- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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虫歯が神経まで達してしまった場合の最新治療法に、根管治療というものがあります。
根管治療とは、痛んだ歯の神経を除去し、根管を徹底的に消毒した後、細菌感染などを防ぐ詰め物をする治療です。
虫歯が神経まで達したケース以外にも、
・歯を強打するなどし、神経が死んでいる
・歯根の先に炎症がある
・歯根に膿が溜まっている
などの場合にも、根管治療が有効な場合があります。
これまでは抜歯しかないと言われていた症例でも、歯を抜かずに治療ができるため、自分の歯として残すことができる治療法です。
しかし、根管治療は歯科医師であれば誰でもできる治療とは言えません。
非常に難しい治療なので、医師の知識・技術なしでは行えない治療です。
根管治療の専門医であっても成功率は約90%と言われています。
また、一度根管治療を行ったものの上手くいかずに再治療をすることを感染根管治療と言いますが、この成功率は約60%です。
治療中や治療後のトラブルは少なからずあるということ。
今回は根管治療を受けようと思っている場合、治療の主治医として選んではいけない歯医者の特徴を紹介します。
治療でのトラブルを避けるための大切な要素なので、参考にしてください。
目次
- 1. 根管治療で選んではいけない歯医者の特徴とは?
- 1-1. 歯科用のCTを使用しない
- 1-2.ラバーダムを使用しない
- 1-3.マイクロスコープを導入していない
- 1-4.滅菌などの衛生管理がしっかりしていない
- 1-5.外科治療に対応していない
- 1-6.担当医が複数いる(スタッフ間で連携が取れていない)
- 2.根管治療を受ける歯科医院のここに注目
- 2-1.神経を残す努力をしてくれるか
- 2-2.慎重に治療を進めてくれるか
- 2-3.衛生面に気を使っているか
- 2-4.治療後の定期健診は丁寧に行ってくれるか
- 2-5.外科治療も可能か
- 3.根管治療のトラブル回避のためには歯医者選びが大切
1.根管治療で選んではいけない歯医者の特徴とは?
根幹治療は歯科治療の中でも最も難しいと言われるほど、難易度の高い治療です。
痛んだ神経を取り除き、根管内部をきれいにして消毒しますが、根管は人によって形が少しずつ違います。
それを他の組織を傷つけないように取り除き、治療を行っていくため、歯科医師には非常に高い技術力が求められるのです。
そんな根管治療において、次のような歯科医師、歯科医院で治療をするのは避けた方がいいといえるポイントがあるので紹介していきます。
1-1. 歯科用のCTを使用しない
まずは歯科用CTを使用していない、歯科用CTがない歯科医院での治療はやめておきましょう。
根管内は網目のように枝分かれしていて、非常に複雑な形をしています。
その根管内がどのような形態になっているかを把握するには、3次元で根管内を記録できる歯科用CTは必須です。
レントゲンだけでは2次元にしか把握できないため、根管治療での検査としては不十分。
特に、外科治療が必要なケースでは、必ず三次元CTでの検査が必要です。
治療前に歯科用CTを使って検査をしてくれる歯医者を探しましょう。
1-2. ラバーダムを使用しない
ラバーダムとは患者の口周りにかけるゴム製のシートのこと。
根管治療は根管内の細菌をゼロに限りなく近づける必要がありますが、口の中にはたくさんの細菌がいます。
唾液の中にも細菌はいるため、治療中に細菌や唾液が根管内に入り込まないようにする必要があります。
そのために使われるのがラバーダムです。
ラバーダムの他にもズーと呼ばれる、細菌や唾液の侵入を防ぐシートもあります。
また、根管内の洗浄には次亜塩素酸が使われますが、この次亜塩素酸が口内の粘膜に触れてしまうと強い痛みがあります。
この次亜塩素酸が触れないように粘膜を保護するためにも、ラバーダムを使用することは有効です。
これらのことから、ラバーダムを使うことは根管治療において重要と言えます。
しかしながら、ラバーダムはどこの歯科医院でも導入しているわけではありません。
ラバーダムを使用しているかどうかは、治療の成功率にも関わってくるため、確認しておきたい点と言えるでしょう。
1-3. マイクロスコープを導入していない
マイクロスコープとはいわゆる歯科用の顕微鏡のことです。
根管治療ではこのマイクロスコープを使うと、根管内を拡大、そして明るく照らすことで、根管内の感染の状態や根管の形態を確認しながら治療できます。
より正確に確実に治療するためには、マイクロスコープが欠かせません。
しかし、このマイクロスコープは日本でも普及してきてはいるものの、導入していない歯医者も多くあります。
根管治療には必須ともいえるマイクロスコープを導入していない歯医者は避けた方がいいでしょう。
1-4. 滅菌などの衛生管理がしっかりしていない
ラバーダムの使用もそうですが、衛生管理がしっかりしていない歯医者は要注意です。
通常の歯科治療もそうですが、口内に入る器具の滅菌はもちろん、歯科医師や衛生士などの衛生面での意識の高さも重要。
滅菌器での器具の滅菌はもちろんですが、滅菌器にはクラスがあります。
一般的な滅菌器では器具の外側しか滅菌できませんが、クラスB、クラスSという滅菌器では内部も滅菌可能です。
また、グローブの取り扱いに関しては衛生面の意識の高さが見えるところでもあります。
カルテやタブレット等は基本グローブを外して操作し、患者の口内に触れる前に新しいグローブを付ける必要がありますが、徹底して行えているかなどを確認してみてください。
1-5. 外科治療に対応していない
根管が狭いため、器具が根の先まで届かない場合や歯根破折するリスクがある場合、また根管治療の再治療の場合は、外科的歯内療法を行うことがあります。
歯根端切除術や意図的再植術といった方法です。
これらの外科治療に対応していない歯医者だと、いざ外科治療が必要なケースだと分かった場合、他の歯医者を探さなければいけません。
また、歯根端切除術が成功すれば、根管治療の成功率は約94%までに上がります。
最初から外科治療にも対応できる歯医者を選び、最善の環境で治療に入る方が賢明と言えるでしょう。
1-6. 担当医が複数いる(スタッフ間で連携が取れていない)
これは絶対に避けた方がいいとはいいませんが、治療を最初から最後まで1人の医師が担当するのではなく、入れ替わり等で担当する場合には要注意です。
もちろん、医師同士、また歯科衛生士などのスタッフ間で連携が取れ、担当が入れ替わりながらもスムーズに治療がうまく進められるのであれば問題ありません。
しかし、スタッフ間で連携が取れておらず、情報共有が不十分である場合、医療ミスにつながることがあります。
特に根幹治療は1回で終えられる治療ではないため、少なくとも数回は治療へ通う必要があります。
その度に情報が共有されていなければ、治療のトラブルの元です。
治療前に担当医師は誰なのか、もし複数の医師が治療を担当する場合はその点もきちんと患者に説明してくれるかなど、信頼関係を築くための姿勢が見られるかを確認しておく必要はあります。
2.根管治療を受ける歯科医院のここに注目
根管治療を検討している場合には、まず治療を任せる歯科医院選びが大切です。
患者の大切な歯を残すために、患者側の気持ちに立った治療を行ってくれると、安心して治療を任せられますよね。
2-1. 神経を残す努力をしてくれるか
虫歯が神経に達していたり、歯茎が炎症を起こしていたりしたとしても、何本かの神経は残っている可能性はあります。
強い痛みがある場合は別ですが、その生きている神経を抜かずに残しておく方法はあります。
根管治療では死んだ神経は全て取り除かなければトラブルの元になりかねませんが、自分の歯を残すということは、少しでもその機能も残しておきたいもの。
そのため、できるだけ残った神経は残す努力をしてくれる医師であれば信頼できるはずです。
治療方針を立てる際に、神経について質問してみるといいでしょう。
2-2.慎重に治療を進めてくれるか
根管治療は消毒しながら、丁寧に根管内の細菌を取り除いていきます。
歯科医の技術力も重要なので、過去の症例数なども尋ねるのもいいでしょう。
また、検査の時点で歯科用CTを使ったり、マイクロスコープを導入していたりなど、より正確に精度をあげるための設備のある歯科医院を選ぶのもいいでしょう。
2-3.衛生面に気を使っているか
衛生面は歯科医院を選ぶ際には欠かせないポイントです。
院内の様子などを観察しながら、衛生管理について確認してみるのもいいでしょう。
また、治療の際、ラバーダムの使用はするかどうかも質問してみてください。
2-4.治療後の定期検診は丁寧に行ってくれるか
治療を終えたとはいえ、口内にはたくさんの細菌がいるため、治療した歯が再感染する可能性はゼロにはできません。
患者が家でもしっかりと、プラークコントロールをするのはもちろんですが、治療後も定期的に歯科検診を行い、しっかりと診てもらえると安心です。
また、万が一再治療が必要となった場合、再治療を行ってもらえるのか、外科治療にも対応してもらえるのかについても、最初の治療を受ける前に確認しておくといいでしょう。
2-5.外科治療も可能か
また、外科治療に対応しているかどうかも大切なポイントです。
治療を進めていく中、また再治療となった場合など、外科治療が必要と判断された場合、その歯科医院では対応できないとなると、また最初から探さなければいけなくなります。
万が一に備え、最初から外科治療が可能な歯医者を選ぶのも良いでしょう。
3.根管治療のトラブル回避のためには歯医者選びが大切
根管治療は難しい治療のため、歯科医師であれば誰でもできる治療ではありません。
つまり、どの歯科医院でも受けられるものではないので、まずは歯医者選びが治療の成功のカギとなります。
非常に繊細な治療であるため、その点を安心して任せられる歯医者を選ぶことが大切です。
自分の歯を1本でも多く残すこと。
それに越したことはありません。
簡単に抜歯せず、1本でも大切にしてくれ、そのためのしっかりとした根管治療ができる歯医者を探してみてください。