- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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細菌に感染した歯の神経を取り除き徹底した除菌を行い封鎖する「根管治療」は、天然の歯を残すための「最後の砦」ともいえる治療です。
根管治療は、難易度の高い治療で他の歯科治療と比べて通院回数が多くなる傾向にあります。この記事では、根管治療の通院回数や回数が多くなる理由など詳しく解説します。
目次
- 1.根管治療とはどんな治療なのか
- 2.根管治療の通院回数の目安を解説
- 2-1.前歯の初回治療
- 2-2.前歯の再治療
- 2-3.奥歯の初回治療
- 2-4.奥歯の再治療
- 3.根管治療の通院回数が多くなる場合とは
- 3-1.根管が枝分かれしている
- 3-2.根管がふさがっている
- 3-3.見つかりにくい根管がある
- 3-4.根管がカーブしている
- 4.根管治療の通院回数を減らす方法
- 4-1.自由診療を選択する
- 4-2.機材が充実している歯科クリニックを選ぶ
- 4-3.根管治療に強い歯科医師の診察を受ける
- 5.根管治療の通院回数は4〜7回が目安!通院回数を減らせるケースも
1.根管治療とはどんな治療なのか
根管治療とは、通称「歯の神経」とも呼ばれる「歯髄(しずい)」を取り除き、歯髄が入っていた管である「根管」のなかを徹底的に洗浄・殺菌。無菌化してから、薬剤を詰めて密封し、噛む機能を回復させるためにかぶせものを装着する治療です。
歯髄には血管や神経が詰まっており、虫歯の進行により細菌感染を起こすと、激しい痛みを生じ、神経が壊死してしまいます。神経が壊死すると痛みは一時的におさまりますが、歯根に炎症が起きて膿が溜まるようになります。歯根の感染が重症化すると、歯を維持できなくなり、抜歯せざるを得なくなる可能性が高いでしょう。
根管治療は難易度が高く、成功率は74.6%というデータも報告されています。
2.根管治療の通院回数の目安を解説
根管治療が完了するまでの通院回数の目安は、根管治療そのものに2〜4回。その後、歯に土台をつくりかぶせものを装着するために、2〜3回です。トータルの通院回数は、4〜7回くらいが多いでしょう。
通院期間は、週1回通院の場合は1〜2ヶ月です。歯科クリニックによっては、同じ部位に麻酔を頻繁に打つことによる影響を避けるため、2週間に1回の通院としています。その場合の通院期間は、2〜4ヶ月ほどです。
ただし、治療対象の歯が前歯か奥歯かや初治療と再治療どちらか、根管の形状、症状などの条件により、通院回数は大きく左右されます。
代表的なケースについて見ていきましょう。
2-1.前歯の初回治療
前歯は奥歯に比べて根管の数が少ないため、歯髄の除去や根管の洗浄・殺菌・薬剤の充填がスムーズにできます。歯根の周囲に異変がなければ、1回で根管治療が終了し、その後かぶせものの装着のために2〜3回通院すれば、治療が完了するケースもあります。
2-2.前歯の再治療
2回目以降の根管治療は、初回と比べて難易度が大幅に上がり治療に時間がかかるため、通院回数も多くなります。
再治療の場合、かぶせものを外し、根管に詰めた薬剤を取り除く処置が追加で必要です。さらに、根管が再感染しているため徹底的に殺菌する必要があり、神経を取り除くことで歯がもろくなっているので、初回治療よりも精度の高い治療が求められます。
そのため、根管の数が少ない前歯でも根管治療に3〜4回、かぶせものの装着のために2〜3回通院しなければならず、通院回数はトータルで5〜7回が目安です。
2-3.奥歯の初回治療
奥歯は前歯に比べて根管の数が多く、2〜4つほど根管があります。根管の数が多いため、その分、根管の洗浄・殺菌・薬剤の充填などに時間がかかります。そのため、根管治療自体の通院回数の目安は2〜3回、かぶせものを装着するための通院と合わせると4〜6回通院が必要です。
2-4.奥歯の再治療
根管の数が多い奥歯の再治療は難易度が高く、根管治療だけで4〜5回、かぶせものの装着を含めたトータルの通院回数は、6〜8回にもなります。
回数が多い理由は、根管の数が多く根管に詰めた薬剤の除去・洗浄・殺菌などに時間がかかり、さらに再感染により細菌が蔓延しているためです。
3.根管治療の通院回数が多くなる場合とは
歯の種類や再治療かどうか以外にも、根管の形状や状態によって通院回数が多くなるケースがあります。代表的な例を紹介します。
3-1.根管が枝分かれしている
枝分かれしている根管の場合、全ての通り道を消毒するのに時間がかかるため、通院回数が平均よりも多くなる傾向にあります。消毒が不充分だと、再感染を引き起こすため、慎重な処置が必要です。
なかには迷路のように複雑な形状をしている根管もあり、その場合は通院回数が大幅に増えるかもしれません。
3-2.根管がふさがっている
長期間にわたり虫歯にかかっていると、根管が石灰化して硬くなり、ふさがってしまいます。根管治療後の感染を防ぐためには、少なくともふさがっている場所のうち開ける部分までは徹底的に洗浄・殺菌する必要があります。
さらに、ふさがっている部分の下に病変があり膿が溜まっているケースでは、まずは病気を治療してから、根管治療をしなければいけません。ふさがっている根管を開いて治療ができる場合もありますが、難しい場合は外科処置をします。
いずれにしても、通常の根管治療よりも必要な処置が増え、通院回数も多くなります。
3-3.見つかりにくい根管がある
根管は小さく形状も複雑で人によって数が違うため、見つかりにくい場合が少なくありません。根管を見落としてそのままにしておくと、再発の原因となります。
従来は見つかりにくい根管の存在は、気づかれないままの場合が多かったでしょう。しかし、根管の形を立体的に撮影できる「歯科用CT」や治療中に根管を拡大して見られる「マイクロスコープ」の普及に伴い、発見されるケースが増え、見つかりにくい根管を発見し治療する重要性が高まりました。
この場合、見つかりにくい根管を発見するのに時間がかかり、さらに治療対象の根管の数が増えるため、通常よりも通院回数が多くなります。
3-4.根管がカーブしている
根管治療では、虫歯菌に感染した神経・血管といった根管内の汚染物質を取り除くために「ファイル」と呼ばれる先の尖った器具を使用します。その後、根管内に薬剤をいきわたらせるためにファイルで根管内を削って広げる「根管形成」を行います。汚染物質の除去と根管形成は、根管治療の成功にとって非常に重要なプロセスです。
根管がまっすぐな場合はファイルでの処置はスムーズですが、カーブしていると難易度があがり、その分時間がかかってしまいます。
最近は先端が曲がるファイルが普及し、以前と比べてカーブした根管の治療がしやすくなっています。しかし、それでもまっすぐな根管よりも治療時間が長い傾向にあり、通院回数も多くなるでしょう。
4.根管治療の通院回数を減らす方法
歯を残すために必要な治療とはいえ、根管治療の通院回数は多く、患者の負担は大きいといえるでしょう。ここでは、根管治療の通院回数を減らす方法を解説します。
4-1.自由診療を選択する
根管治療は保険適用の対象となり3割負担で治療を受けられますが、通院回数を減らしたいのであれば自由診療の方が適しています。
保険診療の場合、治療時間や治療方法、使用する器具・薬剤など、厳密なルールがあります。そのため、1回あたりの治療時間を長く取り少ない通院回数で治す、より効率的な治療方法を選択するといったことができません。
自由診療の場合は、治療費が全額自己負担となり保険適用の治療と比べて高額になりますが、長時間治療して通院回数を減らすなど融通が利きます。
なるべく少ない通院回数で根管治療を完了したい場合は、自由診療に対応しているクリニックに相談しましょう。
4-2.機材が充実している歯科クリニックを選ぶ
機材を活用してスムーズに根管治療を進めれば、その分通院回数を減らすことができます。代表的な機材として「マイクロスコープ」と「ラバーダム」があります。
・マイクロスコープ
マイクロスコープを使えば、肉眼では見えない細かい部分を最大30倍くらいまで拡大して診察できます。根管を大きく拡大することで正確な形を把握でき、状態に合わせた治療法や器具を見極められます。そのため、肉眼よりも遥かにスムーズに治療できるのです。また、根管の見落としや汚染物質の取り残しなどのリスクが減り、再発の可能性も軽減できるでしょう。
・ラバーダム
だ液には細菌が多く含まれており、根管治療を成功させるには、だ液が治療箇所に侵入しないようにするのが重要です。ラバーダムと呼ばれるゴムの膜で治療箇所を覆えば、根管の感染を防ぎ、スムーズに根管治療を進められます。
この他にも、根管拡大をスピーディーにできる「ニッケルチタンファイル」など、根管治療能効率をあげる機材はたくさんあります。
通院回数を減らすには、このような機材が充実した歯科クリニックを探すとよいでしょう。
4-3.根管治療に強い歯科医師の診察を受ける
根管治療の知識・治療スキルが優れている歯科医師であれば、症状の原因や改善方法を的確に見極められるため、スムーズに治療が進み、結果的に通院回数が少なくなるでしょう。
また、根管の形状が複雑であるなどの通院回数が多くなりがちなケースでも、問題を素早く把握し、適切な処置ができる可能性が高いと考えられます。
根管治療の知識・治療スキルが優れた歯科医師を見つけるには、歯科クリニックのホームページなどで、根管治療の症例数や根管治療専門医の認定を受けているかをチェックするのをおすすめします。
5.根管治療の通院回数は4〜7回が目安!通院回数を減らせるケースも
症状や根管の形状によりますが、根管治療の通院回数は、かぶせものの装着まで含めると4~7回ほどです。
根管数の多い奥歯の治療や再治療、根管がカーブしているなど形状が複雑な場合は、治療に時間がかかり、通院回数が多くなる傾向にあります。
根管治療による通院回数を減らすには、以下の3つの方法が有効です。
・1回あたりの治療時間を多く取れる自由診療を受ける
・根管治療をスムーズに進められる機材が充実している歯科クリニックを選ぶ
・根管治療の知識・スキルの高い歯科医師の診察を受ける
根管治療の通院回数が気になる場合は、まずは歯科医師に相談してみましょう。