといえるでしょう。

5.ボロボロになった歯の治療費の負担を少しでも軽減する方法

ご紹介したように、ボロボロになった歯の治療費は決して安くありません。少しでも負担を軽減する方法をご紹介します。

5-1.医療費控除を受ける

「医療費控除」とは、1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費の一部を、確定申告により所得金額から引くことができる制度です。本人はもちろん生計を1つにする家族の医療費も含まれます。

 

医療費が全額戻ってくるわけではなく、医療費が税金計算のもととなる所得額から控除されることで、所得税・住民税が安くなります。

 

医療費控除は下記の式で求められ、最大200万円までです。

 

実際に支払った医療費の合計額-健康保険や医療保険などで補填される金額-10万円(※)

※総所得金額(収入から経費や給与所得控除を引いた金額)が200万円より少ない場合は、所得の5%です。

5-2.デンタルローンを利用する

インプラントをはじめとする自由診療の治療を受ける場合、高額のため一括では治療費が支払えない場合もあるでしょう。

 

その場合は、「デンタルローン」を利用するのも方法のひとつです。デンタルローンとは、歯科治療専門のローンで、歯科クリニックと信販会社が提携しているローンや銀行が目的別に提供しているローンを指します。ローンによっては、比較的安い金利で借りることも可能です。

 

より質の高い治療を受けたい、少しでも天然の歯を残したいといった場合は、デンタルローンで自由診療の治療を受けるのも選択肢のひとつです。

5-3.無料低額診療事業を利用する

収入がないなどの理由で、保険診療の自己負担額分の支払いが難しい場合は「無料低額診療事業」を活用する方法があります。

 

無料低額診療事業とは、低所得世帯が経済的困難により医療を受ける機会を失わないための制度です。歯科クリニックによって、取り扱いの有無が異なります。事業に参加している医療機関は、全国福祉医療施設協議会のホームページで確認できます。

 

低所得世帯やホームレス、要保護者、DV被害者などが対象になり、健康保険に加入していなくても利用できます。申請手続きが必要なので、まずは事業に参加している歯科クリニックに相談しましょう。

5-4.自由診療は複数の歯科クリニックに相談

自由診療は、歯科クリニックによって自由に治療費を設定できるため、同じ治療内容でも大幅に費用が異なる場合があります。

 

複数の歯科クリニックに相談し、治療総額の目安を聞くことで、相場よりも高すぎる治療費を請求されるリスクを避けられます。

 

ただし、格安すぎる歯科クリニックの場合、医師の技術が低く適切な治療ができない、かぶせものの品質がよくないなどのデメリットも考えられます。

 

治療費だけではなく、治療実績の豊富さや設備が整っているかなど、さまざまな面から判断しましょう。

6.ボロボロになった歯の治療費は高額!まずは相談を

ボロボロになった歯の治療費は、保険適用内であっても軽度の虫歯と比べて高額で、自由診療の場合は数百万円にもなります。

 

しかし、治療費が高額だからといって放置していても虫歯は治りません。治療費の負担を軽減する方法もあるので、まずは歯科医師に相談して、治療方法やどのくらい費用がかかるのか確認しましょう。

 

少しでも早く治療をスタートすることで、歯を残せる可能性が高まり、治療費もおさえられます。

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